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MYTH & ROID、アニソンブームの一端を担ったTom-H@ckの反逆

MYTH & ROID、アニソンブームの一端を担ったTom-H@ckの反逆

MYTH & ROID『ANGER/ANGER』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:永峰拓也

負の感情や嫌な思い出って、徐々に風化させたり、心の中に閉まっておいたりするものだと思うんですけど、むしろ私はいつでもそのときの自分になれるようにしたい。(Mayu)

―Mayuさんは「感情の最果て」を表現することについて、どのように捉えていますか?

Mayu:たった3~4分だったとしても、人にとって抑え込んでいる感情を出せる時間があることは、すごく大事なことだと私は思っていて。私は、聴いてくれた人の感情を出させてあげられる存在になりたいと思っているんです。たとえば、“ANGER/ANGER”では「怒り」を歌っているけど、その「怒り」は、聴いてくれる人たち一人ひとりによって変容していって、その人が音楽に支えられたり、救われたりすればいいなって。私が感情を歌う……それは、聴く人がその感情を持つことを許されるっていうことにも繋がるわけで。

―今言ってくださったことって、裏を返せばMayuさん自身がリスナーの感情の受け皿になるということですよね。それって、ものすごく覚悟のいることだと思うんですよ。この覚悟は、どこから生まれるものなのでしょうか。

Mayu:私には、「自分自身が歌だ」という感覚がずっとあるんです。小さい頃から「涙が全然出なくなっちゃったときも、悲しいことを歌っている歌を歌えば泣ける」みたいな感覚があって。歌うことによって「あ、私は自分自身なんだな」って認識するというか……日本語が変ですけど(笑)。私にとって歌は、「行為」じゃなくて「状態」なんです。

―たとえば“ANGER/ANGER”だったら、この曲を歌うことで、Mayuさんは怒っている状態の自分自身を見つけ出せるということ?

Mayu:そうですね。私にとって「怒り」は、特に重要な感情で。この曲は、誰かに対してというよりも、大多数に対しての怒りなんです。大人や社会、世の中……そういう抗えない、理不尽なものに対する怒りって、私の中にも常にあるものなので、この感情を歌えたのは嬉しかったですね。負の感情や嫌な思い出って、人は徐々に風化させたり、心の中に閉まっておいたりするものだと思うんですけど、むしろ私は、いつでもそのときの自分になれるようにしたいんです。

左から:Mayu、Tom-H@ck
左:Mayu

―Mayuさんの、歌を通して自分自身を主観的にも客観的にも見る感じって、すごく不思議ですね。

Mayu:不思議だと自分でも思います(笑)。突き詰めて言えば、私は歌がすごく好きだけどすごく嫌いだし。

―でも、そこまで自分自身と歌を結びつけているのなら、尚更、それが聴き手の中で変容して受け取られることや、そもそも、他の人が作った歌を歌うことに対して、拒否反応が出てもおかしくないですよね。

Mayu:たしかに、作曲と編曲はTomさんだし、作詞はhotaruさんなんですけど、他の人が作ったものと自分の感情との間にズレが生じるかと思いきや、“ANGER/ANGER”の歌詞を見たとき、自分以外の人が書いたと思えないくらい共感して。最初から最後まで「それな!」って思える歌詞だったんです(笑)。

―Tomさんには、Mayuさんがおっしゃったような自分の内面的な感情と音楽が直結する感覚ってありますか?

Tom:僕にはないですね。僕は、自分がヒーローになりたい人間ではないので。むしろ「誰かにヒーローになってほしい」と思いながらやっている。だから、常にコントロールしている部分があるんだろうと思います。

―「怒り」という感情についてはどうですか? “ANGER/ANGER”を作るときには、少なからず意識されていたと思うんですけど。

Tom:もう年齢も年齢なんで、そんなに怒ることもないんですよ。ただ、さっきMayuが言った「理不尽なものに対する怒り」って、若いときはすごくあったもので……実際、hotaruとは「自分たちの若い頃の怒りをMayuに歌わせよう」と話していたんです。偶然、この曲がエンディングで使われている『ブブキ・ブランキ』に出てくるのも、大人に向けての怒りを持っているキャラクターだったから、ちょうどいいなと思って。若いときに持っている情熱的なものをMayuに表現させようというプロデュースワークは意図していたから、さっきMayuが言ってた「それな!」と思う歌詞は、一応狙っていたという(笑)。

Tom-H@ck

世の中を動かしていくために、自分の哲学や信念とは真反対のことをやらなきゃいけないときがあるんですよ。でも、そうじゃないところで動くべき正義って、絶対あるから。(Tom-H@ck)

―若い頃のTomさんの怒りって、当時、音楽になっていましたか?

