
電気グルーヴがサブカルチャーに残した爪あと
- インタビュー・テキスト
- 柴那典
- 撮影:西田香織
やっぱり、電気グルーヴみたいなグループ、他のどこを探してもいない。3年半ぶりの新作アルバム『人間と動物』を聴くと、改めてそう痛感させられる。全曲歌モノ、80年代ニューウェーブ感満載のサウンド、ナンセンスな歌詞――。しかし、そうやって要素を並べてみても、その音の格好良さ、ふつふつとこみ上げてくる面白さは、上手く説明できない感がある。「『WIRE』を主宰し日本のテクノシーンを牽引する石野卓球」「CMやバラエティ番組、映画でも活躍するピエール瀧」というプロフィールこそ知られていても、それだけでは二人が電気グルーヴとして集まったときに生まれる不思議な爆発力を伝えられないような気もする。5年ぶりの全国ツアー『ツアーパンダ』も始まった今、改めて「電気グルーヴとは一体何なのか?」、そして「今の10代に電気グルーヴのヤバさを伝えるとしたら、果たしてどうすればいいか?」というテーマのもと、臨んだインタビューが以下。二人に話を訊いた。
他のものが無くなったからそう見えるんじゃないかな。(卓球)
―CINRAは若い世代の人もたくさん見るウェブメディアなので、今日は、アルバムの話だけでなく「今の10代や20代に電気グルーヴをどう伝えるか?」といったテーマでも話を訊ければと思います。
瀧:今の10代とか20代だと紙の雑誌を買ってたりすると変わり者ってことになるのかな?
卓球:「え? 巻物読んでるの?」みたいなね(笑)。
―(笑)。まずはアルバムなんですが、非常に素晴らしかったです。こういうことを堂々と、混じりっ気なく出せるのは、今、電気グルーヴしかいないと思います。
卓球:ありがとうございます。これ、ロッキング・オン系の人に評判いいんですよ(笑)。
瀧:ははーん、さてはお前、古いタイプの人間だな?(笑)
―(笑)。今作は80年代のテクノやニューウェーブの音の感覚をより前面に出してきたアルバムになっていると思うんですけれども。
卓球:今までと出し方は変わってないんだけどね。他のものが無くなったからそう見えるんじゃないかな。
―それで押し通したヌケの良さがありますよね。
卓球:アルバムを作る前に、尺を50分以内、いわゆるLPのサイズに落とし込んで、全部歌モノにしようというのは決まってたので。そうなると、おのずと今までやってたようなインストゥルメンタルのテクノは除外されていくんですね。どうしても全体が長くなってしまうから。
―なるほど。
卓球:そういう理由で、自分たちが影響を受けたものが前面に出てくるというのはあったかな。作ってたときに、イタロ・ディスコとか、ディスコクラシックとか、オールドスクール・エレクトロをすごく聴いていたから、その影響もあるだろうし。ただ、その要素を色濃く出そうというのではなく、普通に作ったらこういう部分が出てきたという。
―全曲歌モノ、50分以内というのはどういうところから決めたんでしょう?
卓球:アルバム1枚を聴く集中力を考えると、それくらいがベストかなって。もう1回聴きたいと思うアルバムにするには、あんまり長すぎない方がいいと思う。
瀧:今って、iPodとかMP3プレイヤーに入れて曲単位で聴いてるし、自分なりのプレイリストを作る聴き方も多いから。アルバム1枚にどっぷり付き合う感覚ってだんだん無くなってきてると思うんですよね。そういう意味でも、電気グルーヴの今の世界観というか、作品に付き合ってもらう意味も含めて、そのくらいの尺が妥当ではないかという。
左から:ピエール瀧、石野卓球
「瀧さんって、ファブリーズのCMに出てた人でしょ? 元電気グルーヴの」とか言われたりするんですよ。(瀧)
―2012年には「ZEUS」のCMソングにもなった『SHAMEFUL』というシングルが出ましたよね。あれはCMがきっかけになって作り始めた曲だったと思うんですけれども。
卓球:そうですね。依頼があって作った曲なんですけど、あれがアルバムを作るきっかけになったところはありますね。その前の『Upside Down』というシングルもアルバムに入ってるんですけど、あそこからはずいぶん期間も空いてたんで。『SHAMEFUL』を作ったことによって、アルバムの方向性も決まりましたね。
―あの曲はアルバムを作るにあたって、どういうきっかけになったんでしょう?
