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安藤裕子インタビュー 「今の時代に対して、納得がいってない」

安藤裕子インタビュー 「今の時代に対して、納得がいってない」

撮影:西田香織
2014/03/17

悲しいかな、夢が叶う人っていうのはホントに一部の人間で、夢半ばで亡くなる人もいるし、どうしても叶わない人もいる。でも、そこに近づくために生きている姿っていうのは、いい生き様だなって思うんです。

―オフィシャルサイトには「今まで、ライブ音源をパッケージ化することには少し抵抗がありました」と書かれてますよね。それってさきほどおっしゃったような、音の渦と一緒になる瞬間、その会場の空気まではパッケージ化できないからっていうことですよね?

安藤:そうですね、やっぱりその場の空気は入れられないですからね。ただ、今回やろうとしたことは、ライブを収録しようとしたんじゃなくて、ライブのために生まれたアレンジを再現するCDを作ろうとしたわけだから、そのためにはライブのような収録方法がマッチしていたんですよね。だから、クリックも使わずに、いっせーのせで、みんなで同じ空気で録っていく。それで初めてアレンジが成立するんです。

―歌い手としての意識も、通常のCDを録るときとは違いましたか?

安藤:どうだろう……私はライブだといつも裸になって同化を求めるけど、CDを録るときは私も一ミュージシャンと思ってやっていて、そこはいつもと変わっていません。ただ今回みたいなアコースティックアレンジの場合、私は指揮者でもあって、歌の抑揚にみんなの演奏がついてくるから、例えば、歌詞を間違えても、声がひっくり返っても、結果的に演奏がよかったものを収録しました。

―その中でも、やはり新曲の“世界をかえるつもりはない”は、映像も含めて、非常にインパクトの大きい曲でした。とにかく生々しいし、切迫感がある。ご自身でも「どうした安藤? 見苦しいぞ。そんな風に感じた人もいるかもな」って書かれていましたよね。

安藤:あれがニュースの見出しとしていろんなところで使われちゃったんですよね。中には大きく「見苦しいぞ」って出てて、「ひどい!」とか思って(笑)。

―自分で自分に書くのはいいけど(笑)。でも、そう思ってしまうぐらいのインパクトは確かにありました。

安藤:でも、曲はいつも意味なく生まれるんですよ。「こういう曲を作ろう」とか狙って作ることはあまりないし、できた曲をアレンジしたり歌っていく中で、「この曲はこうなんだ」ってわかってくる感じ。だから、この曲も最初は漠然としてて、ただ、大きい声でがむしゃらに歌わないといけない曲だってことだけは作ったときからわかってたんです。

―では、今思えば、なぜこのタイミングでそういう曲が生まれたんだと思いますか?

安藤:何て言うのかな……私はすごくのんびり屋さんで、苦労をしたことがないというか、素晴らしくいい時代に生まれて、経済的に苦労したこともないし、いい友達にも恵まれて、そのぬるさに悩むことはあっても、ホントに恵まれて生きてきたと思うんです。でもやっぱり、そういう時代も徐々に形が崩れてきてるっていうのは、何となくみんな肌で感じてると思うんです。そうやって足元が崩れていく中で、でも、そういうこととは関係なく、一生懸命生きてる人はやっぱり美しいと思うし、いいことばっかりじゃないのが当たり前な中で、それでも頑張ってる人には憧れますよね。

―はい、それはどんな時代にあってもそうだと思います。

安藤:悲しいかな、夢が叶う人っていうのはホントに一部の人間で、夢半ばで亡くなる人もいるし、どうしても叶わない人もいる。でも、そこに近づくために生きている姿っていうのは、いい生き様だなって思うんです。前はこんなこと思ってなかったけど、これだけ不穏な時代というか……やっぱり、暗くなってきてると思うから、そういう人が光に見えるようになったっていうことかもしれないです。なので、そういう人に対して「頑張れ」って、自分も大きい声で歌わなきゃって思いながら、この曲は歌ってたりするんです。

安藤裕子

音楽はとかくシリアスになりやすいから、最近はもうちょっとふざける努力をしなきゃとも思うんですよね。

―安藤さんって、おおたえみりさんお好きですよね?

