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フィッシュマンズと90年代を、映像作家・川村ケンスケが振り返る

フィッシュマンズと90年代を、映像作家・川村ケンスケが振り返る

『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:岩本良介 編集:矢島由佳子

今でも一部のアーティストはお金かけて作ってるけど、僕からすると「もっと違うやり方あるんじゃないか」って思うことが多いかな。

―『MOVIE CURATION ~特上音響上映会~』はフィッシュマンズ以外に、CORNELIUSとDEV LARGEの作品が上映されるので、1990年代後半の雰囲気が味わえるイベントになっています。近年は若い人の間でも、90年代リバイバル的な空気があるように思うのですが、川村さんの思う90年代ならではの熱量というのは、どんな部分にあったと思われますか?

川村:音楽ビデオが一番ピークを迎えた時代が90年代後半だったんじゃないかとは思います。お金もあったし、時間もかけられた。今の人たちがその時代に憧れているとしたら、そのちょっと浮かれた感じの熱っていうものに憧れるのかもしれないですよね。

変なものも存在できたというか、傍流が傍流にならずに、メインストリームに投げ入れられた。クオリティーさえ高ければ、マーケティングを無視してもちゃんと注目される、そういう時代だったんじゃないかな。

だって、『FANTASMA』(1997年発売、CORNELIUSのアルバム)がマーケティングを基に作られたとは思えないでしょ? 「誰かに向けて」ってこともなかっただろうし……ディズニーに向けてはいたかもしれないけど(笑)、ディズニーに来る人に向けて作ってたわけじゃないよね。なおかつ、それが個人のレーベルで成り立っていた。そういうことに対して、今の人たちが憧れるっていうのはあるのかもね。

『MOVIE CURATION ~特上音響上映会~』
『MOVIE CURATION ~特上音響上映会~』(サイトを見る

―確かに、そうかもしれないです。

川村:僕がCMをやり始めたのも90年代の終わりで、お金とクリエイティブが一番いいバランスだったのかもしれない。バブル期は、お金はあったけど、テクノロジーは昔のままだった。でも、90年代はお金もまだあったし、デジタル時代の始まりでもあったんです。

たとえば、80年代にいすゞのジェミニという車のCMがあって、2台のジェミニがギリギリの距離でダンスするように走ったりジャンプしたりするんだけど、それは合成じゃなくて、人力なわけ。でも、90年代になるとそれが合成でできるようになって、さらには音楽ビデオですら「アメリカに行って色調整しようか」みたいな。あ、これは“ピンクスパイダー”(1998年発表、hide with Spread Beaverの楽曲)のことですが(笑)、簡単に言ってしまうと「バブル」な感じ……そういう時代だったんですよね。

―今ではありえない話ですね。

川村:でも、今でも一部のアーティストはお金かけて作っててさ、そのなかでいいものもあるんだけど、僕からすると「もっと違うやり方あるんじゃないか」って思うことが多いかな。「それ一回やったじゃん」っていうものだったり、今やる必要はないんじゃないかって思っちゃうものだったりね。

今って、ある意味YouTuberが音楽ビデオを超えちゃってると思うんですよ。

―過去の焼き直しではなく、今だからこそできる表現をもっと見たい?

川村:そう思うんだよね。「じゃあ、どんな感覚の映像がいいのか」というと、僕はやっぱり「なにもない映像ってなんだろう?」という話に戻ってきて、こればっかりはもうテクノロジーの問題ではなくて、「考え方」の問題だからさ。

で、これを小難しい言葉でいうと、「思想のある映像かどうか」という話になる。今、思想がある映像がどれだけあるのかって考えると、あんまりないような気がするんですよ。

川村ケンスケ

―川村さんの考える「思想のある映像」を、具体的に挙げていただくことはできますか?

