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泉まくら×大島智子 共作を通じて、生きる自信を膨らませた二人

泉まくら×大島智子 共作を通じて、生きる自信を膨らませた二人

インタビュー・テキスト
阿部美香
撮影:豊島望 イラスト:大島智子

幸せは毎日感じますけど、それを表現するのは30歳を過ぎてからやりたいかな? 20代のうちはヒリヒリしていたい。(大島)

―作品も、あえて悲しさを表現しようといった意識は特になく?

:今回のアルバムは、初めて幸せな曲を書いてみたんですよ! “YOU”というタイトルなんですけど、泉まくら渾身のハッピーソング。でも書いてみてわかったのは、幸せな様子って、形容する言葉があまりにも少ないんですよね。本人が「幸せ」だって言葉を言わないと、幸せなのかどうか伝わりづらい。それに比べると、「悲しい」とか「寂しい」って気持ちは、すごく歌詞として表現しやすいんです。大島さんはどうですか? 絵で幸せな気持ちを表現するのって?

大島:幸せな気持ちは……別に、表現しなくてもいいやって思ってる。だって、みんなやってるし。

:あぁ! そうかぁ。だから大島さんの絵には「幸せ」が湧き上がってこないのか。でも、今回の『愛ならば知っている』のジャケットは、女の子がちょっと満たされてる感じがありますよね。

泉まくら『愛ならば知っている』ジャケット
泉まくら『愛ならば知っている』ジャケット

大島:それは……私が歳を取っちゃったからかな?(笑) 一緒にやり始めた頃と比べると、根本は変わってないけど、変わった部分はあるのかもしれないよね。

―その変わってない根本の中に、大島さんの「幸せは別に表現しなくてもいい」という気持ちがあるんですか?

大島:そうですね。幸せは毎日感じますけど、それを表現するのは……30歳を過ぎてからやりたいかな?

:30歳?

大島:そう、30歳を過ぎたら、高野文子の『るきさん』(1988~1992年に『Hanako』にて連載されていた漫画)みたいなものを描きたいですけど、20代のうちはヒリヒリしていたい。

:(大きく頷いて)わかります! 「期限」ですよね?

大島:そうそう「期限」。30代になってもヒリヒリしてるのは嫌だから。

―ここまでのお話でも、お二人の表現の共通項がいくつも見えましたが、一番の共通点は、女子ならではの感性が輝いていることだと思うんです。ご自分の「女」の部分を作品に出そうと意識しますか?

:音楽に限らず、「女だから」「男だから」という話は出てきますけど……わけて考えるほうが難しいですよね。だって、男になったことがないから。ただ、「女だから、こういう言葉遣いをすれば印象深くなるだろう」とか、「女だから、これは歌わないようにしよう」というような選択をしたことはないです。

泉まくら

―大島さんの絵柄はとても繊細で、乙女っぽさが出ているように感じますが、「女の子らしさ」は意識されています?

大島:最初は意識してなかったんですけど、私が描く絵に対して、みんなから「女子って感じが出てるよね」と言われるので、わざと女の子らしさを描くことは意識しているかも。

:そうですよね、私が初めて見た頃の大島さんの絵には、もっと印象的な男の子がいた気がする。だけど最近の大島さんが描く男の子は、同じ作品の中にいる女の子を描くために登場してるだけって感じがします。

大島:そう、男の子は脇役でしかないですね。

:でも、主役の女の子を可愛く描いてあげようとも思わない?

大島:うん。女の子は可愛いと思うけど、絵では可愛くはしないかな。

日本国憲法に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあるのを知り、「この言葉すごい!」と思って、絵のテーマにしようと決めたんです。(大島)

―というお話を聞くと、お二人の作風がどう育まれていったのかが気になります。泉さんは、10代の頃から今のような音楽をやられていたんですか?

:いえ、全然。吹奏楽部だったので楽器はやっていましたけど、今の表現とは全く違いますね。どちらかというと、小説を書いていたことのほうが、今に繋がっているかも?

―それはどんな小説ですか?

:20歳前後の男の子と女の子が出てきて……すごく日常的なお話でしたね。誰もとくに悲しまないし、幸せにもならない。恋愛話でもないし。

大島:どんな話なのか気になりますね(笑)。もう書いてないんですか?

