永原真夏×ミト対談 不思議と繋がるクラムボンとSEBASTIAN X

CINRAではインディーズ時代からたびたびSEBASTIAN Xの取材をしてきて、ときには活版印刷の工場に見学に行ったり、ときには憧れの人に会いに行ったりと、一緒に遊んできた間柄。そのため、「SEBASTIAN X、メジャーデビュー決定」と吉報を受けたときは、思わず「イェーイ!」と言いたくなるほど、その喜びはひとしおだった。しかも、メジャーデビューシングル『イェーイ』には、プロデューサーとしてクラムボンのミトが参加しているのだから、これはもう「待ってました!」というものだ。メンバーの人数こそ違えども、SEBASTIAN Xとクラムボンは共に鍵盤、ベース、ドラムという楽器編成であり、レコーディングも同じ小淵沢のスタジオを使用。ジャンルにカテゴライズできない音楽性や、アイコンと呼ぶに相応しいフロントマンの存在など、とにかく共通点が多いので、この組み合わせを待ち望んでいた人はきっと多かったはず。しかし、実際に両者が交流を持ったのは今年に入ってからで、しかもきっかけはカバー曲だったというのだから、縁というのは不思議なものだと改めて思う。

もちろん、両者の共通点を並び立てて、「SEBASTIAN Xは2010年代のクラムボンだ!」なんて言うつもりはさらさらない。似ているようで、実は全然違うバンドだということが、また面白いところなのだ。とはいえ、音楽を愛し、信頼して、仲間たちと共に「何か面白いことができないか?」と企て、実行し、それがジワジワと広がってきているような空気感というのも、かつてのクラムボンの登場時を思い起こさせる部分がある。そして、テクノロジーの発達によって、人やデータの行き来がよりスムーズになった結果、小さなコミュニティーから生まれた「ワクワク感」のようなものがより幅広く拡散し、<聞こえるかい?>と呼びかけ合っているような状況に、いまの時代ならではの面白さを感じる。さてさて、前置きはこれぐらいにして、なんともパンクなエンディングに向かって突っ走る、永原真夏とミトの濃厚な対談をお楽しみあれ!

アベノミクスの無希望性と、自衛権の失望感の中、SEBASTIAN Xがカバーした2014年の“スーダラ節”は、一生残るだろうなってぐらいの衝撃だった。(ミト)

―お二人とも小淵沢の同じスタジオ(クラムボンが保有しているスタジオ「none to cat」)で、同じエンジニアさんとお仕事をされていますし、昔から交流はあったわけですか?

永原:いや、初めてお会いしたのは今年の春、自分たちがやっている野外のイベント(『TOKYO春告ジャンボリー2014』)に来ていただいたときが初めてだったんです。

ミト:トリオ編成で歌ってるとか、星野(誠)くんがエンジニアをやってることも知ってたし、真夏ちゃんが二人でやってるユニット(SEBASTIAN Xの工藤歩里とのユニット、音沙汰)をYouTubeで見たら、うちのスタジオを……。

永原:勝手に撮影して(笑)。


ミト:スタジオ紹介PVみたいになってて、ちょっとくすぐったかった(笑)。でも、SEBASTIAN Xの音源自体を聴いたのはホントに最近で、しかも、カバー曲だったんですよ。

永原:“スーダラ節”?

ミト:そうそう、そのインパクトがすごくて、衝撃だったんです。ちょうどアベノミクスを経過して、自衛権の問題が決まるか決まらないかっていう最中に、まさか高度成長期の象徴のような“スーダラ節”を若いバンドがカバーしてるって、あまりにも風刺だなって思って。あのタイミングでやるっていうのは、無意識であろうとも、アンテナがないとやれないし、潜在的なアゲインストを持ってないとやれないよねって知り合いと盛り上がったんですよ。

左から:永原真夏、ミト
左から:永原真夏、ミト

永原:へー!

ミト:バンドとかミュージシャンって、知らない間に時代とリンクしてる人たちがいっぱいいるじゃない? そういう意味で、あの“スーダラ節”は自分の中ですごいトピックだったの。

―実際、“スーダラ節”をカバーしたことには、どんな意図があったのでしょう?

