特集 PR

Sentimental boys、映画に憧れるロックバンドの気高き闘争心

Sentimental boys、映画に憧れるロックバンドの気高き闘争心

Sentimental boys『青春が過ぎてゆく』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:田中一人 編集:山元翔一

ギターロックという手法において、これほどまで、聴き手の人生に対して祝福を与えられる存在が、他にどれほどいるだろうか。長野出身の4ピースバンド、Sentimental boysがリリースする1stミニアルバム『青春が過ぎてゆく』。音楽的な冒険心、詩情や物語を手放すことなく、音楽のなかに独立した世界を描こうとするこの作品は、ギターミュージックが持つ可能性を拡張させることに成功した、今の時代においてとても稀有な1枚だ。ここには、言いたいことを吐き出すためではなく、大勢で体を動かすためでもなく、慰めでも説教でもなく、ただ、音楽として、芸術として、聴き手の人生の1歩先にそっと佇むような気高さがある。

本作のリリースにあたり、上原浩樹(Vo,Gt)と櫻井善彦(Ba)のふたりに話を聞いた。どこか素朴さすら感じさせる人柄だったが、自分たちが信じるものに対する意志はどこまでも固いふたりだった。

ひとりぼっちのための音楽を。寂しさをごまかすのではなく、寄り添うSentimental boysの歌

リズムは反復し、メロディーは循環する。そうして連続性を保ちながら、次第に覚醒感を帯びていく音の波は、そこに乗せられるエモーショナルな歌声と共に様々な余韻と予感を残して、いつの間にか「ここではないどこか」に行き着き、そっと消えていく。まるで、この音楽が鳴り終わった後の人生に、聴き手を送り出すように――。Sentimental boysの鳴らすギターミュージックは、体よりも先に心を揺らす。共感や一体感よりも、聴き手一人ひとりの心の最深部を捉える物語が、そこにはある。

櫻井(Ba):人間って、群れたくなるものじゃないですか。でも、群れてしまうことで、人も音楽も個性がなくなってしまうと思うんですよね。僕自身、みんなで楽しく聴けるものというより、ひとりぼっちでイヤホンを付けて聴くような音楽が好きで。すごいハイテンションで、「みんなで楽しくいこうぜ!」って感じの音楽を聴くと、僕はテンションが下がってしまうんですよ。人に寄り添うような、「寂しいけど頑張ろう」って思わせてくれる音楽が、僕は好きですね。

そう語るのは、バンドのベーシストであり、作詞作曲を手がける櫻井。彼の作る繊細な詩情が浮かぶ楽曲が、上原浩樹(Vo,Gt)、堀内拓也(Gt)、藤森聖乃(Dr)という三人のメンバーと共に、雄大なギターロックとして紡がれる――それが、Sentimental boysだ。まずは振り返ろう。やはりどんなバンドにも、出発点には「バンド」そのものに魅了された少年たちの無邪気な姿がある。

櫻井:僕らは四人とも、長野県の上田市というところで育ったんです。長野県は「日本で一番幸福な県」と言われているんですけど、そのなかでも上田市は、一番と言っていいくらい過ごしやすい場所なんじゃないかな。そんな街で、僕らは高校1年生のころからバンドをやっていて。

最初は、GOING STEADYのコピーバンドをやっていたんです。高1の終わりごろ、オリジナル曲をやるために始めたのがこのバンドなんですけど、「Sentimental boys」っていうバンド名は、ゴイステの曲名から取って。僕らが高校生のころはバンドブームみたいな空気があったんですけど、ゴイステだけはどこか違ったんですよね。

左から:櫻井善彦、上原浩樹
左から:櫻井善彦、上原浩樹

上原(Vo.Gt):やっぱり、あの情けなさじゃない? 本来、人間の外に出ないような部分が、ゴイステの場合は、音楽を通して飛び出ていたんですよね。その生身の想いを吐き出している姿を見て「羨ましいな」っていう感覚があったなぁ。歌詞もメロディーも、あの「ひずみ」も、すべてが衝撃的だったんです。

バンドでの成功を夢見て上京するも、メンバーは一度バラバラに

2000年代の日本の音楽シーンにおいて、多大なる影響力を持ったパンクバンド、GOING STEADY。銀杏BOYZの前身バンドでもある彼らが1999年にリリースした1stシングル『You & I』に収録されているのが、“Sentimental Boys”だ。この曲は、たった1分少々を疾風怒濤に駆け抜けるパンクチューン。荒々しい演奏、荒々しい歌声、しかし、胸を締めつけるメロディー。衝動とロマンが爆発する、このたった1分間の体験が、長野の片田舎で暮らす四人の少年の人生を変えた。地元の高校生バンドとして文化祭や地元ライブハウスでの活動を経た四人は、高校卒業後、上京する。

上原:もう、バンドをやることしか見えていなかったですね(笑)。別に、「田舎にいたくない」とか、「地元が嫌だから出てきた」とか、そういうことではないんです。ただ、憧れの東京に行って、そこでバンドをやりたかった。それはみんな同じだったんだろうと思います。結局、メンバー全員で会議をしたわけではないのに、「バンドやるなら東京だ」っていう感覚がみんなのなかに自然と生まれていて、それぞれ進学を口実に東京に出てきたんです。

櫻井:ただ、東京に出てきてからは紆余曲折ありました。他にやりたいことを見つけたメンバーが脱退してしまったりして。でも、2012年に結成当時のオリジナルメンバーが再集結したんですよ。なので、プロフィールには「2012年より本格的な活動を開始」と書いてあるんです。

