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伊藤歩が振り返る、『スワロウテイル』とYEN TOWN BANDのいま

伊藤歩が振り返る、『スワロウテイル』とYEN TOWN BANDのいま

インタビュー・テキスト
柴那典

「これだ」と思ったものをちゃんと自分の意志で掴んだ喜びは、いままで得たものとは比べ物にならないほど嬉しいものでした。

―仕事に、楽しさややりがいを感じられるようになってから、ご自身のなかでどのような変化が生まれましたか?

伊藤:女優という仕事は29歳くらいでふるいにかけられるところもあって、仕事が不安定で、苦しかった時期だったとも思います。でも、そのころは、「これだ」と思ったものをちゃんと自分の意志で掴んだ実感があった。その喜びは、いままで得たものとは比べ物にならないほど嬉しいものでした。小さなことでも大きなことでも、自分の意志でなにかを掴むことの大切さを感じていました。

『アイノネ』MVより 岩井俊二によるアニメ版『スワロウテイル』

『アイノネ』MVより 岩井俊二によるアニメ版『スワロウテイル』
『アイノネ』MVより 岩井俊二によるアニメ版『スワロウテイル』

―女優という仕事についても、自分の生き方も、大きく変わったタイミングだったんですね。

伊藤:変わりましたね。あと、転機としては東日本大震災も大きかったです。祖父母が岩手の大船渡に住んでいて、私は時間があったので2週間とか1か月、おばあちゃんの介護をするようになっていました。そんなときに震災が起こり、家族にも親戚にもいろんなことがありました。友人が亡くなったりもしました。自分なりに復興支援に関わらせていただくようにもなって、震災から1年くらい経ったときに、本当に自分のやりたいことをやり遂げようと思ったんです。自分が活躍する姿を見せたい、と。そういうことを再確認させてもらうタイミングでもありました。

―今年は『その男、意識高い系。』で連続テレビドラマ初主演をつとめるなど、女優として活躍の場が広がっています。そういう状況はどう捉えてらっしゃいますか。

伊藤:いまの状況は、はじめて自分の意志で頑張ったことが、2、3年かけて少しずつかたちになった結果だという実感があります。だから、すごく感謝することが増えました。自分のために一生懸命頑張ってくれるマネージャーや社長、私を使いたいと思ってくれる方々、周囲の方々への感謝ですね。自分の意志でやっている感覚のなかで仕事をいただけていることには、すごく幸福を感じます。

『アイノネ』MVより 岩井俊二によるアニメ版『スワロウテイル』

『アイノネ』MVより 岩井俊二によるアニメ版『スワロウテイル』
『アイノネ』MVより 岩井俊二によるアニメ版『スワロウテイル』

―いまは10代のころと違って、女優としての仕事に手応えと充実を感じているんですね。きっと、そうなったいまだからこそ、過去をフラットに見られるようになったのではないかと思うんですが。どうでしょう?

伊藤:そうですね。憶えていないことのほうが多いですし、じつは『スワロウテイル』みたいに、過去の自分の仕事をずっと言われ続けることは重荷だったりもしますけれど(笑)、冷静に見られるようになったとは思います。

その時代に存在したものって、そのときだけのものだと思うんです。それをもう一度追わなくてもいい。震災からの復興に関しても、同じことを思いました。

―いまあらためて『スワロウテイル』という映画について、どんなことを感じますか。

伊藤:やっぱり、『スワロウテイル』自体が居場所のない人たちの話だったと思うんです。「円都」という街に移民たちが来て、お金を稼いで、自分の場所に帰っていくという。主人公のグリコやアゲハにとってもそうだった。自分の場所を探していく話だったと思います。あのころはそんなこと考えなかったですけれど。

『アイノネ』MVより 岩井俊二によるアニメ版『スワロウテイル』
『アイノネ』MVより 岩井俊二によるアニメ版『スワロウテイル』

―当時の自分はいまとは別人のような感覚がある。

伊藤:「あれは本当に私だったのかな……」って思うことのほうが多いんですよ。違う人生だったような気がするというか、まだ生まれていなかった時代というか、芋虫のような状態でいたときにやっていたことというか。たしかに自分だったんですけれど、どこか違うんですよね。

―いま、YEN TOWN BANDの20年ぶりの復活をきっかけに当時の記憶を紐解いて、あらためてどう感じてらっしゃいますか?

伊藤:玉手箱を開けるような感覚ですね。大切だからこそ心の奥底にしまっていたのだと思います。新曲もリリースされるということなので、YEN TOWN BANDとしても、新しいものを作り上げているのかなって思いました。

『大地の芸術祭 2015 YEN TOWN BAND @NO×BUTAI produced by Takeshi Kobayashi』ライブ風景
『大地の芸術祭 2015 YEN TOWN BAND @NO×BUTAI produced by Takeshi Kobayashi』ライブ風景

―新潟のライブでは新曲“アイノネ”も披露されていましたが、聴かれて、どう感じましたか?

