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小林賢太郎が惚れ込む「自由」すぎる天才演出家・村井雄の正体

小林賢太郎が惚れ込む「自由」すぎる天才演出家・村井雄の正体

開幕ペナントレース『ROMEO and TOILET』
インタビュー・テキスト
石本真樹
撮影:壺久

題材は下ネタでも、本質みたいなものを探っているので、エロいものや下品なものにはしたくない。(村井)

―逆に村井さんは、小林さんの作品をどう観られていたんですか?

村井:単純にすごいと思います。ぼくはシーンをボン、ボン、ボンと置いてからストーリーをつなげていくんですけど、賢太郎さんは緻密に計算して、台本も地層を積み重ねるように作るから、どこを見てもつながっていてバラバラに見えない。『SPOT』という作品が大好きなんですが、ラストシーンへの伏線の張り方がすごいんですよ。

左:小林賢太郎、右手前:村井雄

―ソロパフォーマンス「Potsunen」名義での作品ですね。

村井:あと、賢太郎さんって、高尚にも見えるけど「かわいさ」があるじゃないですか。背丈も大きいし大人なのに、舞台の上ではかわいい。ぼくたちもニューヨークでは「日本人はみんな『星のカービィ』だ」とか「Boyがやっているからかわいい」とか言われたけど、賢太郎さんは日本人から見てもかわいいのがすごいなと。

小林:あんまり褒められている感じがしないなぁ(笑)。

―お二人の作風はまるで違うように見えて、根っこの部分では共通点もありそうです。

小林:ぼくは、だいぶ近いと思っているんです。ぼくも彼らも全部は説明しない、お客さんに仕事をさせるタイプのエンターテイメントなのかなと。「思考の種」みたいなものが舞台からボンボン飛んできて、答えは一切教えてもらえないけど、ヒントはいっぱい出ている。それをつなぎ合わせていくとたまらなくおもしろくなっていくというか。だからはじめてニューヨークで観たとき、「きっとぼくと好きなものが近いに違いない」と感じました。

開幕ペナントレース『1969:A Space Odyssey?Oddity!』 撮影:池村隆司
開幕ペナントレース『1969:A Space Odyssey?Oddity!』 撮影:池村隆司

―作品作りに対する価値観が近いのかもしれませんね。

小林:一方で決定的に違うところもあります。以前、村井くんと飲んでいたとき、「本当はあそこでもっと笑いがほしかった」とか、「もう少し評価してもらいたい」といったもどかしさを話していたので、一応少しだけこの世界に長くいる人間として「君たちはコンセプトアルバムばかり出しているから、たまにはシングル出したら」と助言したんです。

―音楽でいえば、アルバムの最初から最後まで通して聴かないと本当のよさがわからないというか。

小林:食べやすい部分だけ凝縮した作品も発表して間口を広げれば、もっと多くの人が開幕ペナントレースのおもしろさに気が付いてくれるんじゃないかと思って。それこそラーメンズは、1つのネタが短いので、テレビなどで切り売りができたんです。でも村井くんは「それはやらない」と。そのときに、彼らはアーティストなんだなと思いました。

村井:いや、やりたい気持ちはあるんです。でも、できないというか(笑)。この前、ポップなことをやろうという企画に作・演出で呼んでもらったんですけど、結果的にできあがったのはサミュエル・ベケット(20世紀フランスを代表する劇作家)みたいな不条理劇で、「これはポップじゃない……」と。『ROMEO and TOILET』はポップだと思っているんですけどね。

小林:ぼくもポップだと思うけど。

開幕ペナントレース『King Lear, SADAHARU −リア王貞治−』 撮影:池村隆司
開幕ペナントレース『King Lear, SADAHARU −リア王貞治−』 撮影:池村隆司

開幕ペナントレース『King Lear, SADAHARU −リア王貞治−』 撮影:池村隆司
開幕ペナントレース『King Lear, SADAHARU −リア王貞治−』 撮影:池村隆司

村井:『ROMEO and TOILET』は「ウンコ」の話で、白い全身タイツ衣裳は「便器」をイメージしていたんですが、今回再演するにあたって「これは精子の話だ!」と思いついて、稽古初日にメンバーに伝えたんです。でも、下ネタに取られてしまう恐れもあるので、どうしようかなと考え中です。題材は下ネタでも、カッコよく言うと本質みたいなものを探っているので、普通にエロいものや、下品なものにはしたくないんですよ。