永原:私の周りにはわりと政治的な人も多いんですけど、私たちは「立ち上がろうぜ!」みたいなポーズはとりたがらないタイプなんですね。だから、そのときの社会状況とかは全然意識してなかったんですけど……自分たちのスタンスと確実にリンクする部分はあったんだと思います。カバー自体は大真面目にやりました。「昭和の名曲」みたいな感覚も持ちたくなかったし、「この年齢で、女性で」っていうことを真っ当に表現するために、心の底から“スーダラ節”を歌って、一番いい形で鳴らしたいと思って。

ミト:うちらもカバーをやりますが、選曲の理由は後からついてくるんですよね。やっぱり表現する人って、何かしらあるんですよ。

―勝手に時代の空気とリンクしたりするわけですね。

ミト:うん、そういうアンテナが立ってるんでしょうね。そうやって、普通の人とはちょっと違うことが頭の中で起きている人たちだから、音を鳴らしたり、絵を描いたり、表現をしてるんだと思うんです。その中で、“スーダラ節”を聴いたときに、若くてすごいアンテナを持った人たちがいるんだなって、すごい盛り上がったし、アベノミクスの無希望性と自衛権の失望感の中、徹底的に比較対象とした2014年の“スーダラ節”っていうのは、一生残るだろうなってぐらいの衝撃でした。

クラムボンって、メディアライクな宣伝戦略を基本しないんですよ。出頭のインパクトはないから、時間はかかると思ったけど、メジャーデビューから15年で、結果は出てきたかなって。(ミト)

―真夏ちゃんにとって、クラムボンはどんな存在だったんですか?

永原:一番最初に知ったのは、18歳ぐらいのときにカラオケに行って、友達が歌ってるのを聴いたんです。「めっちゃいい曲だね!」って盛り上がって(笑)。

―曲は覚えてますか?

永原:“シカゴ”です。その頃はパンクが好きだったから、ギターがいないことにもびっくりしたし、自分たちがギターレスバンドを始めたときも、「クラムボンはリアンプ(レコーディングの手法)っていうのをやってるらしい」って知って、自主制作でCDを作ったときに、そのアイデアを使わせてもらったので、「ごちそうさまです!」って感じです。

ミト:すごいね、なんか「リアンプ」っていうのがものすごいことみたい(笑)。

永原:知らなかったから!(笑) でも、友達がカラオケで歌う曲って、自分たちの世代からすると、一番説得力あったんですよ。

ミト:たしかに、「友達がカラオケで歌う曲」って、ステータスだよね。真夏ちゃんの世代の、カラオケで聴いて「誰だか知らないけどいいじゃん」っていうのは、いまのニコ動世代、YouTube世代が、洋楽とか邦楽とか、メーカーがどこだとか関係なく、いいと思ったら聴くっていうのとある意味同じで、たまたまデバイスが違うだけっていうか。そういうカジュアルな、生活の中から入ってくる情報が、結局一番自分に入りやすいんですよね。

ミト

―たしかに。

ミト:だから、クラムボンってメディアライクな宣伝戦略を基本しないんですよ。自分たちのブランドイメージをわかりやすくするために、あえてメディアライクな宣伝をしないで、メジャーっていう場所なんだけど、友達の輪で作って行くっていう、逆転の発想でやろうとしているんです。うちらがやってるような音楽は、決してパンチがあるわけでもないし、出頭のインパクトもないから、時間はかかると思ったけど、メジャーデビューから15年で、結果は出てきたかなって。

永原:私、百年蔵のライブ盤(『3 peace ~live at 百年蔵~』、2006年発売)がめっちゃ好きなんです。

ミト:あれもね、変な話、福岡でやるならDRUM LOGOSとか、ZEPPとか、もっと大きい会場でやってもいいんだけど、百年蔵でやることがいかにスペシャルかとか、コンセプトを考えて、自分たちで企画したんですよね。「こういうことをやりたい」って言ったり、伝えたりすることが楽しいと思えないとできなくて、だからメジャーに来たときも、他の人たちがやってる方法論とは全く違いました。でも、それこそさっきのカラオケの話みたいに、小さな「話題」として点在してる方が、大きな宣伝の看板があるよりも、実はすごくお客さんが入りやすいんじゃないかと思ったんです。ほら、みんなが同じ方向を向いてるのを嫌がる人もいるから、そういう人たちを細かいところで引き込んで、数え役満にしていくわけですよ(笑)。

永原:ミッチー(永原はミトのことを「ミッチー」と呼ぶらしい)とレコーディングに入る前に一緒に飲んだりもしたんですけど、いまみたいな話とか、メンバーや友達といつも話していたような「何か新しいことしたいよね」って話もすごくラフにできて、とても信頼できたんですよね。

