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片桐仁×中屋敷法仁対談 現代の不寛容さに「コメディー」で対抗

片桐仁×中屋敷法仁対談 現代の不寛容さに「コメディー」で対抗

『サクラパパオー』
インタビュー・テキスト
萩原雄太
撮影:田中一人 編集:飯嶋藍子

笑いを取らなければいけませんが、それだけでなく「祈り」が込められているのがコメディー。(中屋敷)

―片桐さんは、お笑いというフィールドを主戦場にしていますが、お笑いと演劇とはどのように違うと感じますか?

片桐:お笑いは「笑い声」という目的が定まっているので、お客さんに向けてエネルギーを発します。お客さんのほうに僕らが入っていくというイメージです。でも、演劇は、お客さんがこちらに入ってくるように感じるんです。

お笑いは顔が見えるか見えないかで笑いの量が違いますから、芝居ではお客さんに背中を向けることに最初は違和感がありました。だけど、芝居の世界に集中力を持ってお客さんは入ってきてくれる。芝居の世界に、お客さんを混ぜ込んでいる感じがするんです。

片桐仁

―お客さんとのコミュニケーションの違いですね。では、中屋敷さんにとって、コメディーとはどのようなものでしょうか?

中屋敷:コメディーは祈りだと思っています。

―「祈り」とは?

中屋敷:もちろん笑いを取らなければいけませんが、それだけでなく「こういう人に会いたい」「こうなってほしい」という祈りが込められているのがコメディーです。今作も、笑いがふんだんに散りばめられつつ、劇作家が書いているのは「こんな人に会いたい」「こんな世界を生きたい」という飽くなき祈りなんです。

―たしかに、ありえないからこそ羨望してしまう世界が広がっていますね。

中屋敷:こういう作品をやっていると、自分のせせこましさが身につまされます。「なんで自分はこんなに不寛容なんだろう……」「なんで自分はこのように生きられないんだろう……」って。この作品を通して、ただ笑えるだけじゃなく、もっと大きなところまでたどり着きたいんです。

現代人は、何事も自分の力でなんとかなると思いすぎですよ。(中屋敷)

―「もっと大きなところ」とは?

中屋敷:これは初めて言うのですが、この作品は、ギリシャ悲劇に似ていると思うんですよ。

―『オイディプス王』や『エレクトラ』と『サクラパパオー』が似ている!?

中屋敷:ギリシャ悲劇って、人間が何もできないんです。いろいろなことを考えて行動するのに、結局運命には逆らえない。『サクラパパオー』も、人間の運命を馬に託すという物語です。こちらが祈っても馬には届きませんよね。運命に抗おうとしつつ、抗えない人々の物語なんです。

中屋敷法仁

片桐:確かにレースのときも祈ることしかできません。今作の登場人物たちは、みんな勝手な思惑を持っていますが、レース中は何の手出しもできないんです。

中屋敷:そうそう。そんな部分が、この作品のファンタジー性を高めています。人間は何もできないけど、それでも何かできるのではないかと思ってしまう。鈴木聡さんがおっしゃっていたんですけど、レースを見ても見なくても結果は変わらないんですよね。

それなのに、人はわざわざ競馬場に来て見てしまう。自分が見ていると何かが起こるかもしれない、自分が見ていないとダメなんじゃないか……、そんな気持ちを掻き立てられるんです。

―その意味では、究極的にいまの時代と逆行する作品ですね。

中屋敷:現代人は、何事も自分の力でなんとかなると思いすぎですよ。能や歌舞伎、あるいはシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を見ても、人間の力ってたいしたことないんだって気付かされます。人間よりもはるかに巨大な、運命のような大きな力があるんですよね。

運命に翻弄される人々を描いた作品を現代の観客が観ると、「予定調和」「こんな展開ありえない」と感じてしまうかもしれません。だけど、人生ってありえないことが起こるんですよ! そんな物語を肯定していかないと、リアルな人生も肯定できないと思うんです。

左から:片桐仁、中屋敷法仁

―まさか、競馬場を舞台にしたコメディーが、そこまで大きな話につながるとは思いませんでした。

中屋敷:コメディーという響きからスケールの小さい作品だと思われるのが嫌なんです。笑うだけでなく、これを見て「人間って素晴らしい!」って思ってほしいですね。

片桐:笑わせようとばかりしてました、すいません!

中屋敷:それは大いにやってください!

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イベント情報

『サクラパパオー』

作:鈴木聡
演出:中屋敷法仁
出演:
塚田僚一(A.B.C-Z)
中島亜梨沙
黒川智花
伊藤正之
広岡由里子
木村靖司
市川しんぺー
永島敬三
片桐仁

埼玉公演
2017年4月26日(水)~4月30日(日)全6公演
会場:埼玉県 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
料金:8,000円

東京公演
2017年5月10日(水)~5月14日(日)全6公演
会場:東京都 東京国際フォーラム ホールC
料金:S席9,000円 A席7,000円

仙台公演
2017年5月16日(火)全1公演
会場:宮城県 仙台 電力ホール
料金:9,000円

愛知公演
2017年5月19日(金)全1公演
会場:愛知県 豊橋 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
料金:9,000円

大阪公演 2017年5月25日(木)、5月26日(金)全3公演
会場:大阪府 サンケイホールブリーゼ
料金:9,000円

プロフィール

片桐仁(かたぎり じん)

1973年生まれ。コメディアン、俳優、彫刻家。多摩美術大学卒業。在学中に小林賢太郎とラーメンズを結成、現在『エレ片のコント太郎』(TBSラジオ)、『シャキーン!』(NHK教育)、『車あるんですけど・・・?』(テレビ東京)、『最上級のひらめき人間を目指せ!金の正解!銀の正解!』などに出演中。

中屋敷法仁(なかやしき のりひと)

柿喰う客・代表。独特の感性と高い演劇教養を武器に、幅広い舞台作品を手掛ける演劇家。柿喰う客全作品の脚本・構成・演出を担う。2004年、柿喰う客の活動を開始。2006年、柿喰う客の劇団化にともない代表に就任。新作はもちろん、古典戯曲や短編、一人芝居など様々なジャンルの作品に挑戦し続けている。外部の脚本・演出も多い。桜美林大学文学部総合文化学科演劇コース卒。末っ子長男。

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