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yuleインタビュー 早耳リスナーの心を掴んでいる、6人編成音楽団

yuleインタビュー 早耳リスナーの心を掴んでいる、6人編成音楽団

Eggs
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:関口佳代 編集:矢島由佳子

Reiが言葉をこぼす「街の姿が時間をかけて変わっていく様は、人の心に似ている」

Annaの発言から出た「妄想」や「憧れ」という言葉こそが、前述したyuleの音楽が持つ「不思議な質感」の正体のひとつだろう。yuleの音楽の根底にあるのは、あくまでも思考や心の内側から生まれた、手の届かないなにかに対する渇望――つまり、「理想」だ。だからこそ、そこには切実な希望と、それが現実には簡単に存在しないことによる悲しみと孤独感が両立する。

Anna:Reiくんから曲が送られてくるときは、「曲がくる」というよりも、絵本や映画が飛んでくる感覚なんです。Aメロから最後のサビまで聴いてみると、必ず物語になっている。曲それぞれに違う風景がありつつ、でも、共通点もある。そんな、とても面白くて不思議なものを作ってくるんですよね。

Anna

そうAnnaが語るように、Reiが生み出す楽曲には一貫した物語を感じることができる。特に今作『Symbol』には、「街」「旅」「眠り」といった言葉がキーワードのようにして歌詞や曲タイトルの随所に登場し、楽曲のなかに一連のストーリーを浮かび上がらせるようだ。しかし驚くべきことに、Reiにしてみればこうしたストーリー性は、当初は意図せずに生み出されたものだという。

Rei:音や楽器の構成にはかなり時間をかけるんですけど、歌詞は30分くらいでバッと書くことが多くて。考えすぎないようにしているんですよね。なので、自分が書く言葉がファンタジーなのか、もっとパーソナルなものなのかって聞かれても、よくわからなくて。

もちろん、改めて自分で聴いていると、なんとなくですけど、「自分の気持ちが出ているな」って思うこともあります。でも、明確な指針があるわけではないんです。

―では、なぜ今作には「旅」や「街」というモチーフが頻出するのか、改めて考えてみて、わかることはありますか?

Rei:単純に、旅が好きだからっていうのもあると思うんですけど(笑)。……街って、面白いですよね。たとえば2017年の渋谷と、30年前の渋谷はまったく違う姿だった。でも、ある日突然、1987年から2017年の渋谷になるわけではなくて、毎日毎日、ビルがなくなったり、お店ができたりして、ちょっとずつシームレスに今の姿に変わってきたんですよね。それって、人の心に似ているなって思うんです。

人の心も、5歳のときと20歳のときの気持ちって、まったく違うものじゃないですか。外部から与えられた刺激だったり、自分で経験したり発見したことが心に蓄積されていって、段々と姿を変えていく。「街」という言葉を歌詞のなかでたくさん使っているのは、「人の心」の比喩なのかもしれないです。

左から:Rei、Anna

街も人も移り変わるからこそ、いつまでも変わらない「シンボル」を心に

Reiのこの話を聞いて思い浮かべた作品がある。日本ロック史に残る名作、はっぴいえんどの『風街ろまん』(1971年)だ。高度経済成長期、1964年には最初の『東京オリンピック』も開催され、日本という国の景色がどんどんと変化していった時代。その時代においてはっぴいえんどは、「風街」という、失われた日本の景色を思わせる街並みや、そこに生きる人々の心象風景を描くことで、音のなかに理想を刻んだ。

世界中にマクドナルドがある――少しずつ世界の在り様は変わっているとはいえ、そんなグローバリゼーションの影響下で進んできた現在の世界において、いまだなににも侵されていない場所を探して夢想を重ねるReiの作家性も、かつてのはっぴいえんどに、少なからず通じている部分があるのかもしれない。しかしながら、「街は人の心の比喩だ」という、あくまでも「人」の内面性に作品の主題を向けるスタンスは、yuleならではのものと言えるだろう。

Rei:人や街が変わっていくことには、悲観も楽観もしていないです。変わっていくことを否定しようとも思わないですし。ただ、たとえば長い間東京タワーがこの街にはあって、いつだって東京タワーを見れば、「あそこが芝公園辺りだな」ってわかる。そういうものって、人の人生にも絶対にあると思うんですよ。時間が経つと共に心の状態も変わるけど、いつでも人の心のなかには「自分を自分にしているもの」がある。

それが、僕らが言う「シンボル」だし、そういう物を大事にしたいんだと思います。長い間大事に聴いてきた音楽も、人の心にとっての「シンボル」になり得ると思うんです。音楽って、自分が心動かされるものを、鏡のように映してくれるものだから。

左から:Rei、Anna

―ReiさんとAnnaさんのなかでシンボルになるようなものはありますか?

Rei:親がSimon & Garfunkelをよく聴いていたんですけど、彼らの“Scarborough Fair”っていう曲が大好きで。一見すると普通のフォークソングなんですけど、よく聴くと、どこか異国の情緒みたいなものがある。あの曲は、自分にとってシンボルかもしれないです。

Anna:私にとっては、子供の頃に歌ってきた童謡や、読んできた絵本かな。『ぐりとぐら』(中川李枝子・文 / 大村百合子・絵、1967年)、『わたしのワンピース』(にしまきかやこ、1969年)、『はらぺこあおむし』(エリック・カール、1969年)。子供の頃って、絵本は物語の内容以上に「色」で、喜びを感じていたと思っているんです。その「色」に出会ったときの感動……そういうものが、私にとってのシンボルかなって思います。

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イベント情報

『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume94』

2017年2月23日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
Lee&Small Mountains
TENDOUJI
Qaijff
yule
caino(オープニングアクト)
料金:無料(2ドリンク別)

リリース情報

yule『Symbol』
yule
『Symbol』(CD)

2017年2月8日(水)発売
価格:2,500円(税込)
SPFC-0012

1. 大きな木/Childhood
2. Symbol
3. sleepless sleep
4. Call
5. starry song
6. hope.
7. 塔の街/tale
8. Morgenrot
9. ゴーストタウン
10. It's dark outside
11. 羊が眠る頃
12. Ruler
13. 居住区/Area

プロフィール

yule
yule(ゆーる)

yule(ユール)は、Rei(Gt,Vo)、Anna(Vo)、mag(Gt)、Iwao(Gt,Synth,Glockenspiel)、Tetsutaro(Ba)、fumi(Dr)からなる東京の男女混声6人編成バンド。2015年1月、ボーカルのRei、Annaを中心に結成。男女混声のボーカルを中心にアコースティックギター、マンドリン、グロッケンシュピール、シンセサイザーなど多彩な楽器を加えたサウンドが特徴。2016年7月、販売終了した1st EP『Sleep』を再生産しタワーレコード渋谷店で限定販売を開始しスマッシュヒット中。その後タワーレコード新宿店・タワーレコード梅田大阪丸ビル店でも取り扱い開始。早耳の音楽ファンの間で話題となりつつある2017年間違いなく注目されるバンド。

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