小林:ネタは「ウンコ」でも、会場から起こる笑いの種類は、下ネタで笑っている雰囲気じゃないよね。モチーフが便器だったり精子だったりすると、下ネタに取られかねないのは損だけど。

村井:友達に説明できない芝居ですから(笑)。

小林:でも、毎回書かせてもらっているチラシの推薦文、われながら頑張っていると思うんだよ。

何なんだろうこのショーは。何星人なんだろう彼らは。疑問ばかりが残る全力のパフォーマンスに、たぶん答えはない。開幕ペナントレースという新ジャンル。広ーい意味で同業者として、早く気がついてよかった。(『ROMEO and TOILET』2010-2016年)

『GRECO-ROMAN HOLIDAY - グレコローマンの休日』チラシ
『GRECO-ROMAN HOLIDAY - グレコローマンの休日』チラシ

開幕ペナントレースを初めて観る方へ。感動はするかどうか分かりませんが、ビックリはすると思います。全力大汗現代雑技団。狭い劇場をもっと狭く感じさせることうけあい。愛とか芸術とかヘプバーンとか、いろんなものを塗りつぶしてくれることうけあい。(『GRECO-ROMAN HOLIDAY - グレコローマンの休日』2012-2013年)
「こんなものはリア王じゃない」と誰かが言う前に、僕が言います。「そうです。これはリア王ではありません。これは開幕ペナントレースです!」(『King Lear, SADAHARU −リア王貞治−』2013年)

『宇宙三兄弟』チラシ
『宇宙三兄弟』チラシ

村井からこの作品の内容を聞いたとき「はぁ?」って思った。お客様におかれましても、劇場の客席で「はぁ?」と思うことでしょう。また憎らしいことに、それは村井にとって成功だったりもするのです。(『宇宙三兄弟』2014年)

小林:こんな理解者いないよ!(笑)

村井:本当にそうです。書いてくれることも、だんだん核心をついてきているんです。

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イベント情報

第4回世田谷区芸術アワード“飛翔”舞台芸術部門受賞記念公演
シアタートラム ネクスト・ジェネレーション vol.8
開幕ペナントレース
『ROMEO and TOILET』

2016年2月25日(木)~2月28日(日)全6公演
会場:東京都 三軒茶屋 シアタートラム

出演:
高崎拓郎
G.K.Masayuki
岩☆ロック
ささの翔太
竹尾一真
針金信輔
山森大輔

脚本・演出・美術:村井雄
音楽:Tsutchie
舞台監督:岩淵吉能
照明デザイン:沖野隆一
音響:百瀬俊介
映像:ワタナベカズキ
衣装:大野典子
演出助手:松尾祐樹
プロダクションスーパーヴァイザー・英語字幕:青井陽治

料金:一般3,000円 高校生以下1,500円 U24(24歳以下)1,500円
※オールスタンディング

プロフィール

小林賢太郎(こばやし けんたろう)

1973年生まれ。神奈川県出身。1996年に大学の同級生、片桐仁とコントグループ「ラーメンズ」を結成し、脚本・演出・出演のすべてを手がける。2002年、演劇プロジェクト「K.K.P.」、2005年、パントマイム、マジック、イラスト、映像などを駆使して構成されるソロパフォーマンス「Potsunen」を始動。現在は、2月29日まで演劇作品『うるう』の全国ツアー中。福岡の「アルティアム」にて3月13日まで『小林賢太郎がコントや演劇のためにつくった美術展』を開催中。2月18日には『うるう』のもうひとつの物語を描いた絵本『うるうのもり』が講談社より、3月2日はDVD・Blu-ray『小林賢太郎テレビ6・7』がポニーキャニオンより発売される。

村井雄(むらい ゆう)

1978年生まれ。千葉県出身。目黒区職員を経て、2006年に開幕ペナントレースを旗揚げ。以降、全作品の構成・脚本・演出を担当。鋭い戯曲解釈による大胆な作品構成、独自の世界観に基づく美しい空間構成に定評があり、2009年には『ROMEO and TOILET』で初の海外公演を敢行。「The New York Times」などのメディアで劇評が掲載されるなどの成功をおさめた。2015年7月にはアヴィニョン(フランス)、10月にはチュニス(チュニジア共和国)で『1969:A Space Odyssey?Oddity!』を上演。「本物のアーティスティックな体験」(フランス / La Provence紙)と高い評価を受けた。2012年『若手演出家コンクール優秀賞・観客賞』の同時受賞、2013年『利賀演劇人コンクール奨励賞』受賞。

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