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子どもは誰でも作曲能力がある?馬喰町バンドが目指す無垢な音楽

子どもは誰でも作曲能力がある?馬喰町バンドが目指す無垢な音楽

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:豊島望

昔は地域にしろバンドにしろ、団体ごとに違うルールや価値観で音楽をやってたけど、みんなひとつのルールで比較されるようになって、「こっちがいい、こっちは悪い」みたいな、順位の話をするようになっちゃった。(織田)

―「民族音楽」が決して「音楽」だけではないという考えについて、もう少し聞かせていただけますか?

:民族音楽は「音楽」と銘打たれてはいますけど、知れば知るほど音楽だけじゃないんですよね。踊りもあれば美術もあればメイクもするし、衣装も楽器も自分たちで作るのが当たり前で、場合によっては空間すら自分たちで作る。ほとんど総合芸術なんです。実際には、自分は「音楽=CDを聴くこと」みたいな感じで育ってきたわけですけど、そこで削ぎ落とされてしまうものってものすごく多いと思って。音楽をやるだけでも、絵を描くだけでも満たされないけど、「音楽=総合芸術」なわけで、民族音楽でなら100%自分の能力を発揮して、気持ちよくなれるんじゃないかと思ってるんです。

織田:僕が大学のときに走るピアノを作ったのも、ただ楽器を持って歌を歌うだけは超ださいと思って、「俺は違う価値観で音楽をやるんだ」と思ったからなんです。今もそういう違和感は残ってて、馬喰町バンドはそこのバランス感覚を共有できてるから、この人たちとなら総合芸術ができるんじゃないかって。

織田洋介

ハブ:今の音楽って、「これが当たり前でしょ?」っていうことが多過ぎるんですよね。

:すごく多い。例えば、「上手いドラマーはリズムが走らない」っていうのが当たり前の価値観としてあって、自分も昔はその中で演奏してたけど、それもホントおかしい話なんですよ。日本とかアジアの音楽って、BPMに合わせて刻んでいくリズムじゃなくて、揺らぎなんですよね。なのに、なんでメトロノームを使いながら練習するかって、それは巷に流れる音楽がそういうメソッドで作られていて、それが正解だと思っちゃってるから。でも、あるときから「これって全部ウソじゃねえ?」と思って、馬喰町バンドではそういう正しいとされてることを壊していきたい。時間って一定じゃなくて、つまらないときは長く感じるし、集中してると一瞬だったりするじゃないですか? それなのに、感情を表現する音楽が「走っちゃダメ」っていうのは、おかしなことだと思うんですよ。

―武さんとハブさんが自作の楽器を使っているのも、言ってみれば、「当たり前とされていること」からの解放と言えますよね。

ハブ:昔、すごく古い国産のドラムを叩かせてもらったことがあって、それはベニヤでできてたんですけど、僕としてはすごくいい音がすると思ったんですよ。今のドラムはいい音過ぎて、逆にいい音じゃないというか、洗練され過ぎて苦しいっていうのかな。でも、技術の進歩には逆らえないから、楽器屋に行けば新しい楽器が並んでるわけですよね。もともと僕とか社会からあぶれ気味で居場所ない感じなのに……もうちょっと隙間が欲しい(笑)。

:「音楽まで俺たちを孤独にするのか!」ってね(笑)。

織田:昔は地域にしろバンドにしろ、団体ごとに違うルールや価値観で音楽をやってたけど、そうじゃなくなっていったんですよね。みんなひとつのルールで比較されるようになっちゃって、「こっちがいい、こっちは悪い」みたいな、順位の話をするようになっちゃった。

左から:織田洋介、武徹太郎、ハブヒロシ

ハブ:「私音楽できないんです」とか「歌はダメなんです」って言うのも、音楽ってそもそも職業じゃないし、変な話なんですよ。そういう人にとっては、CDを買うっていうことが音楽になってる。それってホームヘルパーに掃除をお願いして、自分ではやらないみたいな話と同じで、どんどんアウトソーシングして、自分が楽しむものではなくなってしまっているというか。

織田:自分を満たすためのものを、自分で作らないことが普通になっちゃう。それは、判断基準が一律化してるからですよね。

ハブ:小泉文夫先生(日本の民族音楽学者)が「音楽は社会を映す鏡だ」って言ってて、例えばガムランって、誰かが飛び抜けることなく、みんなが同じようなことをやって全体としてすごい演奏が生まれるんですけど、それはある意味蟻んこみたいな社会を表している。いろんな社会の中で音楽は変化していって、そこには無意識のうちに経済とか社会の構造、歴史とかが表れちゃってるんですよね。


僕らはこれをあくまでポップスとしてやってるんです。伝統芸能に入れない僕らは、大衆音楽じゃないと意味がないですから。(武)

―新作の『遊びましょう』についても訊かせてください。どんな方向性で作られた作品だと言えますか?

