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圧倒的な女性支持を集めるアリシア・キーズから、日米の今を分析

圧倒的な女性支持を集めるアリシア・キーズから、日米の今を分析

アリシア・キーズ『Here』
インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:岩本良介 編集:山元翔一

2001年のデビュー以来、全世界アルバムトータルセールス3千万枚、グラミー賞15冠など数々の快挙を成し遂げてきたアリシア・キーズ。彼女の約4年ぶり、6枚目となる新作アルバム『Here』は、「原点回帰」と「故郷・ニューヨークへのトリビュート」をテーマにした一枚だ。

このアルバムの聴きどころはどこにあるのか? インディーズレーベル「Tokyo Recordings」を主宰する小袋成彬にインタビューを試みた。宇多田ヒカル『Fantôme』に“ともだち”で参加し、一躍注目を集めた彼は、綿めぐみやCapesonなどのプロデュース、水曜日のカンパネラのトラックメイキングなども手がけている。日本の音楽シーンの最先端をひた走る彼だけに、話はアリシア・キーズだけでなく、宇多田ヒカルやフランク・オーシャンなどが象徴する、国境を超えたフラットでボーダレスな音楽の新しい価値観にまで広がっていった。

実はアリシア・キーズのこと、すげえ苦手なんですよ。

―小袋さんはアルバム『Here』を聴いて、どう感じましたか。

小袋:いきなりこんなことを言うのもなんですけど、実はアリシア・キーズのこと、すげえ苦手なんですよ。

小袋成彬
小袋成彬

―え? そうなんですか?

小袋:で、このアルバムを聴いたらもっと苦手になった。言ったらあかんのかもしれないですけど(笑)。

―(笑)。それはどうして?

小袋:慎重に言葉を選ばなきゃいけないんですけど、彼女、強烈なフェミニズムがあるじゃないですか。たとえば、能力があるのに女性だからという理由で認められない、役職を与えられないということに異論を唱えるというのは、僕はいいことだと思うんです。それは性差別だから。

アリシア・キーズ『Here』ジャケット
アリシア・キーズ『Here』ジャケット(Amazonで見る

小袋:ただ、単純に、女性を奮い立たせようという彼女のメッセージは、男の俺としてはまったく響かない。だから一歩引いた目で見られるとは思うんですけれど。

―なるほど。そういう第一印象だった。

小袋:だから、歌詞の面はよくわからないというのが正直なところです。女性だったら胸にくるところがあるのかもしれないけど。だからプロダクション的な聴き方しかできなかった。

―プロダクション的な聴き方というと?

小袋:自分で曲を作るようになって、音楽を2つの聴き方で聴くようになったんです。1つは、サウンドの作り方という意味でプロダクションがどう素晴らしいかを聴く。僕の場合は、音がどう絡まっているのかに耳がいくことが多いですね。音楽はラーメンと一緒で、全てが一体になっているので。

―もう1つは?

小袋:もう1つは、単純に「なんじゃ、このビリビリくる感じは! 芸術だ!」と思って聴くときもある。そういう、プロダクションとしてと、芸術としての2つの聴き方をします。『Here』に関しては、プロダクションとしてまず素晴らしい。

「私はこれ。以上!」みたいな。周りがどうとか、一切関係ない。そういう感じがプロダクションとしても伝わってきた。

―なるほど。では、サウンドプロダクションの面で『Here』はどうでしたか?

小袋:一言で言うと、すごく肉体的なんですよ。言いたいことがハッキリしていて、変に小賢しい情報がない。「私はこう!」っていうのがダイレクトに伝わってくる。

小袋成彬

―音が肉体的というと?

