特集 PR

世界中で愛されるライフスタイル誌『KINFOLK』の哲学を訊く

世界中で愛されるライフスタイル誌『KINFOLK』の哲学を訊く

インタビュー・テキスト
萩原雄太
撮影:西田香織
2014/06/16

アメリカの西海岸、シアトルから200kmほど下ったところにオレゴン州・ポートランドがある。人口はおよそ60万人。インテル、IBM、ゼロックスなどのIT企業や、ナイキ、アディダス、コロンビアなどのグローバル企業が社屋を構える西北部有数の都市でありながら、少し郊外に足を伸ばせばウィラメット渓谷の豊かな自然が広がっている。また、文化的にはエリオット・スミスやThe Dandy Warhols、Modest Mouseなどのインディー系ミュージシャンも多数輩出。市民のDIYの精神が盛んであり、アメリカ最大の同人誌イベント『ポートランド・ジン・シンポジウム』も2001年より開催しており、「全米で最も環境にやさしい都市」「全米で最も菜食主義者にやさしい街」なる称号も獲得している。

2011年、そんな街でライフスタイル誌『KINFOLK』は産声を上げた。ネイサン&ケイティ・ウィリアムスという20代の夫婦を中心に作られたこのインディペンデントマガジンには、「A guide for small gatherings(小さな集まりのためのガイド)」というコンセプトが付けられている。創設からわずか3年のあいだに、ロシア語版、韓国語版、そして日本語版が相次いで出版され、今やその愛読者は世界中に広がっているのだ。

その『KINFOLK』による世界初となる写真展『KINFOLK: THE SHARED TABLE』が、渋谷の「ディーゼル・アート・ギャラリー」にて開催されている。これまでも、スパイク・ジョーンズや梅沢和木など、ファッションから映像、アートまでを横断しながら、世界中のカルチャーを紹介してきた同ギャラリーで、『KINFOLK』設立者の1人であり、ビジネスマネージャーを務めるケイティ・ウィリアムスに話を聞いたところ、ユニークな「KINFOLK哲学」の背景が見えてきた。

ネイサンが仕事を辞めると言ったとき、私は彼を信頼しようと思いました。『KINFOLK』を発行することが、彼の人生を充実させていることは理解していましたし、彼が幸福なら、私にもリターンがありますからね。

―今や日本で展覧会を行なうなど、世界規模の展開を見せている『KINFOLK』ですが、そもそも、どのような経緯からこのライフスタイル誌が生まれたのでしょうか?

ケイティ:ネイサン(『KINFOLK』編集長)と結婚したばかりの頃に、食卓を共にするようなシンプルな行動を通して、夫婦や周囲の友人との関係を深められたらいいねという話をしていました。それで、そんな暮らしのヒントになるような雑誌を探していたんです。けれども、そんな雑誌は1つもなかった。だから、私たちに加えて2人の仲間と共に、雑誌を作ろうと考えたんです。

ケイティ・ウィリアムス
ケイティ・ウィリアムス

―雑誌の始まりは、とても個人的な動機だったんですね。今回の展示でも写真だけでなく、中央に展示されたテーブルが印象的ですが、お二人はどうして「食卓を共にする」ことに興味を抱くようになったのですか?

ケイティ:私の家は、6人もの兄弟がいる大家族だったんです。みんな男の子ばかりで、女の子は私だけ。自然とやんちゃな兄弟たちの面倒を見るようなポジションになっていきました。そのような環境で育ったため、誰かと同じテーブルを囲み、食事をすることで深い会話ができるということは日常的に経験しており、大学でネイサンと出会ったときに、私だけでなく彼も同じような価値観を抱いていることに気づいたんです。

―あなたも、ネイサンもまだ20代です。多くの20代の若者は、刺激を求めて食事や暮らしをおざなりにしてしまいがちだと思うのですが……。

ケイティ:そうですね。アメリカでも、20代の若者たちはクラブに行ったり、華やかな生活を送る人が大多数です。けれども、ポートランドでは、私たちのように日々の暮らしを大切にする人々が決して少数派ではないんです。ポートランド市民は、誰かと食事を共にしたり、ゆったりとした時間の過ごし方を大切にします。それに、自然に対してもちゃんと感謝を抱いている。その意味では、アメリカの中でもちょっとユニークな街なのかもしれませんね。

