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もう、人間と自然は共生できない 環境学者・五箇公一インタビュー

もう、人間と自然は共生できない 環境学者・五箇公一インタビュー

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:古本麻由未
2014/11/12

11月末まで、お台場の日本科学未来館で行なわれている『地球合宿2014』は、2020年『東京オリンピック・パラリンピック』開催を前に、あらためて地球と都市の環境を考えよう、というイベント。会期中はワークショップを中心に、日本科学未来館が誇る地球ディスプレイ『ジオ・コスモス』のスペシャルデモンストレーションや講演会が予定されており、11月24日には小山田圭吾や高橋幸宏らと『攻殻機動隊』、スペースシャワーTVとのコラボレーションライブも開催する。

そこで今回は、関連イベント『TOKYO・100人ディスカッション』に出演する科学者の一人、五箇公一さんへのインタビューを敢行した。「生物多様性」という近年話題になることの多いホットワードに関連した研究を行っているという五箇さん。その他に日本に入って来る外来種の防除なども研究対象というが、「そう言われても……」と戸惑ってしまうのは、文系人間であるライター稼業の悲しい性。ここは一人の学究の徒に戻り、恥ずかしげもなく質問してみることにしよう。「先生! 生物多様性ってなんですか!?」

東京は人口過多な商工業都市で、まさに消費のコア。資源消費というかたちでの、生物多様性へのインパクトは計り知れません。

―五箇先生は最近耳にすることの多い「生物多様性」について研究されていると伺いました。でも「生物多様性」と聞くと、すごくスケールの大きい問題に感じられて、なかなか難しそうだぞ……という印象があります。

五箇:たしかに生物多様性はグローバルスケールの話ではあるけれど、本質的にはローカルな問題なんですよ。3千万種いるとも、1億種いるとも言われる地球上の生物それぞれに個性があり、相互に支え合いながらつながっているというのが「生物多様性」のおおまかな説明になります。でも、生き物は本来ローカルな環境に根付き、そのなかで進化してきたものなので、対処としてはそれぞれの地域の自然とどうやってコミュニケーションをしていくのかを考えないといけない。つまり、「身近な自然としての東京」について考えるということですね。

五箇公一
五箇公一

―自分たちの住む街について考えることが、生物多様性の問題につながっていくんですね。

五箇:そうです。東京という街は世界中とリンクしているメトロポリスですから、必然的に外からさまざまな外来種が入ってきます。今年の夏に大きな問題になったデング熱もそうだし、ひょっとすると将来的にはエボラ出血熱の危険も増すかもしれない。グローバル化に伴うさまざまな問題や環境の変化のなかで日本人自身の生活のあり方もどんどん変容しています。10月11日に日本科学未来館で行ったワークショップ『TOKYO・オン・データ』では、都市システムを研究してらっしゃる国立環境研究所の肱岡靖明さんと一緒に、そういった現実的な問題点を踏まえて、どういった未来像を作っていけるかということを考えました。

―具体的にはどのような内容だったのでしょうか。

五箇:森林破壊、海洋汚染、乱獲による種の減少など、東京の身近な事例を参加者にお伝えして、「さあ、どうしたらいいでしょうか?」っていう問いかけをしました。でもねえ……生物多様性の問題というのは、人間と自然の相互作用が絡んでくるので、おっしゃる通り、対処の仕方が非常に難しい。グループディスカッションの際には4グループが気候変動の問題を選んで、1グループしか生物多様性の問題を選ばなかった(苦笑)。温暖化はCO2(二酸化炭素)を減らすというのが1つの方程式として出ているわけだから理解しやすい。要するに無駄な消費と排出を抑えましょう、ということだから。

日本科学未来館『地球合宿』の様子
日本科学未来館『地球合宿』の様子

―たしかに生物多様性の問題と言われても、どこから手をつければいいのか、戸惑うかもしれないです。

五箇:でも解決するための軸は同じなんですよ。生物多様性の減少を食い止めるために必要とされるライフスタイルは、できるだけゼロエミッション(排出ゼロ)、ゼロコンサンプション(消費ゼロ)に近づけること。無駄な排出と消費を抑えることで、生物多様性に対する負荷も抑えられる。究極的な目標は、生物多様性も温暖化も同じなんです。おもしろい具体例がありますよ。たとえばウナギ。