Tom:うーん……音楽になっていたものもあれば、音楽だけじゃないところでも消費していたとも思う。

―なんでこんなことを訊くかというと、“ANGER/ANGER”の随所に出てくるラウドロックやハードロック的なアプローチって、もしかしたら、Tomさん自身の思春期性が反映されたものなんじゃないかと思ったからなんです。

Tom:哲学的なことではなく、もっと音楽的な面でのことなんですけど、“ANGER/ANGER”のサビ前の盛り上がりって、Limp Bizkitの“Take a Look Around”という曲に通じるものがあるんですよ。作った後に気づいたんだけど、「あ、これ青春時代に聴いたやつだな」って。だから、若いときに感じていた怒りや情熱を表現しようとしたら、当時聴いていた音楽を知らぬ間に引っ張ってきていた感じなのかもしれない。

―今の話を聞いても思うんですけど、MYTH & ROIDって、Tomさんの音楽家としての……というか、音楽と共に生きてきた人間としての歴史を1本の道筋にしていくユニットでもあるのかなと思うんです。

Tom:そうかもしれないですね。僕自身、映画音楽を作りたいというところから出発しているから、『けいおん!』の頃のおもちゃ箱をひっくり返したような楽曲っていうのは、どこか自分を壊しながら作っていた部分もあって。音楽の技術的な話になってしまうんですけど、“ANGER/ANGER”って、左右のギターが、一切狂わずにずっと鳴っているんですよ。海外のこの手の音楽って、そうなんです。でも日本だと、ちょっとズレたりしている。そんな緻密なことをしたって売れないですからね。

―でも、そこを狂わせないことが、Tomさんにとって譲れない部分なんですよね。

Tom:人生において、生まれてから死ぬまでのひとつの哲学や信念ってあるじゃないですか。それは、すごく大事なものだと思うんですけど、世の中を動かしていくための活動やプロデュースワークって、そういう哲学や信念とは真反対のことをやらなきゃいけないときがあるんですよ。でも、そうじゃないところで動くべき正義って、絶対あるから。

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リリース情報

MYTH & ROID『ANGER/ANGER』
MYTH & ROID
『ANGER/ANGER』(CD)

2016年2月24日(水)発売
価格:1,296円(税込)
ZMCZ-10447

1. ANGER/ANGER
2. ICECREAM QUEEN
3. ANGER/ANGER(instrumental)
4. ICECREAM QUEEN(instrumental)

イベント情報

『MYTH & ROID スペシャルミニライブ』

2016年2月27日(土)13:00~ / 15:00~
会場:愛知県 イオンモール常滑 ワンダーフォレストきゅりお内 ワンダーステージ

2016年2月28日(日)13:00~ / 15:00~
会場:広島県 アルパーク 東棟2階 時計の広場

2016年3月5日(土)START 13:00
会場:大阪府 タワーレコード泉南店

2016年3月5日(土)START 17:00
会場:大阪府 天王寺ミオ

プロフィール

MYTH & ROID
MYTH & ROID(みすあんどろいど)

ボーカリスト・Mayu、プロデューサー・Tom-H@ckを中心としたコンテンポラリークリエイティブユニット。インターナショナルで本格的なサウンド、鋭角的でキャッチーなメロディ、圧倒的なボーカルパフォーマンスを兼ね備えた気鋭のユニットである。2015年7月、TVアニメ『オーバーロード』EDタイアップ楽曲の1st Single『L.L.L』でメジャーデビュー。iTunes Storeジャンル別ランキングでは同時リリースのOP楽曲と合わせ1位、2位を独占。iTunes Store総合ランキングでは最高3位を記録。デビュー以来「インターナショナルな活躍に最も近いアーティストになるのではないか」との呼び声も高い。

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