パンクの人からポップスの人まで、ジャンル関係なく、いまの若い世代のバンドマンにとって、クラムボンは理想の1つなんですよ。(永原)

永原:ミッチーは知ってるかわからないけど、パンクの人からポップスの人まで、ジャンル関係なく、いまの若い世代のバンドマンにとって、クラムボンは理想の1つなんですよ。

ミト:聞いたことないけどなあ(笑)。

永原:聞こえてこないんですよ、逆に。

―いま真夏ちゃんが言ったことには僕も同意できて、先日CINRAで高野寛さんとハナレグミの(永積)崇さんの対談をやらせてもらって、そのとき「OJAS」(かつてミトがバイトをしていた六本木のクラブ。クラムボンやSUPER BUTTER DOGのメンバーらがよく出入りしていた)の話題になったんですけど、クラムボンやSUPER BUTTER DOG、LaB LIFeとかの連帯感っていうのは、いまのバンドにとっての1つの指標になってると思うんです。

永原:すごくある!

ミト:めちゃめちゃユルユルだったよ(笑)。

永原:そこにリアリティーを感じたのって、やっぱり人間関係が見えてたからかもしれない。

永原真夏

―今回のシングルにはWiennersの玉屋くんがリミックスで参加してますが、いまの中央線界隈のバンドマンの連帯感っていうのは、クラムボンの世代にもちょっと通じるものがあると思うんです。そこを目指してきたわけではないと思うけど、それこそジャンルも関係ないし、何か面白いことをしたいって人たちが夜な夜な集まって、それが少しずつ広がって、点在していってる感じもありますし。

永原:たしかに、そうかもしれないですね。自分たちも生音のライブをやったりしてるんですけど。

ミト:何それ?

永原:完全生音でやるんです。50人限定とかで、ドラムもピアノもベースも声も、アンプやマイクを使わず、全部生。そういうのをやると、感触がまた違ったりするんですよね。

ミト:要するに、他と違うことしかやりたくないんですよね。そういうところも近くて、クラムボンも「人と同じことをやってもしょうがない」ってところから始まってるわけです。

―他と違うことをやりたいって考えるSEBASTIAN Xがプロデューサーを入れるのって、なかなか難しいことだったと思うんですけど、共通点が多いミトさんだったからこそ上手くいったと言えそうですね。

ミト:SEBASTIAN Xチームがメジャーデビューのタイミングでプロデューサーを入れたっていうのは、『春告ジャンボリー』を日比谷野外音楽堂でやって、1つやり終えたっていう感覚があったからなのではないかと私は思っていて。うちらは専門学校で一緒だった時代に「クラスコンサート」っていうのがあって、学校の授業として、月に1回コンサートを開いてたんですね。自分たちでパンフを作って、お客さんを呼んで、演奏して、PAから照明から全部やるんです。SEBASTIAN Xの『春告ジャンボリー』は、その匂いを思い出した。あの空気感って独特で、プロになってからいまだに味わうことは少ないんですよね。あったとしても、それこそSUPER BUTTER DOGの連中とか、あの頃の友達と何かやってるときに、その匂いを嗅ぐことがあるぐらい。

永原:4月なのに、チョー寒かったですけど……。

ミト:そうだったね(笑)。あのイベントは、コーディネートからして、どう見ても自分たちで作った感があった。それをあの野音で、自分たちのバンドのブランドを背負いながらやるって、これは相当タフな子たちだなって思った。

永原:DIYなものをいかに大きく浸透させていくかっていうのは、最初から意識してたわけじゃないんですけど、いまとなってはバンドが一生懸命やってることの中心だと思います。

ミト:もちろん、欲求は果てしなくあって、野音をDIYでできちゃったら、次のハードルってまた全然変わってくると思うんです。だから、もうそこまでできちゃってる人たちなので、変な話、プロデューサーが誰であろうとどうでもよくて、そのハードルに見合う課題を置いてあげることぐらいしか考えてなかったわけ。野音に行って、彼女たちのバンドのスパイラルが発する熱にぐるーって流されて、ここに来ちゃったようなところがある気がしますね。

自分の中の白と黒の部分が両方入らないと、どうしても自分が成立しないっていうのは、もう自分のスタイルになってるんだなって思います。(永原)

―実際、一緒に作業をしてみて、真夏ちゃんの中ではどんなことが印象的でしたか?