安藤:うん、えみりちゃん好きよ。

―“世界をかえるつもりはない”の背景には、より強烈な表現、ビビッドな表現でないと、今の時代には響かないんじゃないかっていう思いもあったのかなって思ったんですよね。おおたえみりさんって、まさにそういう表現をしてる人だと思うし。

安藤:どうかなあ……それはあんまりないかな(笑)。私は作品を作るときに、背景を白にすることが多いんですね。それはなんでかっていうと、あんまり偏って見られたくないからなんです。私ホントに気分屋で、考え過ぎるときもあれば、何も考えてないときもあるし、明るく「ヒェー!」ってなってるときもあれば、無言で過ごしてるときもあって、その一辺だけを強く見られたくないんです。なので、わりと飄々と生きるためにも、表現物のほとんどのベーシックを白く見えるようにしてるところはあって。

―なるほど。確かに、白のイメージはあります。

安藤:だけど個人的には、色彩で言えば濃い色の方が好きで、白い服は着ないし、原色が好きなんですね。だから、えみりが好きなのもただの趣味っていうか(笑)。

―「原色が好き」っていうのとある種一緒だと。

安藤:何かを見て「かわいいー!」っていうのと一緒かも(笑)。

―ただ、“世界をかえるつもりはない”は、その「飄々とした、背景が白の安藤裕子」っていうイメージのバランスを崩してるように思うんですよね。「崩れてもいいと思った」って言った方がいいかな。

安藤:うーん、この曲が表に立つんだとしたら、「この曲はこういう曲だから、そう見えてもいいだろう」って思ったっていうぐらいかなあ。音楽はとかくシリアスになりやすいから、最近はもうちょっとふざける努力をしなきゃとも思うんですよね。やっぱり思考の産物だから、何かしら自分の気にかけてることが形になりやすいので、そういうところから離れて、もうちょっと気軽な音楽を増やさなきゃって思うんです。

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イベント情報

『安藤裕子 2014 ACOUSTIC LIVE』

2014年5月6日(火・祝)OPEN 16:45 / START 17:30
会場:神奈川県 鎌倉芸術館大ホール

2014年5月24日(土)OPEN 17:00 / START 17:30
会場:大阪府 サンケイホールブリーゼ

2014年6月1日(日)OPEN 17:00 / START 17:30
会場:宮城県 仙台 宮城野区文化センターコンサートホール

2014年6月15日(日)OPEN 17:00 / START 17:30
会場:愛知県 名古屋 しらかわホール

2014年6月21日(土)OPEN 16:45 / START 17:30
会場:東京都 目黒 めぐろパーシモンホール 大ホール

2014年6月28日(土)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:福岡県 IMSホール

料金:各公演 前売4,100円

リリース情報

安藤裕子<br>
『Acoustic Tempo Magic』
安藤裕子
『Acoustic Tempo Magic』

2014年3月12日(水)発売
価格:1,890円(税込)
CTCR-14823

[収録楽曲]
・slow tempo magic
・黒い車 feat. NARGO(東京スカパラダイスオーケストラ)
・早春物語
・隣人に光が差すとき
・聖者の行進
・世界をかえるつもりはない

プロフィール

安藤裕子(あんどう ゆうこ)

1977年生まれ。シンガーソングライター。2003年ミニアルバム「サリー」でデビュー。2005年、月桂冠のTVCMに「のうぜんかつら(リプライズ)」が起用され、大きな話題となる。CDジャケットやコンサートグッズのデザイン、Music Videoの監督をも手掛け、自身の作品のアートワークをすべてこなす。2010年にリリースした5thアルバム「JAPANESE POP」が、ミュージックマガジン年間ベストアルバムJ-POP部門1位を受賞。2014年3月に、初のアコースティック・ミニアルバム「Acoustic Tempo Magic」を発売。同年5月より、6年目を迎えるアコースティックツアーの開催が決定。マイペースながらも精力的な活動を続けている。

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