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加藤直徳(『TRANSIT』)×尾原史和(SOUP DESIGN)対談

加藤直徳(『TRANSIT』)×尾原史和(SOUP DESIGN)対談

インタビュー・テキスト
内田有佳
撮影:高見知香

エッフェル塔を撮りたいっていっても「場所」として撮りたいわけじゃないんですよね。「パリをこれまでなかった視点で、どう魅力的に伝えるか」という1つのテーマに向かって全員が動くというか。(加藤)

―撮影の現場はどんな風に進むんですか? 『TRANSIT』は、カメラマンが作品撮りだと思っているという話がありましたが、編集者もアートディレクターも同行するということは、きっとそれぞれ撮ってほしいビジュアルの要望などもありますよね。

加藤:現場はカメラマンによって結構変わりますね。「どんな風に撮ったらいいですか?」って聞いてくる人もいるし、逆にこっちが「こう撮ってください」とお願いしても撮ってくれない人もいるし(苦笑)。

尾原:いますよね(笑)。

加藤:それぞれの国や街には必ずベストな風景が写っている絵葉書があるじゃないですか。カメラマンは大体そのイメージから離れたがるんですよね。でも雑誌としては、その風景が欲しい場合もある。

『イエメン』(撮影:茂木大)
『イエメン』(撮影:茂木大)

―そういうときはどうするんですか?

加藤:例えばパリ特集号の表紙はエッフェル塔にしたんですけど、カメラマンは「エッフェル塔は撮りたくない」って言うんですよ(笑)。そのときに、それなら星空と一緒に撮りましょうとか、長時間露光させてエッフェル塔光らせましょうとか、いろんなやり方を提案してみるんです。

尾原:僕が同行すると指示はさらに細かくなるしね(笑)。でも、素晴らしいと思う瞬間はみんな共通するから、大体はそこでシャッターを押すけど。

加藤:つまり、エッフェル塔を撮りたいっていっても「場所」や「シンボル」として撮りたいわけじゃないんですよね。「パリをこれまでなかった視点で、どう魅力的に伝えるか」という1つのテーマに向かって全員が動くというか。

左:尾原史和、右:加藤直徳

―なるほど。つまり、そこさえズレていなければ、カメラマンが作品撮りのように自由にシャッターを押していても、自然とその企画に必要な写真が撮れてくるわけですね。

僕はフィルムじゃないと駄目だと思っている。プリントになるまでに、現像したり、焼き付けたり、実際に手を使って仕上げたほうが感情が入りやすし、重みも違ってくると思うんです。(尾原)

―『TRANSIT』を創刊した9年前と比べると、フィルムを取り巻く状況もさらに変わってきてますよね。

尾原:そうですね。この間聞いたんだけど、パリからフィルムを現像するためのラボがなくなったらしいね。

加藤:はい、ベルリンかロンドンにプリントしに行くと言っていました。

尾原:東京もどんどんなくなっているけど……。

加藤:でも、写真家たちはやっぱりフィルムで撮りたいらしくて、暗室を作ったりしてるみたいですね。自宅とかに。

―そして編集部もフィルムをやめる気がない、と。でも、カメラマンがやめないからという理由だけじゃなくて、お二人の中にもフィルムにこだわる思いはあるんじゃないですか?

尾原:それはやっぱりあります。僕はフィルムじゃないとダメだと思っている。プリントになるまでに、現像したり、焼き付けたり、実際に手を使って仕上げたほうが感情が入りやすし、重みも違ってくると思うんです。

尾原史和

―加藤さんも同じ思いですか?

加藤:僕がフィルムで撮影をしてもらっている理由の1つは、『TRANSIT』に関わったフォトグラファーに、いずれ「写真家」になってほしいと思っているからかもしれません。カメラマンの生き方は、コマーシャルフォトを撮って食べていくか、プリント作品を売って食べていくかの2つに分かれると思うのですが、後者は圧倒的に少ないし、日本にはそういった写真家を育てる土壌があまりない気がしています。『TRANSIT』は予算も少ないし、うちの仕事をやったからといってカメラマンは食っていけないんですよ。だったら、写真をデジタルデータよりフィルムで残しておいて、いつか自分の作品として世に問うときの材料にしてほしい。

『TRANSIT』

尾原:確かに、それはあるよね。

加藤:フィルムとデジタルでは価値が全然違いますから。あと、フィルムだと、プリントを見ただけで誰が撮ったのかすぐ分かる。一人ひとり癖も違うし色も違う。デジタルってそこまで違いが出ないんですよ。デジタルのコンタクトプリントを見せられても、相当な手癖のある人じゃないと分からない。

『ブルガリア』(撮影:田尾沙織)
『ブルガリア』(撮影:田尾沙織)

尾原:でも、フィルムは一目瞭然。

加藤:デジタルはたくさん撮ることができるから、偶然上手く撮れている写真があったりする。いつも取材にはフィルムを50本くらい持って行くんですが、当然だけどデジタルカメラのようにはパシャパシャとは撮れない。でも、それゆえにカメラマンの覚悟が出るというか。

尾原:両方とも「写真」なんだけど全然違う。フィルムの方がより身体に近いのかな。

加藤:それに尾原さんも言っていたようにフィルムには暗室で現像する楽しみがある。旅から帰ってきてからも旅をするというか。暗室でまた違う光を写真にプラスできるんです。

尾原:ホント、肉眼で見た風景とは全然違う風景に焼いてきますからね。

加藤:そうそう(笑)。でもそれが面白いっていうか、こっちも楽しみですし。フィルムのプリントって絵画に近いと思うんですよね。パンフォーカスですべてにピントを合わせて撮って、なるべく自分の色を付けず、写実的に焼きたいという人もいるし、印象派や表現主義みたいに、自分の内面も色に焼きこみたいという人もいる。誌面はそれらがごちゃまぜになっているほうが面白いんです。

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イベント情報

FUJIFILM SQUARE 企画展 写真展『旅する惑星』

2013年9月6日(金)〜9月25日(水)
会場:東京都 六本木 東京ミッドタウン内 FUJIFILM SQUARE
時間:10:00〜19:00
出展作家:
在本彌生
谷口京
田尾沙織
宮本武
石井孝典
ほか
料金:無料

『TRANSIT TALK LIVE 〜なぜ旅をするのか?なぜ銀塩で撮るのか?〜』
2013年9月21日(土)
会場:東京都 六本木 東京ミッドタウン内 FUJIFILM SQUARE 2F
[第1部]
時間:14:00〜15:45
トーク:
尾原史和
在本彌生×兵藤育子
田尾沙織
[第2部]
時間:16:00〜17:45
トーク:
石井孝典
林紗代香(『BiRD』編集長)
稲岡亜里子
司会:加藤直徳(『TRANSIT』編集長)
※出演者、内容は変更になる可能性があります

プロフィール

加藤直徳(かとう なおのり)

1975年、東京都生まれ。編集者。白夜書房に勤務していた2004年、『TRANSIT』の前身となるトラベルカルチャー誌『NEUTRAL』を創刊する。2008年、現在の『TRANSIT』に改名し、講談社より発行。

尾原史和(おはら ふみかず)

1975年、高知県生まれ。グラフィックデザイナー・SOUP DESIGN代表。雑誌『TRANSIT』では2004年の創刊時からアートディレクターを務める。写真集などを発信する、マルチプルレーベル『PLANCTON』を設立。著書に『逆行』(ミシマ社)がある。

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