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種田陽平インタビュー CGの先にある21世紀の映画美術を求めて

種田陽平インタビュー CGの先にある21世紀の映画美術を求めて

インタビュー・テキスト
森直人
撮影:豊島望
2013/10/17

美術は「出演者」だと思う。つまり被写体だから「撮る側」と迎合してちゃダメなんです。映される側として挑戦しなくちゃいけない。

―なるほど。ところで今展覧会のコピーに「役者と共演する映画美術」とありますけど、同じ意味のことを、種田さんはかなり以前からインタビューなどでおっしゃってますよね。

種田:スタッフとして美術をやっていると、つい監督や撮影、照明という「撮る側」の話に付き合っちゃうわけですよ。でも美術は「撮る側」じゃなくて「出演者」だと思うんですね、被写体だから。つまり「撮る側」と迎合してちゃダメなんです。俳優が凄くいい芝居をしたとき、監督もカメラも「どう撮ったらいいかわかんない!」くらいの迫力が出るでしょう。それと同じで、美術も映される側として挑戦しなくちゃいけない。それを怠っていると、どんどんブルーバックばっかりになっていったりとかね。

―現状はハリウッドを中心にどんどんCG、VFXが伸びてますよね。それに対抗する意識もある?

種田:対抗しようとは思っていない。CGやVFXで描ける世界も広がっていることは確かだから。けれど、そこについても、この先、もう一歩意識を進めていかなくちゃいけないと思っているんです。つまりCG隆盛の中で、いかに人の手のかかった美術が生きていくのかというテーマ。もう1つのテーマは、20世紀の映画空間に対する、21世紀的な解釈ってことですね。そこを開拓しないと新しいルックは出てこないと考えている。ロケでもない、CGでもない、映画的空間の21世紀バージョンっていうものが、まだなかなか実現できていないと思いますね。

―なにか良いアイデアはありそうですか?

種田:常にそこを模索しながら作っているし、安易にまとめようとは思っていません。その中でCGチームが震え上がるようなリアルセットや、ドキュメンタリーの人たちが凄いと思えるような美術で映画のための世界を作りたい。それがいろんな国を越えて映画が伝わっていく力になると思っています。世界的に見ると、決してハリウッドと日本だけが映画を作ってるわけではないんですよね。中国でも、インドでも、エジプトでもどこでも、たくさん映画が作られている。あとヨーロッパには映画と演劇の歴史がしっかりありますからね。

『清須会議』 ©2013フジテレビ 東宝
『清須会議』 ©2013フジテレビ 東宝

―種田さんって、映画以外にもたくさん仕事されているじゃないですか。舞台美術、空間デザイン、アートブックなど……。これはなぜなんですか?

種田:「映画一筋」みたいな職人性は、いまひとつ自分の中にないんですよ。簡単に言うと、挑戦が好きなんです。新しい分野に挑戦すると、何か自分のやることが客観的に見えて、終わったときに満足感が凄くあるんですよね。だからジャンルを越え、国を越え、「越境」するたびに、とりあえずやる気が湧くんですね。

―「越境」はまさに種田さんのキーワードですね。最初も油絵から越境してますし(笑)。

種田:それでずっと来たから、このスタイルはもう変えられないんでしょうね。きっと生涯、「越境人生」です(笑)。思えば三谷さんの映画って意外に欧米に意識されていない。アジアでの人気は凄く高いんけど。でも『清須会議』はそこが広まる気がする。時代劇ってこともあって、欧米にも「越境」する可能性があると思いますよ。まずは日本で大勢のお客さんに観てもらって、それからでしょうけど。期待しているんです。

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イベント情報

『種田陽平による三谷幸喜映画の世界観展〜「清須会議」までの映画美術の軌跡、そして…〜』

2013年10月12日(土)〜11月17日(日)
会場:東京都 上野の森美術館
時間:10:00〜17:00(土曜、11月3日(日・祝)、11月15日(金)は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)
料金:一般1,300円 大学・高校生1,000円 中・小学生500円
※未就学児入場無料

プロフィール

種田陽平(たねだ ようへい)

三谷幸喜監督の映画『THE有頂天ホテル』『ザ・マジックアワー』『ステキな金縛り』『清須会議』、舞台『ベッジ・パードン』の美術監督をつとめる。『フラガール』『悪人』『空気人形』『ヴィヨンの妻』などの日本映画の他、クエンティン・タランティーノ、チャン・イーモウ、キアヌ・リーブスら海外の監督作品も手がけ、2010年芸術選奨文部大臣賞、2011年に紫綬褒章を受けている。

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