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新しいカルチャーを作り出す挑戦 ヴィヴィアン佐藤×岡見さえ対談

新しいカルチャーを作り出す挑戦 ヴィヴィアン佐藤×岡見さえ対談

インタビュー・テキスト
前田愛実
撮影:豊島望

東京・青山を舞台に、2002年から開催されている『ダンストリエンナーレトーキョー』を引き継ぎ、今年から新しく始まるコンテンポラリーダンスフェスティバル『Dance New Air』。そこでひと際異彩を放つ来日作品が上演される。

舞台上のDJが爆音で鳴り響かせるグライムやダブステップミュージック。セクシュアルかつプリミティブな振付で激しく踊る5人のダンサー。『altered natives' Say Yes To Another Excess-TWERK ダンス・イン・クラブナイト』は、世界中のクラブカルチャーに集うさまざまな人々の姿を、マイノリティーという視点も含めた批評性のある距離感で取り入れつつ、コンテンポラリーダンスという舞台の上で生まれ変わらせることで大きな話題を呼び、世界中から注目を浴びている。

妖しい魅力を放つ本作品の来日を前に、ドラァグクイーンとしてクラブカルチャーに精通し、建築・映画・アートにも詳しいヴィヴィアン佐藤と、話題となったフランスの『リヨン・ダンス・ビエンナーレ2012』での初演を現地で観ていた舞踊評論家の岡見さえに、作品についての感想をうかがった。

たしかに1つの新しい種族(トライブ)ができていく過程を見せられている感じがしました。自分たちの新しいカルチャーやコードを作り出していく瞬間のような。(岡見)

―岡見さんは『altered natives' Say Yes To Another Excess-TWERK ダンス・イン・クラブナイト』(以下『TWERK』)を、『リヨン・ダンス・ビエンナーレ2012』の初演でご覧になられたそうですが、ご感想はいかがでしたか?

岡見:劇場内に入ったときから、身体に響くくらいの大音量でダンスミュージックが流れていて、席に着くと、慣れない人のために耳栓が用意されていました(笑)。ステージ上ではDJのイライジャ&スキリヤムがプレイしており、数人のダンサーがコマのようにクルクル回りながら踊っていて、それが開演しても20分くらい続きます。最後はダンサーがヨロヨロになるくらいだから、観ているほうもどんどん惹き込まれていくんですね。その後、場面が変わって作品が展開していくのですが、そういった演出がある意味、ダンサーがトランス状態に入った後に、新しい出会いをしていく様子にも見える。作品タイトルに「altered natives(直訳:変質した原住民)」とありますけれど、たしかに1つの新しい種族(トライブ)ができていく過程を見せられている感じがしました。自分たちの新しいカルチャーやコードを作り出していく瞬間のような。

『altered natives' Say Yes To Another Excess-TWERK ダンス・イン・クラブナイト』フランソワ・シェニョー、セシリア・べンゴレア Photo:Emile Zeizig
『altered natives' Say Yes To Another Excess-TWERK ダンス・イン・クラブナイト』フランソワ・シェニョー、セシリア・べンゴレア Photo:Emile Zeizig

ヴィヴィアン:『パリ、夜は眠らない』(1990年)という、ニューヨークのドラァグクイーンなどをモチーフにしたドキュメンタリー映画があるのですけど、まさにそんな感じですよ。「ヴォーギング」という、マドンナとか、ジャン=ポール・ゴルティエがショーで使用したダンススタイルが生まれる前夜を撮ったドキュメンタリーなのですが、ラテンアメリカンとか、アフリカンとか、あらゆる人種のエスノマイノリティーやセクシャルマイノリティーがクラブに集まって、「ヴォーガー」という新しいトライブの作法、コードが生まれる瞬間が撮られているのです。

