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種田陽平インタビュー CGの先にある21世紀の映画美術を求めて

種田陽平インタビュー CGの先にある21世紀の映画美術を求めて

インタビュー・テキスト
森直人
撮影:豊島望
2013/10/17

『スワロウテイル』は、ほとんど命がけでやりきりました。あれ以前と以後で僕の仕事もハッキリ変わりましたね。

―僕が種田さんのお名前を意識したのは、やはり『スワロウテイル』(1996年 / 監督:岩井俊二)なんですよ。あの作品は今につながる「美術が主張する」ってことをハッキリやられていますよね。

種田:美術助手をやっていた頃から10年経っていますからね。僕は28歳のときに一般映画の美術でデビューしたんですけど、商業映画をやることに行き詰まり感を覚えてしまったんです。要は周防さんや石井さんと一緒にやってきたことが、商業映画ではあまり活かせなかった。だから一度映画の美術の仕事を辞めたんですよ。「映画は当分やんないから」って公言して。

―その間、何してたんですか?

種田:生け花と海外旅行(笑)。その期間が終わってからは、自分で美術の会社を作ったんですね。でも「映画はやらない」と。その代わり、いまミュージックビデオが面白いから、MVとCMの仕事をやりますって。『スワロウテイル』をやるまでの5年間は寝る間もなくMVとCMの仕事をしていた。

―その仕事の流れで岩井俊二さんとも知り合われたんですか?

種田:ええ。ある日、「プロモーションビデオの監督の岩井さん」と出会った。最初に組んだのは“想い出の九十九里浜”(1991年)でブレイクしたMi-KeのMVでした。そのとき、岩井さんが「いつか映画を撮りたいんですよ」って言ってたんですね。「じゃあ映画を撮るときになったら呼んでくださいよ」って答えて。だから、それが実現した『スワロウテイル』は、もう確信犯的にやりきりました。時間をかけて集中して、ほとんど命がけ。あれ以前と以後で僕の仕事もハッキリ変わりましたね。

種田陽平

―あの作品で徹底的にやろうと思ったことを言葉にすると何ですか?

種田:「日本発アジア映画」かな。

―同時代的に見ていても、ウォン・カーウァイらの作品とリンクする作風でしたよね。それは確かに岩井さんと種田さんのコラボレーションによって「アジア性」が濃厚に出たからだと思います。

種田:あの作品は大変だったんです(笑)。岩井さん自身は「和」の部分が結構ある人なので、実はアジアの混沌感が生理的に苦手な方だと思うんですよ。最初はアジアで撮ろうということになり、僕がロケハンに行って、マレーシアから帰国したら41.5度の高熱で入院して死にかけたり。そうやって何か月も苦労したあげく、岩井さんが「やっぱり日本で撮りたい」って言い出して(笑)。それで結局日本に帰って、2か月後にクランクインっていう怒涛のスケジュールでした。

―でも結果的に、種田さんがロケハンされて得たアジアの風景のイメージを日本で再現するという作業で、凄くオリジナルな美術になりましたよね。

種田:その通りです、逆に良かった。むしろ香港や中国、台湾の人たちが、この映画にびっくりしたんですね。「あんな場所、昔は確かにあったけど、今はどこにもないよ」って。

―そこから種田さんは、『不夜城』(1998年 / 監督:リー・チーガイ)や『キル・ビル Vol.1』、そして『セディック・バレ』(2010年 / 監督:ウェイ・ダーション)など、どんどんアジア性を延長されていきましたよね。

種田:ただ僕はアジアを含む海外の映画だけでなく、同時に日本映画もいっぱいやっていますから。その中で三谷さんとの出会いもあったし。だから「どこでやってるか」は関係ないんですよね。あくまで作品ありき、なので。

『セデック・バレ』第一部 太陽旗/第二部 虹の橋 © Copyright 2011 Central Motion Picture Corporation& ARS Film Production ALL RIGHTS RESERVED
『セデック・バレ』第一部 太陽旗/第二部 虹の橋 © Copyright 2011 Central Motion Picture Corporation& ARS Film Production ALL RIGHTS RESERVED

―むしろ「異邦人」ですか。

種田:いつも旅の途中で、あっち行ったりこっち行ったりしているのが好きなんです。「場所を探しつつ、世界観を作りつつ」っていう両輪でやるのが好きなんですよ。本来、映画美術は結構ドメスティックな仕事なんですけどね。だから僕みたいなのは少ない。旅をする感覚だと、美術の世界観を作るときに毎回違うものができるんです。同じ場所で、同じスタッフで作り続けることは、自分にとって退屈なんだと思います。

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イベント情報

『種田陽平による三谷幸喜映画の世界観展〜「清須会議」までの映画美術の軌跡、そして…〜』

2013年10月12日(土)〜11月17日(日)
会場:東京都 上野の森美術館
時間:10:00〜17:00(土曜、11月3日(日・祝)、11月15日(金)は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)
料金:一般1,300円 大学・高校生1,000円 中・小学生500円
※未就学児入場無料

プロフィール

種田陽平(たねだ ようへい)

三谷幸喜監督の映画『THE有頂天ホテル』『ザ・マジックアワー』『ステキな金縛り』『清須会議』、舞台『ベッジ・パードン』の美術監督をつとめる。『フラガール』『悪人』『空気人形』『ヴィヨンの妻』などの日本映画の他、クエンティン・タランティーノ、チャン・イーモウ、キアヌ・リーブスら海外の監督作品も手がけ、2010年芸術選奨文部大臣賞、2011年に紫綬褒章を受けている。

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