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なぜアニソンは愛される? fhánaに訊く現代アニソン事情

なぜアニソンは愛される? fhánaに訊く現代アニソン事情

インタビュー・テキスト
金子厚武
2014/11/13

曲の良さを伝えることの難しさって、イコール人と人がわかり合うことの難しさだと思うんです。(佐藤)

―ここまでの話を踏まえつつ、佐藤さんはどうお考えですか?

佐藤:不思議なことに、全く同じ曲でも、好きなアニメの主題歌として聴いたら「超いい」ってなるのに、単体で聴いたらそうはならないことが多くあります。それと同じような例として、ボーカロイドのカルチャーがあると思うんですけど、ある曲を届けようとしたとき、曲単体では届きにくいけど、ボーカロイドのカルチャーの中で初音ミクが歌うと、その曲を好きになってくれる人たちが増えますよね。ここでは初音ミクって、クリエイターとリスナーを結び付けるハブの役割を果たしていると思います。アニメやアニソンも同じで、楽曲やアーティストをたくさんの人に接続するためのハブとして機能してると思うんですね。

佐藤(Key,Cho)
佐藤(Key,Cho)

―それはつまり、佐藤さんがよくおっしゃっている「人が何かに共感したり、感動するのは、そこに物語があるからだ」っていう話とつながるものですよね。

佐藤:そうですね。ただ、そこからもうちょっと考えてみると、インターネット時代になって、人々の価値観が多様化し、みんなで共有できる物語を作るのが難しくなったと言われてますけど、そもそも人ってそんなに変わらないんじゃないかと思うんですよ。地方に住んでる人も、都会に住んでる人も、日本の人も、海外の人も、あるいは昔の人も、今の人も、本質的にはそんなに変わらない。だけど、そこにたどり着くためのルートが今は多様化しているんだと思います。結局、曲を誰かに届けるっていうのは、要は「わかり合う」っていうことで、曲の良さを伝えることの難しさって、イコール人と人がわかり合うことの難しさだと思うんです。

―なるほど。

佐藤:音楽だけじゃなくて、人と人とのコミュニケーションにおいても、内容は同じことを言っていても、言葉の使い方ひとつで全然違う風に解釈されたり、同じ言葉でも誰が言ったかによって伝わり方が変わったりしますよね。人と人とが分かり合うのってとても難しいです。でもだからこそ、分かり合えたと感じたときは、嬉しいし、特別だと感じたり、連帯感を得られたりするんですよね。音楽も、みんな思ってることは変わらないとしても、伝わり方の作用によって、それが伝わったり伝わらなかったりする。そういう中で、音楽と人々の間でアニメがハブとして機能することによって、音楽がたくさんの人に伝わって想いを共有することが出来る。だからアニソンのファンが、自分の好きなアニメの主題歌がライブで演奏されたときに「やった!」って盛り上がるのは、想いを共有できたことの喜びなんですよね。

―アニソンもミクもそうだし、今だったら「カワイイ」とかもそうかもしれないですけど、想いを共有するためのハブを前提としたイベントって、最近多くなった気もします。

yuxuki:フェスってもともと自分の好きなアーティストを見るために、いろんなステージをグルグル回るイメージだったんですけど、アニソンのフェスって、ひとつの会場でいろんな人を見続けるわけで、それって面白いですよね。

佐藤:アニソンのフェスでは、たとえあまりよく知らないアニメの曲だったとしても、アーティストもお客さんも「アニメ」という共通の文化で包摂された上でイベントの場が用意されているので、一緒に盛り上がりやすいんじゃないかなと。

kevin:掘り出し物のアーティスト見つけるために、アニソンのイベントに行くって人も結構多いみたいです。実際fhánaについてのコメントでも、「全然知らなかったけど、初めて見て、収穫になった」とかってよく見ますし。

佐藤:僕とかもうちょっと上の世代だと、アニソンなどタイアップをやると、そのタイアップ作品のイメージがついちゃって、アーティストの本質が伝わりにくくなるって思われてたと思うんですけど、今Twitterとか見てると、全く逆のことを言ってる人が結構いるんですよね。アニメを見て、主題歌としてその曲を聴いた方が、何の前情報もなくその曲が入ってくるから、アーティストに対する変な先入観なく聴けるって。そういう意味でも、今のアニメって、ハブであり、ある種のプラットフォームになっていると思います。

fhána
fhána

『カウボーイビバップ』の“Tank!”ほど、今も語り継がれてる歌のないアニソンって、他にはないと思います。(kevin)

―では、今度はみなさんに印象に残っているアニソンを挙げてもらいたいと思います。単純に、曲がいいでもいいし、作品とのリンクがすごいとか、社会現象としてすごかったとか、視点はいろいろだと思うんですけど……佐藤さん、いかがですか?

