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片桐仁×中屋敷法仁対談 現代の不寛容さに「コメディー」で対抗

片桐仁×中屋敷法仁対談 現代の不寛容さに「コメディー」で対抗

『サクラパパオー』
インタビュー・テキスト
萩原雄太
撮影:田中一人 編集:飯嶋藍子

学校では「ダメな大人になってはいけない」と教えるけど、芸術は「大人はみんなダメなんだ」と伝えることができるものなんです。(中屋敷)

―『サクラパパオー』を演出する上で、中屋敷さんはどんな部分を見せたいと考えていますか?

中屋敷:今作は、誰にも悪意がないのがとても面白く、そこがまた難しいところでもあります。シニカルな笑いではなく、絶対的に人間を信じているからこそ生まれる笑い。

これをやりきる俳優さんは大変ですが、やりきったら、単純な大爆笑ではなく、「ふふっ」っと細胞レベルで人間を愛して笑ってあげるような気持ちになると思う。「人間を愛する」「人間って楽しいな」という、深くてスケールの大きな笑いになるといいなと思っています。

―さきほどの片桐さんのお話とも共通しますが、近年の作品には見られないような「人間賛歌」を感じますね。

片桐:なんか、最近は世間が切羽詰まっていますよね。僕は、1996年に大学を卒業しましたが、別に就職しなくても、バイトしながら面白おかしく暮らしていけるだろうって思っていました。

でも、いま、美大生ですら、みんな就職するらしくて。みんなちゃんとしていて、将来の不安を露骨に意識していますよね。もちろん個人の自由ですけど、世の中がシビアになって、人間関係がせせこましくなっていんじゃないかな。

片桐仁

―的場のような人物がいたら、Twitterで大炎上でしょうね(笑)。

中屋敷:いま、不倫だなんだと騒がれる世の中ですが、的場のように「好きなんだからしょうがない!」「好きな人にお金を使い込んじゃったんだからしょうがない!」っていう人間らしい気持ちは肯定したいですね。

―中屋敷さんは、以前、CINRA.NETのインタビュー(「悲惨な演劇の状況をぶっ飛ばしたい」中屋敷法仁インタビュー)で「芸術の役割の1つは『人間は愚かで、くだらなくて、なんの意味もないヤツらだよ。でも絶望する必要はないんだよ。それが人間なんだ!』と伝えること」と仰っていましたが、『サクラパパオー』という物語は、まさにその芸術観に通底するものがあるのではないでしょうか?

中屋敷:これから、道徳が正式な教科となり、きっと、子どもたちは立派な大人の話しか耳にしなくなると思うんです。学校では「ダメな大人になってはいけない」と教えますよね。けど、芸術は「こんなにダメな大人がいる」「大人はみんなダメなんだ」と伝えることができるものなんです。

『サクラパパオー』は、きっと学校公演には呼ばれないと思いますが(笑)、子どもたちこそこういう作品を観るべきだと思いますよ。そうしないと、どんどんと人間の器が小さくなっていっちゃうんじゃないかな。

中屋敷法仁

片桐:この作品にあるような「まあいいか」っていう気持ちは、すごく大事ですよね。

中屋敷:そうですね。ダメな人間ばかりですが、お互いに対してとても寛容ですよ。

片桐:登場人物たちはけっこうヒドいことをしているけど、みんなそれぞれの正義を振りかざさないんです。いま、みんな平気で正義を説くじゃないですか。でも、正義ほどタチが悪く、信用できないものはない。正義を振りかざす人に対しては、「お前はそんなにできた人間なのか?」と、疑問を持ってしまいます。

演劇は、いまや数少なくなった枷のない表現のひとつで、タブーなく自由に世界を表現することができる。(片桐)

