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がむしゃらに走ってきた20代。狭間の世代が語る30代の脱力論

がむしゃらに走ってきた20代。狭間の世代が語る30代の脱力論

□字ック『荒川、神キラーチューン』
インタビュー・テキスト
徳永京子
撮影:田中一人 編集:飯嶋藍子

町田さんは舞台上では凛としてハイレグとニプレスっていうのがかっこいいなと思ったんですよね。(山田)

―山田さんは以前から町田さんをご存知だったんですか?

山田:まだレコード会社に勤めていて、演劇をやろうか迷っている時期に毛皮族を見たことがあります。女の人が二プレスで元気にパフォーマンスする姿がセンセーショナルでしたね。その中でも町田さんは劇団を背負っている印象で、気苦労もあるはずだけど、舞台上では凛としてハイレグとニプレスっていうのがかっこいいなと思ったんです。それで、『荒川~』の再演で主人公のショウコ役は誰がいいだろうと考えた時に、これは町田さんだろうと声をかけさせていただきました。

町田:私はこれまで、□字ックさんを知らなかったんですけど、オファーしていただけたことが、まずうれしかったですね。脚本を読んだら、本当に面白くて一気に読んでしまったんですよ。電車の中で読み始めたんですけど止まらなくなっちゃって、早く最後まで読みたくて電車を降りて喫茶店に入ったくらい(笑)。

町田マリー

山田:初めてお会いする時、緊張してガクガク震えながらご挨拶したんですけど、そうやって脚本の感想を話してくださったので、うれしくて涙が出そうでした。

―山田さんは『荒川~』の再演にあたって、変えよう、あるいは、そのままにしようと考えていらっしゃることはありますか?

山田:再演だからと言って、以前のものをそのまま焼き直しすることがあまり好きじゃないんですよ。

松居:かなり変えるの?

山田:はっきり決めてはいないんですけど、全部の役を同じ人に任せると、たぶんあまり変わらないと思って、キャストもほとんど入れ替えることにして。私は、舞台の上の人間関係が見たいので、新しい役者さんが加わると、そこには当然、新しい人間関係が生まれるじゃないですか。

初演の作品を下に見ていたけど、「書いた時の衝動や感情をお借りします」と、過去の自分の気持ちを尊敬するべきだった。(松居)

―『荒川、神キラーチューン』では、登場人物たちがカラオケを歌うという形で、BLANKEY JET CITYをはじめ、日本のロックが流れる部分もキーになっていますね。

山田:「歌詞が多すぎてうるさい」という意見も聞くんですけど、歌詞も込みで、そのシーンを成立させているつもりです。私自身が音楽に動かされて生きてきたので、自分の大事な演劇を、自分の大好きな音楽に任せたいと思って曲を選びました。

―同じ曲を歌っても、その人物の年齢や状況の変化によって、歌詞が違って聴こえたりしますよね。

山田:そうなんです。もう30歳なので少女というのもアレですけど(笑)、ロック少女として「この曲、いいよね」という気持ちだけでは使っていないし、再演にあたってはもう一度しっかり曲の必要性を考えて、削るべきところは削らなきゃいけないと思っています。ただ、私の場合、この作品に限らず、音楽の演出は結構細かくて、音合わせもかなり多いです。

松居:僕は逆に自分の舞台では好きな曲は絶対に使えないんですよね。どんなにドラマを詰めても、いい台詞を書いても、お客さんの気持ちとか場の空気を、曲に全部持っていかれるような気がするんです。山田さんはがっつり使っていてもちゃんとドラマに組み込めているからすごいですよ。今回、脚本は書き直すんですか?

山田:ちょっと直します。ただ、最初に書いていた時の自分の感情は今は書けないから……。

松居:そこはいじらずに取っておく?

