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「観るべきダンサー25人」に選ばれた、世界的ダンサー熊谷和徳

「観るべきダンサー25人」に選ばれた、世界的ダンサー熊谷和徳

インタビュー・テキスト
萩原雄太
撮影:佐々木鋼平
2014/01/16

シルクハットを被ったタキシード姿の男が、スポットライトを浴びながら小気味良くステップを決めて大喝采……タップダンスには「エンターテイメントショー」といったイメージがいまだに強い。しかし、タップダンサー・熊谷和徳の目には、エンターテイメントだけにとどまらない、タップダンスの可能性が映しだされている。

アフリカで生み出されたとされるタップダンスは、黒人奴隷たちの怒りや悲しみをリズムに乗せ、足音で踏みならすためのエモーショナルな表現方法だったと言われるが、熊谷はそんなルーツを強く意識しつつ、さらなる未来を見る。タップの本場、ニューヨーク・ブロードウェイで修行を積み、黒人の歴史とタップの文化を伝える作品『NOISE / FUNK』のオーディションに合格。さらにアメリカ『ダンスマガジン』誌において「観るべきダンサー25人」に選出されるなど、現地コミュニティーの中でも実績をあげてきた熊谷。本物のタップダンスとは何なのか? 熊谷のバイオグラフィーが培ったタップに対する哲学は、きっとあなたの「タップダンス観」を根底から覆すこととなるだろう。

自分がかっこいいと感じたのは、マイケル・ジャクソンやジェームス・ブラウンなど、パッションを即興で表現するようなダンス。僕にとってのタップは音楽を演奏しているイメージに近いんです。

―熊谷さんが初めてタップダンスに出会ったのは、いつ頃ですか?

熊谷:5歳くらいのとき、マイケル・ジャクソンがタップを踊る映像を観て衝撃を受けたのを覚えています。「本物」を見たという感じがしました。それで親にタップを習いたいとお願いして、地元のダンススクールに電話をかけてもらったんですが、バレエしか教えていないところばかりですぐに諦めました。当時はまだ小さかったから、タップダンサーは魔法というか遠いイメージで、自分にはできないだろうな……と思っていたのかもしれません。

―では、実際にダンスを踊り始めたのは?

熊谷:15歳のときに『タップ』という映画を観たのですが、主演のグレゴリー・ハインズ(ダンサー、俳優、歌手)が、獄中で一人でタップを踏むシーンがあり、その姿に再び衝撃を受けました。ステージやショーではないところで、誰に見せるでもなく自分のためだけに踊り続ける姿がすごくかっこ良くて……。それであらためてタップのスクールを探し出して、自分だけの楽しみとしてこっそり習い始めるようになったんです。

熊谷和徳
熊谷和徳

―熊谷さんが中高生の頃というと、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で「ダンス甲子園」が放送されていて、ダンスブーム全盛の頃だったと思いますが、他のダンスに興味はなかったのですか?

熊谷:なかったんです。その頃見ていたダンスには、「振付を踊っている」というイメージが強くて、自分にとってのかっこ良さとは少し違う感じがしました。自分がかっこいいと感じていたのは、マイケル・ジャクソンやジェームス・ブラウン、サミー・デイビス・ジュニアなど、瞬間的にパッションを即興で表現するようなダンス。グループで一緒に踊って見せるのではなく、1人だけで表現しているところにも圧倒的な違いを感じたんです。

―他人に見せるためだけのものではなく、集団で振付を踊って見せるものでもない。タップの世界をよく知らない人にとっては、意外な側面です。

熊谷:僕にとってのタップは、音楽を演奏しているイメージに近いんです。もともとマイケルが入り口だったので、身体を動かすことが音楽でもあり、それを同時にやっているのに憧れたというのもあります。

―お話をお伺いしていると、タップダンスというもの自体に、いわゆる「ダンス」という括りでは捉えきれない側面がありそうです。

熊谷:バレエやコンテンポラリーダンスは、人に見せることが最大の目的ですが、タップはより人々の生活に近いダンスなんです。ルーツには諸説ありますが、1つの説としてアフリカが発祥というものがあります。セネガルまでそのルーツと呼ばれるダンスを観に行ったことがあるんですが、それは儀式でもあり生活の中に根ざしたダンス。ショーではありませんでした。タップは奴隷としてアメリカに連れて来られた黒人たちによる自己表現やコミュニケーションツールであり、パッションをリズムに乗せて「言葉」として表現しているダンスでもあるんです。

