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大黒摩季はなぜ復帰した? バブル時代も主婦の気持ちも知る女の歌

大黒摩季はなぜ復帰した? バブル時代も主婦の気持ちも知る女の歌

大黒摩季『Greatest Hits 1991-2016 ~All Singles + ~』
インタビュー・テキスト
柴那典
編集:矢島由佳子
2016/11/25

毎日「寝たい」「遊びたい」としか思ってないのに、いいものが生まれるわけない。だから、ちょうど30歳になったときに休止したんです。

―1999年の活動休止は、どういう理由だったんでしょうか。

大黒:単純に疲れたからです。だって、1年の365日中364日スタジオに入るような生活を3年くらい続けて、その前後にはツアーもやっていたんですよ。疲れない人はいないと思うんです。

―97年からはライブも積極的にやっていましたね。でも、デビューして5年間はライブもほとんどやられていなかったですし、メディアへの出演もありませんでした。ステージに立つことになったのは、キャリアの中でもひとつの変化だったと思います。

大黒:でも私としては、もともと中高生の頃からバンドをやっていて、ライブハウスでライブをしてたんですよ。子どもの頃から音楽をやって、曲を作ってバンドをやって。

東京に出てきて、レコード会社の門を叩いて、ビーイングという日本一の制作集団に入った。どこかのオーディションで受かっていきなりデビューとかじゃなく、叩き上げなんです。だから、ビーイングに入ってからは、そりゃいろいろ学びたいから夢中になりましたよ。そうして、気が付いたら謎になってたんです。

―気が付いたら謎になっていた?

大黒:表舞台に出そびれたんです。気が付いたら売れていて、出てる暇がなくなってしまった。

『STOP MOTION』(1992年、デビューシングル)は、親戚しか買ってないくらいの枚数しか売れていなくて、一回「大黒摩季の話は撤収」ってなったんですよ。「お前、またバックコーラスに戻るか」という話になって。そのとき、事務所でとあるCMのプロデューサーに会ったんです。その人には食えない時代にも仕事をいただいて、お世話になっていて。「いいCMの話があって、ビーイングさんに来たら曲があると思って来たんだけど、もうないと断られた」って言うから、「いつまでになにをしたらいいですか? やりますよ、恩返しとして」「明日の昼までにお願い」なんて話をして。それで寝ないで作ったのが、“DA・KA・RA”(1992年、2ndシングル)なんです。

大黒摩季『STOP MOTION』ジャケット
大黒摩季『STOP MOTION』ジャケット

大黒摩季『DA・KA・RA』ジャケット
大黒摩季『DA・KA・RA』ジャケット

―そんなやり取りから生まれた曲だったんですね。

大黒:最初は勝手に進めてたんです。大黒摩季チームは撤収してたので、同期のアシスタントに、ZARDとかB'zの作業が終わった夜中に「お願いだから手伝って」って言って。マネージャーを通してる時間がないから、アレンジャーにも直談判して。それでそのCMプロデューサーに、1日で作り上げた音源を渡したら、プレゼンが通ったんです。

だから、CMが流れ始めてからビーイングに問い合わせが来て、会社からは「お前は勝手になにをやってるんだ!?」ってなって。それでもフルサイズの曲にしてCDを作ったら、あれよあれよとミリオンセラーになった。だから私の座右の銘は「落とし物には福がある」(笑)。あのときに「明日の昼」って言われて、「無理です」って言っていたら今の私はないんです。

―ブレイクした当時はテレビなどのメディアへの露出もほとんどなく「大黒摩季は実在しないんじゃないか」という都市伝説すらありました。

大黒:私は制作も一人でやっていたので、とにかく音源作りに時間を費やしていたんですよね。テレビって、たかだか1分半の出演のために1日拘束されたりもする。でも、締め切りは延ばせないわけだから。

―制作者としてスケジュールを守るほうが大事だった。

大黒:そうなんです。で、出なくてもいいならそれでいい、みんながそれを面白いって言うならそれでいいって放置していたら、ますます人前に出にくくなっちゃって。でも、そろそろファンに会ったほうがいいねって話になって、97年にレインボースクエア有明の大きなライブが決まった。だから、全て嬉しいラッキーが降ってきたのを束ねたら、こういう現象になった感じなんですよね。

―結果的にライブに力を入れてきたことは、ちゃんと今に繋がっていますね。

大黒:だってライブが原点だもん。結婚はしたけど、家庭よりステージ上がホームだなって思うし、家庭のほうがアウェイだと思うときがある(笑)。立つだけで身体の血が流れるし、育ってきたのがあそこだから。デビューしてから数年間、それが抜けていただけなんです。だからライブをやるようになったときは「やっと会えたね」って感じでした。

それでたくさんライブもやったけど、その一方でクリエイティブは続けていたし、5人の作家が書くような量を一人でやっていたんです。そりゃ、枯渇するのも人一倍早くなりますよね。歌いたいことがなくなった。毎日「寝たい」「遊びたい」としか思ってないのに、いいものが生まれるわけない。だから、きっぱり休むことを選びました。大晦日が誕生日なんで、ちょうど30歳になったときに休止したんです。

幸せな人は幸せだって言ったほうがいいし、女性はもっと「女」を生きたほうがいいと思います。

―そうして30代のスタートが1度目の休業だった。そして2010年、40代のスタートで2度目の活動休止になったわけで、それからの6年間はミュージシャンというよりは、女性としての40代だったと思うんですが、そのあたりは振り返ってどうですか?

