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期待の新鋭・mol-74が語る「音楽のファストフード化は悲しい」

期待の新鋭・mol-74が語る「音楽のファストフード化は悲しい」

mol-74『kanki』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:永峰拓也 編集:矢島由佳子
2016/08/17

音楽の「無意識的記憶装置」みたいな部分に、すごくロマンがあると思う。

―mol-74の他にはない特徴というと、まずは武市くんのファルセットを生かしたボーカルが挙げられると思います。今のスタイルはいつ頃からなのでしょうか?

武市:僕らが一番最初に全国流通した『越冬のマーチ』(2015年)の中に入っている“赤い頬”を、スタジオでセッションしながら作っているときに、どんどん自分の中から「風景」が出てきたんです。その感覚は今でも覚えています。そのとき、特に意識することなくファルセットで歌ったんですよね。もちろん、SIGUR ROSとかMEWとかが好きだったから影響は受けてると思うけど、「ああいう曲を作りたい」と思ったわけではなくて、勝手にイメージが出てきて、それに合うのが高い音域のメロディーだったという感覚なんです。

―なるほど。まず風景があって、それに合うのがファルセットだったと。

武市:ただ、それまでにやったことがない歌い方だったから、レコーディングしたのを聴いても、最初は「これ大丈夫かな?」って感じでした。気に入ってはいたので、ミュージックビデオを作りたいとも思ったんですけど、とはいえ今までと全然違うから不安はあって。 でも、いざミュージックビデオを発表したら、すごく広がって、いろんな人が「いい」って言ってくれたし、海外の人からのコメントも来るようになったんですよね。それで「このスタイルでいいんだ」と思えて、自分で咀嚼していった結果、ファルセットの曲が増えていきました。

―映像的な曲の作り方というのも、mol-74の特徴と言えそうですね。

武市:そこはバンドとしてすごく大事にしていて。基本的には僕がアコギの弾き語りを持って行って、それをメンバーで広げていくんですけど、弾き語りの時点で自分の中にはイメージがあるんです。季節、時間、温度、場所とか、いろいろなイメージがあって、それをメンバーと話したときに、僕のイメージと受け取られ方がかけ離れてたらその曲はボツになる。たとえば、僕が「冬の朝」をイメージしていて、他のメンバーに「夏の夜」って言われたら、その時点でナシ。だから、ボツ曲がすごく多いんですよ。“赤い頬”のときはみんなのケミストリーがすごくて、ホントに共有できてる感じがあったんです。

武市和希

―もともと映画とかがお好きなんですか?

武市:いや、それがそれほどでもなくて。でも、二十歳の夏によく聴いてた曲とかって、今聴いたらそのときの風景が出てきません?

―わかります、音楽と記憶は密接につながってますからね。

武市:そうなんですよ。音楽のそういう「無意識的記憶装置」みたいな部分に、すごくロマンがあると思っていて。何年後かに聴き直したら、そのときのことを思い出すって、すごく素晴らしいなと思うんです。だから風景が浮かばない曲は、聴くのもあんまり好きじゃないんですよね。それこそSIGUR ROSなんて、歌詞の意味もわからないのに、あの感じは伝わるじゃないですか?

―アイスランドの風景が浮かびますよね。

武市:“untitled #1 (vaka)”という、いろんな映画にも使われてる曲があるんですけど、あれなんてホントすごいんですよ。“untitled #1 (vaka)”は、曲にマッチした心境とか風景の中で聴くと、自分が主人公になれるような感覚があって、僕はそれがすごく好きなんです。なので、自分もそういう曲を作りたいし、感情に寄り添いたい。

―ちなみに、北欧とか、寒い地方の音楽に惹かれるのは何か理由があると思いますか?

武市:なんででしょうね……やっぱり自分が主人公になれるかどうか、生活を彩ってくれるかがポイントだとは思うんですけど、一人で浸れる曲が好きなんだと思います。夏の曲って、「みんなで聴く」という感じがするんですよね。だから、夏の曲でも僕が好きなのは久石譲の“Summer”とか、ああいうしんみりした曲なんです。僕がアジカンを好きな理由もそこだったりして、彼らの曲にもすごく叙情性があって、そこが琴線に触れたのも大きいですね。

「変わらずに変わる」って難しいじゃないですか? でも今回は、それを前向きにやってみようと思ったんです。

―前作『まるで幻の月をみていたような』は、現在の所属レーベルである「Ladder Records」からの最初のリリースだったわけですが、今振り返るとどんな位置付けの作品だったと言えますか?

武市:ちょっと葛藤があったというか……僕は結構固い人間で、変化を恐れるところがあるんです。自分はまだ何かを成し遂げたわけでもないんですけど、海外のバンドとかでたまにある、「ファーストめっちゃいいのに、セカンドどうした?」みたいな、あの感覚がすごく嫌で。

でも、お客さんを飽きさせないためにも、ときには変わることも必要だから、「どうしよう?」と悩んでいた時期だったと思います。もちろん、アルバムとしてのコンセプトははっきりあったので、いい作品にはなったと思うんですけど、サウンドとか歌詞に関してはちょっと迷いがあったかな。

武市和希

―今回の『kanki』に関しては、変化に踏み切った作品だと言えるのかなって。

武市:はい、前作を作って気づいたことがたくさんあったので、今回はもっといろんなことをしてみようと思って。サウンドに関してもそうだし、歌詞も、これまでは自分に向けて書いていたのをもっと外向きに、人に向けて書くようになりました。「ただ変わる」って簡単だと思うんですけど、「変わらずに変わる」って難しいじゃないですか? でも今回は、それを前向きにやってみようと思ったんです。

―ちゃんと自分たちの色はキープした上で、新しいことにもチャレンジするってことですよね。そう思えたのは何かきっかけがあったんですか?

武市:ライブをやってて感じたことは大きいです。今までは自分に向けて曲を書いて、それに対してお客さんはお金を払って観に来てくれてたわけですけど、「それだけじゃダメだな」って思い始めたんですよね。「みんなのために」って言うと大げさですけど、外向きにならないといけないときが来たのかなって。

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リリース情報

mol-74『kanki』
mol-74
『kanki』(CD)

2016年8月17日(水)発売
価格:2,052円(税込)
LADR-008

1. エイプリル
2. %
3. プラスチックワード
4. ゆらぎ
5. アンチドート
6. pinhole
7. 開花

イベント情報

mol-74
『kanki』release tour

2016年10月27日(木)
会場:愛知県 名古屋 CLUB UPSET
出演:
mol-74
Ivy to Fraudulent Game

2016年10月28日(金)
会場:大阪府 梅田 Zeela
出演:
mol-74
雨のパレード

2016年11月13日(日)
会場:東京都 六本木 SuperDeluxe
※ワンマンライブ

『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume88』

2016年8月25日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
Kidori Kidori
MARQUEE BEACH CLUB
mol-74
あいみょん
and more
料金:無料(2ドリンク別)

プロフィール

mol-74
mol-74(もるかるまいなすななじゅうよん)

武市和希(Vo,Gt,Key)、井上雄斗(Gt)、坂東志洋(Dr)。京都にて結成。武市の透き通るようなファルセットボイスを軸に、北欧のバンドにも通じる冷たく透明でありながら、心の奥底に暖かな火を灯すような楽曲を表現している。

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