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猪子寿之(チームラボ)×山出淳也 アブない秘境・国東半島のアート

猪子寿之(チームラボ)×山出淳也 アブない秘境・国東半島のアート

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:永峰拓也

今や日本各所でたびたび開催される「国際芸術祭」。どれもがその土地ならではの特色を打ち出す中、一方で「アートは町おこしの道具でよいのか?」などの議論もある。この秋に初めて開催される『国東半島芸術祭』は、そんな状況下でひときわ異彩を放つ試みだ。開催地は「日本の秘境100選」にも数えられる、大分県北東部にある円形の山岳地域。ものの数分で完売、数百名のキャンセル待ちを生んだ飴屋法水の異色アートバスツアーや、山中に設置された巨匠アントニー・ゴームリーの人体彫刻をめぐる賛否両論など、開催前から話題にことかかなかった。そして今年10月、いよいよ本開催でその全貌が現れる。そこで総合ディレクターの山出淳也と、参加作家のチームラボから猪子寿之を迎え、その世界にひと足早くふれてみた。「芸術祭とは名ばかり」(山出)、「国東半島はとにかくヤバい」(猪子)とも言う両者の真意とは?

この春に山出さんの案内で国東半島を初訪問しました。行ってみての印象はとにかく「アブない場所」だな、と(笑)。(猪子)

―まずは、国東半島とはどういうところかを教えてもらえますか? 山出さんは大分出身で、別府市でアートNPO・BEPPU PROJECT(『別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」』などを主催)を手がけるなどしていますね。

山出:おかげさまで別府の試みは継続して広がっています。そうした経緯もあって、大分県庁の方々と、県内でさらに何かできないかと話し合ってきました。『瀬戸内国際芸術祭2010』を一緒に視察し、若い人々が離島に訪れてアートに感動する様子を見て、国東半島でも芸術祭をと相談されたのがきっかけです。

山出淳也
山出淳也

―温泉観光地の別府と違い、国東半島は陸の離れ島的でもあるのでしょうか? 「日本の秘境100選」にも選ばれていますね。

山出:大分県北東部、海に囲まれたお椀状の山岳地です。衛星写真だとよくわかりますが、半島中央の両子山から大昔の火砕流で放射状に生じた峰々の間に、集落が生まれています。昔は隣の集落に行くのもいったん峰の上まで登ってからでないとわたることが出来ず、こうした事情もあって、固有の文化が育ったようです。今は高齢化・過疎化も進み、これからのために試行錯誤をしています。1300年以上前から日本の信仰・政治・流通の大きな役割を担った地でもあり、古来のお寺や、山河に彫られた大きな石仏たちが日常と一体化している。ただ今回の『国東半島芸術祭』の目的は、単に「アートで地域の魅力を広く知ってもらおう」ということとも違います。

―資料には「芸術祭とは名ばかりである」という挑発的なメッセージもありました。

山出:芸術祭の「祭」について考えると、札幌で人気の『YOSAKOIソーラン祭り』のように、多くの人に「見せる」ことを前提に盛り上がってきた祭があり、それはそれで素晴らしい。でも、見せるだけじゃない祭もあります。または、同じ「見せる」にしても相手は神様、という古来の祭もある。国東半島にも、選ばれた2、3人のみが一言も発せず山を登り、頂にある聖なる綱を取り替えて戻る祭があります。参加アーティストたちには何より、国東半島のそうした独自の文化に向き合いつつ、この場所の未来につながる創作をしてほしいと考えました。

『熊野磨崖仏』 撮影:石川直樹 / ©国東半島芸術祭実行委員会
『熊野磨崖仏』 撮影:石川直樹 / ©国東半島芸術祭実行委員会

―本開催は今秋ですが、2012年から『国東半島アートプロジェクト』として準備が進んでいましたね。石川直樹さん、飴屋法水さんらの参加が話題になりました。

山出:2012年は「異人」、2013年は「地霊」をテーマにアーティストと国東半島の出会いによる作品が生まれ、また社会学者の山田創平さんには、国東半島の歴史的背景を地名から俯瞰する考察もお願いしました。そしてこの秋の芸術祭のテーマが「LIFE<生命、生きて活動すること、人生、存在>」です。作品数を絞って一つひとつとじっくり関わってもらい、この場所にしかない魅力と出会う「旅としての芸術祭」です。

―この中でチームラボは、国東半島内でも特徴的な6つのエリアに新作を設置する「サイトスペシフィックプロジェクト」に参加とのこと。ほかにアントニー・ゴームリー、オノ・ヨーコ、チェ・ジョンファ、さらに宮島達男、川俣正、勅使川原三郎というビッグネームが並びます。猪子さんは現地に行って、どんな風に感じましたか?

