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加藤直徳(『TRANSIT』)×尾原史和(SOUP DESIGN)対談

加藤直徳(『TRANSIT』)×尾原史和(SOUP DESIGN)対談

インタビュー・テキスト
内田有佳
撮影:高見知香

デジタルでパシャパシャ撮っているより、感じたものを1枚だけ撮る。それを壁に飾ったり、人にあげたり。プリントってそういう存在だと思うから。(加藤)

―先ほど、取材で撮った写真がいずれ作品になったら、というお話がありましたが、この9年間で一緒にやってきたカメラマンに変化や新しい発見があったり、実際に作品が誕生したケースもあるんでしょうか?

加藤:4年前くらいに一緒に氷河を撮りに行った石塚元太良さん(※今展示には都合が合わず未出展)は、その後もずっと氷河をコンセプトに作品を撮り続けていますね。あのときは現場で撮影しながらいろいろ話をしました。「氷河を撮ってるカメラマンっているのかな?」「パタゴニアの氷河だけじゃ弱いよね」って聞かれたり。石塚くんはすぐにまた氷河の撮影に来ることを考えてたようでしたね。だから「今回の取材は10ページだし、このくらいの枚数でいいでしょう」って(笑)。

尾原:彼、結構しっかり者だからね(笑)。

加藤:その後、奨学金をもらって、アラスカまで氷河を撮りに行きましたからね。撮影の中で、写真家が自分の主題やコンセプトを見つけるパターンってあるんです。宮本武くんも取材をきっかけにポートレートのシリーズを始めたり。

『TRANSIT』

―そういう意味では、写真展を開催できる雑誌というのは、実は限られているんじゃないかという気がするんです。誌面に必要な写真だけを撮っているだけだったら、きっと雑誌を飛び出したときに作品として成り立ちにくいですよね。

尾原:確かに『TRANSIT』は雑誌の中心に写真を据えているし、そもそも旅の行程を説明する写真ではなくて、旅の空気を伝える写真なんですよね。それだから展示とも相性がいいのかもしれない。それにさっきから加藤さんが言っているように、フィルムで撮った写真は、プリントして飾ること自体が自然な流れですから。

―それはそうですね。

尾原:それと、僕ら自身も雑誌を作って終わりだとは思っていないんですよ。写真をアーカイブとして残していくことが大事で、未来にまた別の見せ方をすることが目的だったりもする。例えば、過去の写真をもう1回ひっぱりだして新しい効果を生み出したり、今の写真と並べて違ったものを作ったり。そのためにもその場限りの写真では意味がない。一般的に雑誌は、流行を紹介するためのものだけど、自分たちが魂を持って、何かを残そうと9年間やってきたからこそ、今回の展示に繋がっているわけなんですよね。

『フランス』(撮影:宮本武)
『フランス』(撮影:宮本武)

―お二人は今回の展覧会をどんな風に楽しんでもらいたいと思っていますか?

尾原:そうですね。写真が撮られたときからどのくらい年月が経っているかを感じながら眺めると、写っている風景の見え方も変わると思う。10年前のパリと今のパリでは風景が全然違うし、イエメンなんて撮影した2004年はギリギリ取材に訪れても大丈夫だったけど、今は危なすぎて行けたものじゃないからね。

―加藤さんはどうですか?

加藤:旅好きの人は見たことのある風景が多いと思うんですが、その場所に行ったことがある人はその既視感の中でもう一度旅してほしいし、行ったことがない人は単純に驚いてほしい。そして、銀塩プリントってこんなに綺麗なんだってことを感じてもらいたいですね。テレビやパソコンの画面上で世界遺産なんかを見ていると、「あ、知ってる」とか、その映像を見ただけでワクワクして満足しちゃったりするんですよね。でも迫力がある大きなプリントを見たら、絶対に自分がその場に行きたくなるはず。そして、ぜひカメラも始めてほしいですね。

左:尾原史和、右:加藤直徳

尾原:それは富士フイルムも喜ぶよね(笑)。

加藤:そうですね(笑)。でも、ホント、フィルムで写真を撮りたいと思ってほしいんですよ。デジタルでパシャパシャ撮っているより、感じたものを1枚だけ撮る。それを壁に飾ったり、人にあげたり。プリントってそういう存在だと思うから。ずっと色褪せなくて、家族写真をおばあちゃんになるまで大事にしたり。そういうことが、本来写真が持っている大事な役割だと思うんです。

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イベント情報

FUJIFILM SQUARE 企画展 写真展『旅する惑星』

2013年9月6日(金)〜9月25日(水)
会場:東京都 六本木 東京ミッドタウン内 FUJIFILM SQUARE
時間:10:00〜19:00
出展作家:
在本彌生
谷口京
田尾沙織
宮本武
石井孝典
ほか
料金:無料

『TRANSIT TALK LIVE 〜なぜ旅をするのか?なぜ銀塩で撮るのか?〜』
2013年9月21日(土)
会場:東京都 六本木 東京ミッドタウン内 FUJIFILM SQUARE 2F
[第1部]
時間:14:00〜15:45
トーク:
尾原史和
在本彌生×兵藤育子
田尾沙織
[第2部]
時間:16:00〜17:45
トーク:
石井孝典
林紗代香(『BiRD』編集長)
稲岡亜里子
司会:加藤直徳(『TRANSIT』編集長)
※出演者、内容は変更になる可能性があります

プロフィール

加藤直徳(かとう なおのり)

1975年、東京都生まれ。編集者。白夜書房に勤務していた2004年、『TRANSIT』の前身となるトラベルカルチャー誌『NEUTRAL』を創刊する。2008年、現在の『TRANSIT』に改名し、講談社より発行。

尾原史和(おはら ふみかず)

1975年、高知県生まれ。グラフィックデザイナー・SOUP DESIGN代表。雑誌『TRANSIT』では2004年の創刊時からアートディレクターを務める。写真集などを発信する、マルチプルレーベル『PLANCTON』を設立。著書に『逆行』(ミシマ社)がある。

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