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クウチュウ戦の警告。左脳ばかりを動かす現代日本人を刺激する

クウチュウ戦の警告。左脳ばかりを動かす現代日本人を刺激する

クウチュウ戦『Sukoshi Fushigi』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:西田香織

つまんないもん、どいつもこいつも。大抵のものは右脳を一切使っていない。左脳の檻に閉じ込められて、理論だけで終わっちゃっているんです。(リヨ)

―さっきリヨさんの口から出た、1960年代のヒッピーカルチャーみたいなものに対する憧憬って、クウチュウ戦にはあると言えますか?

リヨ:いやぁ、ないですね。この時代に生まれたのは俺のカルマだから。一時期、「俺は生まれてくる時代を間違った」なんて愚痴っていたこともあったんです。でも、俺は生まれるべくしてこの時代に生まれて、今、音楽をやっているんだと思う。それに、インドに一生住みたいかと言われたら、全然そんなことはなくて。結局、自分が住むのは東京だと思っているんですよ。東京のことを、50パーセントは憎んでいるけど、50パーセントは愛している。とにかく安全ですよね、日本って。インドはカオスだから、刺激はあるけど……財布もぱくられたし、熱も40度くらい出たし、牛にも突かれたし!

リヨ

―牛に……。でも、息苦しさを感じるような今の環境に対しても、刺激を与えてくれる未知の場所に対しても、愛憎が半々に存在することは、大事なことかもしれないですね。

リヨ:うん、理性的なものも感性的なものも、どっちも絶対に必要なんだと思います。感性的過ぎたらカオスだし、理性的過ぎたら表面的なものになってしまう。俺らは、手段としては理性的だと思いますよ。こうやって、きっちりとしたビートに乗せて、メロディーも決まっていて。でも、その中にはとても感性的なものが詰まっているっていう。どっちも必要なんですよね。今は時代が理性に行き過ぎているから、それを、ちょっとだけ感性に戻せたらいいなって思っているんです。

―「クウチュウ戦の音楽は世直しだ」という意識はどれくらいありますか?

リヨ:「世直ししたい」とは言いたくないけど、もう世直しになってしまうんでしょうね。つまんないもん、どいつもこいつも。リスペクトしている同世代のミュージシャンもいるし、日本の音楽シーンが終わっているなんて思わないけど、大抵のものは右脳を一切使っていない。考えて作っているだけ。左脳の檻に閉じ込められて、理論だけで終わっちゃっているんです。だから、(胸を指しながら)ここまで届かないんですよね。この間スタジオの待合室にいたら、別のバンドマンが、「俺らに才能なんてないじゃん。でも、RADWIMPSみたいなものを作れば売れるんじゃない?」みたいな話をしていて……俺は絶望しました。

カオル:自分らのいる狭い世界への対症療法的に音楽を作っている人が多いですよね。

リヨ:そんな連中は趣味でやってればいいじゃん。自分で「才能ねえ」とか言ってるんだぜ?

カオル:もし売れたとしても、それだと仕事としての志も低いだろうね。趣味としてやろうが、カルマとしてやろうが、そんなやり方でやるんだったら、その人は音楽やらない方が絶対に幸せなんだけどな。他にも楽しいことはこの世にいっぱいあるわけだし。

ベントラーカオル

―9月に行われた自主企画『クウヂュウの戦~ikusa~Vol.1』のゲストには、嶺川貴子&Dustin Wong、それに、かせきさいだぁ&ハグトーンズを招いていましたよね。この出演者の並びを見たときも思ったんですけど、クウチュウ戦って、音楽性としても、考え方としても、似た者のいない独特な場所に立とうとしていますよね。

リヨ:立ち位置とかは考えてないですよ。9月の企画も、「刺激的だから一緒にやりたい」という理由で出てもらっただけで。でも、『ポンキッキーズ』みたいになりたいなぁって思うんですよ。俺は『ポンキッキーズ』チルドレンなんです。3~4歳の頃に、矢野顕子とか斉藤和義とかスチャダラパーとか、今の俺みたいに面白い人たちをテレビで見せられて、良質なポップスを聴かせてくれた。あれって、すごくいい洗脳効果だったと思うんですよね。今のちびっ子がクウチュウ戦を聴いたら面白いと思う。だって、俺ら面白くないですか?(笑)

―ははは(笑)。もちろん、面白いと思ってるからこうやって取材させてもらってるわけです(笑)。バンドの立ち位置について、カオルさんはどうですか?