―ルーツを掘り下げていくと、黒人の歴史や差別問題にも関わってくるんですね。

熊谷:黒人文化だけでなく、アイリッシュを始めとしたアメリカの移民文化など、いろいろなものが混ざり合ってタップダンスは進化をしてきました。かつて有名な黒人のタップダンサーが、「タップは自分たちの人種を守るため、アイデンティティーを守るための手段だった」と言っていました。ただのエンターテイメントではないのです。

 

―熊谷さんは、そのタップダンスを本格的に学ぶため、19歳で単身ニューヨークに渡られています。

熊谷:もちろん多感な時期なので、いろんな迷いがありました。同級生は地元の仙台や東京の大学を目指していて、僕もそうすべきだと思い浪人までしていたんですけど、やはりタップを踏みたいという気持ちがどんどん強まってきてしまいました。

―その迷いやフラストレーションの元にあったのは、どういう気持ちだったんでしょうか?

熊谷:15歳でタップダンスにのめり込み始めてから、同級生と話していても「フレッド・アステア(ダンサー、俳優)が好き」「何それ?」みたいな感じで理解もされないし、タップについてはあまり話さないようになりました。そんなことがキッカケとなって、自分だけの好きなモノを見つけたい、そういう方向に進みたいという気持ちが強くなっていったのかもしれません。

―たしかにマイケル・ジャクソンはともかく、フレッド・アステアや、サミー・デイビス・ジュニアのタップが大好きな中高生って、ある意味早熟だと思います(笑)。

熊谷:実家が仙台でカフェをやっているのですが、いつもアーティストや面白い人たちが集まっていた影響もあります。ちょうど進路に迷っていた頃、アメリカに留学していた友人が帰国してきて、その話を聞いていたらニューヨークに行きたいという思いがどんどん膨らんでしまったんです(笑)。両親に相談したら、もちろん最初は反対でした。でも、ダンサーになりたいという気持ちには薄々感づいていたみたいで、最終的にはニューヨークで大学に通うという条件で、タップを学びに行ってもいいということになりました。後押しをしてくれて本当に感謝しています。

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イベント情報

タップダンサー熊谷和徳 凱旋公演
『DANCE TO THE ONE 〜A Tap Dancer's Journey〜』

2014年1月17日(金)〜1月19日(日)
時間:1月17日(金)19:30開演、1月18日(土)、19日(土)14:00開演
会場:東京都 渋谷 Bunkamura オーチャードホール
出演:熊谷和徳、ほか

タップダンサー熊谷和徳 凱旋公演 DANCE TO THE ONE 〜A Tap Dancer's Journey〜 | ラインナップ | オーチャードホール

イベント情報

KAZUNORI KUMAGAI PRESENTS
『TAPPIN’INTO TOMORROW』

2014年2月1日(土)〜2月2日(日)
会場:東京都 東池袋 あうるすぽっと
監修:熊谷和徳
出演:
熊谷和徳
TAPPERS RIOT
ワークショップ参加者
※日替わりゲストあり
料金:全席自由 一般3,000円 学生(小学生以上)2,000円 豊島区民割引(在住・在学・在勤)2,500円
※小学生未満でも席が必要な場合はチケット必要
※学生券は入場時学生証提示

プロフィール

熊谷和徳(くまがい かずのり)

15歳でタップを始め19歳で渡米。ニューヨークを拠点に活動し「日本のグレゴリー・ハインズ」と評される。『ザ・ニューヨーク・シティー・タップ・フェスティバル』には、2002年より9年連続で出演。2006年にはアメリカ『ダンスマガジン』誌において「観るべきダンサー25人」に選出される。日本では、熊川哲也、金森穣、森山開次などのダンサー、また、上原ひろみ(ジャズピアニスト)をはじめ様々なミュージシャンとのコラボレーションが話題に。現在はニューヨークと日本を拠点に更なる飛躍を試みている。また、ライブ活動に加え、子どもや初心者を対象としたワークショップなど、タップの楽しさを多くの人に広める活動にも積極的に取り組んでいる。

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