
LILI LIMIT×写真家・伊丹豪「正気か?」と疑うほどの芸術的挑戦
LILI LIMIT『LIVING ROOM EP』- インタビュー・テキスト
- 天野史彬
- 撮影:永峰拓也 編集:矢島由佳子
精密に作り込まれたサウンドと、聴き手の想像力や思考を刺激する独特の歌詞世界で注目を集めてきた5ピースバンド・LILI LIMITが、遂にメジャーデビューを果たす。3月にはLILI LIMITとも親交深い「雨のパレード」もメジャーデビューを果たしたが、2016年は、既存の「ロック」の概念を飛び越えた新世代バンドが世に飛び出した年として、この先、記憶されることになるだろう。
そして、LILI LIMITのメジャー第一作となる『LIVING ROOM EP』の初回生産盤には、フロントマン・牧野純平が敬愛する写真家・伊丹豪による100ページにも及ぶフォトブックが付属する。作品の音楽性としても、メジャーバンドとしてより大きなスケールと深度を見せているが、常に音楽以外のアート作品からの影響を公言してきたLILI LIMITらしい、音楽という枠組みを飛び越えた「芸術活動」としての新たな挑戦がここにはあると言える。
そこで今回は、牧野と伊丹の特別対談を敢行。音楽と写真――それぞれの背負う文化を偏執的なまでに愛する二人の芸術家による、幸福なクロスオーバーを堪能してほしい。
話をいただいたとき、正直、「正気か?」と思いましたね。(伊丹)
―遂にLILI LIMITがメジャーデビューするわけですが、デビュー作となる『LIVING ROOM EP』の初回生産盤に伊丹さんのフォトブックを封入するというアイデアは、どこから生まれたものだったんですか?
牧野:最初は、レーベルの方から「ZINEを付けたらどうか?」という提案をいただいたんです。でも、ただのZINEやブックレットだと僕ららしくないと思って。そのとき、伊丹さんの写真が浮かんだんです。伊丹さんの『this year's model』という写真集に出会って以来、伊丹さんの写真がすごく好きで。そこで、アーティスト写真やジャケットも含めて、オファーさせていただきました。
伊丹豪の撮影による、LILI LIMITの最新アーティスト写真
伊丹:僕は最初に話をいただいたとき、正直、「正気か?」と思いましたね。僕に「アー写を撮ってほしい」なんて言ってくるアーティスト、今までいなかったですから。僕の撮り方だと、被写体がものすごくハッキリと写ってしまうので、事務所NGがいっぱい出てしまうんです(笑)。
―でも、牧野さんとしては、そこがよかったんですよね?
牧野:僕にとっては「NG」ではなく、「発見」なんですよね。伊丹さんの写真は、僕らが音楽で目指している世界観に似ていると思っていて。伊丹さんの写真って、写っているものは日常的なものなんだけど、よく見たらほこりや傷が付いていたりする……そういう「日常の発見」があるんです。ずっと見ていても、何回見ても面白い。あと、写真って、どうしても立体的になっちゃうと思うんですけど、伊丹さんが撮る写真はむしろグラフィック的で、どこを見たらいいのかわからないんです。
伊丹:牧野くんがそこを感じ取ってくれたのは、すごく嬉しいですね。『this year's model』までは、どうすれば1枚の写真が平面的に、フラットに、グラフィカルに見えるか、写真とその他のものの境界線を探るように、ずっと自分でトライ&エラーを繰り返してきたんです。
『LILI LIMIT×伊丹豪 コラボレーションフォトブック』
―写真は、見たいものや見せたいものにピントを合わせて撮るのが一般的ですよね。だから立体的になる。でも、伊丹さんの撮り方はそうではなくて、むしろ全体をハッキリと写している印象です。
伊丹:そうですね。写真は「意味」や「物語」がくっつきやすいメディアだと思うんです。たとえば、雄大な景色を撮るために遠出すれば、それだけで意味と物語が生まれますよね。でも、僕はそこから逃げたい。なるべく1枚の写真を自立させたいんです。だから人も、あくまで目の前を構成する要素のひとつとして撮りたくて。
―伊丹さんから見たLILI LIMITのイメージはどのようなものでしたか?
伊丹:オファーをいただいて、すぐにYouTubeで“Festa”のMVを見て、いいなと思いました。「新しいポップス」だと感じたんですよね。あと、“N_tower”のMVも見たんだけど、調べたら牧野くんが自分で撮っているって書いてあって、びっくりしました。その後、風呂に入っていたら何気なく“Festa”を口ずさんでいたんですよ。その時点で、「これはもう、すぐにOKの返事を出そう」と。
牧野:ありがとうございます。
監督・撮影・編集:牧野純平
伊丹:実際に土器くん(LILI LIMITのギター)と話したときも改めて思ったけど、たくさん音楽を聴いている人たちが作っている音楽ですよね。単純にひとつのものが好きで、その影響が直に出ているというよりは、いろんな要素が入ってこそ、この形になっているんだろうなって。でも、実は今の形になる前のLILI LIMITの音源も、お兄さん(牧野の兄がアートディレクターを務めている)に聴かせてもらったんだけど、めちゃくちゃエモいよな。今と全然違う。
牧野:そうなんです。表現したいことが変わったのは、兄が教えてくれた音楽以外の芸術との出会いも大きかったですね。
リリース情報

- LILI LIMIT
『LIVING ROOM EP』初回限定盤(CD) -
2016年7月13日(水)発売
価格:1,900円(税込)
KSCL-2739/401. Living Room
2. Kitchen
3. Unit Bath
4. Bed Room
※『LILI LIMIT×伊丹豪 コラボレーションフォトブック』封入

- LILI LIMIT
『LIVING ROOM EP』通常盤(CD) -
2016年7月13日(水)発売
価格:1,300円(税込)
KSCL-27411. Living Room
2. Kitchen
3. Unit Bath
4. Bed Room
イベント情報
- 『LILI LIMIT presents PUNCTUM』
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2016年7月12日(火)
会場:東京都 表参道 CAY
出演:
LILI LIMIT
Charisma.com2016年7月15日(金)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La
出演:
LILI LIMIT
雨のパレード2016年7月18日(月・祝)
会場:愛知県 名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
出演:
LILI LIMIT
パノラマパナマタウン
DATS
プロフィール

- LILI LIMIT(りり りみっと)
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牧野純平(Vo)、土器大洋(Gt)、黒瀬莉世(Ba)、志水美日(Key)、丸谷誠治(Dr)からなる5人組。「優しさ」と「狂気」が唄い合う無重力ポップバンド、LILI LIMIT。2012年、ボーカル牧野を中心に山口県宇部にて結成。その後福岡へ拠点を移動し現在のメンバーになる。2014年より東京にて活動を開始。2016年1月、自身2枚目となる全国流通盤ミニアルバム『#apieceofcake』をリリースし、次世代シーンの到来を感じさせる一歩抜けたハイセンスなサウンドが、耳の早いリスナーやメディアの賞賛を受け、2016年最もブレイクが期待されるニューカマーとして注目を浴びている。
- 伊丹豪(いたみ ごう)
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写真家。1976年、徳島県出身。2004年、キヤノン写真新世紀佳作受賞。写真集に『study』『this year's model』など。