:また書きたいとは思ってるんですけど……そのときは、挿絵を大島さんに描いてもらいたいな。

大島:私は、自分の漫画の原作を、まくらさんに書いてほしいと思ってるんですよ。アルバムのアートワークを描くとき、まくらさんがメールで「LINEをやっててコメントを削除してる女の子を描いてほしい」とか、かなり具体的な指示をくれるんですよ。その文章がもう小説。だから、それを原作にしたいなって。

大島智子

―もし本格的に漫画原作を書くとしたら、どんなお話がいいですかね?

大島:オチはなくていいかな。あくまで「平熱」なもの。

:確かに、大島さんの描く女の子って、何か特別な動きをしている絵じゃなくても、見る人が意味を考えちゃう力があるから。あえてストーリーはいらないと思う。「この子、今どんな気持ちなんだろう?」とか、「バイト終わって帰ってきたところなのかな?」とか、「お腹空いてそう」とか。こっちが読み取りたくなる表情をしてるんですよね。詞を書いている私からすると、絵って不思議なんですよ。言葉を使わないで表現するって、どんな気分なんだろうって思う。

大島:……何も考えてない(苦笑)。

:考えてないんだ。そこがすごいですよね。

―大島さんはずっと今の絵柄なんですか?

大島:中学生くらいで急に変わったんですよ。それまでは奈良美智さん(美術家。にらみつけるような目の女の子のモチーフにした作品を描く)が好きだったから、可愛らしいキャラクターを描いてました。でも、中学2年生くらいで、急に嫌になっちゃったんです。奈良さんのパクリみたいだなって。それでしばらく何も描かないって決めて、1週間後にペンを持ったら……こうなりました(笑)。今よりずっと下手くそでしたけど。

:いきなりですか!? しかもそれが今まで続いているんですよね。

大島:そう。続いてるのは……クラスメートがいいって言ってくれたからかな? それからずっと絵柄は変わらないんですけど、サブカルっぽいテーマのイラストを描いていて、しばらく経ってから今のような日常的なテーマを描くようになりました。

:何かきっかけがあったんですか?

大島:大学生のとき、日本国憲法の第25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあるのを知り、「この言葉すごい!」と思って、絵のテーマにしようと決めたんです。健康で文化的な生活って、つまりは普通の日常だなって。

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リリース情報

泉まくら『愛ならば知っている』(CD)
泉まくら
『愛ならば知っている』(CD)

2015年4月22日(水)発売
価格:2,000円(税込)
術ノ穴 / sube-040

1. baby
2. pinky
3. Love
4. Lullaby
5. YOU
6. Circus
7. 愛ならば知っている
8. 幻
9. 明日を待っている

CINRA.STOREで取扱中の商品

泉まくら、大島智子<br>
iPhone5/5Sケース「泉まくら × 大島智子」(卒業と、それまでのうとうと)
泉まくら、大島智子
iPhone5/5Sケース「泉まくら × 大島智子」(卒業と、それまでのうとうと)

価格:3,780円(税込)
術ノ穴レーベルの新鋭アーティストによるコラボグッズ

CINRA.STOREで取扱中の商品

泉まくら、大島智子iPhone5/5Sケース「泉まくら × 大島智子」(マイルーム・マイステージ)
泉まくら、大島智子
iPhone5/5Sケース「泉まくら × 大島智子」(マイルーム・マイステージ)

価格:3,780円(税込)
術ノ穴レーベルの新鋭アーティストによるコラボグッズ

プロフィール

泉まくら(いずみ まくら)

福岡県在住。2012年術ノ穴へ所属し、同年発表されたデビュー音源『卒業と、それまでのうとうと』が各メディアで話題となり、くるり主催『WHOLE LOVE KYOTO』出演やパスピエとのコラボ音源『最終電車』リリースなど大きな注目を集める。2013年10月には待望の1stアルバム『マイルーム・マイステージ』が各媒体でBEST DISCに選ばれる。2014年公開TVアニメ『スペース☆ダンディ』では菅野よう子とのコラボ楽曲を提供。

大島智子(おおしま ともこ)

イラストレーター、映像作家。2010年頃からイラストを元にしたGIFアニメをTumblrにアップし始める。GIFアニメを使ったミュージックビデオやイラストレーションの制作を行う。

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