―つまり、カルチュラルスタディーズ(文化研究)的に言うと、『TWERK』は現代都市において、新しいトライブが生まれる瞬間を描いているというわけですね。今作の振付家二人の内の一人で、ダンサーとしても出演しているセシリア・ベンゴレアさんは、まさに文化人類学的なアプローチをされる方だと聞いたのですが。

岡見:ベンゴレアはブエノスアイレスで哲学と芸術学を学び、クロード・レヴィ=ストロース(社会人類学者)の著書『悲しき熱帯』を題材にした短編映画を撮っていたり、相方のフランソワ・シェニョーはフェミニズム関連の著作もある人なんですけど、二人が出会ったのがセックスワーカーの権利を主張するデモらしいんです。つまり、マイノリティーに対するアプローチと、文化人類学的なダンスの局面に関心がある二人なんですね。

私がクラブを好きなのは、人間が人間らしく素直でいられる、根源的な権利が守られる場所だと思うからなのです。(ヴィヴィアン)

―ヴィヴィアン佐藤さんは、リヨン初演の模様を先日映像でご覧になられたそうですね。

ヴィヴィアン:いわゆるクラブカルチャーというものは、もともとはオルタナティブなもので、DJがいて踊ったりもするし、ライブもあるし、パフォーマンスもあったり、アートもあって、ジャンルでは括れない場所だったと思うのです。だけど、ここ10数年の流れで感じるのは、年々そういった雑多で猥雑な要素がそぎ落とされていって、最近はお客さんも普通になってきた。パフォーマンスでは、VJすらも少なくなって、音楽とライティングだけが主流みたいな、素材だけの空間になってきたのです。だから『TWERK』を拝見したとき、そういったクラブカルチャーの1つの側面を標本にしてガラスケースに入れているような感じがしました。

ヴィヴィアン佐藤
ヴィヴィアン佐藤

―つまり、クラブカルチャーの現場側の人間としては、好意的というよりも批判的な視点から観られたということでしょうか?

ヴィヴィアン:私がクラブを好きなのは、人種やセクシュアリティー、社会的地位などに関係なく、人間が人間らしく素直でいられる、根源的な権利が守られる場所だと思うからなのです。また、出演者と観客の境界線がないのがクラブカルチャーの特徴ですよね。でも『TWERK』では、劇場に観客が入ってきたときから舞台と客席が完全に断絶されていて、ずいぶん客観的な印象を受けたのです。「観る」っていうのはクラブではあまりないことなんですよ。「今日は踊らないで観ているわ」というのはクラブではダサいこと(笑)。だけど『TWERK』は、参加するでも共犯でもなく「盗み見」するという感じ。

―たしかにそこは、参加者全員が主役になれるクラブカルチャーと、あくまでパフォーマーと観客側にはっきりわかれる劇場型パフォーマンスの、なかなか越えられない壁なのかもしれませんね。

ヴィヴィアン:たとえば、ドラァグクイーンってクラブの空間だけじゃなくて、メイクアップをして家を出るところから始まっているのです。私個人の興味としては、そうやって日常と非日常の境界線をどんどん曖昧にしていく方向にあるのですけど、『TWERK』のクラブカルチャーに対するアプローチは、また別の試みとして面白いなという気がしました。

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イベント情報

『Dance New Air - ダンスの明日』

2014年9月12日(金)~10月5日(日)
会場:東京都 青山 青山円形劇場、スパイラルホール、シアター・イメージフォーラム、青山ブックセンター本店ほか

『altered natives' Say Yes To Another Excess -TWERK ダンス・イン・クラブナイト』
2014年10月4日(土)~10月5日(日)
会場:東京都 表参道 スパイラルホール
構想:
フランソワ・シェニョー
セシリア・ベンゴレア
出演:
エリザ・イヴラン
アナ・ピ
アレックス・マグラー
フランソワ・シェニョー
セシリア・ベンゴレア
DJ:イライジャ&スキリヤム

『赤い靴』
2014年9月12日(金)~9月15日(月)
会場:東京都 青山円形劇場
演出:小野寺修二
美術:ニコラ・ビュフ
出演:
片桐はいり
ソフィー・ブレック
藤田桃子
小野寺修二

