特集 PR

高橋幸宏インタビュー 原点回帰のフリをして未来へ

高橋幸宏インタビュー 原点回帰のフリをして未来へ

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人
2013/07/17

2013年も半分が過ぎ、これまでにリリースされた作品を振り返ってみると、「NEW」という単語をタイトルに含んだ作品が例年よりも目立ったような印象がある。CINRAで取材をさせてもらったアーティストで言えば、やけのはらの『SUNNY NEW LIFE』や、アナログフィッシュの『NEWCLEAR』、古川日出男と後藤正文の対談で語られた「今こそ新世紀について語るべき」という話も思い出深い。これは2011年の震災を経て、さまざまな問題があぶり出されていく中で、新しい枠組み、新しい生活、新しい感性が必要であると誰もが感じ始めている、そんな2013年の空気をはっきりと表していると言えるだろう。

昨年還暦を迎え、年末には3時間半に及ぶキャリアの集大成的ライブを開催した高橋幸宏が、ジェームス・イハ、高桑圭(Curly Giraffe)、堀江博久、ゴンドウトモヒコという全員40代のメンバーによる新バンド「In Phase」と共に作り上げた新作のタイトルは、ずばり『LIFE ANEW』。ここにも、2013年の空気が確実に存在している。また、「1960〜70年代のアメリカ」という自らのルーツを見つめ直した本作は、デヴィッド・ボウイの新作『The Next Day』を筆頭とした、海外におけるバックトゥルーツ的な動きとシンクロするものでもある。そう、ここでお決まりのフレーズを使わせてもらおう。優れたポップミュージックとは、時代を映す鏡である。今こそ、ルーツを見つめ直し、「NEXT」で、「ANEW」な未来へと向かうときだ。

偶然は必然だっていう意識は、僕の中にずっとあるんです。

―昨年は還暦を迎えられて、トリビュートアルバムの発売があり、年末には集大成的なライブもあったりと、区切りの年になったのではないですか?

高橋:いや、6月6日生まれで60歳だから、ゴロもいいし、ちょっと思い出になることをやろうかなっていうくらいの気持ちだったんです。去年はしばらくロンドンに行ってて、誕生日の日は向こうでパーティーをやったんですけど、あれからもう1年経っちゃったんだっていうことにびっくりしますね(笑)。

高橋幸宏
高橋幸宏

―とはいえ、年末のライブは全33曲で3時間半、ゲストも多数参加されて、メモリアルな1日になりましたよね。

高橋:3時間半っていうのはやったことのない時間だったので、演奏すること自体大変だったんですけど、その前に曲を選ぶのが大変で。オリジナルアルバムが22枚あったから、スタッフといろいろ考えながら聴いていったんだけど、絞ってもまだ60曲ぐらいあって、「全然ダメじゃん、こんなにできないよ」って話で(笑)。結局何とか33曲まで絞ったけど、教授のスケジュールが空いてて「YMOの曲もやりましょう」ってなってたら、さらに2、3曲増えてたかもね。

―キャリアを振り返ったことで、何か新たな発見はありましたか?

高橋:特に新しい発見はなかったんだけど、今回のアルバムでやったような音のルーツみたいな部分って、意外に今までやってなかったんだなって思って。僕のルーツの1つはやっぱりTHE BEATLESだし、「高橋幸宏」っていうと、ロンドンとか、ヨーロッパのイメージが強いと思うんです。でも、去年自分で書いた本(『心に訊く音楽、心に効く音楽』)の原稿をチェックしてて、20歳より前まではアメリカの音楽の影響の方が強かったんですよね。そのぽっかり抜けてた部分を、バンドサウンドでやってみようと思ったのが今回のアルバムなんです。

―「ルーツを見つめる」ということに関しては、幸宏さんが登場しているタワーレコードの「NO MUSIC, NO LIFE?」のポスターでも、「最近よく感じるのは、自分の心の中にあるルーツをじっくり見つめて、そしてそこにもう一度戻ってみようっていう感覚を持っている人がとても多い、という事ですね」と、コメントされていましたね。