カオル:僕も、あんまり立ち位置とかは考えていないけど、聴いた人がこの作品を位置づけようとするなら、それは自分の人生における位置づけであってほしいですね。最近、未成年の若いお客さんもチラホラ見かけるけど、思春期の頃に聴いた音楽って、なにかしらその後の自分の人生を決定づけたり、一度離れても、戻って来るとなぜか引っかかっちゃうものだったりするじゃないですか。そういう1枚に確実になってほしいという願望はあります。

リヨ:それはあるね。

「感じろ感じろ感じろ感じろ感じろ感じろ!!」っていうことです。(リヨ)

―話を聞いていると、今、クウチュウ戦としてやるべきことを、とても明確に見据えていますよね。

リヨ:別に、使命感や野望があるわけじゃないですよ。「俺が頂点に君臨してなにかを変えてやろう!」っていう、そんな独裁者みたいになりたいとは思わないですから。それに、バンドが今どこに向かっているのかとか、それもどうでもよかったりしますね。芯がないことが、俺の芯なんです。型にはまりたくないし、漂っていたい。思いつきで全部やりたいんです。女によく言われるんですよ、「あんたには芯がない」って。その度に「うるせえなぁ」って思っています。

―ははは(笑)。でも、「型にはまらない」ことこそ、自分のすぐ近くにある「少し不思議」ななにかに気づくための、なによりのきっかけになるのかもしれないですね。

リヨ:うん、目標とか掲げる時点で、もう可能性は限られますよね。そこに向かって無理やり行こうとしているから。でも実際は、歩いていく過程で、どんどん景色は変わっていくし、人間も変わっていく。だったらもう、芯なんてなくていいんです。そのときそのときでやりたいことをやればいいと思う。でも、その中で、クウチュウ戦の音楽を聴いてなにかを感じて気づく人が多く出てきたら、今よりもうちょっとはマシになると思う。別に、音楽の力ってそんなに強いものだとは思っていないですよ。でも、ちょっとでも、微々たるものでもいいから、誰かが僕たちの音源からなにかを感じてくれたらいいなって思いますね。「感じろ感じろ感じろ感じろ感じろ感じろ!!」っていうことです。

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リリース情報

クウチュウ戦『Sukoshi Fushigi』
クウチュウ戦
『Sukoshi Fushigi』(CD)

2016年1月20日(水)発売
価格:1,000円(税込)
DQC-1513

1. 光線
2. 青い星
3. 雨模様です
4. 台風
5. にゅうどうぐも
6. エンドレスサマー

イベント情報

『ミニライブ、サイン会』

2016年2月14日(日)14:00~
会場:大阪府 タワーレコード難波店

2016年2月21日(日)21:00~
会場:東京都 タワーレコード新宿店

プロフィール

クウチュウ戦
クウチュウ戦(くうちゅうせん)

1990年生まれのロックカルテット。2008年、大学1年のリヨ(Vo,Gt)とニシヒラユミコ(Ba)が原型バンドを結成。2011年1月、ベントラーカオル(Key)加入。同年7月にリヨが突然ペルーに飛び、アマゾンのジャングルの奥で行われる神秘的な儀式に参加。その後、2012年3月までイギリス/オランダなど、ヨーロッパを放浪。2012年11月、シングル『意気消沈/白い十代』を500枚限定でリリース。瞬く間にソールドアウト。2013年5月、アバシリ(Dr)が正式加入。新体制のクウチュウ戦が誕生。その高度な演奏力、プログレッシブな音楽性が同世代の客/バンド/ライブハウス関係者などに絶賛されるが、そこにあった本当に重要なものは、夏のオリオンのように美しいメロディー、日常の風景を少し不思議な空間に異化させるユニークな視点を持ったリリック、そして光線のように天空を突き抜ける歌心だった。2016年1月20日、2ndミニアルバム『Sukoshi Fushigi』をリリース。

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