永原:一番よかったと思ったのは……私、自分の中で頭に描いてる景色があって、そこに向かって歌ったり、アレンジを考えたりしているんですけど、その説明をあんまりしなかったんですよ。「私はこう思ってて、こういう景色で」って話をしてなくて……もちろん、必須項目のことは話したんですけど。

ミト:それすらなかった気がする……ごめん、あんまり聞いてなかった(笑)。

左から:永原真夏、ミト

永原:ちょっとー!(笑) でも、すごいなって思ったのが、ちゃんと自分が見てた景色が、ミッチーが手掛けてくれた後、曲の中で見えたんです。例えば、“イェーイ”のイントロが始まった後に「ブォン!」って音がするんですけど、私は最初そこにホントの爆発音を入れようと思ってたんです。そのストーリーを説明しなくても、音楽でちゃんとコミュニケーションが取れてたんですよね。

―つまり、口で説明しなくても、爆発音に相当する「ブォン!」っていう音が入っていたと。

永原:そう、それと曲の中で主人公が開いていく感じとか、細かいニュアンスがちゃんと生きてて、それは単純にものすごく嬉しかった。

―「曲の中に風景が見えることが大事」っていうのって、すごく真夏ちゃんらしいなって思って、それって時代とかジャンルでは規定されないわけじゃないですか? “スーダラ節”をいま鳴らしたっていうのも、やっぱり「風景」を鳴らしたかったのかなって。

永原:うーん、でも時代にコミットしていきたい気持ちと、していきたくないっていう気持ちと両方あって、どっちも出てる気がします。“スーダラ節”もたぶんそうで、「この時代に鳴らすことがいい」って気持ちもあったし、でも「そんなの関係なくない?」とも言いたい。自分の中の白と黒の部分とか、対極のものが入らないと、どうしても自分が成立しないっていうのは、もう自分のスタイルになってるんだなって思います。

―“イェーイ”にもその両面性は含まれていますよね。

永原:この曲の主人公は、曲の中で徐々に開かれていくんですけど、開かれていくっていうことは、それまでは閉じてるってことだから、曲の最初から開いてる状態を歌うのは嫌で、主人公と一緒に開いていきたかったんです。だから、曲の中で3回<イェーイ>って出てくるんですけど、どんどん<イェーイ>が開かれていくんです。メジャー第一声だし、最初の<イェーイ>をとびっきり明るく言った方がいい気もしたんですけど、この主人公はそうじゃないと思って。

ミト:そうか……俺はまったく逆をイメージしてた。だってね、これ最初は<大人になっても淋しい>って時代の流れを歌ってるんだけど、最後は<あの娘と仲良くなりたいな>になる。つまり、歌ってるモチーフがどんどん身近なものになっていくわけ。

永原:あー! はいはいはい! それはすごいわかる。でも、心の中は開いてるんですよ。

ミト:そう、主人公の心が開かれていく「イェーイ」の置き方と、でも知らない間に歌っていることはパーソナルになっていくっていう、そのパラレルがあって、この曲は成立するんだと思う。真夏ちゃんが「白と黒の部分が両方ある」って言ってた通りにね。だから俺の言ってることも間違ってないし、あなたのやってることも間違ってないってことだよね。

クラムボン三人も、会話が成立するわけがないんです(笑)。だけど、楽器を持って、「これやってみない?」って言って演奏すると、会話するよりも早くアレンジができあがって、曲もライブもできちゃうの。(ミト)

―いま話してもらったようなパラレルが前提にあった上で、真夏ちゃんはその奥底にある、音楽の根源的なパワーみたいなものに対する信頼を強く持っている人だと思うんですね。

永原:うん、持ってます。

―そのパワーの正体みたいなものについて、お二人に話していただきたいなって。

ミト:そんなデカいことをいきなり言われてもなあ(笑)。まあ、なんかいろんなパワーに煽られちゃうタイプなんだろうなって気はします。視界に入るものや聴覚で入ってきちゃうものに対して、振り回されやすい人っていうか。誰かとしゃべってて、突然全然違う話になったりしない?

