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鈴木おさむが映画『モンスト』に見た、現代の「視聴者」の変化

鈴木おさむが映画『モンスト』に見た、現代の「視聴者」の変化

『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:鈴木渉 編集:飯嶋藍子、野村由芽

かつて毎週楽しみにしていたバラエティー番組の中にあった身近なチーム感や空気感に、羨ましさを感じる人も多かったと思うんです。

―これまで視聴者だった人たちが、どんどん発信者的になっている。そして、彼らが上げる動画に、見る人は疑似体験的に関わっているというのは面白いですね。

鈴木:最近興味深いと思ったのは、フィッシャーズというYouTuberのグループがいるんです。中学の同級生で作られた大学生の7人組なんですけど、小中学生のアイドルらしく、毎日アップする動画でものすごい再生数を誇っている。

何をやっているかというと、たとえば人気のアスレチックシリーズというのがあり、彼らがアスレチックでキャッキャッと遊んでいる様子を見せているんです。たしかに編集はすごく上手いですし、キャラ設定もしっかりしているけど、正直、最初は見るに耐えなくて(笑)。

―たしかに、それだけ聞くと何が面白いのかわかりません(笑)。

鈴木:「なんでこんなものが!」と思ったんですけど、気がつくと、いつの間にか3本くらい動画を見ちゃっている自分がいて悔しかった(笑)。そこで、彼らの動画の何が好きなのかと大学生に聞いたら「自分の友達にいそうな人たちが、何かやっている感じが面白い」と言うんです。つまり、一種の疑似体験を楽しんでいるんですよね。

鈴木おさむ

―自分もそこに参加しているような感覚があると。

鈴木:以前はそれを、テレビが担っていたと思うんです。そもそも、僕がフィッシャーズの動画を初めて知ったのは、ある芸人さんから「これ、テレビのすごいライバルになりますよ」と言われて見せられたからなんです。最初は、その人が「僕ら芸人は、彼らのことを考えると夜も眠れない」と言うから、「何言ってんだ!」と笑っていたんです。

でも、彼から「いや、フィッシャーズがいまの小中学生にとって毎回楽しみなバラエティーなんですよ」と言われて腑に落ちた。たしかにかつて毎週楽しみにしていたバラエティー番組の中にあった、身近なチーム感や空気感みたいなものに、羨ましさを感じる人も多かったと思うんです。

―ああ、わかります。

鈴木:こうやって、YouTubeを通して視聴者の意識は変わっているんだと思いました。もちろん僕はテレビ出身の人間なので、テレビが最強だと思いたいですよ。でも、環境が変わってきていることは確実なので、そこは冷静に見ないといけない。多くのタレントやアイドルがテレビに固執していた時代があったけど、たぶん視聴者にとってはその見境は無くなってジャンルレスになっている。

テレビで見ていた楽しいワチャワチャ感を、ほかでも見ることができるし、しかも見る時間帯も自由に選べるとなれば、そちらに人が流れるのは自然でしょう。発信者もテレビで100万人に認められるより、ネットで10万人に熱狂的にウケた方が、本当はいいんじゃないかと思いますよね。

鈴木おさむ

―それは、そこで十分な利益が得られるからですか?

鈴木:たとえば、テレビのある時間帯で視聴率3%を取っている番組があるとしましょう。1%がおよそ30万人くらいだとすると、約100万人が見ているわけです。一方、YouTubeで100万回再生なんてザラにありますよね。そう考えたら、YouTubeは見たい時間に見られるわけなので、そこでお金を動かす作り方は十分あり得る。実際、ネットの広告費はもうすぐテレビを抜くと言われています。

今は、視聴者がどんなものに魅力を感じるかがすごく多様化していて、正解を見つけづらい時代だと思う。

―テレビ側としては、その状況に対して何を考えるんでしょう?

鈴木:そこが難しくて、ネットで言う100万回再生、テレビで言えば視聴率3%という数字は、テレビの視聴率にしたら低いと思われるわけです。だけど、実はすごくお金が動いている視聴率でもある。だから、そこに枠を切るかという話が問題になってくるんですよね。

要は、毎週必ず見てくれる人が3%いたら、それなりにお金は動くわけで、それでもいいという選択もある。あるいは従来の通りに、視聴率を10%狙おうという選択肢もある。すごく、過渡期になってきているんですよ。

鈴木おさむ

―なるほど。

鈴木:ただ、ネットの発信者がテレビを利用することも当然あって。話題のピコ太郎も、ネットで流行ったらテレビに出ましたよね。テレビに出てメジャーになるという流れは、現在も変わらない。だから問題は、メジャーになりたいかどうかでもあるんです。でも、テレビはメジャーになる上で必須だけど廃るのも早い。YouTuberの代表格のHIKAKINなどは、その線引きをしっかりしていますよね。

―古い時代の感覚では、YouTubeを舞台にしていると聞くと、どうしてもマイナーというイメージを持ってしまいますが、メインとサブが反転し得る時代なんですね。

鈴木:だからこそ僕は、この『モンスト』の映画にぜひヒットしてほしいと思います。というのも、従来のようにテレビを出発点にするのではなく、YouTubeというメディアでアニメを作っても、映画がヒットし得るというひとつのビジネスモデルになるから。テレビから映画という経路だけではない可能性が見えて面白いと思うんです。

鈴木おさむ

―誰もがテレビの視聴者だった時代は終わったと。最後に、そんなあらゆるメディアによる発信が可能になった時代に、制作者に求められる姿勢は何だと思いますか?

鈴木:今は、視聴者がどんなものに魅力を感じるかがすごく多様化していて、正解を見つけづらい時代だと思うんです。そのとき、制作のトップに立つ人には、自分が面白いと思うものをどれだけ考えられるかが、より求められると思う。

テレビには多くのルールがあるので、長くやっている人間ほど一種の落としどころがわかるものなんです。でも、そのルールの無い環境が整ったときこそ、作り手が何を面白いと信じるかの熱量が重要になる。『モンスト』には、そんな新時代の突破口になってほしいと思いますね。

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作品情報

『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』
『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』

2016年12月10日(土)から新宿ピカデリーほか全国公開
監督:江崎慎平
脚本:岸本卓
主題歌:ナオト・インティライミ“夢のありか”
出演:
坂本真綾
村中知
Lynn
木村珠莉
河西健吾
福島潤
小林裕介
水樹奈々
山寺宏一
北大路欣也
配給:ワーナー・ブラザース映画

プロフィール

鈴木おさむ(すずき おさむ)

放送作家。1972年生まれ。千葉県出身。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。バラエティーを中心に多くのヒット番組の構成を担当。映画・ドラマの脚本や舞台の作演出、小説の執筆等さまざまなジャンルで活躍。2002年10月には、交際期間0日で森三中 大島美幸と結婚。『「いい夫婦の日」パートナー・オブ・ザ・イヤー 2009』受賞。2015年には大島の妊娠・出産にあわせ「父勉」として1年間休業した。

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