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シュリスペイロフ×前田司郎対談 現実とフィクションの交差点

シュリスペイロフ×前田司郎対談 現実とフィクションの交差点

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:相良博昭

バンド始めた頃は、「誰も聴いたことのない音楽を作ってやるぜ」とか思ってたんですけど、そんなの無理だってことに段々気づいてきて。(宮本)

―例えば音楽だと、どんなふうに影響を受けるのですか?

前田:例えば、間の取り方、テンポの作り方などですね。「このシーンでフラストレーションをためておいて、次の台詞でドンとくるように」みたいな。違うものから学ぼうと考えるようになったきっかけは、藤子不二雄A先生の『まんが道』です。あの中で手塚治虫先生が、「漫画を描きたいなら映画を見ろ」って言うシーンがあって……。

宮本:実は僕もそれを読んで、「色々な分野の作品を吸収しなくちゃ」って思うようになったんです!(笑)

―それはすごい偶然ですね!

前田:宮本さんは、いつぐらいから音楽をやり始めたんですか?

宮本:中学生のときに、映画『青春デンデケデケデケ』を見て、それでギターを買ってバンドをやろうと思いました。あまり行動力がなくて、19歳までバンド仲間も見つけられなかったんですけど。

前田:そのときのメンバーと今も一緒にやっているんですか?

宮本:はい。今年で結成15年になります。なんとなく続いてるんですよね、一定の熱は保たれているっていうか。

前田:でも、音楽も芝居と一緒で食えないですよね?

宮本:食えないです(即答)。

前田:以前は、音楽って派手なイメージがあったんです。僕の中で。ミュージシャンはみなメチャメチャ金持ってて、朝まで遊んで、みたいな(笑)。でも実は、音楽をやってる人は、僕らみたいに劇団をやっている人たちと同じように大変なんだっていうことを最近知って、すごく親近感を持っています(笑)。

前田司郎

―経済的に厳しい中でも、宮本さんが音楽を続ける理由って何ですか?

宮本:バンド始めた頃は、「誰も聴いたことのない音楽を作ってやるぜ」とか思ってたんですけど、そんなの無理だってことに段々気づいてきて。今は、「もう、ほんのちょっとでも何か新しいことを作れたら」っていう思いだけで続けている気がします。

前田:僕は、結構早い段階で新しいものは求めなくなりましたね。「俺が考えてることは、きっともう誰かが考えてるだろう」って思ったから。たとえ新しいものを作れたとしても、500年後に同じように芝居や音楽に関わっている人たちは、今よりもっと未開の地はなくなってるわけですよね。だとしたら、未開の地を探してそこを踏むためにやるという考え方は、ちょっと違うんじゃないかと思って。だから、とにかく「自分がやりたいことは何だろう?」っていうことを突き詰めるしかないと思うんです。

リアルな描写だからってリアリティーを感じるとは限らなくて。実は、リアルじゃないものに、リアリティーを感じたりすると思うんですよね。(前田)

―前田さんは、どんなきっかけで作家になったんですか?

前田:僕は音楽もできなかったし、絵も描けなかったんですけど、子どもの頃から喋るのは得意だったので、「喋れるんだから、書けるだろう」と安易に考えて作家を目指すことにしました。すぐに気付くんですけどね、喋り言葉と書き言葉は違うんだって(笑)。しかも、基本的に本を書くのは1人の作業なので、バンドとは違って仲間ができないんですよ。「このままだと、ずっと友達ができないぞ」と焦っていたときに演劇と出会って、「これなら友達ができるかもしれない」と思って演劇の脚本を書き始めました。それで舞台を続けて、たまたまその舞台を見に来た編集者の方に、「小説書いてみませんか?」と誘っていただいて、作家になったんです。

宮本:前田さんの作品は、タイトルのセンスもすごくいいですよね。『愛でもない青春でもない旅立たない』とか、自分が思いつきたかったなあ(笑)。

前田:あれは、自分の小説は売れなさそうだなあと思って、「どんなのが売れるんだろう」って電車の中で考えていたときに思い浮かびました。「みんな『愛と青春の旅だち』(1982年公開のアメリカ映画)みたいな作品が好きなんだろうな、俺の考えてることとは全く逆だな」と思ったので、逆にしてみました(笑)。

宮本:あとは、やっぱり台詞。『家が遠い』にしても、『生きてるものはいないのか』にしても、若者たちのあの妙にリアリティーのある会話って、やっぱり前田さんが小学生の頃から小説を書いてたからこそ生まれたんですかね?

前田:どうなんだろう……僕は、子どもと大人の差ってそんなにないと思ってるんですよ。子どもだからといって、「未完成で、大人よりも劣った人間」として登場人物を書いちゃうと、あんまりしっくりこない。もちろん、知識や経験は大人よりも少ないけど、それ以外は大人と変わらないものとして書いてますね。どうですか、中学の頃から成長したって思います?

宮本:いや、変わってないかも……。

宮本英一

前田:そうですよね。中学生の頃に聴いてたCDとか、今聴いても感動するし。自分の感性って、当時から全然成長してないんじゃないかと思うんです。味覚とかもそんなに変わってない。ハンバーグとか今でも好きだし(笑)。

―言葉の言い回しとかも、大人とそれほど変わらない?