永原:めっちゃします。「話しててよくわかんない」って人に言われます。

左から:永原真夏、ミト

ミト:だよね。私もどっちかっていうとそういうタイプで……クラムボン三人ともそうかも。だから、ひどいんです。会話が成立するわけがないんです(笑)。だけど、楽器を持って、「これやってみない?」って言って演奏すると、会話するよりも早くアレンジができあがって、曲もライブもできちゃう。だから、真夏ちゃんがプリミティブなものを持ってるというよりも、煽られてしまうのを、上手く外に吐き出せる人なのかもしれない。そこはたぶんメンバーの存在も大きくて、彼らはいい意味で実直な三人だから、そのアンビバレンツな状態がいいっていうか、真夏ちゃんが一人でやってしまうと、ちょっと危ないアーティストになってしまうんだろうなと思います。

永原:……図星です(笑)。メンバーはホントうちもバラバラで、仲いいっちゃいいし、悪いっちゃ悪い。でも、必要なんですよね。さっきおっしゃってたみたいに、この四人だと曲ができるし、ライブをするとガッとエネルギーが出るし、それがある意味自分の社会みたいな感じがあって……。

ミト:自分の中で唯一社会と接点を持ててるってことだよね?

永原:そうです。

ミト:それは私も同じですよ。ずーっとそんな感じ。自分でも嫌になるくらい、音楽しかできないんだってわかる。

人知を超えることをやってやるんだ、ってくらいの気持ちでやってる人じゃないと、面白いものってできないですよ。(ミト)

―メジャーデビューして、いままでとは違った環境にもなって、改めてメンバーの必要性を感じたところもあるんじゃないですか?

永原:メンバーがいるから私が音楽ができているっていう、すごくシンプルな事実が、メジャーデビューして一番感じたことかも。曲作りはアカペラから始まるから、コードもないし、風景を説明したところで、すごく感覚的なんですけど、それでも作っていくと音が立体的になって、どこかに飛んでいける感覚になるっていうのは、この四人だからできてるんだなって。

ミト:やっぱり出頭がアカペラのメロと歌詞だけで、楽器で調整されたものから出てきてないから、私の「スーダラショック」みたいに、いろんなことと自然とリンクしちゃうんだと思う。真夏ちゃんの背中にいろんなコードが刺さってて、いろんなものを吸収しちゃってる。そういう人が面白いものを作って行くっていうか、「偶然を作れる人間」っていうのが、ミュージシャンとかアーティストの大前提だと思う。

永原:クラムボンでもそういうことってあるんですか?

ミト:例えば、ライブ盤(『3peace2』、2012年発売)に停電しちゃったときの演奏が入ってるんだけど、それってつまり、停電してるのに、テープレコーダーが回ってたってことで。

永原:えー、何それー!

ミト:たまたまそのレコーダーの電源が別の配電盤から取られてたんだけど、でも、停電を免れたのはその1か所だけだったの。

永原:すごい……。

ミト:オカルトだよね。でも、ミュージシャンって、そういうことを引き寄せる人がいるのよ。たとえば真夏ちゃん、偶然に知り合いと会うこと多いでしょ?

永原:多いです。

ミト:潜在的な引きの強さ、そういうことです。

左から:永原真夏、ミト

―野音でやった『春告ジャンボリー』にしても、「何年後かに野音でできたらいいね」なんて言ってたら、たまたまその翌年できちゃったんだもんね。普通、押さえられないよね。

永原:そう、「空いててラッキー!」っていう(笑)。

ミト:そういう人知を超えることをやってやるんだ、ってくらいの気持ちでやってる人じゃないと、面白いものってできないですよ。ただ、普通の生活はしなきゃいけないんだよ。人に迷惑をかけちゃダメ!

永原:はい!

ミト:今日、これ、親子対談っていうか、親戚のおじさんみたいじゃない? 大丈夫かな?(笑)

―大丈夫、すごく面白かったです(笑)。じゃあ、最後に、そんな親戚のおじさんであるミトさんから(笑)、改めてSEBASTIAN Xの今後にエールを送っていただいて、それに真夏ちゃんが応える形で締めましょうか。

ミト:えーと、ざっくりでいいんですよね?

―問題ないです。

ミト:好きにした方がいい!

永原:(笑)。

ミト:さっき人に迷惑かけるなって言ったけど、アーティストっていうのはある程度迷惑かけちゃうのが当然みたいな人たちだから、それはしょうがない。でも、「人に迷惑をかけない」って気持ちを持つことが重要で、かけちゃうことはわかってて、それでもちゃんと戒めることが重要なの。それを何でも真面目にやろうって思うミュージシャンが多すぎるから、面白くないんですよ。白と黒をちゃんと持ってるんだから、あとは好きにやりなさい!

