インタビュー

メディアミックスの時代? 「感傷ベクトル」の戸惑いと新たな一歩

メディアミックスの時代? 「感傷ベクトル」の戸惑いと新たな一歩

インタビュー・テキスト
金子厚武

シリアスな歌を歌ってる一方で、おちゃらけた漫画を描いてるっていうのが筒抜けになっちゃうわけですよね。それを全部含めて、田口囁一っていう人間はこうなんだっていうのを、どう歌っていくか。(田口)

―春川くんの歌詞からも、田口くんの歌詞と似たイメージを感じました。“42219”って、「死にに行く」って読めると思うんですけど、後ろ向きなようで、でもそこでは終わっていないというか。

春川:後ろに進んでってもどこかにたどり着くんじゃねえかって話ですね。

田口:これこそまさに、闇の方に希望をっていう。

春川:みんなにとっての闇が、自分にとってもそうとは限らないですしね。

―そこってわりと今の音楽のポイントというか、「パーソナリティーか作品性か」みたいな話って最近することがあって。つまり、昔のJ-POPは個人のパーソナリティーを歌うことで共感を得られたけど、今はライフスタイルが多様化して、それがなかなか難しい。それよりも、物語を用意して、そこに自分を重ねてもらう作品が増えてると。じんくんの『カゲロウプロジェクト』はその代表だし、『シアロア』もそういう作品だった。でも、“エンリルと13月の少年”は、パーソナリティーに寄ってる。そこはどう考えていますか?

田口:確かに、そこはいろいろ思うところがあるんですけど、それって青年誌と少年誌の性質の差にも置き換えられるんですよね。青年誌はわりと作家に寄っていて、浅野いにおさんとか、ああいう作品がやりやすいんですけど、少年誌であれは絶対存在し得ないんです。少年誌は、基本的に作品ありきで、ついてくるお客さんも、作品名は知ってるけど、作家名までは知らなかったりする。ニコ動周りも聴く年齢層が下がって、それと同じことが起きてると思うんです。

―少年誌的な音楽の聴かれ方になってると。

田口:でも音楽全般で言うと、やっぱりJ-POP的な、パーソナリティーに寄ったものが求められる土壌だとは思うんですね。自分は少年漫画家なので、漫画の側面で打ち出せるものは作品ありきで、つまり、こんなシリアスな歌を歌ってる一方で、おちゃらけた漫画を描いてるっていうのが筒抜けになっちゃうわけですよね。それを全部含めて、田口囁一っていう人間はこうなんだっていうのを、どう歌っていくか。それがこれからの曲作りのテーマかなって。

―現時点では、何か方向性は見えていますか?

田口:いったん自分の問題を一般化するのはあきらめようかなって思ってて。自分はわりと特殊な仕事をしてたり、性格だったりするのかなって思うから、みんなにあてはまるかはわからないけど、とりあえず俺はこういうことを思うっていうのを曲にして、でも漫画ではある意味嘘を描かなきゃいけない。そういう自分も受け入れて、その上で今一人の人間として歌を歌うとしたら、何を言うべきかなって考えてますね。

―難しいけど、それが一番誠実なやり方かなって思います。

田口:でも、これをやってみて面白いことも結構あって、漫画のキャラクターがストーリーに沿って動いていって、普段は考えもしないようなことを、キャラクターを通して考えることがあるんです。結局それって、漫画の中の世界で起こってることは嘘なんだけど、そこで考えたことは嘘にならないと思うんで、フィクションの中で拾ってきたアイテムを使って、それをちゃんと自分の気持ちとして歌えるっていうのは、漫画家ならではかなって。

―それって、漫画にしても小説にしても、あくまでその中心には感傷ベクトルがあるっていうことなのかな? それとも、感傷ベクトルの自分と、漫画家であり小説家である自分は別?

田口:常に曖昧な部分はあるんですけど、「感傷ベクトル=自分」みたいなところはあります。もともとバンドではなく、一人で始めたことなので、そういう思いは強いかもしれないです。

春川:僕はもともと手伝いなんで、メンバーなんていう概念はメジャーデビューが決まるまでないぐらいな感じだったから、「感傷ベクトル=自分」とは思ってないです。ただ、感傷ベクトルをバカにされると、最近すごい怒りが湧くようになったんですよ。昔は「そういう風に感じる人もいるんだな」ぐらいの冷静な視点だったんですけど、最近は冷静ではいられなくて、だいぶ自分と同化してきた感覚はありますね。

田口:前までは自分と密接過ぎて、自分が一から十までチェックし尽くさないと作品を出せなかったんですけど、今はみんなに支えてもらって感傷ベクトルがあるっていうイメージに変わってきた部分もあります。

春川:本人自覚ないかもしれないけど、なんだかんだチーム感みたいなものに対して、特別なことを考えてると思うんですよ。

田口:全部コンプレックスだと思うけど(笑)。

春川:感傷ベクトルの作品が批判されるのはまだいいんですけど、昔関係ない人に僕個人のことをTwitterでチクリと言われたことがあって、そのとき田口がすごい勢いでその人に食って掛かっていって。

田口:やめてください、恥ずかしい(笑)。

春川:「そんなんスルーしとけばいいやん」と思いつつ、強い仲間感を持ってるんだなっていうか、そういうのは漫画にも出てるんじゃないかと思いますね。

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リリース情報

感傷ベクトル<br>
『エンリルと13月の少年』初回限定盤(CD+小説)</h4>
<p>2014年5月14日(水)発売<br>
価格:1,512円(税込)
感傷ベクトル
『エンリルと13月の少年』初回限定盤(CD+小説)

2014年5月14日(水)発売
価格:1,512円(税込)

2014年5月14日(水)発売
価格:1,512円(税込)
VIZL-661

1. エンリルと13月の少年
2. ドレミとソラミミ
3. 42219
4. フラワードロップ
※春川美咲の書き下ろし短編小説『flowerDrop』封入

感傷ベクトル<br>
『エンリルと13月の少年』通常盤(CD)
感傷ベクトル
『エンリルと13月の少年』通常盤(CD)

2014年5月14日(水)発売
価格:1,296円(税込)
VICL-36904

1. エンリルと13月の少年
2. ドレミとソラミミ
3. 42219
4. フラワードロップ

プロフィール

感傷ベクトル(かんしょうべくとる)

ボーカル、ギター、ピアノ、作詞、作曲、作画を担当する田口囁一(タグチショウイチ)と、ベースと脚本を担当する春川三咲(ハルカワミサキ)によるユニット。音楽と漫画の2面性で世界観を作り上げることから、ハイブリッドロックサークルを掲げ、インターネットをベースに展開。自在にセルフメディアミックスで表現する様は、まさにデジタルネイティブ世代の申し子と言える。その一方で、「僕は友達が少ない+」を「ジャンプSQ.19」で連載するなど、プロの漫画家でもあり、2014年5月9日発売号より田口囁一は、別冊少年マガジンにて新連載漫画「フジキュー!!!」を開始させる。

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