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安藤裕子インタビュー 「今の時代に対して、納得がいってない」

安藤裕子インタビュー 「今の時代に対して、納得がいってない」

撮影:西田香織
2014/03/17

昨年デビュー10周年を迎えた安藤裕子。出世作である“のうぜんかつら(リプライズ)”がピアノの伴奏のみによる柔らかな曲調だったこともあって、今も彼女に「癒し」のイメージを持っている人も少なくはないだろう。もちろん、そういった側面も彼女の魅力であることは間違いないのだが、ステージ上での彼女は体全体でバンドとぶつかり合い、必死の形相で声を絞り出す、相当にエネルギッシュなシンガーでもある。また、「牙の行方」と題して、2010年にホームページ上の日記で書かれた文章では、CDが売れなくなった音楽業界の現状を生々しく綴り、大きな反響を呼んだこともあった。やはり、白く塗られたイメージの背後に滲む原色の強烈さこそが、安藤裕子という人の最大の魅力であるように思う。

2008年からスタートしたアコースティックツアーでのアレンジをベースとして、1stアルバム『Middle Tempo Magic』からの再録曲を中心に構成された新作『Acoustic Tempo Magic』。その中に収められた唯一の新曲“世界をかえるつもりはない”は、ジャンル名ではなく、言葉本来の意味で、彼女がソウルシンガーであることをはっきりと伝える、渾身の1曲である。この曲の話を中心に、ライブが苦手だった過去、デビュー10周年を過ぎた今、そしてこれからについて、じっくりと語ってもらった。

「え? 歌手でしょ?」って言葉で片付けられちゃうかもしれないけど、人前に立つのって、異様に怖いんです。

―『Acoustic Tempo Magic』は2008年から始まったアコースティックツアーがベースになっているわけですが、そもそもアコースティックでのツアーを始めようと思ったのはなぜだったのですか?

安藤:CDを作ってツアーをするときに、正直な話、私規模の人間だと、バンドを雇って、音響を雇って、舞台照明を雇ってってやっていくと、予算的になかなか細かく地方を周ることができないんです。「ただの赤字」じゃすまない赤字になるっていうか(笑)。

―(笑)。実際の話、1日1公演で細かく周ると、スタッフの移動や宿泊費もかさんできますよね。

安藤:なので、どうしても東京や大阪、あとは名古屋と福岡とかで終わってしまうんですけど、私の音楽を好きだって言ってくれる人が北海道にも沖縄にもいてくれるので、やっぱりそこまで行きたいじゃないですか? アコースティック編成で行ったとしても、赤になってしまうところもあるんですけど、ツアー全体としてはどうにかなるので、もっといろんな人に会いに行ける。それで始めたのがアコースティックツアーなんです。

安藤裕子
安藤裕子

―ただ、安藤さんはもともと歌手志望だったわけではなく、役者として受けたオーディションがきっかけで歌手デビューをしていて、当初はライブがすごく苦手だったともおっしゃってますよね。そこから、「いろんな人に会いに行きたい」と思えるようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

安藤:人前に立つのって、異様に怖いんです。「え? 歌手でしょ?」って言葉で片付けられちゃうかもしれないけど、「いざ照明浴びて、人前に立って歌ってみ?」って言いたいぐらい(笑)、本当に怖いんです。前に長崎のホンシャンっていう銀行跡地(旧香港上海銀行長崎支店記念館多目的ホール)でイベントがあったときに、ライトの光が気になって、「あ、眩しい」と思ったら集中力が削がれて、急に怖くなって、ちょっとパニックを起こしてしまって。

―ステージに立って歌うことは、それだけ神経を使うということですよね。

安藤:一度下がって呼吸を整えてから、「う、歌います」みたいな感じで残りを歌ったんですけど、自分のことをすごくふがいないなって思ったんですね。でもライブ後のアンケートを見ると、そんなとんでもないライブをしたのに、「長崎に来てくれてありがとう」って書いてくれてたんです。特に、目の前にマルコメ君みたいな小学生の男の子がいて、明らかにその子だったと思うんですけど、「一番前で見れてとっても楽しかった」って拙い字で書いてあったのを見て、「この子にもっとちゃんとしたものを届けなきゃ」って気持ちになって。それでもう1回長崎でライブをしたいって思ったのが、アコースティックツアーのきっかけにもなってます。

―ある意味、自分に試練を課してるような部分もあるのでしょうか? アコースティックという、自分をよりさらけ出す必要のある手法でライブをやることで、ステージに立つ度胸をつけて、よりよいライブをお客さんに届けようっていう。

安藤:どうなんだろうなあ……私は調子がいいときと悪いときの差が激しくて、調子がいいと自分を意識せずに、音の渦と一緒になってグルグルグルグルってなれて、その気持ちよさをより多く手にしたいと思うようにはなっていったんです。だから、「ライブをどうにかして上手くやらなきゃ」っていう風に思ってるわけでもないんですよね。曲って、実際に演奏して初めて「この曲はこうだね」って、みんなで体感して共有するものなんです。何度もライブを繰り返して、その中で毎回答えも変わっていくけど、それをみんなで探すのが楽しいから、一生懸命ライブをやるようになったっていうのもあると思いますね。

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イベント情報

『安藤裕子 2014 ACOUSTIC LIVE』

2014年5月6日(火・祝)OPEN 16:45 / START 17:30
会場:神奈川県 鎌倉芸術館大ホール

2014年5月24日(土)OPEN 17:00 / START 17:30
会場:大阪府 サンケイホールブリーゼ

2014年6月1日(日)OPEN 17:00 / START 17:30
会場:宮城県 仙台 宮城野区文化センターコンサートホール

2014年6月15日(日)OPEN 17:00 / START 17:30
会場:愛知県 名古屋 しらかわホール

2014年6月21日(土)OPEN 16:45 / START 17:30
会場:東京都 目黒 めぐろパーシモンホール 大ホール

2014年6月28日(土)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:福岡県 IMSホール

料金:各公演 前売4,100円

リリース情報

安藤裕子<br>
『Acoustic Tempo Magic』
安藤裕子
『Acoustic Tempo Magic』

2014年3月12日(水)発売
価格:1,890円(税込)
CTCR-14823

[収録楽曲]
・slow tempo magic
・黒い車 feat. NARGO(東京スカパラダイスオーケストラ)
・早春物語
・隣人に光が差すとき
・聖者の行進
・世界をかえるつもりはない

プロフィール

安藤裕子(あんどう ゆうこ)

1977年生まれ。シンガーソングライター。2003年ミニアルバム「サリー」でデビュー。2005年、月桂冠のTVCMに「のうぜんかつら(リプライズ)」が起用され、大きな話題となる。CDジャケットやコンサートグッズのデザイン、Music Videoの監督をも手掛け、自身の作品のアートワークをすべてこなす。2010年にリリースした5thアルバム「JAPANESE POP」が、ミュージックマガジン年間ベストアルバムJ-POP部門1位を受賞。2014年3月に、初のアコースティック・ミニアルバム「Acoustic Tempo Magic」を発売。同年5月より、6年目を迎えるアコースティックツアーの開催が決定。マイペースながらも精力的な活動を続けている。

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