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日本のゲットーが生んだラッパーANARCHY、貧しさからの学び

日本のゲットーが生んだラッパーANARCHY、貧しさからの学び

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人
2014/07/02

最初はゲットーの辛さとか苦しさを示してたけど、それはもうみんな知ってる。だったら、どうやって辛さや苦しみから抜け出して、やりたいことをやれるところまで持っていくかを示せる教科書になりたい。

―ANARCHYさんにとっては近所のおばちゃんも大事な存在だったそうですが、今ってそういう近所付き合いさえ失われつつある。そういう中で、音楽はセーフティネットの役割を果たせるんじゃないかとも思います。

ANARCHY:俺は音楽って教科書やと思ってるんですよ。むしろ教科書より深いことが詰まってて、メッセージがあると思う。だから自分も音楽家としてやるからには、聴いた人が何かを考えたり、自分の道を見つけるための、教科書になれたらなっていうのは思ってて。その本(自伝『痛みの作文』)とかも、別に自慢できるようなことなんてひとつも書いてないけど、同じ気持ちのやつとかが何かを感じてくれて、前を向けたらって思って作ったので。その気持ちはこれまでのどのアルバムにも込めてますね。

―<仲間とここまで来た>っていうリリックに象徴される、何より仲間を大事に思う気持ちっていうのも、音楽から学んだものだということですよね。

ANARCHY:そのリリックって、メジャーデビューしたから<ここまで来た>って歌ってると思われるかもしれないですけど、俺はいつでもその気持ちは持ってるし、1年前でも1年後でも、この曲は歌えると思ってるんですよ。<ここまで>って場所は、別に山の頂上じゃなくてもよくて、「仲間はいつでもいるよ」ってことを歌ってるんですよね。ただ、このメジャーデビューのタイミングだったらこれまで以上にメッセージが届くかなって思って、強く歌ってみたっていうのはあります。

ANARCHY

―確かに、このメッセージ自体はANARCHYさんがこれまでもずっと歌ってきたことですが、ただ今作ではすごく間口が広がってると思いました。もしかしたら、昔の曲はヒップホップが好きな人にしか届かなかったかもしれないけど、今回の曲は、どんな人にも届く可能性を持ってるんじゃないかなって。

ANARCHY:ありがたいです。それは意識しました。今までは「一番のラッパーになる」とか、「ヒップホップ好きをぎゃふんと言わせたい」とか、そういう考えだったんですけど、そういう考え自体ちょっと狭かったかなって思うようになりました。ヒップホップってもっと可能性があると思うんですよ。ラップって、言霊じゃないですか? そのパワーを最大限に生かして、ヒップホップの村だけじゃなく、例えばロック聴くやつにも「『NEW YANKEE』が今の時代のロックだ!」って言わせたい。

―しかも、今回の作品って、生い立ちだったり、ディープなエモーションの部分をちゃんと描きながらも、その上で「本気で楽しむ」っていうことも歌ってるじゃないですか? そこがあるからこそ、メッセージがより響くと思ったんですよね。

ANARCHY:1曲目(“The Theme”)の<楽しまなきゃ意味ない>って、これまでの人生でいろんなことがあったけど、今そう言えることが大事だと思うし、実際どんどん音楽をやることが楽しくなってるんですよね。遊びを仕事にできてることに感謝しながら、精一杯楽しんでるところを見せたい。その感覚は、ラップをやり始めた頃にはなかったんですよね。最初はゲットーの辛さとか苦しさを示してたけど、それはもうみんな知ってるし、そんなやつらはいっぱいいる。だったら、どうやって辛さや苦しみから抜け出して、やりたいことをやれるところまで持っていくかを示せる教科書になりたい。

―しんどそうに音楽をやってても、子供はそれには憧れませんよね。

ANARCHY:そうですよね。たまに僕に影響されたような子が超暗い歌をうたってて、「悪い影響与えちゃったかな」って気持ちになる瞬間があって(笑)。もちろん、暗い気持ちがあるのはわかるんだけど、でもそれをアートとして届けることを示したいなと思うようになって。

「ルールを破れ」って言ってるんじゃないんですよ。「ルールを壊そうぜ」って言ってるんです。

―今回のアルバムには若い人たちに向けたメッセージがたくさん入っていると思うのですが、ざっくりとお伺いすると、今の若い人たちに対して、どんな印象を持っていらっしゃいますか?

