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鈴木惣一朗と直枝政広、部室のような音楽談義

鈴木惣一朗と直枝政広、部室のような音楽談義

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人

ワールドスタンダードの鈴木惣一朗と、カーネーションの直枝政広。共に1959年生まれで、共通の趣味を持ち、共通の仲間に囲まれながら、なぜか共演の機会がなかった二人が、30年の時を経て遂に結成したユニット、それがSoggy Cheerios(ソギーチェリオス)である。評論家としても名高い二人だけに、果たしてどんなマニアックな音源が届くのかと思いきや、デビュー作の『1959』は、作詞作曲はもちろん、歌と演奏の大部分を二人で分け合った、実にフレッシュな作品となっている。お互いフィールドは違えども、同じ時代を共有し、出会うべくして出会っただけに、余計なコンセプトはなくとも、それぞれが辿ってきた濃密な道のりが自然と音に還元されるであろうことは、二人にとって自明の理だったのだろう。鋭い視点で現代の音楽を取り巻く状況を分析したかと思えば、好きなレコードの話になると途端に10代のようなテンションで話を始める二人を前に、ひとつの作品を聴き込むことの重要性、音楽のマジカルな魅力を、強く再認識させられた。

天の声があったんだよね。「今言った方がいいよ」って。それで惣一朗君に「今度は一緒に音楽やろうよ」って。(直枝)

―今回のアルバム制作は、雑誌の対談がきっかけだったそうですね。

直枝:二人で会うのは大体ポール・マッカートニー関連の企画が多かったよね。

鈴木:ポール好きっていうと、この二人しかいないのかっていう(笑)。まあ、大御所の方はあんまり気さくには出てこないから、僕たちが使いやすいんでしょうね。それで、「また直枝君か、もうしゃべることないよね」って言いながら、毎回結構しゃべるんだよね(笑)。それが何回くらい続いたっけ?

直枝:3回ぐらいじゃない?

鈴木:話す度にだんだん会話の密度が濃くなって、ポール・マッカートニーのことを話してるんだけど、もっと広く音楽の話をしながら触れあっていくっていう、ちょっと特殊な状態になってて。それで、去年『ラム』(ポール&リンダ・マッカートニー夫妻が1971年にリリースしたアルバム)のデラックスエディションが出て対談したときに、帰り際に直枝君が声をかけてくれて。僕はさっさと帰ろうとしてたんだけど(笑)。

直枝:天の声があったんだよね。「今言った方がいいよ」って。それで惣一朗君に「今度は一緒に音楽やろうよ」って。

左:鈴木惣一朗、右:直枝政広
左:鈴木惣一朗、右:直枝政広

―直枝さんはそれ以前から鈴木さんと何か一緒にやりたいと思っていたのですか?

直枝:1980年代後半にエブリシング・プレイ(鈴木惣一朗がシンセマニュピレーターの美島豊明と結成したユニット)の『POSH』の音源を聴いてとてつもない才能だなっていうのはわかってたんですけど、出会うことなく2000年を迎えて。ノアルイズ・マーロン・タイツ(鈴木をメンバーに含む男女混成バンド)の人たちから「二人は絶対会わなきゃダメだ」って言われて、無理矢理、居酒屋で会ったんです。それでまあ、音楽の趣味の話をするんですけど、「THE BANDのセカンドのベードラの鳴りはどうだ」とか、そういうところから話がスタートして。

鈴木:スタート地点からしてかなりのレベルだったんで、そんなに長く話したわけじゃないけど、近いものがあるなっていうのはすぐわかって。でも、直枝君は偉大な存在だから、一緒に音楽をやるなんて思いもよらなかった。

直枝:何言ってんの(笑)。

鈴木:いや、ホントにすごい男だから、遠くから見てればいいかと思ってて。90年代に渋谷のWAVE(レコードショップ)で直枝君を見かけたことがあって、「何買ってるのかな? 声かけようかな?」って後ろからずっと見てて、結局声かけずに帰りましたからね(笑)。

―昔だったら、「一緒にやろう」って言われても、断ってたかもしれない?

鈴木:絶対そうなってたと思う。

直枝:よく言ってたのが、「昔二人でこういう作業をやってたら、喧嘩になったろうね」って。

鈴木:まだ自分を探してる時期だと、かなり自意識も強いし……。

直枝:今でも十分強いですけどね(笑)。

鈴木:54歳って、微妙なお年頃と言うか、この世代は中間管理職の悲哀があって、上には団塊の世代のはっぴいえんどとかがいて、下には小山田(圭吾)君とかがいるわけです。そういう中で、直枝君はホントに体を使って、歌って、ギターを弾いて、アルバムガンガン作って、ツアーもして、ミュージシャン然としてるのがすごいなって。僕は録音中心で、スタジオに引き籠ってますからね。

直枝:でも、俺としてはそれが羨ましいのよ。バンドを続けてきちゃった以上、回していかないといけないから、ツアーはどうしてもやんなくちゃいけないし、そのためには自分で車も運転するし、どんなにヘトヘトでも人前に出ないといけない。今回二人で地下室(レコーディングスタジオ)に入った数週間っていうのは、すごく幸せだったんですよね。

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リリース情報

Soggy Cheerios<br>
『1959』(CD)
Soggy Cheerios
『1959』(CD)

2013年7月17日発売
価格:2,730円(税込)
P-VINE RECORDS / PCD-26054

1. ロックンロールが空から降ってきた日
2. 明日も
3. かぜよふけ うみよなけ
4. 知らない町
5. 百八つの窓
6. きみがいない
7. 19時59分
8. ずっとずっと
9. ぼくはイノシシ
10. 曇天 夕闇 フェリー
11. とんかつの唄

プロフィール

{鈴木惣一朗(すずき そういちろう)

1983年にインストゥルメンタル主体のポップグループWORLD STANDARDを結成。細野晴臣プロデュースでノン・スタンダード・レーベルよりデビュー。95年、ロングセラーの音楽書籍『モンド・ミュージック』で、ラウンジ・ミュージック・ブームの火付け役として注目を浴び、97年から5年の歳月をかけた「ディスカヴァー・アメリカ3部作」は、デヴィッド・バーンやヴァン・ダイク・パークスから絶賛される。近年では、ハナレグミ、ビューティフル・ハミングバード、中納良恵、湯川潮音、羊毛とおはな等、多くのアーティストをプロデュースする一方、2011年夏、自身の音楽レーベル[Stella]を立ち上げた。

直枝政広(なおえまさひろ)

1959年生まれ。1983年カーネーション結成。1984年にオムニバス『陽気な若き博物館員たち』(水族館/徳間ジャパン)でソロ・デビュー。同年、カーネーションがシングル「夜の煙突」(ナゴム・レコード)でレコード・デビュー。以後、カーネーションは数度のメンバーチェンジを経ながら数多くの傑作アルバムをリリース。2000年には直枝政広としての初ソロ・アルバム『HOPKINS CREEK』を発表。同時に鈴井貴之初監督作品『man-hole』のサウンドトラックも手がける。2007年に初の著作となる『宇宙の柳、たましいの下着』を上梓。2013年、結成30周年を迎えるカーネーションと並行し、ソロライヴでの活動や執筆等、精力的に活動中。

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