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協調性はつまらない。誰もが持つイビツを肯定する王舟の豊かな音

協調性はつまらない。誰もが持つイビツを肯定する王舟の豊かな音

王舟『PICTURE』
インタビュー・テキスト
渡辺裕也
撮影:中村ナリコ
2016/01/25
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今回のアルバムにはなかなかダサい曲が揃ってて、そこがいいなと思っている。

―「協調性に囲われたくないから、音楽を聴いている」というのはどういうことでしょう?

王舟:例えば、生きづらさを抱えているとして、そういうときに自分の知らない文化と出会ったりすると、それってちょっとした息抜きになると思うんですよ。だから僕は、音楽にもそれを置き換えられたらいいなと思ってるんです。そこで、今はいろいろ試してみようってことで、スタッフにも「次は一人でやる」と伝えて、今回のアルバムを作りはじめたんですけど、自分でそう決めておきながら、途中でそのコンセプトをうっかり忘れちゃって(笑)。実は今回も、参加してほしいゲストミュージシャンのリストを用意してたんですよ。そうしたらスタッフから「いやいや、ちょっと待ってよ」と。

―あははは(笑)。

王舟:つまり、作品単体としてみれば、今回のアルバムを自分一人で作る必要は特になかった、とも言えるんです。むしろ演奏からいろんな人の匂いを感じとれたほうが、音楽としてはふくよかになるような気もするし。でも、自分がこれから音楽をやっていく中での過程として考えると、この作品を一人で作ることは、とても重要だったと思います。あと、以前に自分は『賛成』というタイトルのCD-Rを出しているんですけど、あの作品をたまに聴き返していたのもあって、今回また宅録で作りたくなったってところもありましたね。ただ、そういう気分も日によってコロコロ変わるもんだから、途中で「やっぱりサポートに加わってもらおうかな」なんてことも思ったりして(笑)。

―一人でアルバムを作りながらも、その時々で気分の変化があったと。では、今回の『PICTURE』というタイトルはどのようにして決まったのでしょうか。雪山を描いたアートワークも含めて、ここには何かしらのコンセプトが読み取れそうな気もしたのですが。

王舟:タイトルについては、特に何も考えてないんですけど、オム・ユジョンさんが描いている雪山の絵に関しては、1年くらい前からスタッフのタッツ(仲原達彦)が勧めてくれていたんです。タッツが韓国で買ったオムさんのZINEを見せてくれて、それがすごくいいなと。そこで今回はジャケットをオムさんの絵にして、アルバムタイトルを『PICTURE』にしたら、何かそこにつながりというか、意味合いが出てくるかなって。自分が物事を決めるときって、だいたいそういう感じなんですよね。つまり、「こういう作品にしたい」みたいな目標は特にないんです。ただ、逆に「こうはしたくない」という否定の対象はたくさん用意してあって。そこから逃げていくと、最終的に「いい」と思えるものに出会えるというか。

王舟『PICTURE』ジャケット
王舟『PICTURE』ジャケット

―なるほど。まずはNGを並べていくわけですね。もしかすると、それってさっきの医学療法的な話とも通じるものですか。

王舟:そうそう。これも事前に作品の方向性を定めるのではなく、まずは不純物を除いていこうという考え方ですね。なので、今回のアルバムは個人的な目標を突き詰めた作品というより、大枠の中でその時々に思うことをやっていたら、自然とこうなったっていう感じなんです。そういう意味では、今回のアルバムは『Wang』とそれほど変わらないんじゃないかな。どちらにしても重要なのは、あくまでもそれを無意識でやっているということですね。確信めいたものをうちに秘めながらも、無意識でやるっていう。それが傍目からしたらダサかったりすると、尚更いいんですよね。自分的には今回のアルバムって、なかなかダサい曲が揃ってて、そこがいいなと思っているので(笑)。

―(笑)。いまいちピンときてないんですけど、どこがダサいんですか。

王舟:なんかちょっとカッコつけているところですかね(笑)。あと、『恋する惑星』という映画があるじゃないですか(ウォン・カーウァイ監督作品。1994年に公開された香港映画)。あの映画って、けっこう露骨な場面が多いわりに、そういうところもやたらとロマンチックに撮っちゃってて、それがものすごくダサいんですよ。でも、なんか気になって何度も見ているうちに、だんだんそれがかっこ良く見えてきちゃって。今回のアルバムには、その影響もあるんですよね。

王舟

―最初はダサいと感じていたはずなのに、いつの間にかそこが好きになってたと。

王舟:はい。というか、むしろ今では「もの作りはああじゃなきゃ」とまで思うようになっています(笑)。

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リリース情報

王舟『PICTURE』
王舟
『PICTURE』(CD)

2016年1月20日(水)発売
価格:2,700円(税込)
PECF-1131 / felicity cap-246

1. Roji
2. Hannon
3. Moebius
4. 冬の夜
5. lst
6. ディスコブラジル(Alone)
7. Hannon(Reprise)
8. Picture
9. Rivers
10. あいがあって
11. Port town

イベント情報

王舟
『PICTURE Release Tour(Alone)』

2016年2月11日(木・祝)OPE N18:30 / START 19:00
会場:愛知県 名古屋 西アサヒ
出演:
王舟
inahata emi

2016年2月13日(土)OPEN18:00 / START19:00
会場:京都府 喫茶ゆすらご
出演:
王舟
畳野彩加(Homecomings)

2016年2月14日(日)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:広島県 尾道 浄泉寺
出演:
王舟
白い汽笛

2016年2月18日(木)OPEN19:00 / START19:30
会場:福岡県 STEREO SIDE-B
出演:
王舟
夏目知幸(シャムキャッツ)

2016年2月20日(土)OPEN19:30 / START20:00
会場:北海道 札幌 キノカフェ
出演:
王舟
夏目知幸(シャムキャッツ)

2016年2月21日(日)OPEN19:30 / START20:00
会場:宮城県 仙台 BAR&EVENT HOLE Tiki-Poto
出演:
王舟
夏目知幸(シャムキャッツ)

料金:各公演 前売2,500円 当日3,000円

王舟
『PICTURE Release Tour(Big Band)』

2016年3月5日(土)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:大阪府 梅田 Shangri-La

2016年3月13日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM

出演:
王舟(Vo,Gt)
岸田佳也(Dr)
池上加奈恵(Ba)
潮田雄一(Gt)
みんみん(Key)
山本紗織(Flu)
高橋三太(Tp)
荒井和弘(Trb)
大久保淳也(Cl,Sax,Flu)
増村和彦(Per)
小林うてな(Steelpan,Marimba)
annie the clumsy(Cho)

料金:各公演 前売3,000円 当日3,500円

プロフィール

王舟
王舟(おうしゅう)

上海出身、日本育ちのシンガーソングライター。2010年、自主制作CDR『賛成』『Thailand』を鳥獣虫魚からリリース。2014年、1stアルバム『Wang』、7インチシングル『Ward/虹』をfelicityからリリース。2015年、1stアルバムのアナログ盤『Wang LP』、12インチシングル『ディスコブラジル』をfelicityからリリース。2016年、2ndアルバム『PICTURE』をfelicityからリリース。バンド編成やソロでのライブも行なっている。

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