
注目株Yogee New Wavesが語る、若者の心象風景と逃避願望
- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:柏井万作
音楽が素晴らしいのは、手と手を取り合うことも、その手を離すことも自由だからだ。フェスのような場では、たくさんのオーディエンスと共に、ユナイトする楽しさを教えてくれるが、その一方で、大切な一人の時間を作ってくれるのも、また音楽なのである。特に、リアルでもバーチャルでも常に監視の目にさらされ、同調圧力の中を生きる現代人にとっては、この「一人になる」ということが意外と難しかったりする。そこでお勧めしたいのが、今回紹介するYogee New Wavesというバンドだ。彼らの音楽は、ロマンティックで、暖かみのある一人の空間へと、きっとあなたを誘ってくれる。
Yogee New Wavesが結成されたのは2013年の6月。現メンバーになってからはまだ1年にも満たないが、その間に『サマーソニック』や『フジロック』の公募枠で結果を残し、一躍東京インディーシーンの最注目株のひとつとなった。「天国」や「楽園」を意味する『PARAISO』と名付けられたファーストフルアルバムには、都会で暮らす若者の心象風景と、そこからの逃避願望とが、流麗かつ艶やかなポップスに淡いサイケデリアを混ぜた形で綴られていく。そして、角館と共にバンドのオリジナルメンバーである井上を除く三人で行われたインタビューでは、そんなバンドの背後に潜む強烈なパンク精神が露わになっていった。「チーム」という言葉が頻繁に出てきたが、世界を相手に喧嘩を売るようなその姿勢は、むしろ「ギャング」。やはり、男の子バンドはこうじゃなきゃいけない。
ロマンっていう壁があって、それって他の人と自分を区別するくだらない壁なんですけど、物を作る上では意外と大事だったりもして、その壁のおかげで今僕は曲が書けてるんだと思うんです。(角舘)
―Yogee New Wavesを聴いて興味深かったのは、都市で生活する若者の心象風景が描かれている中に、『PARAISO』というタイトルにも表れているような、ある種の逃避願望が含まれていることで。これって詞曲を担当している角舘くんの人間性から来ている部分が大きいのかなって思ったのですが。
角舘(Vo,Gt):僕は生まれも育ちも新宿区で、ずっと東京で育ってるんですけど、都会ってやっぱり窮屈なんですよね。岡山のおばあちゃん家とか行くと、鳥もいるし、海もあって、「ここは何だ? 最高だ!」って思う。だけど、僕はそのどちらもあることが大事だと思ってて、都会にはずっと住み続けようと思ってるんです。
―完全に逃避するわけではないんですね。
角舘:都会にはいろんな人がいて、その中を一人で歩いていかなきゃいけない、閉鎖しないときついときもありますよね。そういうときに、周りが気にならなくなる、一人にさせてくれる音楽を聴きたいと思う。たとえば僕にとってはFISHMANSとかがそうだったんですけど、そういう音楽を、自分でも作りたいんだと思います。
―松田くんは出身はどこですか?
松田(Gt):僕は北海道の旭川市っていう、結構田舎なところで育ったんで、正直新宿区民の気持ちはわからないです(笑)。
―例えば、サニーデイ・サービスは地方出身者ならではの東京への憧れを歌ってたと思うし、シャムキャッツは都会っぽいけど、千葉の出身だから東京とは微妙な距離感もある。そういう東京観って、バンドのカラーと結びついてると思うんですよね。
松田:おっしゃる通り、僕は地方出身なんで、憧れから入ってて、ケンちゃん(角舘)が言う「都会は窮屈」みたいなのって最初はわかんなかったんですけど、自分でも4年弱暮らしてみて、北海道っていう比較対象とも照らし合わせてみると、確かにそういう部分があると思うようになりました。
粕谷(Dr):僕は埼玉の出身で、今も埼玉から東京の大学に通ってるので、まだ東京に対しては子供みたいな憧れがありますね。やっぱり実際に暮らしてるわけじゃないんで、そこが生活圏だっていう感覚がないから、「都会は窮屈」みたいな感覚って、逆に憧れるっていうか。
角舘:俺に憧れてんの?(笑)
粕谷:ホントいいとこに育ってるなって思うよ!(笑) 逆に田舎だったら田舎の良さもあると思うんですけど、埼玉ってなんか中途半端じゃないですか?(笑)
―僕も埼玉出身なんで、その気持ちはよくわかります(笑)。その角舘くんの「一人の方が心地いい」っていう感覚は、昔から持っていたものなんですか?
