インタビュー

Corneliusが11年ぶりのアルバムを語る。この11年何があった?

Corneliusが11年ぶりのアルバムを語る。この11年何があった?

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:森山将人 編集:柏井万作、山元翔一

波って、グリッドのない世界だと思うのね。そういう感じをアルバムの一要素として入れたくて。

―一方で、言葉のない“Surfing on Mind Wave pt 2”も、“あなたがいるなら”とは別の意味でアルバムを象徴する1曲だと思いました。

小山田:『攻殻機動隊』のサントラに“Surfin' on Mind Waves”って曲が入っていて、気に入ってたから作り直しました。原曲は物語の世界観に合わせて、マイナーで、ダークな和音構成だったのに対して、今回は明るくも暗くもない、どっちとも取れる和音構成にして、波の中をマインドトリップするイメージ。次の曲が“夢の中で”だから、徐々に夢の中にトリップしていって、次の曲でまた現実に戻ってくるみたいな。

―なるほど。構成も考えられてるわけですね。

小山田:あと波って、グリッドのない世界だと思うのね。リズムはあるんだけど、正確なものじゃなくて、常に形を変えている。ひたすら続いていく、景色が変わっていく、そういう感じを『Mellow Waves』っていうアルバムの一要素として入れたくて。ポップスのアルバムには普通入らないタイプの曲だけど、歌ものの中にこれが入ることで、何か新しい感じに聴こえるんじゃないかなって。

小山田圭吾

―音と音楽の境界を捉え直すような視点は、それこそ教授の新作だったり、あるいはOneohtrix Point Neverあたりにも通じる感覚だと思いました。

小山田:ああ、そういう感覚は近いですね。いろんなタイプの曲が入ってるけど、こういう部分も自分の中に確実にあるので、このアルバムの世界に入れてみたかったんです。

最近はむしろ子供の方が詳しくなって、僕が教えてもらうこともあるんですよ。

―アルバムジャケットは、銅版画家の中林忠良さんの作品ですね。

小山田:中林さんは僕の叔父さんなんですけど、『SENSUOUS』が出た後くらいに展覧会を観に行って、すごくいいなって思って、いつかジャケットを作ってもらいたいと思ってたんです。レコーディングをしてる時点で、中林さんの作品の、夢と現実の間みたいなイメージがぼんやりとあったので、それがアルバムのトーンを決めた部分もあるかもしれない。

『Mellow Waves』ジャケット
『Mellow Waves』ジャケット(Amazonで見る

―小山田さんもそうやって、音楽以外の分野から刺激を受けているわけですよね。CINRA.NETは幅広いカルチャーを扱っているメディアなので、小山田さんの音楽以外の興味についても伺えればと思います。

小山田:いろいろ刺激を受けてるから、何を取り上げるか難しいんだけど(笑)。子供が今高校生で、最近自分が10代の頃に聴いてた音楽を一緒に聴いたりしてるって話をしたけど、映画もよく一緒に見てて。この間は『ツインピークス』(製作総指揮デヴィッド・リンチによるテレビドラマおよび映画)とか『エル・トポ』(1970年公開、監督はアレハンドロ・ホドロフスキー)とか、ああいうのももう見せてもいいかなって思って見せたら、すごい気に入って。

当時でも相当変わった作品だったけど、現代に至るまでああいう作品はあんまりないから、そういうものを見ることで感じることがあるかなって。なので、自分が見てきたものを、同じように段階を追って子供に見せたりしてますよ。

―ちなみに、『猿の惑星』(映画に出てくるチンパンジーの博士の名前が「コーネリアス」で、その子供の名前を、小山田は自身の子に命名している)は一緒にご覧になりました?

小山田:見てない(笑)。最近はむしろ彼の方が詳しくなって、僕が教えてもらうこともあるんですよ。最近だとNetflixでやってる『ストレンジャー・シングス』(2016年より公開。製作総指揮はショーン・レヴィ)を教えてくれて、面白かったんだけど、ああいうのを見るとこっちは元ネタがわかるから、今度は『遊星からの物体X』(1982年公開。監督はジョン・カーペンター)を教えたり、そういうことをしてますね(笑)。

これからはもうちょっと自分の作品を意識的に作ろうかなと思います。

―ジャケットの中林さんもそうですし、“The Spell of a Vanishing Loveliness”の作詞をしているLushのミキ・ベレーニも小山田さんのはとこにあたるそうですし、お子さんの話とかも含め、自分の人生を今回の作品に投影させるような視点もあったのでしょうか?

