
活動休止を決めたSEBASTIAN X 「心を開いて決断したかった」
- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:田中一人
SEBASTIAN Xの活動休止を知ったときは、正直かなり驚いた。年末から好きなバンドの活動休止発表が続いていたので、「またか!」という思いもあったし、昨年メジャーデビューを果たし、2枚目のミニアルバム『こころ』のリリースやその後のツアーの予定も発表されていただけに、「このタイミングで?」という驚きも大きかった。これまでの歩みを振り返ってみても、メンバーの休養期間があったり、事務所からの独立があったりと、決して順風満帆ではない中、それでも歩みを止めなかったバンドなので、「活動休止」という言葉がすぐに結びつかなかったというのもある。
そもそもSEBASTIAN Xというバンドは、これまでずっと「人間賛歌」を奏で続けてきたバンドで、その根本には「差異を許容する」という感覚があったように思う。「楽しい / 悲しい」「明るい / 暗い」「正しい / 悪い」、その捉え方は人それぞれ違って当然で、むしろその相反する要素を一人ひとりが併せ持ち、その上で共存しているからこそ、世界は素晴らしいのだと。しかし、それは常にギリギリのバランスで成り立っていて、ふとした瞬間にガラガラと音を立てて崩れてしまうものでもある。音楽的な共通点を軸にするでもなく、青春を共有するでもなく、それでも「この四人であることが何よりも重要」だったSEBASTIAN Xは、お互いの差異を許容しながら、奇跡的なバランスで成り立ってきたバンドだったのだ。
この日は活動休止を発表してから初めての取材で、ボーカル・永原真夏は「自分の中で答えを決めて、それをただ話してもしょうがないので、あえて何も考えずに来た」と話していた。バンドが出した声明文にもあったように、活動休止の理由というのは、とてもひとつにまとめられるものではなく、その中にすらも常に相反する想いが存在する。そこで重要なのは、答えを導き出すことよりも、心を開いて対話をすること、それ自体なのだと思う。真摯に話をしてくれた永原に感謝をするとともに、これからの四人のさらなる活躍を願いたい。
三人を呼び出して、「活動を止めたいと思ってる」っていう話をして。そうしたら、何となくもうそういう空気ができてて、それほど時間がかからず話が済んだんです。
―かなり急な活動休止の発表だったので、正直すごくびっくりしました。
永原:そうですよね……『こころ』のリリース日のアナウンスもして、ツアーのアナウンスもして……なんだろう? どこから話していいのか(笑)。
―ゆっくり行きましょう(笑)。そもそも今回の活動休止の話は、以前から話し合いが行われていたのでしょうか?
永原:もちろん完全に突発的ってことはなくて、メンバーそれぞれ感じ取っていたことではあると思うんですけど……ただ、今より上手く行ってないことも山ほどあったんですけど、これまでは上手く行ってないときも、それが何かの起爆剤になっていて。いざステージに立ったり、曲作りに向かうと、それがものすごい大きなポジティブに変換されて、アウトプットされてたんだと思います。
―確かに、これまでもベースの飯田くんが休養した時期があったり、事務所から独立したり、山あり谷ありあったバンドでしたもんね。
永原:だから、変な話ですけど、「休止しよう」って決めたときも、「でも、リリースはしたいよね」って言うし、ツアーも「できるだけ回りたい」って言って、本数増やしたぐらいで(笑)。今までずっと「相反するものがある」っていうのをテーマに活動してて、それってつまりは現場にも相反する状況があるってことで、それでもバンドが続いてきたっていうのは、やっぱり奇跡的なバランスだったと思うんです。
―そうやってギリギリのバランスで続いてきたけど、今回に関しては「休止」という決断に至った。切り出したのは真夏ちゃん?
永原:そうです、私です。三人を呼び出して、「活動を止めたいと思ってる」っていう話をして。そうしたら、何となくもうそういう空気ができてて、それほど時間がかからず話が済んだんです。それで、声明文を出すにあたって、また後日話し合いをしたんですけど、そもそも休止に関して四人で話し合ったときも言葉を連ねたりとかはしなかったので、それについて四人全員の気持ちを文章にすることは難しくて……。
―でも、真夏ちゃんが「止めたい」と思ったことは事実なわけだよね? 理由はなんだったんだろう?
永原:何て言えばいいんだろう……うーん……やっぱり、もっと真摯に向き合いたいなって思ったんですよね。
―音楽に対して?
永原:音楽に対してもそうだし、イメージに対してもそうだし。自分が作り上げてきたものが仮想だとは全然思ってないですけど……ただ、自分の作家性を考えると、やっぱり表と裏、明るいと暗い、光と影みたいな相反するものの存在がすごく強くて、でも私のパブリックイメージって圧倒的に陽だけじゃないですか? なので、その両方を抱えてる自分っていうのに、もっともっと真摯に向き合いたいと思って……それが最初なのかな。
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活動休止の真相は……? 悩み抜いた活動休止声明文
リリース情報

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2015年3月11日(水)発売
価格:2,160円(税込)
avex/ONECIRCLE / CTCD-20019/B[CD]
1. こころ
2. たばこをプカプカ
3. 怪獣のバラード
4. たぶんハッピー
5. 感受性に直行
6. こころ(PARKGOLF REMIX)こころ(REMIX)
[DVD]
・SEBASTIAN Xイェーイレコ発ワンマンツアー&メンバーチャレンジ企画ドキュメント
・イェーイ(Music Video)
・こころ(Music Video)
※初回生産分は紙ジャケット仕様

- SEBASTIAN X
『こころ』(CD) -
2015年3月11日(水)発売
価格:1,620円(税込)
avex/ONECIRCLE / CTCD-200201. こころ
2. たばこをプカプカ
3. 怪獣のバラード
4. たぶんハッピー
5. 感受性に直行
6. こころ(PARKGOLF REMIX)こころ(REMIX)
イベント情報
- 『SEBASTIAN Xツアー2015「こころ」』対バンツアー
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2015年3月13日(金)
会場:岡山県 ペパーランド2015年3月29日(日)
会場:茨城県 水戸 SONIC2015年4月4日(土)
会場:沖縄県 宜野湾プチ☆カフェ2015年4月5日(日)
会場:沖縄県 那覇 G-shelter2015年4月19日(日)
会場:島根県 大根島 HOME
- 『SEBASTIAN Xツアー2015「こころ」』ワンマンツアー
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2015年4月9日(木)
会場:福岡県 天神 Voodoo Lounge2015年4月12日(日)
会場:宮城県 仙台 PARK SQUARE2015年4月22日(水)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La2015年4月23日(木)
会場:愛知県 名古屋 新栄APOLLO BASE2015年4月30日(木)
会場:東京都 赤坂BLITZ
プロフィール
- SEBASTIAN X(せばすちゃん えっくす)
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2008年2月結成の男女4人組。2009年11月6日に初の全国流通盤となる『ワンダフル・ワールド』をリリース。 その後も2010年8月に 2nd Mini Album『僕らのファンタジー』、2011年10月、1st Full Album『FUTURES』、 2012年7月、3rd Mini Album『ひなぎくと怪獣』、2013年8月に2nd Full『POWER OF NOISE』、2014年10月に4th Mini Album『イェーイ』とコンスタントにリリースを続ける。独特の切り口と文学性が魅力のVo.永原真夏の歌詞と、ギターレスとは思えないパワフルだけど愛らしい楽曲の世界観が話題に。