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解散の危機を乗り越え、生まれ変わったbonobosと時代の関係

解散の危機を乗り越え、生まれ変わったbonobosと時代の関係

bonobos『23区』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影・編集:山元翔一
2016/09/21
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あり得るかもしれない日常を歌詞で描くことで、現実と虚構が響き合って誰かに特別な瞬間が訪れる。それを期待して音楽を作っているところがある。(蔡)

―1曲目が“東京気象組曲”で、ラストがアルバムタイトルにもなっている“23区”なので、「東京」というキーワードが浮かびますが、実際何かテーマがあったのでしょうか?

:歌詞にすごく意味があるかというと、実はあんまりないんです。歌詞は音楽を聴いてもらう装置のひとつというか、それぐらいでいいかなって思ってて。それで何となく書いていったら、“Cruisin' Cruisin'”が子守唄的な歌詞になったんですね。そうすると、ぼんやりと都会の夜の風景が浮かんできて、“メトロポリタン・ララバイ”とか、“23区”とかが生まれて。“葡萄の森”は多摩川の夕暮れの風景がイメージとしてありましたね。

蔡忠浩

―「東京」という明確なテーマがあったわけではなく、言ってみれば、生活している場所の風景がそのまま反映されたと。

:そうですね。『ULTRA』と『HYPER FOLK』に関しては、山梨の小淵沢で録ったので、自然に囲まれていたし、時期的にも震災の影響があって。だからわりと架空の物語に近い描かれ方だったんですけど、今作はもう少しリアリティーがあるものに戻っていったイメージかな。ただ、あるライターの方が「大人が今必要とするファンタジー」みたいなことを書かれているのをSNSで見て、なるほどなと。それであんまりリアリティーがあり過ぎるのも考えものだなって思ったんですよね。

―リアルとファンタジーのバランスが大事だったんですね。

:『ULTRA』も『HYPER FOLK』も、「現実とは異なるビジョンを持つ」っていうコンセプトがあって、今回も同じだとは思うんです。『シン・ゴジラ』じゃないですけど、あり得るかもしれない日常を歌詞で描くことで、現実と虚構が響き合って、誰かに特別な瞬間が訪れるかもしれない。それを期待して音楽を作っているところがあるので、多摩川とか現実の風景を描いていても、どこかドリーミーというか、全体的にファンタジックな雰囲気になっているかなって。

―「此岸と彼岸」っていうのはこれまでもずっと蔡さんの歌詞のテーマになっていて、それは今回のジャケットにも明確に表れていますよね。

bonobos『23区』ジャケット
bonobos『23区』ジャケット(Amazonで見る

:あとこれは個人的な話ですけど、今の東京というか、日本中がちょっときな臭いじゃないですか?

―“Shag”ではヘイトについて言及していたりもしますね。

:そういうことに対して、個人的に傷つくことも多いんですけど、曲を書くことによって、自分で自分を救う意味合いがあって――つまり、自分の住んでいる場所を捉え直しているんです。生きづらい人っていっぱいいると思うから、そういう人にとって、まさにこのジャケットのように何かグワッと反転して、目の前の暮らしが愛おしくなるような作用があったらいいなって。

―「東京」だと一塊のような気がするけど、「23区」っていうと、多様性が内包されるというか、一人ひとりの生活が立ちあがってくるような、そんなイメージもありました。

:それ、他の人にも言われたんですけど、全然そんなこと考えてなくて(笑)。「東京」でもよかったはずなんだけど、自分自身は23区外の郊外に住んでいるというのもあり、グラデーションみたいな意味も含めて、「23区」っていう言葉を選んだのかもなって思いますね。

時代性とか、どう受け止められるかっていうのは、聴いた人にもよるから、そこはどっちでもいい。(蔡)

―今回のアルバムって、ブラックミュージック寄りの音楽性とか、『23区』っていうタイトルからして、いわゆる「シティポップ」とのリンクでも語られると思うんですね。ただ、別にbonobosがそこに寄せたわけではなくて、そもそも現在の「シティポップ」の背景とも言うべきSAKEROCKからceroに至る流れとbonobosの歩みっていうのはずっと並走していて、だから今リンクが起こるのは自然なことだと勝手に思っているんですよね。

左から:蔡忠浩、森本夏子、小池龍平

:そういえば、この間飲み屋に行ったら田中馨くん(ex.SAKEROCK)がいて、ちょっと昔話になったんですけど、まだbonobosもSAKEROCKもお互い20代の頃に、合同で取材を受けたことがあったんですよ。「あのときのこと覚えてる?」って聞いたら、馨くんもすごい覚えてて、「bonobos、めっちゃ怖かった」って言われて(笑)。 ただ僕も、ハマケン(浜野謙太)は前から知っていたからいいけど、(伊藤)大地くんとか(星野)源くんは怖かった。まだお互い尖がってて、あの頃はみんな自分たち以外クズだと思って活動してたはずなんですよ。

森本:今の若者たちは仲良しなのかな?