小山田:どうですかね……まあ、頼まれた仕事だとこういうことはできないっていうか(笑)、自分の作品くらい自分の好きなようにやりたいってくらいですかね。

自分の作品とそうじゃない作品の一番の違いって、お題があるかないかで、自分のときは何をやってもいいわけじゃないですか? 「何やってもいい」って言われると、「何やったらいいかな?」ってなることもあると思うんですけど、最初は無意識に作っていって、途中から意識的になるものですよね。

―そうやって無意識からスタートした作品が、結果的にメロウなムードの作品になったということに関しては、客観的にどう捉えていますか?

小山田:……「なるほど」っていう感じ。中年も深まってきたなって(笑)。

―(笑)。年齢のことをよく考えるようになりました?

小山田:まあ、考えますよね。デヴィッド・ボウイにしろ、プリンスにしろ、去年は自分が好きで憧れてた人や自分の知り合いでお世話になった人も亡くなったりしましたからね。「今回のアルバムが約10年ぶりだから、また10年かかったとしたら、もう60歳か」とかね(笑)。

小山田圭吾

―「自分の作品を残す」ということの意味も変わってきますよね。それこそ高橋幸宏さんのように、多作モードに切り替わったりすることもあるかもしれない。

小山田:幸宏さんはずっと作ってるもんね。まあ、もうちょっと意識的に自分の作品を作ろうとは思ったというか、「10年はないな」って(笑)。

―では次回作は、あまり時間を置かずに(笑)。

小山田:もともとフリッパーズ・ギターでデビュー(1989年)してから『POINT』くらいまでの10年って、ほとんど自分のことしかやってなかったんですけど、そればっかりだと飽きてきちゃうっていうか、やることがローテーション化してきちゃう。

でも、この10年でいろんな角度から音楽に携わるってことを十分経験できたので、これからはもうちょっと自分の作品を意識的に作ろうかなと思います。

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リリース情報

Cornelius『Mellow Waves』
Cornelius
『Mellow Waves』(CD)

2017年6月28日(水)発売
価格:3,024円(税込)
WPCL-12660

1. あなたがいるなら
2. いつか / どこか
3. 未来の人へ
4. Surfing on Mind Wave pt 2
5. 夢の中で
6. Helix/Spiral
7. Mellow Yellow Feel
8. The Spell of a Vanishing Loveliness
9. The Rain Song
10. Crépuscule

イベント情報

Cornelius
『CORNELIUS「Mellow Waves」RELEASE SECRET LIVE』

2017年6月27日(火)
会場:東京都 某所
定員:40組80名

Cornelius
『Mellow Waves Release Party』

2017年7月11日(火)、7月12日(水)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
出演:Cornelius
DJ:瀧見憲司
料金:6,800円(ドリンク別)

『Mellow Waves Tour 2017』

2017年10月9日(月・祝)
会場:新潟県 LOTS

2017年10月11日(水)
会場:宮城県 仙台 Rensa

2017年10月13日(金)
会場:北海道 札幌 PENNY LANE24

2017年10月14日(土)
会場:北海道 札幌 PENNY LANE24

2017年10月19日(木)
会場:香川県 高松 festhalle

2017年10月21日(土)
会場:大阪府 なんばHatch

2017年10月22日(日)
会場:愛知県 名古屋 DIAMOND HALL

2017年10月25日(水)
会場:東京都 新木場 STUDIO COAST

2017年10月26日(木)
会場:東京都 新木場 STUDIO COAST

2017年10月28日(土)
会場:神奈川県 横浜 Bay Hall

2017年11月3日(金・祝)
会場:広島県 広島CLUB QUATTRO

2017年11月4日(土)
会場:福岡県 DRUM LOGOS

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日々数多くの情報を発信しているCINRA.NET編集部が毎月1組だけ選出する、「今月のカルチャーの顔」。ジャンルや知名度を問わず、まさに今、読者の皆さんに注目していただきたいアーティストや作家を取り上げます。

プロフィール

Cornelius
Cornelius(こーねりあす)

1969年東京都生まれ。1989年、フリッパーズギターのメンバーとしてデビュー。バンド解散後、1993年、Cornelius(コーネリアス)として活動開始。現在まで5枚のオリジナルアルバムをリリース。2017年6月28日には、11年ぶりのオリジナルアルバム『Mellow Waves』のリリースを控える。自身の活動以外にも、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広く活動中。

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