卓球:「依頼が来たから曲を作ろう」ということが大きくて。作ったことによって勢いが出たというのが、まず1つ。あとは、CMに呼ばれたことで自分たちに自信が付いたってのもあったかな(笑)。「まだ必要とされている!」っていう。
瀧:あと、単純に「瀧さんって、ファブリーズのCMに出てた人でしょ? 元電気グルーヴの」とか言われたりするんですよ。フェスなんかにはずっと出てたし、電気グルーヴとしてはずっと活動していたんだけど、テレビに露出することによって、改めて「電気グルーヴをやってますよ」ということを一般の人にも伝えられるっていう意味もあって。
卓球:依頼が来たタイアップが、ある程度こちらの好きなように出来たというのもデカいですね。CMだと「キャッチーな歌モノでサビをはっきりさせて欲しい」みたいな依頼が最初の条件であることも多いんですけど、そういうのが一切無くて、むしろ歌を入れなくてもいいという依頼だった。そこから自分たちで発展させて歌を入れてみたら、このやり方でもっといろいろな曲ができるなと。無理やり作りたくもないものを作らされるわけでもなかったし、あのシングルとCMはすごく大きなきっかけになりましたね。
―CMのオファーとして、「曲は自由に作ってください」「本人が出てください」というのは、願ってもない条件だったと。
卓球:そうですね。あとガムもいっぱいもらえたんで(笑)。
リリース情報

- 電気グルーヴ
『人間と動物』初回限定盤(CD+DVD) -
2013年2月27日発売
価格:3,990円(税込)
KSCL-2200/22011. The Big Shirts
2. Missing Beatz(Album version)
3. Shameful(Album version)
4. P
5. Slow Motion
6. Prof. Radio
7. Upside Down(Album version)
8. Oyster(私は牡蠣になりたい)
9. 電気グルーヴのSteppin' Stone
[DVD収録内容]
『LIVE at WIRE12 2012/08/25』
1. Hello! Mr. Monkey Magic Orchestra
2. SHAME
3. SHAMEFUL
4. Shangri-La
5. キラーポマト / KILLER POMATO
6. 誰だ!/ DAREDA!
7. 虹 / Niji
8. wire, wireless
※ダブル購入者プレゼント応募ハガキ

- 電気グルーヴ
『人間と動物』通常盤(CD) -
1. The Big Shirts
2. Missing Beatz(Album version)
3. Shameful(Album version)
4. P
5. Slow Motion
6. Prof. Radio
7. Upside Down(Album version)
8. Oyster(私は牡蠣になりたい)
9. 電気グルーヴのSteppin' Stone
※ダブル購入者プレゼント応募ハガキ
イベント情報
- 『電気グルーヴ ツアーパンダ2013』
-
『ツアーパンダ2013~プレツアーパンダ~』
2013年2月25日(月)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM2013年2月27日(水)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:福岡県 Zepp Fukuoka2013年2月28日(木)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:大阪府 Zepp Namba『ツアーパンダ2013~でえれえスペシャル~』
2013年3月3日(日)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:岡山県 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM2013年3月6日(水)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:愛知県 Zepp Nagoya2013年3月9日(土)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:北海道 Zepp Sapporo2013年3月12日(火)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 お台場 Zepp Diver City2013年3月13日(水)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 お台場 Zepp Diver City『ツアーパンダ2013~しぞーかスペシャル~』
2013年3月17日(日)
会場:静岡県 静岡 SOUND SHOWER ark料金:全公演 6,300円(ドリンク別)
プロフィール
- 電気グルーヴ
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80年代後半インディーズで活動していた前進バンド「人生」解散後、石野卓球とピエール瀧が中心となり「電気グルーヴ」を結成。1991年アルバム『FLASHPAPA』でメジャーデビュー。1995年ベルリンのレーベル「MFS」からシングル「虹」がヨーロッパリリースすることをきっかけに海外での活動をスタート。「FUJI ROCK FESTIVAL」「WIRE」「MAYDAY」など国内外のフェスに出演した後、2001年活動休止。それぞれのソロ活動を経て2004年に活動を再開し、数々のフェスへの出演、アニメやCMの主題歌を手がけるなど幅広く活躍。2013年オリジナルアルバム『人間と動物』をリリースし、5年ぶりの全国ツアー「ツアーパンダ」をスタートさせた。