―ウナギですか。

五箇:最近ウナギが減少して値段の高騰が話題になっていますよね。これも環境破壊と乱獲が原因で。ウナギって海で育って、遡上してくるわけですよ。でも川の途中にダムがあったり、川の環境が悪かったりすると遡上できず、彼らのライフサイクルが分断されてしまう。それと同時に、稚魚を乱獲しすぎてどんどん数が減っている。ニホンウナギは1970年代をピークにどんどん減少してしまって、かつての10分の1も獲れないと言われています。しまいにはヨーロッパウナギやアメリカウナギっていう外国のウナギまで手を伸ばして、そちらも同じように減少を始めている。ヨーロッパウナギは本国でも規制がかかっているんですよ。

―ウナギ大好き日本人が原因。

五箇:日本という小さな国が、経済力と消費力で世界の生物多様性にまで影響を及ぼすパワーを持っている。特に東京は人口過多な商工業都市ですから、まさに消費のコア。資源消費というかたちでの、東京から生物多様性へのインパクトは計り知れません。それから水質汚染の問題。高度経済成長期は工場廃水による公害が問題でしたが、公害対策基本法(現在の環境基本法)が整備されて、現在は世界でもトップクラスにクリーンな状態なんです。ではなぜ水質汚染が問題になっているかというと、個人消費なんですよね。

―日々の生活に使う水ですか?

五箇:今や日本人の水の消費量、1日あたり平均の水の使用量は1人約300リットルで世界最大級。生活排水が汚染のじつに70%を占めているという現状があります。水が豊かな日本であるがゆえにできることでもあるのですが、生活が豊かになった分だけ、毎朝毎晩シャワーを浴びて、お風呂に入って、全自動洗濯機で排水するという生活を続けて、大変な環境負荷がずっと続いているんです。

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『地球合宿2014』

2014年9月27日(土)、10月11日(土)、11月21日(金)~11月24日(月・祝)
会場:東京都 お台場 日本科学未来館

『TOKYO・100人ディスカッション』
2014年11月22日(土)~11月23日(日)10:30~16:30
会場:東京都 お台場 日本科学未来館
出演:
市川宏雄(明治大学専門職大学院長 公共政策大学院ガバナンス研究科長・教授)
五箇公一(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 侵入生物研究チーム 主席研究員)
肱岡靖明(国立環境研究所 社会環境システム研究センター 環境都市システム研究室 室長)
ほか
料金:無料

アルスエレクトロニカ・リンツ×日本科学未来館
『芸術監督ゲルフリート・シュトッカー氏 特別講演会「アートは都市を変化させる触媒である」』

2014年11月22日(土)18:30~20:00
会場:東京都 お台場 日本科学未来館
出演:ゲルフリート・シュトッカー
料金:無料

SPACE SHOWER TV 開局25周年 × 攻殻機動隊25周年×日本科学未来館
『GHOST IN THE SHELL ARISE“border:less experience”sounds curated by CORNELIUS』

2014年11月24日(月・祝)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 お台場 日本科学未来館
出演:
青葉市子 with 小山田圭吾 & U-zhaan
salyu × salyu
高橋幸宏 & METAFIVE(小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井)
料金:6,800円 特典付7,500円

プロフィール

五箇公一(ごか こういち)

国立環境研究所主席研究員。富山県生まれ。京都大学農学部卒業、京都大学大学院昆虫学専攻修士課程修了。宇部興産株式会社農薬研究部に在職中の1996年、京都大学で博士号(農学)を取得。1996年から国立環境研究所に勤め、現在に至る。主な著書に『クワガタムシが語る生物多様性』『ダニの生物学』『外来生物の生態学―進化する脅威とその対策』『日本の昆虫の衰亡と保護』など。テレビ出演、新聞報道などマスメディアを通じての普及啓発活動にも力を入れている。専門はダニ学、保全生態学、環境毒性学。

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