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Chim↑Pomが熱弁する結成からの10年と「全壊する個展」の意義

Chim↑Pomが熱弁する結成からの10年と「全壊する個展」の意義

Chim↑Pom『「また明日も観てくれるかな?」~So see you again tomorrow, too? ~』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:西田香織 編集:矢島由佳子、飯嶋藍子
2016/10/13
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アーティスト集団・Chim↑Pomによる新たなプロジェクト『「また明日も観てくれるかな?」~So see you again tomorrow, too?~』が、10月15日より開催される。テーマは「Scrap and Build」。新宿歌舞伎町の中心にある解体予定のビルを舞台に、国内では約3年ぶりとなる彼らの大規模個展と、豪華なゲストによる音楽ライブやパフォーマンスが2週間にわたって展開。会期終了後には展示作品もろともビルを解体し、そこから新たな作品を作る「全壊する展覧会」として構想されている。

昨年、グループ結成から10周年を迎え、近年では海外のアートシーンからも熱い視線を注がれているChim↑Pom。そんな彼らが、2020年のオリンピックに向けて怒濤の再開発が進む東京の現状を前に、提示したいビジョンとはどのようなものなのか? また、既存のアートシーンから一歩引いた場所で、存在感を示しながらもユニークな活動を続けてきた彼らの目には、近年話題の「芸術祭の乱立」や「規制」という問題がどう映っているのか? 卯城竜太、林靖高、エリイ、岡田将孝、稲岡求、水野俊紀。意外に珍しい六人揃ってのインタビューで、現在進行形のChim↑Pomの姿をお届けする。

歌舞伎町って文化的なポテンシャルは高いのに、芸能や風俗産業はあってもアートの現場が少ない。(卯城)

―日本での大規模個展は3年ぶりですが、この間、Chim↑Pomの活動はますますインディペンデントなものになっていますよね。自分たちのスペース「GARTER」を高円寺に立ち上げるなど、既存の美術館やギャラリーに頼らない活動が目立ちます。

卯城:もともとDIYな現場作りは志向していたんだけど、企画をイチから動かすのは、やっぱりすごく労力がかかるんですよね。でも、色んな機関と仕事してきて実感したんだけど、ガチで妥協しないでやりたいことがあるなら、自分たちでやるやり方をもっと増やしたほうがいい。

というのも、ここ数年「自粛」や「検閲」の動きが俄然強まってきていて、できないことがめっちゃ増えた。だったら、従来の制度に頼るだけでなく、自分たちでも制度を作るべきじゃん、と。

左から:岡田将孝、エリイ、卯城竜太、林靖高、水野俊紀、稲岡求
左から:岡田将孝、エリイ、卯城竜太、林靖高、水野俊紀、稲岡求

―2015年3月11日に始まった、福島の帰還困難区域を舞台とする国際展『Don't Follow the Wind』の発案は、その代表的な動きでした。今回のプロジェクトもその傾向の延長にあるものだと思いますが、会場の「歌舞伎町商店街振興組合ビル」をよく見つけましたね。現時点ではただの廃墟にしか見えませんが(笑)。

卯城:きっかけはエリイちゃんの紹介です。このビルの1階に「TOCACOCAN」という歌舞伎町の面白いライブストリーミングのスタジオがあって、それをエリイちゃんの旦那で歌舞伎町やゴールデン街でホストクラブやバーを経営している手塚マキさんがオーガナイズしているんです。

エリイ:そのスタジオの放送に全盲の友達ハジ君と出演していて、来るたびに「この変なビルは何だろう」と思っていて。そしたら今度、取り壊されると。「それだったら最後に展覧会をしたいな」と思って、みんなに紹介したんだよね。

『「また明日も観てくれるかな?」~So see you again tomorrow, too?~』の会場となる歌舞伎町商店街振興組合ビル
『「また明日も観てくれるかな?」~So see you again tomorrow, too?~』の会場となる歌舞伎町商店街振興組合ビル

卯城:それでいろいろ調べてみたら、意外とビルの歴史が面白いんです。歌舞伎町はそもそも、戦後の焼け野原だった場所に当時の地主たちが「劇場型都市」のビジョンを描いて作り上げた街。

この建物のオーナーの歌舞伎町商店街振興組合はその流れを汲んでいて、新宿における戦後復興の中心的な役割を担ってきたと言っても過言ではない。その後1964年にビルが出来たんですが、当時は1階に交番や公衆便所があったらしいんですよ。

:立地も奇跡的なんだよね。歌舞伎町のど真ん中で、町の裏の顔も垣間見られるんだけど、いまは斜め前に交番があるから、警察の観察範囲にもあるんです。だから歌舞伎町だと、ここくらいしか面白い展示が許されない(笑)。

卯城:歌舞伎町って文化的なポテンシャルは高いですよね。なのに、芸能や風俗産業はあってもアートの現場は少ないんです。昨今、六本木とか渋谷とか、ていうか日本全国、とにかくアートづいてきているのに、歌舞伎町はその空気に乗り切れてない感じで珍しいですよ。逆にそこにも興味を持った(笑)。