佐藤:いろんなことの突破口としてすごかったのは、やっぱり“ハレ晴れユカイ”(『涼宮ハルヒの憂鬱』エンディング)だと思います。あれは複合的な要素ですごかったというか、アニメとの親和性もすごかったし、あのダンスをYouTubeとかでいろんな人が踊って、その動画が爆発的に伸びて、『ハルヒ』っていうコンテンツがより広がった、その相乗効果もすごかった。2006年当時って、まだまだニコニコ動画とかYouTubeが文化としては黎明期で、コンテンツを作ってる会社は、そういうものに対して否定的だったんですよね。“ハレ晴れユカイ”のダンスの動画も、言ってみれば著作権を侵害してたわけですけど、そこでKADOKAWAがそれをある種容認して、逆に「宣伝として使える」って考えたのは、英断だったと思うんです。そのKADOKAWAがドワンゴとくっつくのは「なるほど」っていう話で、そうやってインターネット時代の幕開けを告げる作品でもあったなって。

towana:私も『ハルヒ』なんですけど、“God knows...”ですね。ハルヒが文化祭でバンドで歌うシーンがあって、当時は「このアニメーションがすごい」とかってよくわからなかったですけど、あの文化祭のシーンは何度も見ました。劇中で使われる歌って、特に印象に残りますよね。

佐藤:“God knows...”は物語の流れの中ですごく感動するシーンであると同時に、流れの中ではなくてそのシーンだけを切り出して見てもすごく目を引くんですよね。その文化祭の演奏シーンだけがYouTubeにアップされて、ものすごい再生数になって、あそこから『ハルヒ』を知ったって人もたくさんいるんです。つまり、物語内と物語外どちらにおいてもすごく力を持っていて、『ハルヒ』って、すごく複合的で、それぞれの要素が融合することによる相乗効果がすごかった作品だと思いますね。

―kevinくんはどうですか?

kevin:『カウボーイビバップ』の“Tank!”は、オープニング曲にも関わらずインストなんですよね。もちろん、この曲以外にもインストのアニソンってあると思うんですけど、これだけ語り継がれてる歌のないアニソンって、“Tank!”が一番だと思うんです。当時としては前衛的というか、チャレンジだったと思うんですけど、未だにあのオープニング映像は語り草になってて、地上波で有名人がアニメを語るような番組でも、必ず出てくるんですよね。そういう意味でも、かなり影響の大きい作品だと思います。

yuxuki:僕は『ハチクロ(ハチミツとクローバー)』で、あれって毎回スピッツとスガシカオさんの曲が交互に流れるんですけど、作者さんがスピッツとスガシカオさんが好きで、それぞれのアルバムのタイトルが『ハチミツとクローバー』っていう作品名の由来になってるというだけで、物語と曲は直接関係ないはずなのにすごくはまってたんですよ。スピッツの“夜を駆ける”とか、すごくエモく聴こえたりして。

佐藤:人間のこじつけ能力というか(笑)、解釈する能力ってすごいんですよね。例えば、『(魔法少女)まどかマギカ』のオープニングの“コネクト”って、作品と歌詞がリンクしてて感動するんですけど、話数の途中までは、明るい正統派オープニング曲という印象だったものが、作品を後半まで見ると、実はキャラクターの心情にものすごく寄り添った歌詞であることが判明して、曲に対する印象がガラッと変わるんです。こういうふうに解釈次第で、何かが伝わったり伝わらなかったりするのって、人間の解釈能力が鍵を握っていて、やっぱりそこを接続するハブとしてアニメが機能しているのかなって思います。

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リリース情報

fhána『星屑のインターリュード』(CD)
fhána
『星屑のインターリュード』(CD)

2014年11月5日(水)発売
価格:1,404円(税込)
LACM-14279

1. 星屑のインターリュード
2. ソライロピクチャー
3. 星屑のインターリュード(Avec Avec "twilight town" Remix)
4. 星屑のインターリュード(Instrumental)
5. ソライロピクチャー(Instrumental)

fhána
『Outside of Melancholy』初回限定盤(CD+Blu-ray)

2015年2月4日(水)発売
価格:3,888円(税込)
LACA-35473

fhána
『Outside of Melancholy』通常盤(CD)

2015年2月4日(水)発売
価格:3,240円(税込)
LACA-15473

イベント情報

fhánaワンマンライブ
『Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~』

2015年3月1日(日)OPEN 16:30 / START 17:00
会場:東京都 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
料金:5,500円

プロフィール

fhána(ふぁな)

“FLEET”としてYouTubeやMySpace時代到来前よりインターネットを拠点に楽曲を発表、メジャーからも音源をリリースしてきた佐藤純一、クリエイティブサークル”s10rw”を立ち上げ、ニコニコ動画ではVOCALOIDをメインボーカルに据えて楽曲を発表しているyuxuki waga、そしてネットレーベルシーンから登場したエレクトロニカユニット”Leggysalad”のkevin mitsunagaという、サウンド・プロデューサー3名で結成。2012年秋には、ゲスト・ボーカルだったtowanaが正式メンバーとして加入し、4人体制へ。2013年夏、TVアニメ「有頂天家族」のED主題歌『ケセラセラ』でメジャーデビュー。2014年11月5日にTVアニメ『天体のメソッド』ED主題歌『星屑のインターリュード』をリリース。

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