『ASOBI』
2014年9月13日(土)~9月15日(月)
会場:東京都 表参道 スパイラルホール
演出・振付:伊藤郁女
出演:
チャバ・ベルガ
ジャン・ギャロワ
伊藤郁女
ピーター・ユハス

『Project Pinwheel』
2014年9月18日(木)~9月19日(金)
会場:東京都 青山円形劇場
ディレクター:佐幸加奈子
振付・出演:
エスター・バルフェ
チョン・ヨンドゥ
北村成美

『そこに書いてある』
2014年9月22日(月)~9月23日(火)
会場:東京都 表参道 スパイラルホール
構成・演出・振付:山下残
出演:
山下残
ハン・サンリュル
ホ・ヒョソン
ユン・ボエ
ほか

『談ス』
2014年9月22日(月)~9月23日(火)
会場:東京都 青山円形劇場
振付・出演:
大植真太郎
森山未來
平原慎太郎

『Les Oiseaux』『La Traversée』
2014年9月27日(土)~9月28日(日)
会場:東京都 青山円形劇場
振付:ナセラ・ベラザ
出演:
ナセラ・ベラザ、ダリラ・ベラザ(『Les Oiseaux』)
ダリラ・ベラザ、オーレリー・ベルラン、モハメド・エシュ=シャルカウイ(『La Traversée』)

『To Belong / Suwung』
2014年10月3日(金)~10月5日(日)
会場:東京都 青山円形劇場
振付・演出:北村明子
ドラマトゥルク・演出:ユディ・アフマッド・タジュディン
出演:
ユディ・アフマッド・タジュディン
エンダ・ララス
リアント
ルルク・アリ
大手可奈
西山友貴
川合ロン
北村明子

『ドミノ・プロジェクト』
2014年9月12日(金)
会場:東京都 CAY(スパイラルB1F)
参加アーティスト:
アレン・シンカウズ(音楽)
ネナド・シンカウズ(音楽)
イヴァン・マルシュッチ-クリフ(マルチメディア・インスタレーション)
川村美紀子(振付家)
ズヴォニミール・ドブロヴィッチ(キュレーター)

『イースタン・コネクション』
2014年9月16日(火)、9月17日(水)
会場:東京都 森下 森下スタジオ
参加アーティスト:
コスミン・マノレスク(振付家)
山下残(振付家)
ミハエラ・ドンチ(ダンサー)
乗越たかお(評論家)

『15 × AT NIGHT』(屋外パフォーマンス)
2014年9月20日(土)~10月4日(土)
会場:東京都 こどもの城ピロティ
コンセプト:ポール=アンドレ・フォルティエ、 ディアンヌ・ブッシェ
振付:ポール=アンドレ・フォルティエ
出演:マニュエル・ロック

プロフィール

ヴィヴィアン佐藤(ゔぃゔぃあん さとう)

仙台市生まれ。仙台一高出身。美術家、文筆家、非建築、ドラァグクイーン、プロモーター。磯崎新事務所WS出身。ジャンルを横断していき独自の見解で「トウキョウ」を分析。自身の作品製作発表のみならず、「同時代性」をキーワードに映画や演劇など独自の芸術論で批評 / プロモーション活動も展開。 野宮真貴、故山口小夜子、故野田凪、古澤巌など個性派のアーティストとの仕事も多い。2011年からVANTANバンタンデザイン研究所で教鞭をもつ。映画、美術、ファッション雑誌で多くの文章を執筆。

岡見さえ(おかみ さえ)

東京都出身、舞踊評論家。2004年より舞踊評の執筆を開始し、現在は『ダンスマガジン』(新書館)、産経新聞を中心に、コンテンポラリーダンスやバレエの公演評、取材記事を寄稿している。JaDaFo(日本ダンスフォーラム)メンバー。

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