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フィッシュマンズと90年代を、映像作家・川村ケンスケが振り返る

フィッシュマンズと90年代を、映像作家・川村ケンスケが振り返る

『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:岩本良介 編集:矢島由佳子

「前はこうだった。では今はこうなってる。それはなぜなのか?」ということを、もっと考えなきゃいけない。

―“ナイトクルージング”以降、川村さんはずっとフィッシュマンズのビデオを手掛けられていますが、どのビデオが印象深いですか?

川村:“MAGIC LOVE”(1997年)は『COUNT DOWN TV』(TBS系列)のエンディングテーマに使われたこともあって、最初ポリドールの人から「TBSのスタッフに撮らせたいんです」って言われたんです。そのときは「わかりました」って言ったんですけど、だんだん腹立ってきて(笑)。

その前に撮った“SEASON”(1996年)はいいビデオができたと思って、自分的には達成感もあったのに、その次のビデオでそんなこと言われてホント頭にきて……なにかやってやりたいと思ったから、勝手に撮ることにしたんです。

川村ケンスケ

―勝手に、ですか?(笑)

川村:レコード屋の店頭で流すコメント動画を撮る機会があったときに、「今から“MAGIC LOVE”のビデオを撮りに行きます」って言って。メンバーは「え?」って感じだったけど、2~3時間でバーッと撮って。で、これは今でもよく覚えてるんだけど、まあ、もう時効ということで……たしか小野正利さん……メルダックというレコード会社のアーティストの仕事で、編集室で彼の音楽ビデオを作った後に、朝までかかって“MAGIC LOVE”を「勝手に」編集したんです。

初めの気持ち通り、あまりにも悔しかったから、最後に手書きのポリドールのマークを入れたりしてね(笑)。それをポリドールに持っていって、「どちらを使うかはあなた次第です」って渡したら、結局僕が作ったものが正式なビデオになって、『THREE BIRDS & MORE FEELINGS』にも収録されているんですよ。

―すごい話ですね……。

川村:ただ結果的に、TBSスタッフが作ったバージョンは『COUNT DOWN TV』だけで流れていたから、「幻のバージョン」みたいになって、価値が上がっちゃったんだよね。ホントは逆になる予定だったんだけど、そこは読み違えたなって(笑)。

まあ、当時はそのくらいむちゃくちゃなこともありました。90年代は音楽ビデオが一番自由な表現ができるメディアだったと思っていて、僕らより前の世代はもっと自由だったと思う。たとえば、フリッパーズ・ギターのビデオなんて、ホント適当だけど、それがかっこよかったんですよね。なにかを狙って作るんじゃなくて、「こういうのを作りたいから作る」っていう感じがあったんじゃないかな。

川村ケンスケ

―YouTubeの時代になってからは、マーケティング的な目線で作られた、ある種定型化されたビデオも増えましたもんね。

川村:そこには抵抗しないといけないんじゃないかと思います。もちろん、「昔は自由でよかった」って話ではなくてね。ただ、そういう時代があったのは事実だし、今と昔を比べることは必要かもしれない。それはいい悪いの話でもないし、ノスタルジーでもなく、「前はこうだった。では今はこうなってる。それはなぜなのか?」「なにが変わって、なにが変わっていないのか?」ということを、もっと考えなきゃいけないんじゃないかと思いますね。

「変わった!」ってことがわかるには、「変わる前のこと」、簡単にいうと「過去」のことを知って、その上で「今」のことを感じる必要があるはず。その際に、「過去」を知ることを、一般的には「勉強」と呼ぶのだろうと思います。だからこそ、映像を作っていくためには「勉強」をしなければいけなくて。

あらゆる芸術表現や文学やなんかは、そういうふうであると思いませんか? そういう意味で、最近「おすすめ音楽ビデオ」っていうブログも書き続けていて、そこで音楽ビデオのことをいろいろ書いています。弊社社員には「必読!」と言っているんです。うざいっすね(笑)。

自分が思う「抵抗」をフィッシュマンズの音楽に乗せて実現しようとしていたのかもしれない。

―今おっしゃった言葉を使うと、90年代の川村さんとフィッシュマンズはある種の時代に対する「抵抗」の感覚を共有していたと言えるのでしょうか?