会場の窓からは交番が見える
会場の窓からは交番が見える

―今回は「Scrap and Build」がテーマとのことですが、歌舞伎町も石原慎太郎元都知事時代から、「歌舞伎町浄化作戦」として整備されてきましたよね。

:歌舞伎町は会田誠さんが「芸術公民館」というバーをやっていたので、俺たちもよく来ていたんです。でもこの数年で、街がどんどん綺麗に洗練されていく変化をリアルに感じていて。キャッチのおじさんが、外国人観光客と流暢な英語で話したりして「もう俺の知っている新宿じゃねえな」と(笑)。それは渋谷も同じですね。

卯城:話題の豊洲新市場もそうだけど、あらゆる再開発が「2020年の『東京オリンピック』までに」というスローガンのもとに行なわれている。なんでなんですかね。

稲岡:1964年の『東京オリンピック』の栄光があるんだろうね。

卯城:当時も開催に間にあわせるため、首都高速を急いで作ったわけでしょう? それと同じように、東京の各地でオリンピックを大義名分にいろんな開発が進むのを見ると、すごく20世紀的なビジョンの描き方で未来を作ろうとしているな、と感じます。

福島の原発事故で有名になった「原子力 明るい未来の エネルギー」って看板あったじゃないですか。あれを初めて生で見たときの感覚を思い出すんだけど、つまり20世紀はこういう未来を描いたんだな、とそのとき実感したんです。で、じゃあ21世紀ならではのビジョンの描き方、ひいては21世紀のアイデンティティーってなんだろう、という素朴な疑問が浮かんできた。

左:卯城竜太

ホワイトボードには各々の作業スケジュールなどがびっしりと書かれていた
ホワイトボードには各々の作業スケジュールなどがびっしりと書かれていた

岡田:1964年当時は良かったのかな。戦後の復興の最中で、人々に希望を与えていたと思う。でも、日本がすでに発展しきったいま「さあ、光へ」みたいなスローガンを出されても、もう価値観は変わっているのではと感じちゃう。

卯城:実はこの建物も、前回の『東京オリンピック』の5か月前に建ったんです。祝祭を機に建ったそのビルが、いま最終回を迎える。そして、2020年に向かって再び同じビジョンがループする。

「Scrap and Build」の「Build」にも通じるけど、『笑っていいとも!』の最終回でタモリが最後に言った「また明日も見てくれるかな?」という言葉をタイトルにしたのは、逆にそんなルーティーンにもポジティブな側面を感じたからです。

ずっと見てきた日常が終わる瞬間に、だけど明日はまた変わらずに来るよっていう当たり前のことを、お決まりのコール&レスポンスで締めくくる。そのバラエティースピリッツが今回はハマりそうだと思いました。建物の最後に、展示やライブやトークで記憶を作る。物質は無くなるけど、記憶は無くなりようがないから未来に影響しやすい。そんな終わりと始まりの狭間にみんなで入り込むことにスリルを感じますね。

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イベント情報

Chim↑Pom
『「また明日も観てくれるかな?」~So see you again tomorrow, too?~』

2016年10月15日(土)~10月31日(月)
会場:東京都 新宿 歌舞伎町振興組合ビル
時間:13:00~22:00
料金:1,000円

2016年10月15日(土)22:00~翌6:00
会場:東京都 歌舞伎町振興組合ビル
出演:
会田誠
Nature Danger Gang
Have a Nice Day!
新井英樹×北大路翼
悪魔のしるし
テンテンコ
VMO
FUKAIPRODUCE羽衣
ミラクルひかる
ナマコプリ
Chim↑Pom
and more
フード:
Smappa! Group BRIAN BAR
Smappa! Group Miso Soup
料金:3,000円(ドリンク別)

2016年10月28日(金)22:00~翌6:00
会場:東京都 歌舞伎町振興組合ビル
出演:
漢 a.k.a GAMI&菊地成孔&DJ BAKU
ENDON
康芳夫&有太マン
会田誠
鉄割アルバトロスケット
どついたるねん
Chim↑Pom
and more
フード:
Smappa! Group BRIAN BAR
Smappa! Group Miso Soup
料金:3,000円(ドリンク別)

イベントの様子は、tocacocan.comでも配信

プロフィール

Chim↑Pom(ちんぽむ)

2005年、卯城竜太・林靖高・エリイ・岡田将孝・稲岡求・水野俊紀により結成。時代と社会のリアルに全力で介入した強い社会的メッセージを持つ作品を次々と発表。東京をベースに、世界中でプロジェクトを展開する。2015年アーティストランスペース「Garter」をオープン、キュレーション活動も行う。福島第一原発事故による帰還困難区域内で、封鎖が解除されるまで「観に行くことができない」国際展『Don't Follow the Wind』をたちあげ作家としても参加、2015年3月11日にスタートした。近年の主な著作に『芸術実行犯』(朝日出版社)、『SUPER RAT』(パルコ)、『エリイはいつも気持ち悪い』(朝日出版社)、『Don't Follow the Wind』(河出書房新社)がある。

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