大黒:女性としては壮絶! 笑っちゃうくらい壮絶でした。「私だけどうしてこんな目にあうんだろう」って思うことばっかりだった。女性は30代から厄年の連続で身体が変わってくるので、歌い手の女の子はみんな苦しんでると思うんです。私もそれを一通り全部苦しんで、七転八倒しながらもなんとかやってきて。と思ったら病気というさらなる試練があって。子宮の全摘出までいきましたからね。

でも、今は悪いものがなくなったので逆に楽です。ここから先、生まれて初めてベストコンディションで歌えるというワクワクのほうが大きい。他のアーティストが絶好調で歌っているのを見ると涙が出るくらい悔しかったけれど、そういう自分ともお別れできた。今はとても身軽です。

―CINRA.NETでは、30代、40代の女性アーティストの方にもたくさんご登場いただいているんですね。みなさん、ご自身の人生と表現に、それぞれ悩みがあって、それを乗り越えてきた。それを参考にしたい読者も多いと思います。大黒摩季さんは下の世代の女性にどんなアドバイス、どんな声をかけたいと考えてらっしゃいますか?

大黒:『情熱大陸』に出たときも言ったんですけれど、私は諦めの悪い女なんですよね。なんで諦めないかって言ったら、その先の音が聴きたいから。そうじゃなかったらとっくに諦めたり、いじけたりしてると思います。だから、人にメッセージをできるほど立派な人生を送っていませんけど、幸せな人は幸せだって言ったほうがいい。それに、女性はもっと「女」を生きたほうがいいと思います。

私、昔はナチュラルな女になりたくてアレサ・フランクリンの“ナチュラル・ウーマン”ばっかり歌ってたんです。それが、若いときに歌っても全然よくなかったけれど、傷付いたりいろんな思いをして、女力が出たら、急によくなってきた。歌は生き様が表現になるんです。たとえ演じているつもりでも、それが出てくる。だったら、人生を謳歌したほうがいいものができる。

―25年間、いろんな女性像を表現してきましたね。

大黒:私はずっと全力だったし、情けなく立ち止まったことも、なにもかも歌にしてきました。だからコントラストがあって、バリエーションの多い作品になっていると思います。シングルだけ聴くと統一感があるように見えますけど、カップリングやアルバムにはいろんな女がいて。“別れましょう”みたいにスパッと頑張る女もいれば、ずっと待ってる女もいる。

女性に関して言えば、無理に男っぽくなんかならなくっていいよと思いますね。自分を生きたほうがいい。他人みたいになろうとすればするほど敵が増えて居場所がなくなるけど、自分をブラッシュアップして磨けば、それが唯一のものになる。生徒にもそう言ってるんです。無駄だから、他人と自分を比べるなって。

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リリース情報

大黒摩季『Greatest Hits 1991-2016 ~All Singles + ~』STANDARD盤
大黒摩季
『Greatest Hits 1991-2016 ~All Singles + ~』STANDARD盤(3CD)

2016年11月23日(水)発売
価格:3,672円(税込)
JBCZ-9035~37

[DISC1]
1. STAY
2. STOP MOTION
3. DA・KA・RA
4. チョット
5. 君に愛されるそのために
6. 別れましょう私から消えましょうあなたから
7. Harlem Night
8. あなただけ見つめてる
9. 白いGradation
10. 夏が来る
11. 永遠の夢に向かって
12. ROCKs
13. Stay with me baby
14. ら・ら・ら
15. いちばん近くにいてね
16. 恋はメリーゴーランド~Original Version~
17. 子供の国へ
[DISC2]
1. FIRE
2. あなたがいればそれだけでよかった
3. 愛してます
4. あぁ
5. ガンバルシカナイジャナイ?!
6. 熱くなれ
7. アンバランス
8. ゲンキダシテ
9. You're not mine
10. 空
11. Power Of Dream
12. 風になれ
13. ネッ! ~女、情熱~
14. 太陽の国へ行こうよ すぐに ~空飛ぶ夢に乗って~
15. 夢なら醒めてよ
16. 虹ヲコエテ
[DISC3]
1. 雪が降るまえに
2. アイデンティティ
3. 勝手に決めないでよ
4. 夏が来る、そして...
5. いとしい人へ ~Merry Christmas~
6. ASAHI ~SHINE&GROOVE~
7. OVER TOP
8. 胡蝶の夢
9. コレデイイノ?!
10. Our Home
11. IT'S ALL RIGHT
12. Anything Goes!
13. TAKE OFF ~SKY MARK Cheer up↗↗ver.~
14. Higher↗↗Higher↗↗︎ ~Single ver.~
15. My Will ~世界は変えられなくても~