永原:はい! やらせてもらいます!

ミト:もうそれ以上言わなくていいからね! ここから話を膨らませて、感動的に終わらせたいところを、徹底的にいなして、帰らせるのが私たちのやることだよ! はい、終わり!

永原:終わった―!(笑) ありがとうございました!

イベント情報
『SEBASTIAN Xワンマンツアー2014』

2014年11月9日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:福岡県 Graf
料金:前売3,000円

2014年11月15日(土)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:愛知県 名古屋 APOLLO BASE
料金:前売3,000円

2014年11月21日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:大阪府 Music Club JANUS
料金:前売3,000円

2014年11月23日(日)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:宮城県 仙台 PARK SQUARE
料金:前売3,000円

2014年11月28日(金)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 新大久保 東京キネマ倶楽部
料金:前売3,200円

リリース情報
SEBASTIAN X
『イェーイ』(CD+DVD)

2014年10月22日(水)発売
価格:2,160円(税込)
avex / ONECIRCLE / CTCD-20009/B

[CD]
1. イェーイ
2. ラブレターフロム地球
3. スーダラ節
4. ぼくはおばけさ
5. ライダースは22世紀を目指す
6. イェーイ(玉屋2060% HYPER MUSASHINO REMIX)
[DVD]
『SEBASTIAN X ライブベストセレクション 2014春夏』
1.ROSE GARDEN,BABY BLUE
2.光のたてがみ
3.DNA
4.メジャーデビュー発表!
5.ワンダフルワールド
6.GO BACK TO MONSTER
7.サディスティック・カシオペア
8.世界の果てまで連れてって!
9.ヒバリオペラ
※初回生産分のみ紙ジャケット仕様

SEBASTIAN X
『イェーイ』(CD)

2014年10月22日(水)発売
価格:1,620円(税込)
avex / ONECIRCLE / CTCD-20010

1. イェーイ
2. ラブレターフロム地球
3. スーダラ節
4. ぼくはおばけさ
5. ライダースは22世紀を目指す
6. イェーイ(玉屋2060% HYPER MUSASHINO REMIX)

SEBASTIAN X
『イェーイ』

2014年10月22日(水)発売
価格:1,300円(税込)

1. イェーイ
2. ラブレターフロム地球
3. スーダラ節
4. ぼくはおばけさ
5. ライダースは22世紀を目指す
6. イェーイ(玉屋2060% HYPER MUSASHINO REMIX)
7. デビューのうた(デビュー告知映像ヴァージョン)
※“デビューのうた(デビュー告知映像ヴァージョン)”は10月21日までの予約特典

プロフィール
SEBASTIAN X(せばすちゃん えっくす)

2008年2月結成。永原真夏(Vo)、 工藤歩里(Key)、飯田裕(Ba)、沖山良太(Dr)から成る男女4人組。2009年11月6日に初の全国流通盤となる『ワンダフル・ワールド』をリリース。 その後も2010年8月に 2nd Mini Album『僕らのファンタジー』、2011年10月、1st Full Album『FUTURES』、 2012年7月、3rd Mini Album『ひなぎくと怪獣』、2013年8月に2nd Full『POWER OF NOISE』とコンスタントにリリースを続ける。 独特の切り口と文学性が魅力のVo.永原真夏の歌詞と、ギターレスとは思えないパワフルだけど愛らしい楽曲の世界観が話題に。 ライブパフォーマンスとキャッチーなキャラクターも相俟って、シーンでも一際目立ちまくっている存在になっている。 そして、2014年秋にメジャーデビューすることが決定し、新たな章が幕をあける。

ミト

1975年5月6日生まれ。東京都出身。クラムボンのバンドマスターとして、ベース、ギター、キーボード他を担当。デビュー以来クラムボンの楽曲は、ほぼ全てミトによるものであり、自身のバンド以外にも、楽曲提供・演奏参加、プロデューサー、ミックスエンジニアとして、多くのミュージシャンを手がける。また複数のソロ名義でも多岐にわたり活動しており、2011年には初のmito名義となるソロアルバム『DAWNS』、参加曲を集めた『mito archive 1999-2010』を発売している。来年で結成20周年を迎えるクラムボンのアニバーサリーイヤー企画第1弾として初のMV集『clammbon music V 集』発売、第2弾としてバンドスコア『clammbon GUIDE BOOK』を発売。12月3日にトリビュートアルバムが発売予定。



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