Sentimental boys
Sentimental boys

櫻井:やっぱり、ゴイステのコピーをやっていたころから一緒だったから、原点も一緒だし、この四人が一番しっくりきます。ただ、音楽性自体は、東京に来てからだんだんと変わっていったんです。最初は、「ゴイステみたいなストレートな曲を作りたい」と思っていたけど、今はそうではないので。

櫻井が言うように、今回リリースされる1stミニアルバム『青春が過ぎてゆく』に収録される5曲のなかに、GOINSG STEADYのような衝動的なパンクソングはない。喜怒哀楽が吹きすさぶ心象風景を音像化したようなギターサウンドには少なからず影響を感じるが、その根底にあるループを主体とした綿密なサウンドスケープは、GOING STEADYや初期の銀杏BOYZが得意とした瞬間的な感情の沸点の表現より、むしろ、なだらかに続いていく日常の在り様を表現しているように思える。

Sentimental boys『青春が過ぎてゆく』ジャケット
Sentimental boys『青春が過ぎてゆく』ジャケット(Amazonで見る

結成当初から明確に変化した方向性。ここには、バンドのインプットの変化、そして、コンポーザーである櫻井の、上京以降の人生経験が大きく反映されているようだ。キーワードはふたつ――「映画」と「暗黒期」。ひとつずつ紐解いていこう。

Page 1
次へ

リリース情報

Sentimental boys『青春が過ぎてゆく』
Sentimental boys
『青春が過ぎてゆく』(CD)

2016年4月5日(水)発売
価格:1,620円(税込)
EGGS-020

1. グッドバイ
2. 二人の顛末
3. 春の海で
4. はっぴいな日々
5. 青春が過ぎてゆく

イベント情報

『Sentimental boys 「青春が過ぎてゆく」Release Tour』

2017年4月16日(日)
会場:長野県 上田 Radius

2017年4月21日(金)
会場:愛知県 名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL

2017年4月22日(土)
会場:京都府 GROWLY

2017年5月16日(火)
会場:神奈川県 横浜 F.A.D

2017年5月24日(水)
会場:大阪府 心斎橋 Pangea

2017年5月25日(木)
会場:福岡県 UTERO

2017年6月2日(金)
会場:長野県 松本ALECX

2017年6月11日(日)
会場:東京都 下北沢Club Que

プロフィール

Sentimental boys
Sentimental boys(せんちめんたる ぼーいず)

長野県上田市出身の4人組ロックバンド。 2012年より本格的な活動を開始。2015年9月に満を持して1stフルアルバム『Parade』を全国リリース。同年12月に下北沢SHELTERにて行われたツアーファイナルは見事ソールドアウト。2016年は会場限定EP『グッドバイ e.p.』をリリースし、地元長野で行われた『OTOSATA ROCK FESTIVAL』や『りんご音楽祭』への出演を果たす。2017年2月にはバンド史上初のワンマンを成功。ミディアムテンポの楽曲群は限りなくエモーショナルなうねりが渦巻いており、誰の心にも存在する原風景のような懐かしい景色と色彩を映す。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

Suchmos“WIPER”

『日本レコード大賞』最優秀アルバム賞を受賞するなど、まさに「今年の顔」だったSuchmos。のべ2万5千人動員の全国ツアーを揺らしたアッパーチューン“WIPER”のMVには、7月に開催された日比谷野音ライブの映像を使用。カラフルでアーティスティックなアニメーションを加えて、とどまるところを知らない彼らの勢いと躍動感を伝えている。監督は山田健人。(佐伯)

  1. マグリット、ダリ、マン・レイら 横浜美術館のシュルレアリスム作品展 1

    マグリット、ダリ、マン・レイら 横浜美術館のシュルレアリスム作品展

  2. 高校生のサザエにマスオが公開告白 カップヌードル新CM「サザエさん篇」 2

    高校生のサザエにマスオが公開告白 カップヌードル新CM「サザエさん篇」

  3. 石野卓球のCD8枚組100曲超収録のワークス集、石野文敏(16)による楽曲も 3

    石野卓球のCD8枚組100曲超収録のワークス集、石野文敏(16)による楽曲も

  4. 『孤独のグルメ』大晦日に特番放送 松重豊「テレ東はこの時間帯を捨てたな」 4

    『孤独のグルメ』大晦日に特番放送 松重豊「テレ東はこの時間帯を捨てたな」

  5. 堀込泰行×D.A.N.櫻木対談 影響し合う二人による「歌詞」談義 5

    堀込泰行×D.A.N.櫻木対談 影響し合う二人による「歌詞」談義

  6. 広瀬すずがNHK朝ドラのヒロインに 2019年前期放送『夏空 ―なつぞら―』 6

    広瀬すずがNHK朝ドラのヒロインに 2019年前期放送『夏空 ―なつぞら―』

  7. 現代演劇ポスター展に宇野亞喜良、横尾忠則らの約300点 トークにKERAら 7

    現代演劇ポスター展に宇野亞喜良、横尾忠則らの約300点 トークにKERAら

  8. 長瀬智也×ディーン×高橋一生が共演 『空飛ぶタイヤ』特報&ビジュアル 8

    長瀬智也×ディーン×高橋一生が共演 『空飛ぶタイヤ』特報&ビジュアル

  9. KIRINJIからコトリンゴが脱退 12月の大阪公演が現体制ラストライブに 9

    KIRINJIからコトリンゴが脱退 12月の大阪公演が現体制ラストライブに

  10. 『この世界の片隅に』を野外無料上映 今週末に銀座で『ねぶくろシネマ』 10

    『この世界の片隅に』を野外無料上映 今週末に銀座で『ねぶくろシネマ』