
音楽が希望であり続けた男 Serphインタビュー
- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
命を削って作ってる感覚はあります。
―制作中は自分の世界に没入して、無我夢中で作っているという話を以前していらっしゃいましたが、それってその分負荷もかかると思うんですね。
Serph:そうですね、命を削って作ってる感覚はあります。
―入り込んでるときって、どんな状態なんですか? 飲まず食わずで作業したり?
Serph:飲まず食わずですね。すぐ形にしないとアイデアが逃げてしまう感じがして、トイレに行くのも忘れてやってたりします。長いときは17、18時間とかぶっ続けで作ってたり……音楽に取り憑かれてしまうようなところがあるんですよね。
―じゃあ、アイデアが枯渇したときの気分転換はどうやって?
Serph:……音楽から離れられない感じなんです。気分転換も、音楽を聴きながらだったりするんで。
―音楽が自分の人生の最優先事項であることを改めて認識して、現在相当な覚悟と集中力を持って音楽に向き合っているのだと思うのですが、音楽家として生きていく上で、今後に関してはどうお考えですか?
Serph:やっぱり音楽を生活のための手段としては捉えたくないんですよね。例えばもし作品を発表できなくなったとしても、僕は作品そのものが大事だと思っているので、音楽を作るっていうことは絶対にあきらめたくないんです。今まで他の人がやってきたような音楽家としての生き方っていうものは、これからの世の中では立ち行かないだろうと思ってるんですけど、音楽が好きだっていう強い気持ちはあるので……ただ、生活力がないのが悩みなんです(笑)。
―確かに、これまでの音楽家のあり方が難しくなってきているのは確かだと思いますが、一方で、かつての「いい歳になったら音楽を卒業する」っていう概念が薄れつつあるという話をすることも最近多いです。部屋で一人でもクオリティーの高い音楽を作れるツールがあるし、ネット上にはそれを発表できる場もあるから、これまでとは違うやり方で、音楽を作りながら生きるっていうことは可能なんだろうなって。
Serph:音楽で富とか名誉を得たいっていうことではなくて、いいものができたから、それをシェアしたいっていうところで音楽をやる人が増えてきてますよね。だから、ネットに無償でアップしたりしてるんでしょうし。そこから先があるのかどうかはまた別として、パブリックなところに自分の作ったものを発表できて、反応をもらったりすることができる時代ですから、そこは自分の「作品そのものが大事」っていう姿勢とリンクしてきてる気はしますね。
―とはいえ、Serphの作品を聴いていると、もっともっと多くの人と、ネットだけではなく、リアルでこの音楽を共有したいという欲求も出てきます。取材の度にお伺いしていることですが、まだ一度もやられていないライブに関しては現在どうお考えですか? 以前は「機が熟したら」というお答えでしたが。
Serph:機が熟しそうだなっていう……。
―お! そろそろライブをやろうと考えてるわけですね!?
Serph:はい、やっぱりライブをしてみたいっていう気持ちはずっとあったんです。『electraglide』とか『FUJI ROCK FESTIVAL』とか、そういうところに行くと、ライブ空間の可能性をビシビシ感じますよね。どういう形でやるかっていうのは、これから組んでいこうと思ってるんですけど。
―楽しみです。きっと、素晴らしい空間になるんじゃないかと思います。
Serph:ありがとうございます。楽しみにしていてください。
リリース情報

- Serph
『el esperanka』(CD) -
2013年3月15日発売
価格:2,300円(税込)
noble / NBL-2071. twiste
2. magicalpath
3. session
4. vesta
5. parade
6. shift
7. ankh
8. wizardmix
9. felixz
10. curve
11. vitt
12. rem
13. crystalize
プロフィール
- Serph
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東京在住の男性によるソロ・プロジェクト。2009年7月、ピアノと作曲を始めてわずか3年で完成させたアルバム『accidental tourist』をelegant discよりリリース。2010年7月に2ndアルバム『vent』、2011年4月には3rdアルバム『Heartstrings』、11月にはクリスマス・ミニ・アルバム『Winter Alchemy』を、それぞれnobleよりリリース。2013年3月に、フルアルバムとしては約二年振りとなる新作『el esperanka』をnobleよりリリースした。より先鋭的でダンスミュージックに特化した別プロジェクト、Reliq(レリク)でも一枚アルバムを発表している。