高橋:そうなんですよ、わりと年を取った連中がそういうことやってるんですよね。例えば、ボズ・スキャッグスが出した『MEMPHIS』ってアルバムを聴いて、「え? こういう人だったの?」ってびっくりしたし、デヴィッド・ボウイの『The Next Day』はセールス的にも成功しましたよね。最初に先行で出した曲が一番良くて、戦略的にも上手くやったなって思いますけど(笑)。あと笑っちゃうのがOMD(オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダーク)の『English Electric』ですね。「これホントに新しいアルバム?」っていうぐらい原点回帰してる(笑)。あれは、あえてやってるんじゃなくて、真面目にやってああなっちゃったっていう感じですよね。

高橋幸宏

―もちろん、日本でも「ルーツを見つめる」っていう動きはあって、それはやっぱり震災があったことが多分に関係してると思うんですね。ただ、世界中でそういう動きが起こってるっていうのが興味深いところで。

高橋:シンクロニシティーって必ずありますよね。同時多発的にそういうことって起きるんですよ。ある程度の年齢になったからルーツのことを考えたっていうのもあるだろうけど、別に「若者に伝えたいから」ってやるんじゃなくて、みんな自分のためにやってるんだと思うんです。

―これまでのキャリアの中でも、そういうシンクロニシティーを感じた時期ってありました?

高橋:ありますね。昔はそれこそTHE POLICEが『Synchronicity』(1983年)を出した頃にすごく感じてました。偶然は必然だっていう意識は、僕の中にずっとあるんです。誰かと出会うこととかも、「これは必然だったんだな」って思うと、すごくいいんですよね。ものや音とかも含めて……まあ、無駄なものと付き合っちゃった時期もあったりしたけど(笑)。

―でも、それも含めて必然だったと。

高橋:全部必然だったと思いますね。

Page 1
次へ

イベント情報

『高橋幸宏 with In Phase Live Tour 2013』

出演:高橋幸宏[Dr,Vo]、James Iha[Gt]、高桑圭(Curly Giraffe)[Ba]、堀江博久[Key]、ゴンドウトモヒコ[euphonium]、鈴木俊治[Gt]

2013年9月16日(月・祝)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:大阪府 なんばHATCH
料金:7,500円

2013年9月18日(水)OPEN 18:30/ START 19:00
会場:福岡県 イムズホール
料金:7,500円

2013年9月20日(金)OPEN 18:00/ START 19:00
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
料金6,000円(ドリンク別)

2013年9月21日(土)OPEN 17:00/ START 18:00
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO
料金:6,000円(ドリンク別)

2013年9月23日(月・祝)OPEN 17:00/ START 17:30
会場:東京都 Bunkamuraオーチャードホール
料金:7,500円

リリース情報

『LIFE ANEW』(CD)

2013年7月17日発売
価格:3,150円(税込)
TOCT-29167

1. Looking For Words
2. All That We Know
3. Time To Go
4. Last Summer
5. End Of An Error
6. The Old Friends Cottage
7. Shadow
8. Ghost Behind My Back
9. That's Alright (It Will Be Alright)
10. Signs
11. World In A Maze
12. Follow You Down
※初回生産限定デジパック仕様

高橋幸宏<br>
『One Fine Night 〜60th Anniversary Live〜』(2Blu-ray+3CD)
高橋幸宏
『One Fine Night 〜60th Anniversary Live〜』(2Blu-ray+3CD)

2013年6月26日発売
価格:10,500円(税込)
TOXF-5776

1. 世界中が I love you
2. It's Gonna Work Out
3. Murdered By The Music
4. Radioactivist
5. Drip Dry Eyes
6. Now And Then
7. Stay Close
8. Still Walking To The Beat
9. My Bright Tomorrow
10. Disposable Love
11. 前兆(まえぶれ)
12. The Price To Pay
13. At Dawn
14. Laika
15. 元気ならうれしいね
16. Blue Moon Blue
17. The Words
18. In This Life
19. Chronograph
20. Stella
21. Ekot
22. Inevitable
23. Left Bank
24. ちょっとツラインダ
25. 1%の関係
26. X'mas Day In The Next Life
27. Glass
28. Something In The Air
29. 今日の空
30. Set Sail
31. Prayer Of Gold
32. Sunset
33. Saravah!
※3枚組ライブCD、160ページブックレット付属

高橋幸宏<br>
『One Fine Night 〜60th Anniversary Live〜』(2DVD+3CD)
高橋幸宏
『One Fine Night 〜60th Anniversary Live〜』(2DVD+3CD)

