特集 PR

独立したシャムキャッツに、小田島等はなぜアートを求めたのか

独立したシャムキャッツに、小田島等はなぜアートを求めたのか

シャムキャッツ『マイガール』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人 編集:山元翔一

覚悟を持って作られた作品というのは、こうも時代とリンクをするのか。自主レーベル「TETRA RECORDS」を設立し、その第一弾としてリリースされるシャムキャッツのニューシングル『マイガール』からは、そんなことを感じずにはいられない。本作のミュージックビデオおよびジャケットのディレクションを担当したのは、バンドとは旧知の仲である小田島等。彼は同タイミングで別の作品のディレクションも担当していて、それがサニーデイ・サービスの『DANCE TO YOU』である。CINRA.NETでは今年の2月に両バンドの対談を行っているが、やはり二つの作品には通じるものがあるように感じるし、「1990年代感」という点においても、時代をよく表しているように思うのだ。

そして、注目すべきが、“マイガール”のミュージックビデオ。60年代の前衛芸術グループ「ハイレッド・センター」が東京オリンピック前に行った「首都圏清掃整理促進運動」のオマージュに始まり、一見関係のない5つのシーンが組み合わされたビデオには、「100%のラブ&アート」というテーマが掲げられ、もちろん、ここにはバンドと小田島の現代に対する視点が明確に反映されている。それでは、シャムキャッツから夏目知幸と大塚智之を迎え、『たからじま』リリース時以来、4年ぶりに行われた両者の対談をお楽しみください。

やっぱり表現とかもの作りで重要なのは情熱なんですよ。(小田島)

―まず最初にお訊きしたいのですが、自主レーベルを設立したタイミングでミュージックビデオとジャケットのディレクションを小田島さんに依頼した理由は?

夏目:前二作(『AFTER HOURS』『TAKE CARE』)をお願いしたサヌキ(ナオヤ)くんとは「一緒に作る」って感覚で、ある目標地点に向かっていく感じだったんです。でもオダジ(小田島)に関しては高校生の頃からのファンだったし、「託す」というか、自分の想像してないところに連れていってくれるイメージがあって、今回はそれを欲してたんです。

シャムキャッツ『AFTER HOURS』ジャケット(デザイン:サヌキナオヤ)
シャムキャッツ『AFTER HOURS』ジャケット(デザイン:サヌキナオヤ / Amazonで見る

―『たからじま』のときもそういう感じでしたよね。「具体的なイメージよりも、ファンとしての興味の方が強かった」って、当時のインタビュー(「今も青春の真っ只中」シャムキャッツ×小田島等対談)でもおっしゃっていました。

シャムキャッツ『たからじま』ジャケット(デザイン:小田島等)
シャムキャッツ『たからじま』ジャケット(デザイン:小田島等 / Amazonで見る

夏目:あと今回大きなきっかけになったのが、今年の2月にオダジがTETOKAっていうギャラリーでやってた個展だったんです。そのときのトークショーで「芸術って、今は『コンセプト』ってことになってるんですよ」っていう話をしてたんですね。「コンセプトを作って、それを伝えることが芸術の本質みたいになってるから、今の若い人はコンセプトばっかり考えてる。でも、本来芸術ってガソリンを燃やすってことで、僕たちはもう一回『情熱を燃やす』ってことをやらないといけない」って。僕はそれにドキッとして、「オダジに着いていきたい」って思ったんです。

小田島:何となく見栄えいいものって、みんな作れるじゃないですか? でもやっぱり創作のポイントって、情熱の燃やし方なんですよね。シャムキャッツにしろ僕にしろ、続けていると器用になって、ある程度は何でも作れちゃうんです。でも、やっぱり表現とかもの作りで重要なのはその燃料、情熱なんですよ。“マイガール”の歌詞を聴いても深い熱があるよね。

―“マイガール”のミュージックビデオは非常に変わった作りになっていますが、どのように制作が進んでいったのでしょうか?