―『サクラパパオー』に描かれる寛容さは、現代を生きる我々にとって、忘れがちなものです。その意味でも、この作品がいま上演される価値がありそうですね。

片桐:どんどんと不寛容になってきていますからね。演劇は、いまや数少なくなった枷のない表現のひとつで、タブーなく自由に世界を表現することができる。演劇に政治などが介入してきたら、本当に嫌ですよ……。

―そんな、枷のない自由さを味わうのは演劇を観る醍醐味のひとつですね。

片桐:それに、演劇を観に行ったらスマホもいじれないし、お客さんはとても集中力の高い空間で舞台を観ることになる。俳優としても、僕らの一挙手一投足へのお客さんの反応をひしひしと感じます。そんな素晴らしい空間なのに、多くの人は演劇を観ないからもったいないなあ……。

片桐仁

中屋敷:僕は、演劇がめちゃくちゃ面白いと思っているから、来ない人の気持ちがわからないんですよね(笑)。毎日でも演劇を観ていたいんですよ。今年、お休みをもらって俳優さんを見ない時期があったのですが、とてもつらかった。俳優が見たくて、身体が震えていました(笑)。語弊がある言い方ですが、普通の人って、見ていても面白くないじゃないですか。

―普通の人は、面白さを重視してないですから(笑)

中屋敷:舞台上の俳優さんは、お客さんに面白く感じてもらうために行動し、喋っていますよね。けど、普通の人間って、人前でつい立派になろうとしたり、失敗しないようにしたり、失礼なことをしないようにします。犯罪も犯さないですしね。

片桐:俳優だって犯罪はダメだよ!(笑)

中屋敷:でも、役者さんは舞台に上がったらルールが変わるじゃないですか? 舞台のセットに上がれば、ある程度、社会の常識は守らなくてもよくなる。そこで、いきいきと動いている姿が僕にとっての面白さなんです。

それに、演劇の本番中は誰も邪魔しませんよね。お客さんの誰ひとりとして「引っ込め!」と言いません。そんな約束事の中で、演劇の時間が流れる。こういう、普段の空間では味わえない素敵な時間が演劇なんです。

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イベント情報

『サクラパパオー』

作:鈴木聡
演出:中屋敷法仁
出演:
塚田僚一(A.B.C-Z)
中島亜梨沙
黒川智花
伊藤正之
広岡由里子
木村靖司
市川しんぺー
永島敬三
片桐仁

埼玉公演
2017年4月26日(水)~4月30日(日)全6公演
会場:埼玉県 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
料金:8,000円

東京公演
2017年5月10日(水)~5月14日(日)全6公演
会場:東京都 東京国際フォーラム ホールC
料金:S席9,000円 A席7,000円

仙台公演
2017年5月16日(火)全1公演
会場:宮城県 仙台 電力ホール
料金:9,000円

愛知公演
2017年5月19日(金)全1公演
会場:愛知県 豊橋 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
料金:9,000円

大阪公演 2017年5月25日(木)、5月26日(金)全3公演
会場:大阪府 サンケイホールブリーゼ
料金:9,000円

プロフィール

片桐仁(かたぎり じん)

1973年生まれ。コメディアン、俳優、彫刻家。多摩美術大学卒業。在学中に小林賢太郎とラーメンズを結成、現在『エレ片のコント太郎』(TBSラジオ)、『シャキーン!』(NHK教育)、『車あるんですけど・・・?』(テレビ東京)、『最上級のひらめき人間を目指せ!金の正解!銀の正解!』などに出演中。

中屋敷法仁(なかやしき のりひと)

柿喰う客・代表。独特の感性と高い演劇教養を武器に、幅広い舞台作品を手掛ける演劇家。柿喰う客全作品の脚本・構成・演出を担う。2004年、柿喰う客の活動を開始。2006年、柿喰う客の劇団化にともない代表に就任。新作はもちろん、古典戯曲や短編、一人芝居など様々なジャンルの作品に挑戦し続けている。外部の脚本・演出も多い。桜美林大学文学部総合文化学科演劇コース卒。末っ子長男。

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