ANARCHY:一言で言えば、ダサい。『NEW YANKEE』っていうタイトルも、今のヤンキー像に捉れてたらダメだって、若者たちを煽ってるんですよ。もちろん面白いことをやってる子もいると思うんですけど、「この世界を変えてやるんだ」ぐらいの強い気持ちを持っててほしいし、「チマチマしてないで、どうせならもっとかっこよく生きろよ」ってことを伝えたいですね。

―今の音楽って、ダメな自分を許容してしまうようなものも多いと思うんですけど、でもそういう時代だからこそ、「夢を持て」ってはっきり言ってくれる音楽が必要で、このアルバムはそれを言ってくれてるアルバムだと思いました。「ダサい」っていう言葉は、若い人への期待の裏返しでもあると思うんですよね。“Spiral”には<バブル世代よりゆとり世代の方が期待出来る>というリリックもありますし。

ANARCHY:時代って、おっちゃんたちが変えるものではないじゃないですか? 俺らより若い世代が変えていくもんだと思うんですよ。今は固定概念に縛られた人たちが作ったルールの中でやってることばっかりだけど、そうじゃないだろうっていう意味を込めたライムなんです。

ANARCHY

―ANARCHYさんがこういう国や社会といった大きなテーマを描くことも、これまでにはなかったことですよね。

ANARCHY:政治とか時事ネタみたいなのは、最近意識するようになってきましたね。日本を動かすのは若い世代だっていうことを、大人はなんで俺が子どもの頃に教えてくれへんかったんやろうって思ってます。「お前たちが未来作んねんぞ」って大人が若いやつらに伝えていったら、みんなもっと責任を感じて、20歳になった瞬間から投票にも行くと思うんですよ。

―そういうことって、実際に若い世代と交流することで芽生えた意識なんでしょうか?

ANARCHY:ニュースとか見てると、結構「なんじゃそりゃ?」って思うこと多いじゃないですか? それがたまっていった感じですね。アメリカやと、大統領が「みんながリル・ウェイン(ラッパー)やレブロン・ジェームズ(バスケット選手)になれると思うな」って言っちゃうところとか、ちゃんと民間まで見てるなって思うけど、日本は上の中だけで片付けちゃってる感じですよね。

―アメリカとかではミュージシャンが政治的な発言を行って、それが社会的な影響力を持ったりして、文化としての成熟を感じさせますよね。ただ日本でも、例えばこの前ZEEBRAが民放のテレビで風営法とクラブ規制について話したりもしてて、そうやって音楽家が発言することがこれからはもっと求められるかもしれないですよね。

ANARCHY:『TVタックル』出てましたよね。俺めっちゃ応援してました、「ZEEBRA、行け! 頑張れ!」って(笑)。クラブ規制もそうですけど、ぶっ壊すぐらいの気持ちでやらないと、何も変わらないと思うんですよ。政治でも何でも、すべてルールの中じゃないですか? 「ルールを破れ」って言ってるんじゃないんですよ。「ルールを壊そうぜ」って言ってるんです。

―非行と不良の差って、そこだと思うんですよね。ルールを破るのが非行で、ルールを壊すのが不良。だからこそ、かっこいい不良に、「NEW YANKEE」になろうぜってことだと思うんですよ。

ANARCHY:そういうことをよく俺のオトンが言ってました。子供の頃は全然わかんなくて、「このおっさん、何言ってんやろ?」って思ってたけど、結局はそれが僕の芯になってしまってますね。埋め込まれたんです、ロックを。

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リリース情報

ANARCHY<br>
『NEW YANKEE』初回生産限定盤(CD+DVD)
ANARCHY
『NEW YANKEE』初回生産限定盤(CD+DVD)