:「みんなでシーンを作るぞ って感じはあるような気がするなあ。僕らはもともと関西出身なのに関西での活動期間は1年くらいで、すぐ東京に出てきたから、大阪にも東京にも友達がいなくて。そりゃあ拗ねますよね(笑)。

左から:梅本浩亘、田中佑司、蔡忠浩、森本夏子、小池龍平

―よく言われるのは、SNSの普及以降、現場でも距離が縮めやすくなって、それはいいことでもあるんだけど、どこか馴れ合いになってしまう部分もあるんじゃないかっていう。

:僕は若い子たち見て、すごくいいなって思いますよ。変に肩肘張ることなく、横のつながりがあって、楽しく音楽やっているなって。僕らの頃は音楽で食っていくとなったら事務所に入るしかなくて、働きながらっていう選択肢は考えられなかった。そういう意味で今の子たちが羨ましいと思うところもありますね。

田中:結局バンド同士でやり合うことが大変なわけではないと思うんです。本当に辛いことの矛先って内側に向いているじゃないですか? 「どうやって音楽を続けるのか」っていう現実は常に突きつけられているんで。そういう意味で今の子たちは、仲良くなることでお互いの傷を癒し合っているのかなって。

:サバイブのひとつの手段ですよね。

田中:だから、僕らの方が辛いときの乗り越え方は知っているんですよ。若い子は辛いことを乗り越えられずやめちゃうから、もったいないですよね。

―逆に言うと、bonobosは15年間シーンに寄りかかることなく、周りのバンドと馴れ合いの関係性になることもなく、どうサバイブをしてきたのでしょうか?

:要は、天邪鬼なんですよ。一時期ちょっと下の世代のダブポップ的なバンドによくイベントとかに誘ってもらっていたんです。その頃はギターロックの方が盛り上がっていたから、ちょっとゆるめの音楽をやっているバンドがあまりいない時代で、肩身の狭い思いをしていたんですけど、それでもその誘いはお互いのために断ってましたからね。「みんな各々頑張ろうぜ」って。そのほうが面白いとも思いましたし。

小池:最高だね。

:あの頃いっぱい友達作っておけばよかったっていう、後悔もあるんですけどね(笑)。でも、結局チェンバー路線にしても、単純に、自分がそのとき一番聴きたいものが周りになかったから、「じゃあ、自分でやろう」っていう、bonobosはずっとそこなんです。

―それが結果的に時代とリンクしたりしなかったりするけど、その「自分が聴きたいものを作る」という基本の部分は、ずっと変わっていないと。

:そうですね。時代性とか、どう受け止められるかっていうのは、聴いた人にもよるから、そこはどっちでもいいというか。自分が聴きたいものを作って、それを「楽しい音楽だな」って聴いてもらえれば、それでいいと思うんですよね。

左から:梅本浩亘、田中佑司、蔡忠浩、森本夏子、小池龍平

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リリース情報

bonobos『23区』
bonobos
『23区』(CD)

2016年9月21日(水)発売
価格:2,948円(税込)
PCD-18818

1. 東京気象組曲
2. 葡萄の森
3. Cruisin' Cruisin'
4. Paper(jam)
5. Shag
6. メトロポリタン・ララバイ
7. グッドナイト
8. Hello innocence
9. Late Summer Dawn
10. うつくしいひとたち(Album session)
11. 23区

イベント情報

bonobos全国ツアー

2016年10月2日(日)
会場:北海道 札幌 Sound Lab mole

2016年10月8日(土)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd

2016年10月15日(土)
会場:岡山県 YEBISU YA PRO

2016年10月16日(日)
会場:福岡県 ROOMS

2016年10月22日(土)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La

2016年10月23日(日)
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

2016年10月30日(日)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM

プロフィール

bonobos
bonobos(ぼのぼ)

レゲエ・ダブ、エレクトロニカ、サンバにカリプソと様々なリズムを呑み込みながらフォークへと向かう、多彩なアレンジと卓越した演奏能力にボーカル蔡の心に触れる歌声が混ざりあう、天下無双のハイブリッド未来音楽集団。

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