夏目:「映像のアイデアならいっぱいある」ってオダジから聞いてたんで、ファミレスでミーティングをしたんです。ひたすら二人でブレストみたいなことをしてたんですけど、途中でオダジが「いろんなことを無視したい気持ちがある」って言って。バンドのミュージックビデオのフォーマットみたいなものは全部排除したいって言ったところからオダジのトルクが上がって、「6分ある曲を5つのパートで区切っちゃおう」って話になったんです。

小田島:ハイレッド・センター、コンビニでの労働、ライブペインティング、新宿を歩くニューハーフの女の子、何故かメンバー全員カウボーイ。何も関わりは持たない5つのシーン。全部最初の打ち合わせで発案したそのまんまの構成。区切りもみんな約1分12秒とあらかじめ決めて。完成させた各映像を完成後、オートマティックに組み合わせたんです。

“マイガール”のPV撮影時の模様
“マイガール”のPV撮影時の模様

“マイガール”のPV撮影時の模様
“マイガール”のPV撮影時の模様

小田島:最近のミュージックビデオって、予算の都合もあって、1シチュエーションが多いじゃないですか? あと、ワンカメ。実はああいうのに飽きていて。

Page 1
次へ

リリース情報

シャムキャッツ『マイガール』
シャムキャッツ
『マイガール』初回限定盤(CD+DVD)

2016年8月10日(水)発売
価格:1,944円(税込)
TETRA-1001D

[CD]
1. マイガール
2. お早よう
3. 真冬のサーフライダー
[DVD]
・『バンドの毎日』

プロフィール

シャムキャッツ
シャムキャッツ

4人組のロックバンド、シャムキャッツ。2009年春、1stアルバム『はしけ』をリリース。2011年秋、ミニアルバム『GUM』をリリース。2012年冬、P-VINE RECORDSより2ndアルバム『たからじま』をリリース。収録曲“SUNNY”がテレビ東京系『モヤモヤさまぁ~ず2』のエンディング曲に起用される。2014年3月、アルバム『AFTER HOURS』をリリースし、渋谷CLUB QUATTRO公演を含む全国ツアーを開催し大成功を収める。2015年3月4日に『AFTER HOURS』の「その後」を描いたミニアルバム『TAKE CARE』をリリース。全国9箇所のワンマンツアーを開催。8月10日にニューシングル「マイガール」を発売。

小田島等(おだじま ひとし)

1972年東京生まれ。イラストレーター / デザイナー。桑沢デザイン研究所卒業。1990年に「ザ・チョイス」入選。95年よりCD、広告物、書籍装丁のアートディレクションを多数手がける。同時に漫画家、イラストレーターとして活動。近年では展示活動も精力的に行う。近著に自身のアーカイブ的作品集『ANONYMOUS POP』がある。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

シャムキャッツ“完熟宣言”

<もしも願いが叶うならば はぐれた仲間の分まで 幸せな未来をちょうだい>。円陣を組んでシャムキャッツの4人が歌っている。大切な人との別れ、当たり前だった日常が失われていくことも横目に、ステップは絶えず前に。無邪気に笑顔を振りまく姿に、大人になるのは哀しくも楽しく、なんてことを思う。(山元)

  1. 香取慎吾の日本初個展『BOUM! BOUM! BOUM!』レポ 「僕の全部を見て」 1

    香取慎吾の日本初個展『BOUM! BOUM! BOUM!』レポ 「僕の全部を見て」

  2. 星野源のNHK特番、『POP VIRUS』&ドームツアー回顧&最新ライブ映像も 2

    星野源のNHK特番、『POP VIRUS』&ドームツアー回顧&最新ライブ映像も

  3. 小山田圭吾×大野由美子対談 「音に触れる」空間音響がすごい 3

    小山田圭吾×大野由美子対談 「音に触れる」空間音響がすごい

  4. 箕輪厚介×國光宏尚対談 終わりが見える「SNS社会」の次を語る 4

    箕輪厚介×國光宏尚対談 終わりが見える「SNS社会」の次を語る

  5. 平手友梨奈が真紅のCDGを纏う&市川染五郎と“黒い羊”語る雑誌『SWITCH』 5

    平手友梨奈が真紅のCDGを纏う&市川染五郎と“黒い羊”語る雑誌『SWITCH』

  6. なぜ今ライブハウスを? 吉祥寺NEPOが語るこれからの場所作り 6

    なぜ今ライブハウスを? 吉祥寺NEPOが語るこれからの場所作り

  7. 知英がセクシーな喰種・イトリ役 窪田正孝主演『東京喰種2』に出演 7

    知英がセクシーな喰種・イトリ役 窪田正孝主演『東京喰種2』に出演

  8. フィッシュマンズの歴史が更新された夜。ceroとの時を超えた邂逅 8

    フィッシュマンズの歴史が更新された夜。ceroとの時を超えた邂逅

  9. 上白石萌音が杉野遥亮&横浜流星の間で心揺れる 『L♡DK』新映像3種公開 9

    上白石萌音が杉野遥亮&横浜流星の間で心揺れる 『L♡DK』新映像3種公開

  10. 映像作家・山田智和の時代を切り取る眼差し。映像と表現を語る 10

    映像作家・山田智和の時代を切り取る眼差し。映像と表現を語る