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小林賢太郎が惚れ込む「自由」すぎる天才演出家・村井雄の正体

小林賢太郎が惚れ込む「自由」すぎる天才演出家・村井雄の正体

開幕ペナントレース『ROMEO and TOILET』
インタビュー・テキスト
石本真樹
撮影:壺久

推薦文では、開幕ペナントレースを言葉で表現する限界に挑んでいます。彼らには通訳が必要なので、ぼくが買って出ているわけです。(小林)

―ほとんどの公演チラシの推薦文を、小林さんが書いているなんて贅沢ですね。

小林:毎回、褒めずに開幕ペナントレースを言葉で表現する限界に挑んでいます。でも、これは第三者だから言えることなんですよね。自分たちで「ぼくたちの作品はわからない人も多い」みたいに書いたら、スベってる感じになるもん。でも開幕ペナントレースにはチケットを買うまでの通訳が必要なので、ぼくが買って出ているわけです(笑)。

開幕ペナントレース『1969:A Space Odyssey?Oddity!』 撮影:池村隆司
開幕ペナントレース『1969:A Space Odyssey?Oddity!』 撮影:池村隆司

村井:本当にありがたいです。賢太郎さんに推薦文をお願いすると、「作品の内容を教えて」とご飯に誘ってくれるんです。でも構想を話しても、いつも「はぁ?」って言われる(笑)。

小林:『宇宙三兄弟』は、内容を教えてもらった上でおすすめポイントを書きたかったのに、聞いてもわからなかったから、正直に「はぁ?」って書いちゃった。観に行っても全然わからなかったけど(笑)。最後もパッと舞台が急に明るくなって、お客さんがポカーンとしていたら、舞台袖から村井が客席に向かって「終わりです」って言ったんだよね。高校時代に演劇部の女子が「これで演劇部の発表を終わります」って言った以来だよ、「終わりです」って言わなきゃわからないものを観たのは(笑)。

村井:「え? 終わったのになぁ」っていう真顔で言いますからね(笑)。

小林:だから、お客さんには「開幕ペナントレースに合わせてください」としか言えないです。開幕ペナントレースはお客さんに合わせないから。

「笑い」以外の感情を捉えるアンテナが村井くんにはある。(小林)

―村井さんはもともと公務員で、学生時代に演劇経験もなかったそうですが、いきなり独自スタイルの作品を作られていますよね。

村井:公務員を辞めて26歳で演劇をはじめるまで、まったく演劇を知らなかったのが大きいかもしれません。1つの物語を頭からお尻までずっとやるという基本すら知らなかったですから。普通の芝居にもすごく興味はあるんですが、とりあえず自分のやりたいことは、名作を自分なりに解釈して提案することなのかなと。せっかくやるなら、他と同じことをやっても仕方ないので、『ロミオとジュリエット』でも誰も知らない部分を引き出したかったというか。ユーモアも欲しいので、おもしろいものは提示したいんですけど、コメディーをやりたいとか、お笑いが得意だとは思っていないです。

開幕ペナントレース『King Lear, SADAHARU −リア王貞治−』 撮影:池村隆司
開幕ペナントレース『King Lear, SADAHARU −リア王貞治−』 撮影:池村隆司

小林:客席には、爆笑している人もいれば、びっくりしている人もいる。理解できずに不思議な気持ちになっている人もいる。笑いは「声」に変換されるけど、笑い以外の感情が引き出されても、直接耳には届かないですよね。でも、おそらくそれを捉えるアンテナが村井くんにはあるんです。笑いの量が少なかったらからウケなかったではなく、「何だろうこの人たちは?」というお客さんの視線が生まれたら、それもウケたことになる。そう思うと、開幕ペナントレースのやっていることって合点がいくんです。

村井:そう言ってもらえるのはすごく嬉しいです。ぼく、稽古場で同じようなことをメンバーに言った覚えがありますもん。じつは旗揚げ公演のときに揉めたんです。台本を読んだメンバーに「こんなのお客さんがおもしろいと思うわけがない」と言われて。

―意味が不明すぎる、と(笑)。

村井:ぼくは台本の書き方もよくわかっていなかったので、ト書きに「下手一列目の腰が上がる」とか、「前のめりになる」とか、「ここでため息が出る」とか、お客さんの反応も予測して書いて、それも含めて作品を作っていたんです。それで終わってみたら、全部そのとおりにハマっていて。メンバーも「これは続ける価値がある」と言ってくれたので、いまも続いているんです。

小林:え……? お客さんのリアクションをト書きに書いていたの?

