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フリーは無料? それとも自由? W Record鼎談

フリーは無料? それとも自由? W Record鼎談

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中慎一郎

さまざまな試みで現代的なライブハウス像を提示し続けている渋谷WWWが、昨年12月にネットレーベルW Recordをスタートさせた。「FREE DOWNLOAD + FREE PARTY」を基本コンセプトに、「Vol.1」ではLAの人気パーティーLOW END THEORYとタッグを組んでイベントを開催、また「Vol.2」では、国内ネットレーベルの代表格の一つである分解系レコーズとのイベントが予定されている。クリエイティブコモンズ・ジャパンの理事であるドミニク・チェンの著書『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック - クリエイティブコモンズによる創造の循環』が話題になったり、分解系レコーズから発表された『Creative Commands Compilation Data』がメディア芸術祭で審査委員会推薦作品に選ばれるなど、日本でもフリーカルチャーに対する認知が高まる中、W Recordの設立は音楽シーンに何をもたらすのか? W Recordの名取達利、disques corde / LOW END THEORY JAPANの原雅明、分解系レコーズの矢向直大の三氏に集まっていただき、その可能性を語り合ってもらった。

現場でこそわかるアーティストの魅力ってたくさんあるんです。(名取)

―まずはW Recordを設立した目的を教えてください。

名取:今ってインターネットから簡単に音源が取れる時代ですよね。でもやっぱり現場のでっかいサウンドシステムで聴く体験は、インターネットとはホントに全然違っていて、現場でこそわかるアーティストの魅力ってたくさんあるんです。「ネットレーベルを始めた」という言い方をしてますけど、現場で鳴らすところまでを含めて、ユーザーにアーティストの魅力を伝えたいというのがW Recordの一番の目的です。

名取達利
名取達利

―ネットと現場のどちらか一方ではなく、両方のレイヤーを生み出していくということですよね。

名取:そうですね。今はいろんなツールがあるから、若い子や、仕事をしている人が大勢ラップトップで音楽を作っているんですけど、そういう人たちが現場でプレゼンテーションする機会が多くはないんですよね。なので、現場で鳴らすことによって、新しいアーティストを発信して行きたいと思っています。こういう取り組みができるのは、マルチネ(日本のネットレーベルの草分け的存在)や分解系レコーズがゼロから土台を作ってきたことで、ネットレーベルに対する共通理解がユーザーにできた上でのアイデアだと思うんですけど。

―実際に、矢向さんはネットレーベルに対する共通理解の広まりを感じていますか?

矢向:始めた頃よりすごく広まった感触はあります。tofubeatsとかkzとか、2012年に話題になってるbanvoxとかの名前が、商業的なところにも出るようになって、単純にリスナーが増えたっていうのがありますね。あと、昔はネットレーベルっていうと「インターネットでカオスな面白いことをやってる集団」みたいなイメージが強かったんですけど、特色を持ったネットレーベルが増えたので、それぞれのユーザーが増えた印象もあります。

名取:banvoxくんとかは若いんですよね?

矢向:まだ10代ですね。tofubeatsも今は20代にですが、出始めは高校生だったし、ネットレーベルは基本的に若い人が多いですね。

―若い作り手が増えたっていうのは、やっぱり安くて性能がいいツールが増えたことと、ネットという発表の場ができたことが大きいわけですよね?

矢向:どちらかというと、発表する場の方が大きいんじゃないですかね? 今の人はメジャーレーベルから出すことよりも、聴いてもらう方を優先してるから、自分でサンクラ(SoundCloud)にアップして、「欲しい人はここから落としてください」って気軽にリンク貼ったりしてますよね。そういう発信の方法がいくらでもあることで、若い作り手が見え易くなったんじゃないかと思いますね。

―原さんは若い作り手のことをどのように見ていらっしゃいますか?

:僕は『LOW END THEORY』っていうLAのパーティーを4年間ぐらい日本でやってるんですけど、そのパーティー自体は、LAのハコだと18歳から入れるんですよ。アメリカでもホントは日本と同じように20歳からしか入れないんですけど、権利を取った時期の問題で18歳から入れるハコが若干あるんですね。主宰者のダディ・ケブがとにかく「10代の子に来て欲しい」って盛んに言っていて、そこでやることにこだわってるんです。僕は初めは自分が歳だってこともあって(笑)、「若い子を呼ぶ」ことの良さが分からないというか、実感が湧かなかったんですよ。でも、今年(2012年)に入って「BEAT INVITATIONAL」(『LOW END THEORY』の名物企画。出演者は2曲の新曲を用意し、観客も含めてフレッシュなビートを楽しむことができる)をやってみたときに、作り手の若い子たちがいっぱい見に来てくれて、発表の場が求められてるんだなってすごく実感したんです。

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リリース情報

V.A.『W Record vol.01 Feat. BEAT INVITATIONAL supported by LOW END THEORY』
V.A.
『W Record vol.01 Feat. BEAT INVITATIONAL supported by LOW END THEORY』

2012年12月13日発売
価格:無料
W Record

参加アーティスト:
OMSB(SIMI LAB)
Quarta 330
Himuro Yoshiteru
YOUNG-G(stillichimiya)
Jemapur
yosi horikawa
Primula
yagi

イベント情報

『W Record vol.01 FREE PARTY』

2013年1月24日(木)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:東京都 渋谷 WWW
定員:150組300名(要事前応募)
料金:無料(1stドリンクチャージ1,000円)

プロフィール

名取達利

WWW/W Record主宰。2010年に渋谷・スペイン坂の映画館シネマライズの地下を改装しライブスペース渋谷WWWをオープン。
元映画館のつくりを活かした劇場的な雰囲気を持つメインホール、240VでFUNKTION-ONEを駆動させるパワフルで解像度の高いPAシステム、高解像度の映像プロジェクションなど個性的な会場設計と音楽の多様性をテーマにしたブッキングで音楽と表現の「現在」を発信していく場として様々な試みを続けている。2012年W Recordを設立。

原雅明

音楽ジャーナリスト/ライターとして執筆活動の傍ら、disques cordeレーベルや各種イヴェントの運営を手がけ、近年はLOW END THEORY JAPANや、非営利ネットラジオ局dublabの日本ブランチの企画にも関わる。単著『音楽から解き放たれるために──21世紀のサウンド・リサイクル』(フィルムアート社)。

矢向直大

2010年よりトラックメーカーのGo-qualiaと共にオンラインレーベル"Bunkai-Kei records"を主宰。分解系でのリリース等のプロデュースをするほか、「OUT OF DOTS」や「Re-Union」といったイベントのオーガナイズやDJとして活動。また個人としてVJや、2002年よりメディアデザイン集団flapper3の設立メンバーとしても活動している。

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