『KINFOLK: THE SHARED TABLE』展示風景
『KINFOLK: THE SHARED TABLE』展示風景

―ポートランドのライフスタイルの中に、すでに『KINFOLK』が生まれる土壌があったんですね。ところで、ネイサンはもともと金融機関で働いていたそうですが、そのキャリアを投げ打ってインディペンデントな雑誌を創刊することは、とてもチャレンジングな行動ですよね。ケイティは、その創刊に対してどのような気持ちを抱いていたのでしょうか?

ケイティ:ネイサンが仕事を辞めると言ったとき、私は彼を信頼しようと思いました。『KINFOLK』を発行することが、彼の人生を充実させていることは理解していましたし、彼が幸福なら、私にもリターンがありますからね。このプロジェクトが成功するか否かについては、あまり考えませんでした。

―理想的な夫婦関係ですね。

ケイティ:ありがとう(笑)。

Page 1
次へ

イベント情報

『KINFOLK: The Shared Table featuring Carissa Gallo and Laura Dart』

2014年5月30日(金)~8月15日(金)
会場:東京都 渋谷 DIESEL ART GALLERY
時間:11:30~21:00
定休日:不定休
料金:無料

プロフィール

ケイティ・ウィリアムス

『KINFOLK』の共同創設者で同誌のビジネスマネージャー。2011年、アメリカ・オレゴン州ポートランドで食や暮らしの美しい風景、愛する人たちと集う時間を題材にしたライフスタイルマガジン『KINFOLK』を創刊。美しい写真を通じてつづった肩肘をはらない世界観が共感を呼び、日本を始め世界中に多くのファンを持つ雑誌へと成長。初の写真展をDIESEL ART GALLERYにて開催。展覧会ではKINFOLKに携わる多くの人々によって育まれた、1つのテーブルを囲むように集う世界観を表現。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. THE SPELLBOUNDがライブで示した、2人の新しいロックバンド像 1

    THE SPELLBOUNDがライブで示した、2人の新しいロックバンド像

  2. 中村佳穂が語る『竜とそばかすの姫』 シェアされ伝播する歌の姿 2

    中村佳穂が語る『竜とそばかすの姫』 シェアされ伝播する歌の姿

  3. 『プロミシング・ヤング・ウーマン』が映し出す、「女性の現実」 3

    『プロミシング・ヤング・ウーマン』が映し出す、「女性の現実」

  4. ジム・ジャームッシュ特集が延長上映 『パターソン』マーヴィンTシャツも 4

    ジム・ジャームッシュ特集が延長上映 『パターソン』マーヴィンTシャツも

  5. A_oから青い心を持つ全ての人へ 自由に、自分の力で生きること 5

    A_oから青い心を持つ全ての人へ 自由に、自分の力で生きること

  6. 地下から漏れ出すアカデミックかつ凶暴な音 SMTKが4人全員で語る 6

    地下から漏れ出すアカデミックかつ凶暴な音 SMTKが4人全員で語る

  7. 林遣都×小松菜奈『恋する寄生虫』に井浦新、石橋凌が出演 特報2種到着 7

    林遣都×小松菜奈『恋する寄生虫』に井浦新、石橋凌が出演 特報2種到着

  8. 『暗やみの色』で谷川俊太郎、レイ・ハラカミらは何を見せたのか 8

    『暗やみの色』で谷川俊太郎、レイ・ハラカミらは何を見せたのか

  9. ギャスパー・ノエ×モニカ・ベルッチ『アレックス STRAIGHT CUT』10月公開 9

    ギャスパー・ノエ×モニカ・ベルッチ『アレックス STRAIGHT CUT』10月公開

  10. 『ジョーカー』はなぜ無視できない作品なのか?賛否の議論を考察 10

    『ジョーカー』はなぜ無視できない作品なのか?賛否の議論を考察