村井:最初のころは全部書いていました。

小林:天才ですよ。天才(笑)。

左から:小林賢太郎、村井雄

村井:それもあって、オールスタンディング公演もはじめたんです。じつはヒントは賢太郎さんなんですよ。ニューヨークで飲んだときに、「『フエルサ ブルータ』(オールスタンディングで行なわれる、アクロバティックな世界的大ヒット舞台作品)を観たほうがいい。絶対参考になるから」と言ってくれて、さっそく次の日観に行ったんです。で、すごくスリリングで感動して、そこから「こういうことをやりたい」と言い続けています。

小林:空間全体に高揚感があるんだよね。同じ匂いを開幕ペナントレースにも感じたんです。『ビーシャ・ビーシャ ~デ・ラ・グアルダ~』(2003年東京公演で、5万人を集めて話題になった舞台)のクリエイターたちが再集結した作品で、2014年に日本にも来ていたよね。

村井:日本でも観ましたけど、ニューヨークではほとんど日本人がいなくて、その怖さも相まって印象的でした。

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イベント情報

第4回世田谷区芸術アワード“飛翔”舞台芸術部門受賞記念公演
シアタートラム ネクスト・ジェネレーション vol.8
開幕ペナントレース
『ROMEO and TOILET』

2016年2月25日(木)~2月28日(日)全6公演
会場:東京都 三軒茶屋 シアタートラム

出演:
高崎拓郎
G.K.Masayuki
岩☆ロック
ささの翔太
竹尾一真
針金信輔
山森大輔

脚本・演出・美術:村井雄
音楽:Tsutchie
舞台監督:岩淵吉能
照明デザイン:沖野隆一
音響:百瀬俊介
映像:ワタナベカズキ
衣装:大野典子
演出助手:松尾祐樹
プロダクションスーパーヴァイザー・英語字幕:青井陽治

料金:一般3,000円 高校生以下1,500円 U24(24歳以下)1,500円
※オールスタンディング

プロフィール

小林賢太郎(こばやし けんたろう)

1973年生まれ。神奈川県出身。1996年に大学の同級生、片桐仁とコントグループ「ラーメンズ」を結成し、脚本・演出・出演のすべてを手がける。2002年、演劇プロジェクト「K.K.P.」、2005年、パントマイム、マジック、イラスト、映像などを駆使して構成されるソロパフォーマンス「Potsunen」を始動。現在は、2月29日まで演劇作品『うるう』の全国ツアー中。福岡の「アルティアム」にて3月13日まで『小林賢太郎がコントや演劇のためにつくった美術展』を開催中。2月18日には『うるう』のもうひとつの物語を描いた絵本『うるうのもり』が講談社より、3月2日はDVD・Blu-ray『小林賢太郎テレビ6・7』がポニーキャニオンより発売される。

村井雄(むらい ゆう)

1978年生まれ。千葉県出身。目黒区職員を経て、2006年に開幕ペナントレースを旗揚げ。以降、全作品の構成・脚本・演出を担当。鋭い戯曲解釈による大胆な作品構成、独自の世界観に基づく美しい空間構成に定評があり、2009年には『ROMEO and TOILET』で初の海外公演を敢行。「The New York Times」などのメディアで劇評が掲載されるなどの成功をおさめた。2015年7月にはアヴィニョン(フランス)、10月にはチュニス(チュニジア共和国)で『1969:A Space Odyssey?Oddity!』を上演。「本物のアーティスティックな体験」(フランス / La Provence紙)と高い評価を受けた。2012年『若手演出家コンクール優秀賞・観客賞』の同時受賞、2013年『利賀演劇人コンクール奨励賞』受賞。

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