角舘:あったと思います。例えば、中学時代にみんながORANGE RANGEとかBUMP OF CHICKENを聴いてる中、僕はなぜか『ヘビメタさん』って深夜番組を見てて、TWISTED SISTER(アメリカのヘビメタバンド)とかSEX MACHINEGUNSとかを聴いてたんで、その頃から「自分は周りとちょっと違うのかな?」って思ってて。まあ、結局大して違わないんですけどね。ただ、そこにはロマンっていう壁があって、それって他の人と自分を区別するくだらない壁なんですけど、物を作る上では意外と大事だったりもして、その壁のおかげで今僕は曲が書けてるんだと思うんです。
―確かに、歌詞にしても音楽性にしても、「ロマンティック」っていうのもYogee New Wavesの大事なキーワードですよね。そしてその「ロマン」は、壁でもあったと。
角舘:最近「どうやって曲作るの?」とか訊かれることが増えたんですけど、その度に「高校時代は内にこもってて良かったなあ」って思うんですよ(笑)。孤独を感じてたり、暗さを持ってたり、初対面の人にはちょっと嫌悪感を持っちゃって、家に帰るとホッとするみたいな、そういう誰でも持ってるはずの気持ちをちゃんと持ってる人の方が信頼できるし、Yogeeはメンバーみんなそれを持ってると思うんですよね。
イベント情報
- 『PARAISO TOUR』
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2014年9月13日(土)
会場:京都府 Live House nano2014年9月14日(日)
会場:愛知県 名古屋 KD JAPON2014年9月28日(日)
会場:大阪府 CONPASS2014年10月24日(金)
会場:群馬県 高崎 club FLEEZ Asile2014年10月25日(土)
会場:長野県 松本 瓦レコード2014年11月9月(日)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest『インストアライブ』
2014年9月21日 (日)12:00~
タワーレコード新宿店インストアライブ2014年9月27日 (土)18:00~
タワーレコード難波店インストアライブ
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『UNiFAM 5th Anniv. vol.2』
2014年9月20日 (土)
会場:東京都 青山 蜂『宇宙旅行 vol.4』
2014年9月25日 (木)
会場:東京都 渋谷 Music Exchange Duo『CONNECT 歌舞伎町 Music Fesstival 2014』
2014年10月4日(土)
会場:東京都 新宿 MARZ『スペースシャワー列伝100巻記念公演 108巻?の宴(はてなのうたげ)』
2014年10月22日(水)
会場:東京都 新宿 LOFT『YEBISU MUSIC WEEKEND』
2014年11月2日(日)
会場:東京都 恵比寿 ガーデンプレイス
リリース情報

- Yogee New Waves
『PARAISO』(CD) -
2014年9月10日(水)発売
価格:2,160円(税込)
bayon production / hmc / ROMAN-0011. Megumi no Amen
2. Summer
3. Climax Night(album version)
4. Good Bye(album version)
5. Hello Ethiopia
6. Earth
7. Listen
8. Dreamin' Boy
9. Camp
CINRA.STOREで取扱中の商品

- Yogee New Waves
トートバッグL「RAKUEN BAG」 -
価格:3,024円(税込)
新時代のクールなシティポップ感を落とし込んだステンシル風ビッグトート
プロフィール
- Yogee New Waves(よぎー にゅー うぇーぶす)
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都会におけるポップスの進化をテーマに、東京を中心に活動する音楽集団。2013 年6月、KakudateとInoueを中心に活動開始。楽曲制作に勤しむ。SUMMER SONICの《でれんのサマソニ2013》の最終選考に選出され、選考ライブがまさかのバンド初ライブとなる。9月にはTetsushi Kasuya(Dr)、Mitsuhiro Matsuda(Gt)が加入し、11月にE.P.『CLIMAX NIGHT』を自主制作。ライブ会場のみの販売で、初回生産分は即座に完売する。今年1月、全国の大学生音楽サークルが参加するコンテスト形式の音楽イベ ント『SOUND YOUTH』の最終選考10組に選出され、渋谷O-EASTでライブ。見事、会場の最多投票数(断トツ!)を獲得し《Sound Better賞》を獲得。そして、4月9日にデビューep『CLIMAX NIGHT e.p.』を全国流通でリリース。7月末のFUJI ROCK FES'14のRookie A Go Goに出演。その後、Booked!、セイハローフェスと野外フェスに出演。そして9月10日には待望の1stアルバム『PARAISO』をリリース。