川村:これは映像に限った話ではなくて、それこそまた小山田くんの話をすると、5.1chのサラウンドでCDを作るときに、音の配置ですごく悩んだ結果、バスドラをリスナーの位置に持ってきた。僕はこういう発想自体が「思想」だと思うのね。新しいフォーマットが出てきたときに、それに見合った最適なやり方を考えるっていうかさ。

今の映像はそれができてなくて、だからみんなアナログのレンズとかに走ってるんだと思う。そうじゃなくて、もっと考えてやれることがあるんじゃないかな。それをやるのは僕ではなくて、もっと今のテクノロジーにどっぷり浸かってる下の世代であるはずで。なんでそれをやらないのかっていうのは、「なにもない映像」を標榜する僕としては、すごく思うかな。

―YouTubeだったらYouTubeだからこそできる、思想のある表現方法がもっとあるのではないかと。

川村:今って、ある意味YouTuberが音楽ビデオを超えちゃってると思うんですよ。YouTuberが「この曲いい」って言った方が早いんじゃないかって思っちゃう。

だって、はじめしゃちょーとかは1日200万回とか再生されるわけでしょ? そんな音楽ビデオごくわずかだし、しかも彼らはリビングルームでパッとやって200万回だったりする。今、音楽ビデオはそこと同じフィールドにあるわけだから、やっぱり昔と同じことをしてる場合ではなくて、頭使って違うことを考えないと。

川村ケンスケ

―その意味では、やはりアーティストと映像の作り手との関係性が重要で、川村さんとフィッシュマンズのように、相互作用から思想のある映像が生まれるのかなと思います。

川村:音楽と映像が対等だからこそ、お互いに見合う音楽であり映像を作らないといけなくて、たぶん今はそれができてないから、YouTuberに負けちゃってる。それはすごい悔しいなって思うんだよね……まあ、これが一般的に言う、愚痴ってやつですけど(笑)。

―いやいや、これから映像作家を志す人はもちろん、なにかを表現したいと考えている人に向けてのメッセージになったと思います。

川村:そういうふうに思ってもらえると嬉しいですね。さっきも言ったように、自分は自分で今のやり方をやろうと思って頑張ってるんだけど、やっぱり若い人がやるべきだと思うから。今はもうバンドをやるのにギターが弾ける必要ないし、映像作るのにカメラと三脚持って朝早く集合しなくてもいいわけだからさ、After Effects(映像のデジタル合成やモーショングラフィックスなどを制作できるソフト)とか使えば(笑)。どんな形であれ、やれることがあるんじゃないかって思うんだよね。

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イベント情報

『MOVIE CURATION ~特上音響上映会~』

2017年3月6日(月)
会場:東京都 渋谷 WWW

『Fishmans in SPACE SHOWER TV』
上映+トークショー

トークショー出演:
川村ケンスケ
角舘健悟(Yogee New Waves)

『「Cornelius performing Fantasma USツアー」密着ドキュメンタリー・完全版』
上映+トークショー

トークショー出演:
堀江博久
あらきゆうこ

『「The Documentary DEV LARGE/D.L」SPECIAL EDITION』
上映+トークショー

トークショー出演:
CQ(BUDDHA BRAND)
GOCCI(LUNCH TIME SPEAX)
GO(FLICK)
ダースレイダー

料金:各公演 1,800円(ドリンク別)
※毎回入れ替え制

『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』
『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』

『TOKYO MUSIC ODYSSEY』とは、「都市と音楽の未来」をテーマに、東京から発信する音楽とカルチャーの祭典です。素晴らしい音楽と文化の発信、新しい才能の発掘、人々の交流を通して、私たちの心を揺らし、人生を豊かにしてくれるアーティスト、クリエイターが輝く未来を目指します。2017年は3月2日(木)~8日(水)の一週間にわたり、様々な企画を展開。

プロフィール

川村ケンスケ(かわむら けんすけ)

1965年生。東京外国語大学外国語学部英米語学科卒。CM、PV、ライブ映像など数多くの映像作品を手掛ける。初演出のCMは、サントリーリザーブ・シェリー樽仕上げ(出演:木村拓哉)のCM。以降、100本以上のCMを演出。MVの主な作品には、サザンオールスターズ、フィッシュマンズ、嵐、倖田來未、安室奈美恵、ゲスの極み乙女。、GLIM SPANKYなど多数。インディーズ音楽支援サイト『kampsite』のディレクションも手掛ける。

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