猪子:お話をいただいたのは、ちょうどニューヨークのPace Galleryでチームラボの初個展が決まったころ。ギャラリーの人たちにも「いい作家陣だし、絶対やったほうがいい!」と言われ、この春に山出さんの案内で国東半島を初訪問しました。行ってみての印象はとにかく「アブない場所」だな、と(笑)。

猪子寿之
猪子寿之

―アブない、というと?

猪子:まず、山奥や川の中とか、そこらじゅうの自然岩にヘンな仏像が彫りまくられてるんですよ。もう尋常じゃない数の仏が、しかも超ヘタウマな感じで。

山出:いやいや(苦笑)、あれは巧いよ。たしかに奈良・京都の仏像と比べたら、異質ではあるけど。

猪子:磨崖仏(まがいぶつ。自然の岩壁などに造立された仏像)っていうんですよね。奈良・京都の仏像のように、依頼を受けて作られた精巧な仏像ではなくて、誰かが「ヤバい、いい岩みつけた!」って、衝動的に作らずにはいられなかった、そんな迫力のものがあちこちにあって。

山出:国東半島は地形に加え、そこから生まれた文化も独特なんです。万物に神が宿る日本的アニミズムの故郷とも言え、半島の付け根にある宇佐神宮は、全国にある八幡信仰の発祥地です。さらに瀬戸内海の入口として海洋交易の要所だったので、大陸から仏教が伝わるとそれらが融合して「六郷満山」という独自の山岳仏教文化が生まれました。つまり、神と仏が共存する日本独特の「神仏習合」の故郷でもある。

猪子:とにかく、深入りしたら戻れないんじゃないの? というほどのインパクトを感じました。さらに、年に1度行なわれる祭の記録映像を見せてもらったら、これがまた凄い。鬼面を被った人が燃え盛る炎に飛び込もうとするんだけど、だんだん激しくなって、最後は火に飛び込もうとする鬼を、僧侶が体を張って必死で止めてる(笑)。だから初体験の僕としては、もういろんな意味で「アカン場所」だったんですよ!(すごく嬉しそうに)

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イベント情報

『国東半島芸術祭』

2014年10月4日(土)~11月30日(日)
会場:大分県 豊後高田市、国東市の各所

参加アーティスト:
[サイトスペシフィックプロジェクト]
『香々地プロジェクト』
オノ・ヨーコ
チェ・ジョンファ

『並石プロジェクト』
勅使川原三郎

『千燈プロジェクト』
アントニー・ゴームリー

『真玉プロジェクト』
チームラボ

『岐部プロジェクト』
川俣正

『成仏プロジェクト』
宮島達男

[パフォーマンスプロジェクト]
『Tam Kai <Following the Chicken> 国東半島ヴァージョン』
ピチェ・クランチェン

『何処から誰が』
勅使川原三郎

『いりくちでくち』
飴屋法水

[レジデンスプロジェクト]
展覧会
『希望の原理』
雨宮庸介
梅田哲也
小鹿田焼
ジョアン・マリア・グスマン+ペドロ・パイヴァ
椎名勇仁
鈴木ヒラク
スタジオクラ
曽根裕
千葉正也
NAZE
ノマド村
ヒスロム
日名子実三
船尾修
皆川嘉左ヱ門
和田昌宏

写真展『NEW VIEW』
西光祐輔

ウェブサイトプロジェクト『国東現像.jp』
雨宮庸介
contact Gonzo
田村友一郎
千葉正也
手島寛子
テニスコーツ
西光祐輔
橋本聡
ほか

定休日:水曜
料金:無料(一部有料)

プロフィール

猪子寿之(いのこ としゆき)

ウルトラテクノロジスト集団チームラボ代表。1977年生まれ、徳島市出身。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。大学では確率・統計モデルを、大学院では自然言語処理とアートを研究。チームラボは、プログラマ・エンジニア(UIエンジニア、DBエンジニア、ネットワークエンジニア、ハードウェアエンジニア、コンピュータビジョンエンジニア、ソフトウェアアーキテクト)、数学者、建築家、CGアニメーター、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、絵師、編集者など、スペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。サイエンス・テクノロジー・アート・デザインの境界線を曖昧にしながら活動中。

山出淳也(やまいで じゅんや)

1970年大分生まれ。PS1インターナショナルスタジオプログラム参加(2000~01)。文化庁在外研修員としてパリに滞在(2002~04)。アーティストとして参加した主な展覧会として『台北ビエンナーレ』台北市立美術館(2000~01)、『GIFT OF HOPE』東京都現代美術館(2000~01)、『Exposition collective』Palais de Tokyo、パリ(2002)など多数。帰国後、地域や多様な団体との連携による国際展開催を目指して、2005年にBEPPU PROJECTを立ち上げ現在にいたる。『別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」』総合プロデューサー(2009、2012)、『国東半島芸術祭』総合ディレクター(2014)、『おおいたトイレンナーレ』総合ディレクター(2014)、平成20年度『芸術選奨文部科学大臣新人賞』受賞(芸術振興部門)。

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