2014年7月2日(水)発売
価格:4,104円(税込)
AVCD-38905/B

[CD]
1. The Theme(prod by YGSP)
2. Energy Drink(prod by AVA1ANCHE)
3. Shake Dat Ass feat. AISHA(prod by Habanero Posse)
4. VVVIP feat. VERBAL(prod by Major Dude)
5. Moon Child feat. KOHH(prod by Mally the Martian)
6. Spiral(prod by BACH LOGIC)
7. Cry(prod by Blast Off Productions)
8. Love Song feat. AISHA(Prod by 理貴)
9. Right Here(prod by John Fontein)
10. Good Day feat. JESSE(prod by 理貴)
[DVD]
1. “Right Here”Music Video
2. “Right Here”Studio Recording
3. “Right Here”Music Video Shooting
4. “Energy Drink”Music Video(Live Version)
※文庫本『痛みの作文』付

ANARCHY<br>
『NEW YANKEE』(CD+DVD)
ANARCHY
『NEW YANKEE』(CD+DVD)

2014年7月2日(水)発売
価格:3,600円(税込)
AVCD-38906/B

[CD]
1. The Theme(prod by YGSP)
2. Energy Drink(prod by AVA1ANCHE)
3. Shake Dat Ass feat. AISHA(prod by Habanero Posse)
4. VVVIP feat. VERBAL(prod by Major Dude)
5. Moon Child feat. KOHH(prod by Mally the Martian)
6. Spiral(prod by BACH LOGIC)
7. Cry(prod by Blast Off Productions)
8. Love Song feat. AISHA(Prod by 理貴)
9. Right Here(prod by John Fontein)
10. Good Day feat. JESSE(prod by 理貴)
[DVD]
1. “Right Here”Music Video
2. “Right Here”Studio Recording
3. “Right Here”Music Video Shooting
4. “Energy Drink”Music Video(Live Version)

ANARCHY<br>
『NEW YANKEE』(CD)
ANARCHY
『NEW YANKEE』(CD)

2014年7月2日(水)発売
価格:3,024円(税込)
AVCD-38907

1. The Theme(prod by YGSP)
2. Energy Drink(prod by AVA1ANCHE)
3. Shake Dat Ass feat. AISHA(prod by Habanero Posse)
4. VVVIP feat. VERBAL(prod by Major Dude)
5. Moon Child feat. KOHH(prod by Mally the Martian)
6. Spiral(prod by BACH LOGIC)
7. Cry(prod by Blast Off Productions)
8. Love Song feat. AISHA(Prod by 理貴)
9. Right Here(prod by John Fontein)
10. Good Day feat. JESSE(prod by 理貴)

作品情報

『DANCHI NO YUME』

2014年7月5日(土)から渋谷アップリンクで公開
監督:サム・コール&ジョナサン・ターナー
出演:
ANARCHY
RYUZO
RUFF NECK
ほか

プロフィール

ANARCHY(あなーきー)

1995年、ラッパーとしての活動開始。2000年には、JC、NAUGHTY、YOUNG BERY、DJ AKIOと共にRUFF NECKを結成し注目を集める。交流のあった名古屋アンダーグラウンドのラッパーや全国区プロデューサーへの客演をこなし、一躍大物ルーキーと呼ばれるように。2006年、1stアルバム『Rob The World』をリリース。インディー発のファースト・アルバムとしては異例の好セールスを記録し、『ミュージック・マガジン』、『Riddim』誌などで“年間ベスト・アルバム"に選出される。2008年、若手ラッパーとしては異例の自伝「痛みの作文」(ポプラ社)を出版。待望の2ndアルバム『Dream and Drama』をリリース。2011年、King Of Diggin'ことMuroとのコラボにて3rdアルバム『Diggin'Anarchy』をリリース。2012年、RUFF NECKとして初のアルバム『RUFF TREATMENT』をリリース。2013年、4thアルバムとなる「DGKA(Dirty Ghetto King Anarchy)」をフリー・ダウンロードでリリース。2014年1月1日、avexからのメジャーデビューを発表。7月2日、メジャーデビューアルバム「NEW YANKEE」をリリース。

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