伊藤:「こんな感じだったかな?」と感じました。たしかにYEN TOWN BANDで、どこか懐かしいんだけれど、確実に新しい。そういう感覚がありましたね。CHARAさんも金髪になっていたし、グリコなんだけれど、脱皮している状態というか。ちゃんと「いま」になっている。それでいいんだなって思いました。過去にあったものを追う必要はないんだなって。

―いまの時代のものになっているのが大事だった。

伊藤:そうですね。その時代に存在したものって、そのときだけのものだと思うんです。それをもう一度追わなくてもいい。震災からの復興に関しても、同じことを思いました。もとあった場所に戻るというより、新しいものを作り上げていきたい、と。そういう意味でも、新曲が聴けたのは嬉しかったです。ライブでも言っていましたが、いまは新しいアルバムも作っているんですよね。それを聴くのも楽しみにしています。

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リリース情報

YEN TOWN BAND『アイノネ』
YEN TOWN BAND
『アイノネ』初回限定盤(2CD)

2015年12月2日(水)発売
価格:1,620円(税込)
UMCK-9796/7

[DISC1]
1. アイノネ
2. ainone 2XXX
3. アイノネ(instrumental)
4. ainone 2XXX(instrumental DUB MIX)
[DISC2]
・『大地の芸術祭 2015 YEN TOWN BAND @NO×BUTAI produced by Takeshi Kobayashi』のライブ音源“Gold Rush”“Sunday Park”“上海 ベイベ”“Swallowtail Butterfly ~あいのうた~”計4曲収録

YEN TOWN BAND『アイノネ』通常盤
YEN TOWN BAND
『アイノネ』通常盤(CD)

2015年12月2日(水)発売
価格:1,080円(税込)
UMCK-5588

1. アイノネ
2. ainone 2XXX
3. アイノネ(instrumental)
4. ainone 2XXX(instrumental DUB MIX)

YEN TOWN BAND『MONTAGE』デジタルリマスター盤 初回限定盤
YEN TOWN BAND 『MONTAGE』デジタルリマスター盤 初回限定盤(CD+DVD)

2015年12月2日(水)発売
価格:6,264円(税込)
UMCK-9798

[CD]
1. Sunday Park
2. Mama's alright
3. She don't care
4. Swallowtail Butterfly ~あいのうた~
5. 上海 ベイベ
6. してよ してよ
7. 小さな手のひら
8. My way
[DVD]
・映画『スワロウテイル』(監督:岩井俊二)

YEN TOWN BAND『MONTAGE』デジタルリマスター盤 通常盤
YEN TOWN BAND
『MONTAGE』デジタルリマスター盤 通常盤(CD)

2015年12月2日(水)発売
価格:2,160円(税込)
UMCK-1529

1. Sunday Park
2. Mama's alright
3. She don't care
4. Swallowtail Butterfly ~あいのうた~
5. 上海 ベイベ
6. してよ してよ
7. 小さな手のひら
8. My way

YEN TOWN BAND『MONTAGE』デジタルリマスター盤
YEN TOWN BAND
『MONTAGE』デジタルリマスター盤(アナログ12inch)

2015年12月23日(水)発売
価格:3,024円(税込)
UMJK-9060

1. Sunday Park
2. Mama's alright
3. She don't care
4. Swallowtail Butterfly ~あいのうた~
5. 上海 ベイベ
6. してよ してよ
7. 小さな手のひら
8. My way

プロフィール

{アーティスト名など}
伊藤歩(いとう あゆみ)

1980年、東京生まれ。『水の旅人-侍KIDS』(1993年)で映画デビュー。岩井俊二監督『スワロウテイル』で『第20回日本アカデミー賞・優秀助演女優賞』『日本アカデミー賞・新人俳優賞』『第11回高崎映画祭・最優秀新人女優賞』を受賞。2001年には、YUKI、CHARA・YUKARIE、ちわきまゆみの五人で、バンド「Mean Machine」を結成。シングル『スーハー』(2001年)、アルバム『Cream』(2001年)を発表した。現在、映画、ドラマ、CM、舞台と幅広く活躍。2016年1月から放送される連続ドラマ『わたしを離さないで』(TBS系 / 毎週金曜22時)に出演。同じく2016年2月29日から東京、大阪で舞台『ETERNAL CHIKAMATSU』(近松門左衛門『心中天網島』より)に出演する。

YEN TOWN BAND(いぇんたうんばんど)

岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』(1996年)の音楽を担当した小林武史のプロデュースにより、劇中に登場した架空のバンド。ボーカルは、主人公グリコ役を演じたChara。シングル『Swallowtail Butterfly ~あいのうた~』、アルバム『MONTAGE』はオリコンチャートでもシングル / アルバム同時1位となり大ヒットを記録した。9月12日、新潟で開催された『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015』にて、12年ぶりのライブを行い、10月には全国5都市を巡るライブイベント『JFL presents LIVE FOR THE NEXT supported by ELECOM』に出演した。12月29日には『COUNT DOWN JAPAN15/16』への出演が決定している。

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