:まず“許してワニ”“青”“鬼の子の夢”は平均律じゃないんですね。一応、音階的には西洋の音階を使ってるけど、自作楽器のチューニングが完璧には合わないんで、どうしても平均律じゃなくなるっていう。

ハブ:我々の歌もそうだしね。

:三人でユニゾンで歌ってるからね。フロントマンっていう発想が出てきたのも20世紀に入ってからだろうね。

ハブ:サカキマンゴーさん(アフリカの楽器・親指ピアノと鹿児島の板三味線・ゴッタンの演奏家)がおっしゃってますけど、今みんなでユニゾンするのってアイドルだけなんですよね。

:アイドルはホント総合芸術だもんね。「歌は上手い人が歌う」なんていうのも、ちゃんちゃらおかしい話なんですよ。

―1曲目の“源助さん”はどんなモチーフからできた曲なんですか?

:浪曲、浄瑠璃、義太夫、落語とか、日本の芸能の語り物が好きなので、歌の要素と語りの要素を一緒にしたくて。岐阜県の白鳥町というところの盆踊りで歌われてる“源助さん”って民謡があるんですけど、タイトルだけそこから取って、あとは全部オリジナルです。“鬼の子の夢”は都節音階っていう、尺八とかお琴とかで演奏する音階でやってるんですけど、これも揺らぎと非平均律ですね。

―“わたしたち”では<さあさあ歌いませんか 儚いうちに わたしたちの歌い方で>と歌われていて、本作のテーマソングのような印象を受けました。

:アジテーションとか、自分の思想を音楽にするということは普段やってないんですけど、この曲に関しては例外で、自分の思想を伝えようと思って作りました。今日お話ししたように、誰かのような歌い方でしか歌えないというのはナンセンスだっていうことを、そのまま歌にしたんです。民族音楽的に解釈すれば、「歌」の語源は「訴える」っていうところから来ているので、訴えていこうかなって。

―でも、聴いた印象としては市井の人々が呼びかけ合っているようにも聴こえて、個人を超えた歌になっていると思いました。

:それなら成功ですね(笑)。まあ、三人で歌ってるのも大きくて、一人で歌うとどうしても特定の個人になるけど、三人で歌うことで、誰の声でもない、この世に存在しない声になるから、ある種匿名性が生まれるんですよ。

左から:ハブヒロシ、織田洋介、武徹太郎

―では最後に、馬喰町バンドとして達成したいことを教えてください。

:完全に楽典のメソッドからは外れたメソッドだけで、アルバムを1枚作りたいですね。ただ、僕らはこれをあくまでポップスとしてやってるんです。なので、アルバム通して非平均律なんだけど、アメリカのロックとかと同じくらい、今までで一番ポップな作品を作ってみたいですね。伝統芸能に入れない僕らは、大衆音楽じゃないと意味がないですから。

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リリース情報

馬喰町バンド 『遊びましょう』(CD)
馬喰町バンド
『遊びましょう』(CD)

2015年9月2日(水)発売
価格:2,376円(税込)
HOWANIMALMOVE / HAMB-001

1. 源助さん
2. 許してワニ
3. 微生物
4. わたしたち
5. 青
6. 鬼の子の夢
7. いだごろ
8. ムツゴロウさん
9. 月夜のおまえさん

イベント情報

『「遊びましょう」レコ発ライブ』

2015年9月4日(金)
会場:山形県 鶴岡 Bar Trash

2015年9月6(日)
会場:福島県 いわき THE QUEEN Live&Restaurant

2015年9月13日(日)
昼の部:OPEN 15:00 / START 15:30
夜の部:OPEN 19:00 / START 19:30
会場:東京都 馬喰町ART+EAT
ゲスト:
飯野和好
三井闌山

インストアライブ
2015年10月3(土)
会場:東京都 タワーレコード渋谷店

2015年10月10日(土)
会場:愛知県 名古屋 ブラジルコーヒー

インストアライブ
2015年10月11日(日)
会場:京都府 タワーレコード京都店

インストアライブ
2015年10月11日(日)
会場:大阪府 タワーレコード難波店

2015年10月12日(月・祝)
会場:大阪府 豊中 DECOBOCO farm KITCHEN

2015年10月16日(金)
会場:東京都 西麻布 音楽実験室新世界
出演:
青葉市子
川村亘平斎(滞空時間)

2015年10月24日(土)
会場:長野県 松本 神宮寺

2015年11月1日(日)
会場:埼玉県 熊谷 モルタルレコード

プロフィール

馬喰町バンド(ばくろちょうばんど)

武徹太郎(ギター・六線・唄)、織田洋介(ベース・唄)、ハブヒロシ(遊鼓・唄)による三人組。昭和生まれ、新興住宅地育ち。懐かしいようでいて何処にも無かった音楽を、バンド形式で唄って演奏する。日本各地の古い唄のフィールドワークや独自の「うたあそび」を元に奇跡的なバランス感覚で生みだされる彼らの音楽は、わらべうた・民謡・踊り念仏・アフロビート・世界各地のフォークロアが、まるで大昔からそうであったかのように自然に共存する。2015年9月2日、待望の4thフルアルバム『遊びましょう』をHOWANIMALMOVEよりリリース。

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