大黒摩季『Greatest Hits 1991-2016 ~All Singles + ~』BIG盤 初回限定生産盤
大黒摩季
『Greatest Hits 1991-2016 ~All Singles + ~』BIG盤 初回限定生産盤(4CD+DVD)

2016年11月23日(水)発売
価格:10,000円(税込)
JBCZ-9038~41

[DISC1~3]
『Greatest Hits 1991-2016 ~All Singles + ~』STANDARD盤と同様
[DISC4]
1. 復讐GAME
2. Good-Luck Woman
3. GLORIA
4. Everybody,Groove!!
5. 未来が私を呼んでいる…
6. ふたりが好きだから
7. そして
8. After Blue
9. SLOW DOWN
10. Just Start Again
11. 永遠の光り
12. LIFE ~episodeⅠ~誕生~
13. Forever Rose
14. Make A Wish
[DVD]
『Maki Ohguro 90's Music Video Collection』
1. STOP MOTION
2. DA・KA・RA
3. チョット ※
4. 別れましょう私から消えましょうあなたから ※
5. DA・DA・DA ※
6. Harlem Night ※
7. あなただけ見つめてる ※
8. U.Be Love ※
9. 白いGradation ※
10. 夏が来る
11. 永遠の夢に向かって ※
12. ROCKs
13. ら・ら・ら ※
14. いちばん近くにいてね ※
15. FIRE ※
16. 恋はメリーゴーランド~Original Version~ ※
17. 愛してます ※
18. あぁ ※
19. 熱くなれ ※
20. アンバランス
21. ゲンキダシテ ※
22. 空
23. Power of Dream ※
24. 風になれ ※
25. ネッ! ~女、情熱~ ※
26. 太陽の国へ行こうよ すぐに~空飛ぶ夢に乗って~ ※
27. 夢なら醒めてよ
※ショートバージョン

イベント情報

『Maki Ohguro 2017 Live-STEP!! ~ Higher↗↗Higher↗↗中年よ熱くなれ!! Greatest Hits+ ~』

2017年2月25日(土)
会場:埼玉県 羽生市産業文化ホール 大ホール

2017年3月4日(土)
会場:茨城県 常陸太田市民交流センター パルティホール 大ホール

2017年3月5日(日)
会場:栃木県 栃木文化会館 大ホール

2017年3月11日(土)
会場:愛知県 安城市民会館 サルビアホール

2017年3月12日(日)
会場:兵庫県 加古川市民会館 大ホール

2017年3月20日(月・祝)
会場:千葉県 多古町コミュニティプラザ文化ホール

2017年4月15日(土)
会場:山形県 やまぎんホール(山形県県民会館)

2017年4月22日(土)
会場:静岡県 磐田市民文化会館

2017年4月23日(日)
会場:岐阜県 バロー文化ホール(多治見市文化会館)

2017年4月29日(土)
会場:山梨県 甲府 コラニー文化ホール 大ホール

2017年5月7日(日)
会場:千葉県 千葉県文化会館 大ホール

2017年5月14日(日)
会場:神奈川県 ハーモニーホール座間ホール

2017年6月2日(金)
会場:東京都 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール

2017年6月3日(土)
会場:埼玉県 狭山市市民会館 大ホール

2017年6月17日(土)
会場:広島県 三原市芸術文化センター ポポロ

2017年6月18日(日)
会場:兵庫県 篠山 たんば田園交響ホール

2017年6月24日(土)
会場:群馬県 伊勢崎市文化会館 大ホール

プロフィール

大黒摩季
大黒摩季(おおぐろ まき)

札幌市・藤女子高等学校を卒業後、アーティストを目指して上京。スタジオ・コーラスや作家活動を経て、1992年『STOP MOTION』でデビュー。ミリオンヒットを立て続けに放ち、1995年にリリースしたベストアルバム『BACK BEATs #1』は300万枚を超えるセールスを記録する。テレビ出演やライブも行わなかったことから、大黒摩季は存在しないなどの都市伝説があった中、1997年の初ライブでは有明のレインボースクエアに47,000人を動員し、その存在を確固たるものにする。その後も毎年全国ツアーを継続し、精力的に活動するも2010年病気治療のためアーティスト活動を休業する。その間、地元・北海道の長沼中学校に校歌を寄贈、東日本大震災により被災した須賀川小学校への応援歌・歌詞寄贈、東日本大震災・熊本地震への復興支援など社会貢献活動のみ行っていたが、昨年よりDISH//、TUBE、郷ひろみなどの作詞提供をはじめクリエイティブ活動を再開。2016年8月、『RISING SUN ROCK FESTIVAL』での出演を皮切りに、故郷である北海道からアーティスト活動を再開。

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