小袋:まず使ってる楽器が生々しいんです。“She Don't Really Care_1 Luv”という曲はローズピアノやモーグシンセのようなアナログ楽器を使っている。あとはピアノですね。楽器の音そのものは、録る時点で、どんな音にするかを決めておかなきゃいけないんです。

あと、「Citizens of Humanity.」という海外メディアのインタビューで語っていたんですけど、今回、30曲のデモを10日で作ったらしくて。スタジオもほぼニューヨークで、身近なミュージシャンたちを集めて作ったような感じがする。一筆書きのようなアルバムだと思います。

―それくらいサウンドに生々しさがあった。

小袋:生々しいですよね。“Illusions Of Bliss”という曲なんか、最後の方はテンポがどんどん速くなってるんですよ。クリックを使ってない。歌もそう。最近はあとで修正してきれいな歌を残そうとする人が多いんですけれど、彼女の場合はそれが一切ない。音程が外れていても使っちゃう。そういうところは「これぞ音楽だ」って思います。今思っているものを今伝えようという感じがある。そこは音楽的にも感銘を受けましたし、すごく感動しました。

―曲調は現在のR&Bやコンテンポラリーなポップミュージックのシーンの潮流にはあえて乗っていない感じもありますね。

小袋:そもそも意識してなさそうですよね、この人は。「私はこれ。以上!」みたいな。周りがどうとか、一切関係ない。そういう感じがプロダクションとしても伝わってきた。そこにシビれました。

小袋成彬

―それがサウンドの生々しさにつながっている。

小袋:まさに「その瞬間を録る」というレコーディングですよね。音もいいんですよ。よく録れてるし、音の絡みがいい。実はこのアルバム、すごく小さなチームで作っているんです。夫のスウィズ・ビーツがプロデューサーに入って、「The Il'luminaries(イルミナリーズ)」というコンパクトな制作チームで、すごく短い期間で録音している。レコーディングもミックスもニューヨークで、一気に作り上げていて。そういうところも音に表れているのかもしれない。

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リリース情報

アリシア・キーズ『Here』日本盤
アリシア・キーズ
『Here』日本盤(CD)

2016年11月30日(水)発売
価格:2,376円(税込)
TSICP-4952

1. The Beginning(Interlude)
2. The Gospel
3. Pawn It All
4. Elaine Brown(Interlude)
5. Kill Your Mama
6. She Don't Really Care_1 Luv
7. Elevate(Interlude)
8. Illusion Of Bliss
9. Blended Family(What You Do For Love) ft. A$AP Rocky
10. Work On It
11. Cocoa Butter(Cross & Pic Interlude)
12. Girl Can't Be Herself
13. You Glow(Interlude)
14. More Than We Know
15. Where Do We Begin Now
16. Holy War
17. Hallelujah
18. In Common
19. In Common(Black Coffee Remix)
20. In Common(kaskade Remix)

プロフィール

アリシア・キーズ
アリシア・キーズ

グラミー賞15冠、全世界累計セールス3500万枚以上を誇るアリシア・キーズ。7歳からピアノをはじめ、ベートーヴェン~モーツァルトといったクラシックから、ジャズまで幅広く音楽を学ぶ。2001年、デビュー作『Songs in A Minor』を発表、グラミー5部門を受賞し全世界で1200万枚以上のセールスを記録。2003年に2ndアルバム『The Diary of Alicia Keys』を発表。2作連続でグラミー4部門受賞という快挙を成し遂げる。2007年に3rd『As I Am』、2009年に5thアルバム『The Element of Freedom』を発表。またJay-Zとの共演曲「Empire State of Mind」が空前の大ヒットを記録し、第53回グラミー賞で2部門を受賞する。2012年にリリースしたアルバム『Girl on Fire』は、全米初登場1位を記録。アーティストとしての活動のほか、女優業や、熱心な慈悲事業活動家としても知られる。2016年11月4日に4年振り、通算6作目となるニュー・アルバム『Here』をリリースした。

小袋 成彬(おぶくろ なりあき)

音楽レーベル「Tokyo Recordings」の代表取締役。シンガー、音楽プロデューサーとしても活動を行う。これまでに、綿めぐみやCapesonらのプロデュース、水曜日のカンパネラのトラックメイキングなどを手がけ、OKAMOTO'S、柴咲コウ、宇多田ヒカルなどの作品に関わる。

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