
Red Dracul Scar Tissueとの意外なコラボ Jazztronikインタビュー
- インタビュー・テキスト
- 澤田大輔
Jazztronikこと野崎良太が、コンセプトからして面白い二枚の作品を世に送り出す。ひとつは謎のプロジェクト「Red Dracul Scar Tissue」とのコラボによるflumpool楽曲のリミックス集『experimental』。もうひとつはスタジオライブレコーディングによるベストアルバム『Studio Live Best』だ。後者はいわゆるライブ盤ともベスト盤とも異なるし、前者は一般的なリミックスとは一味違った仕上がり。クラブミュージックをベースにしつつ、ボーダーレスなサウンドを一貫して展開してきたJazztronikだが、その固定概念やジャンルに縛られない柔軟な姿勢は、この二枚からも如実に伺える。両作品の制作過程を追いながら、リミックスやポップミュージック観、ライブなどについて大いに語ってもらった。
ジャズというテーマが先にあったんですが、flumpoolの楽曲を聴いて、正直最初はどうしたら良いか悩みました。
まずは謎のバンパイアバンド「Red Dracul Scar Tissue(以下:レックル)」とコラボレーションしたflumpoolのリミックスアルバム『experimental』について話を伺おう。
Red Dracul Scar Tissue
flumpoolがアルバムをリリースするタイミングになると、突如姿を現しリミックスを行うことで知られているレックルだが、これまではエレクトロやテクノといったダンスミュージック寄りのリミックスが中心だった。しかし今作『experimental』のテーマは、なんと「スモーキーなジャズ」。Jazztronikとコラボレーションをすることで、flumpoolのエモーショナルなロックチューンの数々を、大人仕様のクールなサウンドへと変換している。
野崎:今まで100曲以上リミックスをやってきましたが、1アーティストの楽曲を、テーマを決めて何曲もリミックスするのは初めてだったので、面白そうだと思い参加させてもらいました。ジャズというテーマが先にあったんですが、flumpoolの楽曲を聴いて、正直最初はどうしたら良いか悩みました。まずは既存のコードを壊して行くことから始めたんですけど、彼らの楽曲は非常に凝っていて、むしろ取りかかってみると複雑なコード進行などにも全然対応してくれる楽曲ということがわかって。そこからは意外とスムーズに進みました。flumpoolは凄く丁寧に音楽を作っているんだなと思いましたね。ロックバンドにはない構成だったりコード進行だったり、曲を作る人間としては、そういったところにとても魅力を感じました。
ジャジーなflumpool……そう言われても、まるで仕上がりが想像できないかもしれない。実際、ネガとポジを反転させるかのような大胆極まりないリミックスぶりなのだが、それでいてなんの違和感もなく成立してしまっていることに驚かされる。どの楽曲も、ボーカルとメロディーはそのままに、それ以外の要素を一新。エレガントなアンサンブルを緻密に作り上げており、何気なく耳にしたらこれがオリジナルバージョンだと思ってしまうかもしれない。ピアニストや作編曲家としての側面も持ち合わせ、サントラからポップスまでの仕事を幅広くこなす野崎の職人気質がいかんなく発揮されている。
野崎:やっぱり原曲とは全く違う楽しみ方をしてもらえると良いなという意識はありましたね。今回は通常のリミックスとは異なり、リアレンジに近いものになったかと思います。実際の作業はピアノとドラムを打ち込み、ブラス、ベース、ギターは生楽器に差し替え、歌のことも意識しながら進めました。打ち込みのピアノとドラムも、他の楽器と馴染むような質感を出すことを心がけましたね。
リリース情報

- Red Dracul Scar Tissue×Jazztronik
『experimental』(CD) -
2012年12月12日からタワーレコード限定発売
料金:1,500円(税込)
AZCS-10211. Answer
2. Because... I am
3. 証
4. どんな未来にも愛はある
5. Touch
6. Present

- Jazztronik
『Jazztronik Studio Live Best』(CD) -
2012年12月19日発売
価格:2,500円(税込)1. Opening
2. Voyage
3. Love Tribe
4. 守破離
5. Black Dragon
6. Mista Swing
7. Tiger Eyes
8. Beauty Flow
9. Sweet Rain
10. 七色
11. Butterfly Dance
12. Samurai -侍
プロフィール
- Jazztronik
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ピアニスト、DJ、作編曲家の野崎良太による、特定のメンバーを持たない自由なミュージック・プロシェクト。1998年、Flower Recordsより初リリース。 昨今はドラマ/映画音楽の作曲にも積極的に取り組むなど、クラブ・ミュージックだけにはとどまらない独自の活動を展開している。