2013年6月26日発売
価格:9,450円(税込)
TOBF-5776

1. 世界中が I love you
2. It's Gonna Work Out
3. Murdered By The Music
4. Radioactivist
5. Drip Dry Eyes
6. Now And Then
7. Stay Close
8. Still Walking To The Beat
9. My Bright Tomorrow
10. Disposable Love
11. 前兆(まえぶれ)
12. The Price To Pay
13. At Dawn
14. Laika
15. 元気ならうれしいね
16. Blue Moon Blue
17. The Words
18. In This Life
19. Chronograph
20. Stella
21. Ekot
22. Inevitable
23. Left Bank
24. ちょっとツラインダ
25. 1%の関係
26. X'mas Day In The Next Life
27. Glass
28. Something In The Air
29. 今日の空
30. Set Sail
31. Prayer Of Gold
32. Sunset
33. Saravah!
※3枚組ライブCD、160ページブックレット付属

プロフィール

高橋幸宏(たかはし ゆきひろ)

1972年、Sadistic Mika Bandに参加。1978年、細野晴臣、坂本龍一とともにYellow Magic Ochestra(Y.M.O.)を結成、国内外に大きな影響を残したが、1983年12月をもって「散開」。ソロ活動と併行して鈴木慶一(ムーンライダーズ)とのTHE BEATNIKSとしても活動。2001年には細野晴臣とSKETCH SHOWを結成。2008年、原田知世、高野寛、高田漣、堀江博久、権藤知彦とバンドpupa(ピューパ)を結成。2008年『WORLD HAPPINESS』を東京・夢の島で開催。以降、毎年10数組のアーティストが参加し、好評を博している。ソロとしては1978年の『Saravah!』以降、コンスタントに作品を発表しており、2013年、新バンドIn Phaseとともに創り上げた23枚目のオリジナル・アルバム『LIFE ANEW』をリリースする。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

yahyel“TAO”

音楽と映像、そしてその相互作用によって完成するyahyelの芸術表現が完全に別次元に突入したことを証明するミュージックビデオ。クライムムービーとそのサントラのような緊迫感に終始ゾクゾクする。一体いつ寝てるんですかと聞きたくなるが、監督はもちろん山田健人。「崇高」という言葉を使いたくなるほどの表現としての気高さに痺れる。(山元)

  1. 安室奈美恵の引退日に1回限りのCM放送 安室の「笑顔」集めた60秒映像 1

    安室奈美恵の引退日に1回限りのCM放送 安室の「笑顔」集めた60秒映像

  2. 大野智がNHK『LIFE!』でダンス披露 『嵐にしやがれ』とのコラボ企画 2

    大野智がNHK『LIFE!』でダンス披露 『嵐にしやがれ』とのコラボ企画

  3. 三島由紀夫作の舞台『熱帯樹』に林遣都、岡本玲ら 演出は小川絵梨子 3

    三島由紀夫作の舞台『熱帯樹』に林遣都、岡本玲ら 演出は小川絵梨子

  4. TOSHI-LOWとフェス。アーティスト兼主催者目線で、現状を語る 4

    TOSHI-LOWとフェス。アーティスト兼主催者目線で、現状を語る

  5. 『ULTRA JAPAN 2018』開催。日本におけるEDM人気の立役者が5周年 5

    『ULTRA JAPAN 2018』開催。日本におけるEDM人気の立役者が5周年

  6. 渡辺あや脚本『ワンダーウォール』、静かに話題呼ぶ京都発ドラマ地上波再放送 6

    渡辺あや脚本『ワンダーウォール』、静かに話題呼ぶ京都発ドラマ地上波再放送

  7. 安室奈美恵の1994年からの歴代CM45本を一挙公開 AbemaTVの生放送特番 7

    安室奈美恵の1994年からの歴代CM45本を一挙公開 AbemaTVの生放送特番

  8. 平手友梨奈の「予測不可能」な生き様。初主演映画『響 -HIBIKI-』が公開 8

    平手友梨奈の「予測不可能」な生き様。初主演映画『響 -HIBIKI-』が公開

  9. 崎山蒼志が戸惑い混じりに語る、『日村がゆく』以降の喧騒の日々 9

    崎山蒼志が戸惑い混じりに語る、『日村がゆく』以降の喧騒の日々

  10. Amazon.co.jpが音楽イベントのストリーミング配信を開始。その狙いを訊く 10

    Amazon.co.jpが音楽イベントのストリーミング配信を開始。その狙いを訊く