山田:そう、昔の自分に昔の感情を借りる気持ちでやります。

左から:松居大悟、町田マリー、山田佳奈

松居:僕、1回だけ再演をしているんですけど、会場が大きくなったら伝えたいことが分散するんじゃないかと思って、あれこれやったんですよ。脚本を書き直したり、新しい演出を増やしたり、具象の美術を抽象にしたり。なのに、ちょっと守りに入ってしまったりとか、結果、失敗したんですね。それはおそらく、初演の作品を自分の後輩というか、ちょっと下に見ていたからで。「今の俺なら、あいつをできるヤツにしてみせる」と思っていた。それは間違いだったなって反省しています。今、山田さんが言ったようにちゃんと過去の自分の気持ちを尊敬して、「書いた時の衝動とか感情をお借りします」という気持ちでやらなきゃいけなかったんですよ。

―『荒川~』の再演では、山田さんが初演を書きながら感じて、なおかつ、今も尊敬している感情が、引き継がれているんですね。

山田:そうですね。これまでは私が書く作品の主人公って「人間は『個』だ。寂しいことだけど、でも世の中はそんなもんですよね」と思っているタイプだったんです。でも『荒川~』では、初めて、個であることが寂しいと泣く人間を描いてます。それはきっと、最初の女性性とかの話もそうですけど、私が見ないようにしてた部分をちゃんと見られるようになったのかなって気がします。

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イベント情報

□字ック第十一回本公演
『荒川、神キラーチューン 再演』

脚本・演出:山田佳奈
出演:
町田マリー
小野寺ずる(□字ック)
日高ボブ美(□字ック)
鬼頭真也(夜ふかしの会)
石橋穂乃香
エリザベス・マリー(CHAiroiPLIN)
大塚宣幸(大阪バンガー帝国)
傳田うに
青山祥子
とみやまあゆみ
濱田真和(Superendroller)
安川まり(さいたまネクスト・シアター)
澤田育子(good morningN゜5/拙者ムニエル)
納葉
かさいみよ
鈴村悠
田島冴香(東京タンバリン)
龍野りな
花村雅子(えうれか)

東京公演
2016年6月29日(水)~7月3日(日)
会場:東京芸術劇場シアターウエスト

豊橋公演
2016年7月9日(土)~7月10日(日)
会場:愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース

『イヌの日』

2016年8月10日(水)~8月21日(日)
会場:東京都 下北沢 ザ・スズナリ
作:長塚圭史
演出:松居大悟

出演:
尾上寛之
玉置玲央
青柳文子
大窪人衛
目次立樹
川村紗也
菊池明明
松居大悟
本折最強さとし
村上航

プロフィール

山田佳奈
山田佳奈(やまだ かな)

神奈川県出身。□字ック(ロジック)の作家・演出・役者。レコード会社のプロモーターから演劇の世界へ。サンモールスタジオ2013年最優秀演出賞を受賞、演劇ポータルサイト「CoRich舞台芸術まつり!2014」グランプリ、2014年度サンモールスタジオ最優秀団体賞受賞。バンドのライブ総合演出や音楽界の『夏フェス』ならぬ小劇場界の『鬼フェス』を主催し、全団体の総合プロデュースを行うなどエンターテイメント業界でマルチに活躍中。また、自身が脚本・監督を務めるMOOSIC LAB2016参加作品『夜、逃げる』の上映や、カルチャーミックスフェス「オハラ☆ブレイク,16夏」(猪苗代湖岬)への参加などが、今夏控えている。

松居大悟
松居大悟(まつい だいご)

福岡県出身。劇団ゴジゲン主宰。2012年『アフロ田中』で映画監督としてデビュー。その後、『自分の事ばかりで情けなくなるよ』や『スイートプールサイド』など作品を発表し、『ワンダフルワールドエンド』でベルリン国際映画祭出品、『私たちのハァハァ』で第7回TAMA映画賞の最優秀新進監督賞受賞。ミュージックビデオ監督やコラム執筆など活動は多岐にわたる。2016年冬に監督作『アズミ・ハルコは行方不明』が公開予定。2016年8月に演出する舞台『イヌの日』が上演。

町田マリー
町田マリー(まちだ まりー)

千葉県出身。立教大学在学中に江本純子と劇団「毛皮族」を旗揚げし、看板女優として活躍。その他『日本人のへそ』、『サド侯爵夫人』、『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』など客演多数。また近年はTVドラマTBS『変身インタビュアーの憂鬱』、YTV『恋愛時代』や映画『恋の罪』(園子温監督),『俺俺』(三木聡監督)、『ワンダフルワールドエンド』(松居大悟監督)などの映像作品でも活躍。そして昨年はKERA・MAP『グッドバイ』(第23回読売演劇大賞最優秀作品賞受賞)に出演するなど充実した活動をしている。

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