インタビュー

メディアミックスの時代? 「感傷ベクトル」の戸惑いと新たな一歩

メディアミックスの時代? 「感傷ベクトル」の戸惑いと新たな一歩

インタビュー・テキスト
金子厚武

バンドらしくバンド活動ができてる人たちに対するコンプレックスはいまだに引きずってて、バンドらしいものにこだわるのも、その反動というか。(田口)

―でもじゃあ、やっぱり出身はニコ動ではなくて、バンドシーンなわけですね。そこにちゃんと入れていたかどうかは別として(笑)。

田口:言ってしまえば、バンドコンプレックスがあるんですよ。高校時代にバンドをやってたとはいえ、この人(春川)が途中で抜けて、そのまま空中分解したり、決して上手く行ったバンド活動ではなかったですし。バンド友達もいないからイベントに誘われるでもなく、バンドらしくバンド活動ができてる人たちに対するコンプレックスはいまだに引きずってて、バンドらしいものにこだわるのも、その反動というか。

―漫画にしてもバンドものが多いのは、そういう理由なわけですね。

田口:「こうだったらいいのにな」っていうバンド観を、漫画の中でやってるみたいなところはあるかもしれないです。

―春川くんもバンドコンプレックスがある?

田口:この人は僕のバンドをやめて他のバンドをやってたんで(笑)。

春川:僕は何だかんだで、田口とやったのを含めて3つ4つバンドをやってるんで、ライブハウスで上手くやってる人たちに対する劣等感はあるんですけど、田口ほどのコンプレックスはないかもしれないですね。

―だとすると、ライブハウスからではなく、コミケから人気が出たっていうのは、複雑な想いもあったりしたのかな?

春川:そもそも人気が出てる実感っていうのが……。

田口:一度もない(笑)。正直よくわからないままここまで来てしまっている感じはあって、即売会で、目の前で手に取ってくれて、いいって言ってくれる人がいる喜びはあったんですけど、それ以外は……。

―確かに、ニコ動でコメントをもらえたわけでもなく、ライブハウスでガンガン活動したわけでもないとなれば、実感はどうしても薄いかもしれないですね。

田口:その分コンプレックスがどんどん熟成されていった感が(笑)。

僕なんて、(『けいおん!』は)未だに見れてないですからね。(春川)

―なるほど(笑)。もうひとつ、シングルの話に行く前に訊いておきたいんだけど、今ってバンドものの漫画とかアニメっていっぱいあるじゃないですか? その中で思い入れの強いものを挙げるとすれば、何が挙がりますか?

田口:小説なんですけど、『グラスハート』(1994年に第1巻が刊行された若木未生によるライトノベルシリーズ)は未だに常に持ってて、レコーディング行く前の電車の中とかで読んで、テンション上げたりしてます。

―それって、自分と重なるところがあるっていうことですか?

田口:作中に出てくるキャラクターに天才作曲家みたいな人がいて、俺は「こんな人になりたい」っていう、ロックスターばりにその人に憧れがあるんですよね。

―春川くんはどうですか?

春川:映画だと『リリイ・シュシュのすべて』が好きなんですけど、あとはあんまり……。

―『BECK』とか、ベタなやつは?

春川:読んでるし、好きだけど、「こんなに上手く行かねえよ」っていうのもあって、あと『けいおん!』とかは僕一切見れなかったです。

田口:僕もコンプレックスが強過ぎて、最初は見れなかったですね。

―アニメのバンドにもコンプレックス持ってたんだ(笑)。

春川:僕なんて、未だに見れてないですからね。放送当時やってたバンドのギターが、「俺『けいおん!』見てさあ、ショック受けちゃった」って言い出して、「俺唯ちゃんに3日でギターの腕抜かれちゃったよ」って(笑)。そんな思いはしたくないから、絶対見ないでおこうと思って。

―じゃあ、バンドコンプレックスはどっちも持ってるんだけど、田口くんは3次元に対して、春川くんは2次元に対して強いのかもね(笑)。

春川:そうかもしれない(笑)。「こんなハッピーなはずがない」とか思っちゃうんですよ(笑)。

田口:日陰精神が染みついてますね(笑)。

―途中で「人気が出た実感はまだない」という話もありましたが、それは『シアロア』という作品が物語ありきの、言ってみれば同人からの延長線上にあった作品だったことも関係してると思うんですね。あれを出して、その後「感傷ベクトルとは何なのか?」っていうのを改めて考える時期を経ての、今回のシングルだと思うんですけど、実際『シアロア』のリリース後は、どんな動きをしていたのでしょうか?

田口:わりといろいろ……暗黒期で(笑)。

―細かい動きはあったけど、ちゃんとしたリリースは約2年ぶりですもんね。

田口:漫画も曲もほぼ何も出てない時期があって、その期間中は、新連載の企画を通すためのネタを作っていたっていうのがまずひとつ大きくて。それと並行して、2週に1回集まって、新曲のデモをみんなで聴くっていうことをやってたんですけど、『シアロア』は作品に向けた曲作りだった分、テーマの決まってない曲作りが辛くて。衝動に任せて、思ったものをそのまま出すっていう作り方って、今までしてこなかったんですよ。なので、デモは増えていくんだけど、ずっとピンとこないまま、何も進まない時期が1年くらいありました。

―その状態を抜け出して、今回のシングルにつながったのは、何かきっかけがあったんですか?

田口:連載は実は去年の8月に決まっていて、雑誌の枠の都合上開始はもう少し先になるっていう感じだったんです。じゃあ、それが始まる前にシングルのレコーディングだったりを全部やろうっていう話の中で、“エンリルと13月の少年”のデモの評判がスタッフの中ですごく良かったんです。自分としては、ホントはアルバムのイントロ曲のイメージで、何となく出したんですけど、「これはすごい曲になるかもしれない」っていう感想をもらって、そこから真剣に作って。そこからは、曲に引っ張ってもらったというか、徐々にいろいろリリースが決まっていった感じです。


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リリース情報

感傷ベクトル<br>
『エンリルと13月の少年』初回限定盤(CD+小説)</h4>
<p>2014年5月14日(水)発売<br>
価格:1,512円(税込)
感傷ベクトル
『エンリルと13月の少年』初回限定盤(CD+小説)

2014年5月14日(水)発売
価格:1,512円(税込)

2014年5月14日(水)発売
価格:1,512円(税込)
VIZL-661

1. エンリルと13月の少年
2. ドレミとソラミミ
3. 42219
4. フラワードロップ
※春川美咲の書き下ろし短編小説『flowerDrop』封入

感傷ベクトル<br>
『エンリルと13月の少年』通常盤(CD)
感傷ベクトル
『エンリルと13月の少年』通常盤(CD)

2014年5月14日(水)発売
価格:1,296円(税込)
VICL-36904

1. エンリルと13月の少年
2. ドレミとソラミミ
3. 42219
4. フラワードロップ

プロフィール

感傷ベクトル(かんしょうべくとる)

ボーカル、ギター、ピアノ、作詞、作曲、作画を担当する田口囁一(タグチショウイチ)と、ベースと脚本を担当する春川三咲(ハルカワミサキ)によるユニット。音楽と漫画の2面性で世界観を作り上げることから、ハイブリッドロックサークルを掲げ、インターネットをベースに展開。自在にセルフメディアミックスで表現する様は、まさにデジタルネイティブ世代の申し子と言える。その一方で、「僕は友達が少ない+」を「ジャンプSQ.19」で連載するなど、プロの漫画家でもあり、2014年5月9日発売号より田口囁一は、別冊少年マガジンにて新連載漫画「フジキュー!!!」を開始させる。

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