前田:そうですね。男と女でも、実はそんなに変わらない。女性が登場する戯曲を初めて書いたとき、最初は「~なのよ」とか「~だわ」とか使ってみたんですけど、「女の人、こんな言葉しゃべらねーな」と思って(笑)。もちろん、男よりもニュアンスは柔らかかったりしますが、喋ってる言葉はほとんど変わらないんですよね。男と女でも、大人と子どもでも、変に意識して区別すると気持ち悪い台詞になっちゃう。僕みたいなオジサンが、今の高校生の言葉とか、聞きかじりのネット用語とかを使って脚本を書いていると、すごい違和感があるんですよ。

―前田さんの作品にリアリティーを感じるのは、そういう台詞へのこだわりがあるからでしょうか?

前田:でも、リアルな描写だからってリアリティーを感じるとは限らなくて。実は、リアルじゃないものに、リアリティーを感じたりすると思うんですよ。警察が作成してるモンタージュ写真ってあるじゃないですか。あれをCGでリアルに作ったら、検挙率が下がったそうなんです。それで手書きの似顔絵に戻したというのを、前に聞いたことがあって。CGで合成すればリアルなモンタージュ写真にはなっても、そこに曖昧な部分がなくなってしまって、絵と犯人の間に溝ができてしまうのかな。手描きの似顔絵の方が、曖昧な部分があって、そこが絵と犯人の間の溝を埋めてくれる。リアルとリアリティーの違いというのは、そういうことなのかなって思うんですよね。

宮本:ああ、なるほど。

前田:音楽はどうなんだろう。実際にあった出来事を歌詞にするにしても、小説や戯曲と比べると、あまり現実とのつながりがないように思うのだけど。

宮本:そうですね。現実を細かく描写するというよりは、デッサンみたいな感じですかね。しかもメロディーに当てはめるわけだから、その中に収まる言葉で書かなければならない。そこで枠をはみ出してでも現実のことをそのまま歌おうとすると、フォークソングみたいになるんですよね。ロックミュージックの場合はもっと曖昧模糊としてます。言葉をぼやけさして、輪郭が見えるくらいでいいかなって。ギターの音とかドラムの音とか、歌声とか、そういうもの全部でイメージを想起させているのかもしれないです。

前田:それでいくと、戯曲は音楽に似ているのかも。歌詞はそれだけで完結せずに、メロディーに乗せて歌って初めて完成する。戯曲も同じように、俳優の体を通して出たときに完成するから。だから戯「曲」っていうのかな。

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リリース情報

シュリスペイロフ 『その周辺』(CD)
シュリスペイロフ
『その周辺』(CD)

2015年5月20日(水)発売
価格:2,500円(税込)
BUMP-045

1. 空中庭園
2. 働きたくない
3. 憂鬱に踊る
4. その周辺
5. さよなら宇宙
6. スターレット
7. ルール
8. 夜の公園
9. 地球を歩く
10. エンドロール

イベント情報

シュリスペイロフ『その周辺』発売記念
『そちらの周辺ツアー』

2015年7月2日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:大阪府 心斎橋 Pangea
出演:
シュリスペイロフ
山中さわお
and more
料金:前売2,700円(ドリンク別)

2015年7月3日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:愛知県 名古屋 APOLLO BASE
出演:
シュリスペイロフ
山中さわお
Homecomings
料金:前売2,700円(ドリンク別)

2015年7月5日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:新潟県 GOLDENPIGS BLACK STAGE
出演:
シュリスペイロフ
山中さわお
料金:前売2,700円(ドリンク別)

2015年7月10日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 下北沢 CLUB Que
出演:シュリスペイロフ
料金:前売2,800円(ドリンク別)

2015年7月24日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:北海道 札幌 Sound Lab mole
出演:シュリスペイロフ
料金:前売2,500円(ドリンク別)

書籍情報

『口から入って尻から出るならば、口から出る言葉は』

2015年5月23日(土)発売
著者:前田司郎
価格:1,728円(税込)
発行:晶文社

『私たちは塩を減らそう』
『私たちは塩を減らそう』

2015年6月1日(月)発売
著者:前田司郎
価格:1,728円(税込)
発行:キノブックス

プロフィール

シュリスペイロフ

1999年札幌にて結成。以降5年間「ライブハウスが怖い」という理由でスタジオでの曲作りのみの活動を続ける。2004年に勇気を出しての初ライブ。2005年10月タワーレコード札幌ピヴォ店限定で3曲入りEP『ダイバー』発売。その後、札幌を中心としながら東名阪などへも積極的にイベント参加。2008年3月に1stアルバム『シュリスペイロフ』、2009年5月に2ndアルバム『もぐる。』、2011年5月に自身初となるライブアルバム『シュリスペイロフ LIVE十一』、2011年8月に3rdアルバム『0.7』をリリース!2013年より山中さわお(the pillows)が主宰する「DELICIOUS LABEL」へ移籍。東京に拠点を移し活動を始める。そして2014年5月20日には約4年振りのフルアルバム『その周辺』をリリース、7月にはリリースツアーを開催。

前田司郎(まえだ しろう)

1977年東京生まれ。劇作家、演出家、俳優、小説家。劇団「五反田団」主宰。1997年、劇団「五反田団」を旗揚げ。2004年『家が遠い』で京都芸術センター舞台芸術賞受賞。2005年『愛でもない青春でもない旅立たない』で小説家デビュー。2007年、小説『グレート生活アドベンチャー』が芥川賞候補となる。2008年、戯曲『生きてるものはいないのか』で岸田國士戯曲賞受賞。2009年、小説『夏の水の半魚人』が三島由紀夫賞受賞。近年はテレビ・映画のシナリオや演出も手がけ、2015年『徒歩7分』が向田邦子賞受賞。

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