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疲弊した都会から飛び出して Dorianインタビュー

疲弊した都会から飛び出して Dorianインタビュー

インタビュー・テキスト
渡辺裕也
撮影:田中一人
2013/11/12

これはさすがに驚いた。七尾旅人とやけのはらが2009年に放ったヒット曲“Rollin' Rollin'”のトラックを手がけたことで注目を集めてから、瞬く間に2010年代を代表するトラックメイカーのひとりとなった男、Dorian。これまでに出したオリジナルアルバムでは、都会的で煌びやかなディスコサウンドと甘いメロディーで、次々とフロアの聴衆を魅了していった彼だが、その前作『studio vacation』からおよそ2年ぶりとなる新作『midori』は、なんとほぼ全編がサンプリングで構築されている、かなりゆったりとしたムードのアルバム。これまでとはかなり趣の異なる摩訶不思議な音像が展開されているのだ。このどこかオーガニックな匂いの漂うチルなサウンドはどんな発想から生まれたものなんだろう? 特にDorianは近年のシーンにおける80'sサウンドを再定義していく流れを先取りした人でもあるだけに、もしかするとまた時代のムードが変化しつつある予兆を感じていたのかもしれない。そこで本人に話を訊いてみると、そこには彼の抱えていた葛藤や、ここ数年間に音楽活動をする中で得た実感も大いに関わっていることがわかった。それらの変化を経てできあがったこの作品は、間違いなくDorianという音楽家のイメージを塗り替えるものとなるだろう。改めて、その手腕に底が見えない男だ。

だんだんと「ずっと同じことを続けていくのってどうなんだろう?」という気持ちになってきたんですよね。

―新作はこれまでとはかなりアプローチが違う作品ですよね。制作方法も含めていろいろな変化があったのではないかと思ったのですが。

Dorian:音の作り方はかなり違いますよ。今まではリズムマシーンやシンセサイザーの音をベースにダンスミュージックを作っていたんですけど、今回は全曲でメインとなるものはサンプリング。だんだんと「ずっと同じことを続けていくのってどうなんだろう?」という気持ちになってきたんですよね。もちろんずっと同じことを続けていくことも大事ですし素晴らしいことだとも思いますが。

Dorian
Dorian

―それはDorianさん自身の創作欲求からきたものですか? それとも周囲のムードやシーンみたいなものを察知して思ったことなのでしょうか。

Dorian:両方ですね。ちょっと今までのやり方に疑問を感じてきました。

―なるほど。では、これまでの流れを少しだけ振り返ってみましょう。ファーストアルバム『Melodies Memories』は、タイトルにもあるようにDorianさんの思い出から生まれた作品だったそうですね。では、セカンド『studio vacation』についてはどうだったのでしょう?

Dorian:2枚目はファーストの延長線上にある作品で、さらに高めたものを作ろうと意識していましたね。その路線でさらにもう1枚作ればもっと先にいけるとは思ったんですけど、それだと自分の気持ちが高まらないというか、直感的に「今はこれを作ってる場合じゃないよな」という感じがしたんです。そもそもファーストアルバムを出すまでも、ああいうタイプの音楽ばかりをずっと作り続けてきたわけではないし。自分が興味を持った方向性がその2枚の時期と重なったということだと思います。

―なるほど。そこでDorianさんはどんなものに新しい刺激を求めたんですか。

Dorian:そこがけっこう悩んでしまって(笑)。なかなかしっくりこないまま、かなり長い時間が経ったんです。で、そんなときに七尾旅人さんから夜に電話がきて。その頃の彼は一晩で曲を作って翌日にアップするという試み(七尾旅人の即時配信企画「songQ」のこと)をやっていたんですけど、そのうちの1つを一晩でリミックスしてくれないかと頼まれたんです。

―一晩ですか!

Dorian:自分の作曲にどれくらい時間がかかるかも予測がつくので、これはけっこう難しいなと思って。それに旅人さんとの付き合いも長くなってきていたので、今までと同じようなものを作っていても面白くないと思って、いわゆるリズムマシーンのような類のものとシンセサイザーは使わないという条件を立ててみたんです。

Dorian

―自分に制約を課したんですね。

Dorian:そう。ちょうどその頃は僕が引っ越したタイミングだったんですよ。それまでは蒲田のけっこう猥雑な街に住んでいたんですけど、最近になって、ニュータウンの開発がまだそこまで進んでいないような場所に引っ越して。そのへんを散歩していたら、某リサイクルショップがあったんですね。

―そこでなにか見つかったんですか?

Dorian:特になんの目的もなく入ったら、ラックタイプのサンプラーが千円くらいで売ってるんですよ。恐らく定価は何十万もしていたようなものが、何十台も並べて売られていて。今ってパソコンが1台あればなんでもできちゃうから、そういうハードはいらなくなってきているんですよね。でも、僕はこれまでサンプリング主体の音楽を作ってきた経緯がなかったので気になって。

―あ、それは意外かも。ファーストを出す以前にもやったことなかったんですか?

Dorian:なかったんです。ハードディスクレコーダーの代わりにサンプラーを使ったりしてはいましたけどね。というのも、当時はパソコンやハードディスクレコーダーを買うお金がなかったので、自分で弾いたシンセサイザーや打ち込みをいったんフレーズサンプリングしてオーバーダブしていく作り方だったんです。だから、いわゆるサンプリングみたいなことはやってこなかった。自分が持っていた昔のサンプラーも壊れていたので、それがたまたま安く売ってたから、じゃあ買って使ってみようかなと。

―Dorianさんにとって、サンプリング主体の音楽は今回が初挑戦だったんですね。

Dorian:そうですね。それで実際に作ってみたら、「あ、これは面白いし、可能性がありそうだぞ」という手ごたえがあって。気分が変わったのはそこからですね。

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リリース情報

Dorian<br>
『midori』(CD)
Dorian
『midori』(CD)

2013年11月6日発売
価格:2,300円(税込)
felicity cap-182 / PECF-1079

1. Lost Seasons
2. Escape From The City
3. Onsen Holiday
4. River
5. Pieces Of Time
6. Night In Horai
7. Bird Eye Freedom
8. Legendary Pond
9. Silent Hill
10. Beyond The Horizon

プロフィール

Dorian(どりあん)

Rolandのオールインワングルーヴマシン「MC-909」を使ったライブやDJで東京を中心に全国各地で活動中。ドリーミーでロマンティックなアーバンダンスミュージックで各方面から絶大な支持を集めている。2009年、初の自主制作盤『Slow Motion Love』を発表。七尾旅人×やけのはら“Rollin' Rollin'”のアレンジ及びリミックスを手がけ両人へのアルバムへの参加のほか、DE DE MOUSE、LUVRAW&BTB、ZEN-LA-ROCKらの作品への参加や様々なコンピレーションやリミックス、CS放送のジングル制作やTV-CFへの楽曲提供等手がけている。2010年夏に1stアルバム『Melodies Memories』、2011年夏に2ndアルバム『studio vacation』をリリース。そして2013年秋、待望の3rdアルバム『midori』が完成。

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