川村:僕からすると、フィッシュマンズを利用してというか、自分が思う「抵抗」をフィッシュマンズの音楽に乗せて実現しようとしていたのかもしれない。一般的には、それを「実験」と言うのかもしれないけどね。

『MOVIE CURATION~特上音響上映会~』で上映される『Fishmans in SPACE SHOWER TV』のなかには、『LONG SEASON THE VIDEO~Quiet Version~』というのが入ってるんですけど、あれはスペシャから番組を作ってくれって言われたときに、「風景だけでどこまで映像を成立させられるか」をやったものでした。そうしたら、当時フィッシュマンズのBBSに「あれは映像の専門学校の課題みたいなもんだ」って書いた人がいて、僕はそんなふうに思ってなかったから、「どこがそうなのか言ってくれ」って書いて。偉そうに言われるのが嫌だったんだろうね(笑)。

―(笑)。

川村:なんでそう書かれたのかを考えると、途中の話にも通じるんだけど、その人は「イントロ・Aメロ・Bメロ・サビ」が音楽ビデオだって思ってたんだと思う。でも、当時の僕は「そんなのはクソだ」と思ってたし、そもそもアーティストがあんまり映ってないビデオが好きだったから。その感じがフィッシュマンズの音にも合うと思ったんです。

当時『Qucik Japan』のインタビューで、佐藤くんかzAk(フィッシュマンズのライブ音響、レコーディングエンジニアを務める)かが、「ゼロである音楽ってなんだろう?」みたいな話をしていて。歌詞でも言ってるように、なにもないんだと。「じゃあ、なにもない映像っていうのもあるのかもしれない」と思ったんですよね。それを当時の表現のコード、規範のなかでやろうとしたんだと思う。極力意味も意図もないものができないかって、そういう実験だったのかもしれない。

川村ケンスケ

―音楽はときにメッセージ性や自意識の部分が取り沙汰され過ぎるけど、音楽は音楽であるだけでいいと言うか、「なにもない」ということに価値があるんだっていう、そういう提案でもあったというか。その意味では、川村さんとフィッシュマンズによるスペシャのステーションID(2001年)がすごく印象に残っていて、あれも「なにもない」映像でしたよね。

SPACE SHOWER TV STATION IDより

SPACE SHOWER TV STATION IDより

SPACE SHOWER TV STATION IDより
SPACE SHOWER TV STATION IDより

川村:「渋谷のハチ公前で待ち合わせしよう」って言ったときに、僕の頭のなかのハチ公前って、誰も人がいないんですよ。つまり、抽象化されたハチ公前が頭のなかにある。地図を見てるみたいな感じというか、記号としてその場所がある。そういう街を映像化したら、フィッシュマンズの音に合うんじゃないかって、いつも一緒に仕事をしていたカメラマンの方と、よく話をしていたりして。

それで実際に人がいない場所だったり、いたけど消しちゃったり、人の気配がありそうなんだけどそこには誰もいない、といった映像を1分くらいにまとめたんです。「なにもない」の理想に近づけると、ああなったという感じですね。

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イベント情報

『MOVIE CURATION ~特上音響上映会~』

2017年3月6日(月)
会場:東京都 渋谷 WWW

『Fishmans in SPACE SHOWER TV』
上映+トークショー

トークショー出演:
川村ケンスケ
角舘健悟(Yogee New Waves)

『「Cornelius performing Fantasma USツアー」密着ドキュメンタリー・完全版』
上映+トークショー

トークショー出演:
堀江博久
あらきゆうこ

『「The Documentary DEV LARGE/D.L」SPECIAL EDITION』
上映+トークショー

トークショー出演:
CQ(BUDDHA BRAND)
GOCCI(LUNCH TIME SPEAX)
GO(FLICK)
ダースレイダー

料金:各公演 1,800円(ドリンク別)
※毎回入れ替え制

『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』
『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』

『TOKYO MUSIC ODYSSEY』とは、「都市と音楽の未来」をテーマに、東京から発信する音楽とカルチャーの祭典です。素晴らしい音楽と文化の発信、新しい才能の発掘、人々の交流を通して、私たちの心を揺らし、人生を豊かにしてくれるアーティスト、クリエイターが輝く未来を目指します。2017年は3月2日(木)~8日(水)の一週間にわたり、様々な企画を展開。

プロフィール

川村ケンスケ(かわむら けんすけ)

1965年生。東京外国語大学外国語学部英米語学科卒。CM、PV、ライブ映像など数多くの映像作品を手掛ける。初演出のCMは、サントリーリザーブ・シェリー樽仕上げ(出演:木村拓哉)のCM。以降、100本以上のCMを演出。MVの主な作品には、サザンオールスターズ、フィッシュマンズ、嵐、倖田來未、安室奈美恵、ゲスの極み乙女。、GLIM SPANKYなど多数。インディーズ音楽支援サイト『kampsite』のディレクションも手掛ける。

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